空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

池井戸さん 直木賞(^-^)//"" ほか「下町ロケット」「黒百合」など

2011-07-18 | 読書



池井戸さんの作品は「空飛ぶタイヤ」「下町ロケット」を最近読んだ。
「鉄の骨」のドラマが面白かったが、この作者だとは知らなかった。
「空飛ぶタイヤ」は先に書いたので。

「下町ロケット」
莫大な予算をかけた国のロケット打ち上げが失敗した。
引責退任した、「佃」は親の後を継いでエンジンを作る会社の社長になる。

再度打ち上げられるロケットは、大企業が製作を請け負っていた。
だが燃料混合バルブの特許だけは「佃」が先に取得していることがわかる。
一流企業の圧力と、銀行の融資の締め付けで、背水の陣を敷いた「佃」の社長と社員の熱い戦いを描く。
胸が熱くなる小説。

「黒百合」

戦前の父親の時代と、戦後なって少し落ち着いた時代の、彼らの子供達が出会った出来事が交差して、進んでいく。

宝急電鉄と東京電の会長をかねていた小芝翁の、随行秘書で海外視察に同行した浅木(私)と寺元。
ナチスの軍人が闊歩するドイツで、会田真千子という若い女性に出会う。一行はなぞめいた彼女に興味を持っていたが、偶然、再会して彼女の窮状を救う。

彼らは帰国してそれぞれ大阪と東京にある職場に着いていた。

昭和16年の夏休み、寺元の息子(私)は浅木の持っている六甲山の別荘へ行く。
そこには同い年の浅木の息子、一彦がいた。
二人は、香という少女に会い、ひと夏をすごす。

過去になった子供時代を振り返り、その時代に起きた事件の真相は、作者の端正な文章で淡々と綴られる。中にはミスリードされそうな迷路もあるが面白かった。


52作目 「下町ロケット」池井戸潤 東京創元社 ★5
53作目 「黒百合」 多島斗志之 東京創元社 ★4
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庭のネム・ムクゲなど

2011-07-15 | 山野草
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「悪の経典」 上下 貴志祐介 文藝春秋

2011-07-05 | 読書





上巻を読んで二月ほどして下巻が来た。前の話を忘れているのではないかと思ったが、下巻で繰り返す部分もあって繋がりには余り苦労しなかった。

蓮実という青年が主人公。IQが高く、外見もいい。
彼が私立高校に赴任して起きる(起こす)事件なのだが、彼には冷血な裏の顔がある。

高校教師になる前はアメリカで商社勤務の経験があるが、不正が発覚して入国不可になり、戻ってきた。
ネイティブな英語が話せるうえ、犯罪がらみで心理学も独学ながら研究し、生徒の心をいともやすやすとつかんでしまった。

悪という感覚が欠如して生まれ、全く他人の痛みを実感することがない。

蓮実はそういった体質で、現在まで自分の人生を遮るものを容赦なく殺して排除してきている。

人気英語教師になったが、やはり思うような自由な日々ではなく、彼は、邪魔になった人間を巧妙に殺し、利用できる女生徒までも犯して殺す。

優秀な頭脳にヒビが入った蓮実というサイコパスが、ついに、担任の生徒に疑われて全面対決する最後は、蓮実対生徒の「バトルロワイアル」になる。
上下刊の長い話だが彼の犯罪は、、不用意な失敗や、予想外の出来事に阻まれ、緻密に仕組んだはずの計画が、いつ発覚してもおかしくない状況に陥る。
その部分は、いかにも人間くさく現実的だ。

貴志祐介という作家の作品は異界に通じるドアが開くような面白さがあり、好んで読んでいる、だが残念なことに、この作品は、蓮実の完璧さの底が浅く何をしても取りこぼす。
それが作者の意図なのか、少しは人間的だというのか。
読者としてもこの点が、不完全燃焼の感がある。
できれば最初に殺した烏の片割れの話も解決をつけてほしかった。
結局、冷徹な蓮実という男の犯罪に尽きるのかと思ったのだが、予想がはずれ、大量殺戮に発展する。そのあたり、少し興味をそがれた。できれば、徹頭徹尾不気味な「悪」で行ってほしかったかな、話の最後は書けないけど。と、ここまで書いておいて、大方ネタバレでm(_ _;)m

貴志さんのものでは、「黒い家」が一位「天使の囀り」「新世界より」の順になる。
ただ面白そうな「クリムゾンの迷宮」がまだなので読んでみてどのあたりの位置になるのか、楽しみにしている。

「悪」がテーマなら狭い読書歴ながら、楡周平さんの[Cの福音」朝倉恭介シリーズがいい。続きは出ないものだろうか。


52作目 「悪の経典」 ★3.5
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