空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

宮部みゆき 「日暮し」(上下)  講談社

2012-08-31 | 読書

 

今日返すので、大急ぎでメモ。


前半は、前作「ぼんくら」の続編のようで、人物はほとんどが同じ、「ぼんくら」で起きた事件の深層を辿るような展開になっている。

真夏の暑さが続いている今、季節的にもぴったりで、夏に弱い平四郎のぐったりしたしおれぶりから始まるこの物語を、クーラーの下で読む。

「夏は暑いものですよ」
「それだからこそ、めりはりがあるのです。暑いときは暑いように暑がって過ごす。これがいちばん身体にはよろしい。しかし、最前からお顔を見ていると、井筒さまは少々暑がり過ぎのようですな。」
上巻の冒頭から平四郎はこう町医者に言われる。
耳が痛い(笑)


下巻の半ば過ぎまでは、「ぼんくら」でおきた事件や人物のかかわりの裏側がうまく短編集風にまとめられている。
江戸時代の長屋の人情深い付き合いや、それゆえ巻き込まれる悲しい運命や、避けられない生き方が語られている。


生活の営みの中には、ねたみや憎しみや、欲望や、自己保身といった人の持つ思惑がからんでさまざまな形を作っている。
そんな中にいて、並の世間からは浮いたような平四郎の味のある存在が光る。
聡明な弓之助、驚異的な記憶力を持つ「おでこ」気風のいい政五郎、手足になって動く手下たち。

キャラクターも面白い。

そして締めになる最後の章「鬼は外、福は内」でつつがなく、幸せな幕切れになる。

いい人はいい人のまま、読者を裏切らない幕切れになっている。

ちょっと辛味が効いていてもいいなと思うのは欲張りすぎか。

この暑い日、すべてが丸く収まるほどいいことはないだろう。


★4.5

あっさりと読める。「ぼんくら」から読むのが順当だろう

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TVドラマ 「テロリストのパラソル」 原作 藤原伊織

2012-08-29 | 映画

毎日休日だが、録画予約しておいた「テロリストのパラソル」を見た。

藤原伊織さんは若くして突然に亡くなったが、この作品は江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞をして話題になった。

私はこの作品も好きだが、「シリウスの道」「ひまわりの祝祭」「手のひらの闇」などに夢中になった。もう次が読めないのが残念。

特に「シリウスの道」は広告業界の内部が興味深く、ドラマにもなったので頼んで録画してもらっていたのだが、期待していた緊迫した山場のシーンはカットされていて薄味だった。

今回のドラマは1996年ていた放送されたそうだが16年もたったのに、時代の流れもあまり影響がなくとてもよくできていた。

原作はほとんど忘れていたが、最初の新宿中央広場の爆弾事件から始まる部分は非常に面白く、読んだころの記憶と重なるドラマティックな出だしだった。

学生運動の同士で友人だった三人のその後。二人は警察に追われ、逃げ続けて20年後に再会する。

生活の陰に隠れて、薄暗いスナックで生きている男が、爆発事件で存在があらわになる。しばらく同棲したことのあるかっての同士だった女性がこの日に爆発で死に、友人だった男の名前も挙がる。

あまりの偶然に、20年の間知ることもなかった二人の過去を調べ始める。

スナックにかくれて生きているアル中の男が萩原健一、かって同士だった男に根津甚八、恋人だった女性が高橋恵子、そのほか西岡徳馬、大杉漣 など。若い木村佳乃も。

あまりべたべたしない演出や脚本もよかった。監督の気持ちが入りすぎて、見ているほうが押されそうな意欲作もたまにはいいが疲れる。
内容は重いが、それぞれの生き方が物悲しい、いい作品だった。

藤原さんの作品ジャンルは「ハードボイルド」らしい。

なんだか過ぎた時代を感じさせる作品で、懐かしかった。

コメント (2)
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畠中恵 「しゃばけ」 新潮社

2012-08-28 | 読書

 

 

前に読んだようだけれど、居合いが足りずところどころしか覚えてなかった(*/∇\*)
シリーズだというのを知ったので、読みやすかったし、図書館で借りてきた。

テレビのゲストで見たら作者の畠中さんはおとなしい感じのひとで、「しゃばけ」を漢字にすると硬いので、みんなひらがなの題なんです。と話されていた。

17歳になる主人公の一太郎、江戸でもちょっとやそっとでない大店の一人息子だが、生まれつきのひ弱な体質、両親は過保護で甘く心配が絶えない。

二吉と佐助という妖を世話役にしたのは祖父で、祖母にその血が流れていたそうで、一太郎も妖が見える。どう話をつけたのかは不明だが、二人の妖は一太郎のためなら命がけと言うコレも甘やかし放題の忠義な世話役である。

一太郎は、いろいろな妖が見え、寝込んでいても枕元はにぎやかである。

開放されない寝床から、訳あってとうとう抜け出した一太郎は、殺人事件に遭遇する。

お店では一太郎が行方不明になったと大騒ぎ、一太郎はお稲荷さんの鈴が化けた鈴彦姫と、ふらり火のおかげで無事帰宅するが、またいつもの離れに閉じ込められてしまう。

そこで、手代の二吉,佐助を始め身近な妖総動員で事件を解決する、と言うお話。

一太郎は過保護に飽き飽きしているが悲しいことに体が弱い、その分賢い頭で推理する。

妖たちとの邪気のない会話や、付き合いはほほえましくも楽しい。
読みやすく人気のほども知れる。

次を借り手こようと思ったがいまだに貸し出し中だった。
★5

11冊目の「ひなこまち」が出たそうだ。

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「舟を編む」 三浦しをん 光文社

2012-08-24 | 読書

 

昨年の秋だったと思う、テレビでこの本のことを知った。早速本屋さんに行って探したがない。大阪の端にはまだ届いてないのか、と脱力して帰ってきた。

辞書は父が入学祝に古い破れた表紙をつくろったものをくれた。それからは、暇にまかせて読んでいたら、また表紙が破れた、明解さんのことも新聞で読んで即本屋で立ち読みをしてきた。なるほど、面白くてつい買ってしまった。
明解さんについで面白かったのは「古語辞典」でビニールの緑の表紙が曲がっているが今でもたまに出して見る。

何度かぶりにやっと見つけたこの本は、発売が9月20日、私が買った時には10月30日ですでに初版3刷になっていてびっくり。
それから販売ランクもじりじり上がって長くベスト10に入っていた。

今、画像を調べるのに見たら本屋大賞1位になっていた(^^)

夕方買い物ついでに買ってきて、読みふけり、夜中に読了した。
すばらしく面白かった。

一つの見出し語に編集部のそれぞれの見解が面白おかしく書かれている。
「西行」など、解説が出来上がるまでの話は思わずうなってしまった。
いつもメモを持って常に言葉の収集をしているこだわりが楽しい。

そして編集部の個性的な部員たちが、誇りをもって、というか好きな言葉の海を邁進していく様子がほほえましく、暖かく書かれている。

辞書ってそうなのか、そうして作るのか。
ありきたりでない個性的な言葉の意味を見つける才能をもちあわせている主人公、軽く見ていた辞書作りに徐々にはまっていく人もいる、部員を絡めたストーリーは好きな仕事ができる幸せな人達の、うらやましい心暖かい人生を見るような気がした。

出版社は独自の辞書を持つと言う。
目からうろこと言うか、ますます辞書が好きになった。

パソコンで調べるとすぐに意味は知ることができる、便利な時代いになった。
でもたまにはじっくり辞書を読んでみるのも悪くない。
昨年は本を読んでも感想も書く気力がなくなってしまったが、「永遠の0」「のぼうの城」などとともに、いい本にめぐりあった。

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「月下美人」が咲いた。

2012-08-24 | 山野草

もう咲くからと、膨らんだ蕾が二つぶらさがった植木鉢をもらった。
ご近所からでも重い植木鉢を持ってきてくれたが、言ってくれたら取りに行ったのに、といいながらも、お礼に写真を写した。

なんだかこの花は夜中に咲くのだと思い込んでいたので、昼寝をして準備をした(^∇^)

ところが夕方から膨らみ始めて9時ごろにはすっかり開いた。

アチコチで写真を見るので、一度咲いたところが見たいと思っていたが、招待されても夜更けでは遠慮だしと思って見る機会がなかったが、美人な花で感激してしまった。

さぁ来年はどうなるか、育て方を研究して花の数をふやすかな
p(*゜▽゜*)q

 

 

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宮部みゆき 「ぼんくら」 (上下) 講談社文庫

2012-08-22 | 読書

    

同心、井筒平四郎は、転がりこんできた家督相続に困惑してはいたが、今では何とか勤めを続けている。
面倒な付き合いや物事からはできるだけ遠ざかり、信仰心はもとより欲も徳もないさっぱりした性格の愛すべき主人公である。ただうまいものを食べると言う楽しみは人一倍あるにはあるが。

市中見回りにはできるだけ出かけているが、身を入れて仕事をしていないにもかかわらず上役から特に何も言われないのは、愛すべき人柄のせいかもしれない。

さて舞台は「鉄瓶長屋」。ここの住人が殺されたことが発端で、次々に歯が抜けるように店子が出て行き空き家が多くなる。
持ち主(地主)にも何か仔細があるようだし、胡散臭い人物が顔を出すようになる。

と言うことで、事件に巻き込まれることになるのだが、彼のまわりには、得異なキャラクターが揃っていて、それが事件の解決の鍵になるような働きをしてくれる。
コレが面白い。宮部さんの読みやすい中にも、さわやかな季節感や的確で細やかな人物描写も、作品を只物でないものにしている。

しかし、一日で読めてしまった、
次にリクエストしていた本が来たと図書館からメールがきた。急いでメモをしなくてはとがんばったが、たくさん書いたのに二度も消えてしまった(大怒)
三度目は超簡単(^∇^)
コレはとても面白かった。

★5 
暑い日の気分転換にオススメ(^^)。

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