空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「初陣」 隠蔽捜査3.5  今野敏  新潮文庫

2014-06-30 | 読書



ここまで来ると、竜崎の周りの人たちも気になりだす、まずは、伊丹、戸高、野間崎管理官、補佐役の課長たち。貝沼さんも。

3.5と言うのも珍しいが、3巻~4巻の間の裏話と言うところでしょう。話は伊丹刑事部長のあれこれ。
伊丹刑事部長と呼べば、まぁ俳優なら今、時の人香川さん、内野聖陽さんかな。
ところが伊丹俊太郎となると、体形に気を配り、マスコミ受けを狙い、現場にも常に顔を出して捜査陣をねぎらう、行き届いた人を演じ続けてすっかり身についている。スマートさが売りなら、佐々木蔵之助さんのような人を想像する。俊太郎って名前、なかなか似合っているような似合わないような。

短い話が8編で、どれも面白い。今野さんは話が短くても長くても、うまく、それも無理なく収める、名人かも。


さて本編は

指揮
 伊丹は福島県警本部長から警視庁刑事部長へという辞令が出た。引継ぎは三日間で、もたもたすると次の部長が着任してくる。自分も次の任地に行かなければならないしいそがしい。
だが竜崎にちょっと電話してみた「なんだ?」溜息とともにいつものように愛想無い。伊丹は勝手に親しみを感じているが、竜崎は長官官房の総務課長に抜擢されていた。
後任者の到着前日、いわき市で殺人事件が発生。後任が来れば引継ぎをして自分も移動しなくてはならないが、捜査本部ができればそこに立ち会いたい、それでは決められた着任日に間に合わない。
現場主義の伊丹は迷う。そこで竜崎。距離を置いて客観的に、原理原則どおりにやって見る。体の移動ができないときは電話も使え、という竜崎の指示。迷いは物差しさえ間違えなければ案外すんなりと片付くと言うことで、めでたし。

初陣
 裏金問題が浮上した。竜崎は長官官房の総務として、国会の質疑応答の原稿を作る。これが表立った竜崎の「初陣」だという。
資料のため、と言うことで伊丹に質問してくる、なに?裏金? 費用のやりくりに苦しい所轄などは何らかの方法で経費の不足はまかなっている。具体的に? 話すから友達ならうまくまとめてくれ。名前は出すなよ。マッタク!
案外伊丹は小心だった。どうなるのかやきもきする。

休暇
伊丹はやっと三日の休暇をとった。榛名山に向かう坂道にある古い温泉、伊香保に行こう。車で飛ばせば一時間。
だがそこで又大森署管内で殺人事件、捜査本部だ現場主義なら立ち合わねば、せっかくの温泉で、休暇なのに。
竜崎は、本部など要らない、連絡網は完璧な現代、ゆっくり休養しろと言う。
それでいいのか、伊丹は悩みながらの休暇。

懲戒
 晩秋の雨が冷たい日、」時枝課長が言いにくそうに、選挙違反の話を伝えに来た。本当なら懲戒免職だな。でもなぜ話がここに来た。聞いてみると伊丹の知っている警部補だった。刑事部長が言うには、「伊丹から処分を聞くのではなくあくまで参考意見を聞きたい」そうだ。だがその結果が悪ければ・・・妻も子もいるのだ。
白峰をよんで話を聞くと大物議員の選挙運動中の出来事だった、やはりここは竜崎の智恵だ。
電話をすると、単純明快な答え。伊丹も取り越し苦労だと思えた。そう旨くいくのか。

病欠
 いくら頑張ってもインフルエンザには勝てない、それでも伊丹は頑張る。現場主義だ。
しかし応援がいるとき、どこの署もインフルエンザのせいで人員不足だった。しかし大森署は予防接種の徹底で欠勤はわずかだった。
 竜崎に応援を頼むと、危機管理がなってないなどと皮肉られながら10人を出して、指揮も取ってくれるという。困ったときはお互いさま、仕事第一というのが竜崎の原理原則だ
伊丹は体力も限界で家に帰る。そこにたまたま別居中の妻が来ていた。ほっとして、なんだか幸せ気分になった。

冤罪
4件の放火事件があった、二件の犯人をすぐに拘束した。ところが近くで小火がありその犯人が前の4件は自分だと自供した。
こまった。最初の犯人は庭で焚き火をしたただけなので無罪だと言っていた。誤認逮捕!冤罪か。
 竜崎は、こういうときはどうするのだろう。

試練
 藤本警備部長は、かねがね聞いていた竜崎の原理原則を試すために、女を送りこんでみたらどうかと伊丹に言う。
そして3巻の<疑心> のような話になる。これには仕掛けやうら話があった。

静観
 時枝の態度が気になった。
「何か問題があるのか」
「落ち着きが無いように見えるが」
「何があった」
「悪いことと言うのは重なるものでして・・・」
「大森署の竜崎署長がちょっと面倒な立場におかれておいでです」
「要点を言ってくれ」
大森署で事故死で処理した事案が殺人事件だった。
車両同士の事故で交通課係員ともめた。
窃盗事件があり話を聞いた相手が、犯人だったが、その時は見逃してしまった。
なんと三重苦か。
伊丹は早速電話した。
「まだわからんことばかり、静観中」と竜崎は言った。




伊丹側から見れば難事件でも、竜崎の考えに照らせば悩むことは無い。まるで大岡裁きの前の岡っ引き。
でも伊丹の心は見かけによらず繊細なのだ。人の気持ちはそうすっぱり割り切れるものではない。それが伊丹の持ち味である。
竜崎だって人の心が判らない訳ではない。しかし法の下で人を見るとなれば、原理原則が第一、騒ぐことはない。彼には忍耐力もある。


短編もいい。早く読めるし。解決も綺麗で早い。
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「疑心」隠蔽捜査3  今野敏  新潮文庫

2014-06-28 | 読書




竜崎は大森署に馴染んでいる。
朝の新聞でアメリカ大統領来日のニュースを知る。所轄に直接知らせは無いが、大統領専用機は羽田空港に着く。大森署の管内だが三ヶ月も先のことだ、上の指示に従えばいい立場だと思っていた。

一日署長に人気のアイドルが来て、所内は浮つき気味で雰囲気が明るかった。

その後に見た書類で、今回の大統領来日の際、竜崎を方面警備本部の本部長にするという辞令が届いていた。警視庁内では来日の準備が始まっているのだろうが、自分が本部長とは納得できない。
大森署は方面本部の下にある、序列から言えば管轄の署長等より方面本部長が任命されるのが筋ではないか。竜崎は間違いでは無いのか、即確かめに行く。
警視庁の藤本警視監は磊落な人物で、方面部長からの推薦だと言い、身分は竜崎が上なのだからいいではないかという。引き受けざるを得ない状況で、それならすぐに取り掛かろう。それが竜崎流だった。

本部の警備課から女性キャリアの畠山が来る。長身の美女だった。補佐官を命じられたと言う。かすかに覚えている程度だったが、竜崎は一目見て恋をした。


ここからがナンだろうな・・・の展開。

彼は夜も眠れない、同行すればワクワク、誰かと話していると嫉妬、一時も頭から離れ無い。
悩みも理詰めである。
これは人間の理性の範疇をはるかに超えているからだ。社会的な規範も、常識も法律も超えている、いや、そういうものとは別の次元にある。
 自分自身で制御できない感情というのは、それだけで十分に犯罪的だ。
 不倫はもちろん犯罪だ。だが、それは社会的な罪に過ぎない。恋愛自体は、社会性をはるかに超える罪悪かも知れない。

などと考える。こういう理屈を持って回る、と言うことが既に恋愛に不向きなのだが、彼は気づきもしない。
恵まれた家庭とキャリアを踏み潰すことになると、目標のために邁進してきた彼の常識や倫理感まで踏み外すことになる。と言う考えが又、滑稽さの上塗りをする。こんな悩みを伊丹にまで相談する。
古今東西同じような悩みを抱えた人はかずかぎりなくいるはずだ。
何か良い解決法はないかと書店にはいる。「葉隠れ」は武士のやせ我慢だ。
宗教コーナーはどうだろうと、三冊買ってきた。それの中に「婆子焼庵」を見つけた。禅宗の歴史書だそうで、感じるところがあった。彼なりに今の状態から距離を置いて俯瞰する心境に近づいてくる。

この話にはほとほと苦笑させてくれる、なかなかのエピソードだった。無くても良かったけれど・・・(笑)


羽田の警備は進んでいたが、先行して来日しているCIAの職員二人は竜崎も一目おく働きぶりだった。日本人のスパイで内部からの連絡係がいるらしいと言う情報が入り、にわかに緊張感が増す。
空港を閉鎖せよとCIAはいう。しかし竜崎は莫大な損害と利用者の不便、警護の手配などを考えて閉鎖の命令ができないでいる。軋轢が増す中で、やっとスパイたちを拘束。
大統領を無事迎えて次の訪問地京都に送り出す。

竜崎が指揮する警護の様子と、恋愛から開放されるには行動に移せという伊丹、戸高の地道な捜査振り、藤本警視監のいわば津川雅彦風に、豪放磊落に見える口調、話の中には登場人物の面白い華が添えてある。


今回は竜崎のおかしな恋物語があって緊張感も余りないが。まぁ流れで読んだ。

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「特捜部Q カルテ番号64」  ユッシ・エーズラ・オールスン  早川書房 1871

2014-06-26 | 読書


500ページを越える大部。こんなに面白くなければ手をつけなかったかも知れない。重い本を支えながら読んでしまうところが特捜部Qの魅力かな。
シリーズ4作目になるが、ますます面白くなっている。この作品は作者が関心を寄せたという、優生保護、人種差別などの理由で、人々を隔離するという悪法の元で、被害者になった女たちの歴史が元になっている。今回は社会派のミステリでこれもベストセラーだとか。
1987年の出来事と、2010年になって特捜部Qが捜査をはじめた事件の発端と結末が分厚い一冊にフルに詰まっている。



恋人のモ-ナに夢中で、そうでなくてもやる気の無いカールに、またもや元気なローせが失踪事件の再捜査を持ち込んでくる。周りはインフルエンザの流行の渦中で、アサドなどは見るも無残な有様。カールは事件どころではなくウイルスから逃げ回っている。
ところが1987年に失踪者がまだ4人いることをアサドが突き止めた。5人が同時にいなくなるのは異常事態で、再捜査が始まる。

政党<明確なる一線>を立ち上げたリーダーはクアト・ヴァズという婦人科医だった。彼は北欧医学賞を受賞した名士だった。その受賞祝賀パーティーにニーデ・ローセンは夫と出席していた。
ニーデを見つけたクアトは「淫売だ、地獄に落ちろ」と言って公衆の前で罵倒する。そこに居合わせた記者も彼女の過去を突きつけて暴露した。
二年後夫は亡くなり、ニーでは不幸の種をまいた人々に復讐する準備を始める。

彼女の不幸は、何も知らないで従兄弟に妊娠させられた時に始まる。身持ちの悪い女や知能の劣った人々が入る矯正施設にいれられ、反抗のたびに狭い懲罰房に何度も監禁される。時には裏切られ犯され、妊娠中絶をさせられその医者にも犯される。

その医者がクアト・ヴァズだった。

ニーデは島から密かに持ち出した毒草を育て増やしてそのエキスをとりだして5人の殺害の準備をする。

1987年、ニーデの計画は実行に移された。

ニーデがどう生きたか、復讐の的になった人たちとはどのように関わったか、島の孤立したコンクリートの壁で囲われた施設からでて、ニーデは年老いた。

この話はこれで終わりではない、この本の面白さは最後まで読んでわかる。


特捜部Qメンバーは健在だ。
カールは鼻水もやっと止まった、モーナに恋人ができたのではないかと悩むが、事件の捜査で時間が無い。そのうち元妻ヴィガと不利な条件で離婚ということになる、何とか頭を働かせて被害を食い止め、めでたく別れる。捜査中に狙撃されて核心に近づきつつあると思う。
元同僚のハーディの容態は変わらなかった。だがモーデンが連れてきた友人ミカが理学療法士だった。彼はハーディに治療を試み、少しずつ快方に向かってくる。

クアトの家に資料を盗みに入ったアサドは襲われて重症を負う。しかし彼の過去は依然闇の中。いろいろなヒントだけで謎の人振りがますます深まってくる。続きが読みたい。


ローセは5人姉妹だった。初めてわかるが、今回はユアサが出てこない。ローセの奇行振りに振り回されるカール(笑)



まだこれからが楽しみ。外れが無い。



それから、矯正収容所は過去には欧州各国にあったそうだ。
以前見た映画「マグダレンの祈り」もイギリスにあった収容施設(教会)の話だった。その時書いた映画の感想です(*^^*)

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初夏の花  2004.06.24

2014-06-25 | 山野草
初夏の花 

公園に散歩に行きました。広いので南の半分だけ歩いて帰りました。
長い間写真を写さなかったので、また勉強中です。露出や絞りはどのボタン?
という具合で失敗作ばかりですが、一応、日記のつもりで編集しました。







ここでも見られます




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「草祭」   恒川光太郎   新潮社

2014-06-24 | 読書



子供の世界は、まだしっかり現実が根付いてはいない、自分の子どもの頃でも、今思うと夢中になって読んでいる本の中に入り込んで、うつらうつらと過ごしていた時期があった。
学校に行くようになって、新しい世界が時間の流れとともに進まなくてはならなくなり、時間割というものもできて、嫌でも毎日の日の傾きにしたがって生活しなければならなくなった。今思うとこういった日常生活の枠に入れられるまでは、まだ現実の中に、生まれる前の大きな宇宙の意識と同化していた時期があったのかもしれない。

そんな非現実というか異なった世界が書かれている。美奥(びおく)という町を離れて少し山のほうに行くと、不思議な生き物がいる世界があり、たまに訪ねて行くと、ふと知らない世界に迷い込んでしまうこともある。

そういうあいまいな不思議なところがあって、深い森の中の沼地には注連縄が張られた大きな石があり、湿った地面が広がっていて池の向こうに小屋もある。

町から下水道の溝に沿って歩いていくと、コンクリートで護岸工事がしてある。それに沿ってどんどん歩いていくと、途切れたところに上に上がる階段があり、そこから森に入っていく。



けものはら
六年生のとき、隣町と子供同志の戦争をする、友達の春と逃げていると夕方になってしまうが、下水道に沿って歩いていったので、知らない原っぱに行ってしまう。
ある日、「<けものはら>に入っただろう」と男が話しかけてくる。この間、下水路を歩いているのを見かけてな。
「あんなところで遊んでいると化け物に変わっちまうぞ」と男が言った。
中学生になって春がいなくなったと父親から電話があった。
もしやと「けものはら」に行ってみると、春は無くなったお母さんの亡骸のそばにいた。もう帰れないといった。何度か行って、あっているうちにだんだん景色が透明になってきたと言っていたが、そのうちとうとう消えてしまった。

屋根猩猩
お神楽囃子が遠く聞こえる夜に見知らぬ男の子と知り合いになった。
男の子は「夜になると屋根のうえを獅子舞が通り過ぎる、町を守っているのだ」といった。
17歳になった時、タカヒロという友達ができた。彼の住む屋根崎地区に行くと家々の屋根瓦の上に守り神の猩猩がおいてあった。
それから徐々にタカヒロが普通の友達でないのがわかってくる。

くさのゆめものがたり
これが美奥の始まりの物語。
男の子は植物が大好きだった。叔父は山歩きをして獣を狩り、薬草を取っていた。毒草のことも教えられたので、叔父で試して殺してしまう。
山で出会った僧のリンドウが春沢という里に連れて行って住まわせてくれた。
そこが賊に襲われた。山奥の家にいる賊達を見つけて毒で復讐する。
帰ってきて、リンドウの居た寺を覗くと少女がいて、みんなで逃げるのだといった。
しばらくして春沢の噂を聞いた。火事で春沢一帯は消失したという。
一年後行ってみた春沢は集落の跡はすっかりなくなっていた。こうしているうちに村は次第に森に還るのだろう。
ある日そこを訊ねた旅人はここはなんという所かと聞いた。
木の切り株にひとりの男がいて「美しい山奥」と答えたという。

天化の宿
 両親の戦争が激しくなったので外にでた。古いトロッコの線路が残っていたのでそれに沿って歩いていった。蝉しぐれの降る中、線路は緑深い森の中に入っていった。
そこで双子に出会う、「クトキの人?」それなら案内しても言いというので、双子の家に行く。
そこで「クトキ」は「苦解き」だと知る。
親方を相手に「苦解盤」をつかったゲームで、苦を解くという。「いったん始めたら終わりまでやらないと、何の意味も無い。苦しみは全て戻ってくる」という。
ゲームは一日一回、夢中になっていたがだんだん重苦しくなってくる。空いた時間は双子に付き合い、美しく澄んだ池で釣りをする。池のほとりの大石の隣に5体の地蔵尊が立っていた。
ゲームが終わると全てのこの世の苦から開放されるという。今まで5人が解放されたと双子が言った。
逃げることにした、追って来た双子は姿を失って風のようについてきた。
 またどこか天上で精霊の宿る盤がカラカラと回っているみたいでした。すべて御破算。そうではないでしょう、苦はもどってくるでしょうが、きっと残りの局はこれからです。
 町へ。 わたしは枯木立のレールの上を白い息を吐きながら走り続けました。


朝の朧町
夢から覚めると、長船さんのうちに居候をしていた。6年前に私の夫は小田原という人に殺された。長船さんは小屋でミニチュアの町を作っていたと妹が言った。
長船さんは時々そこにい居ないかのように眠ってしまう。起きると不思議なかげろう蜥蜴の話などをしてくれる。
長船さんは山をいくつか越えてその町に連れて行ってくれた。そこでは昔の小学校があったり、見たことのある人たちが歩いていた。

この町と長船さんが繋がったのは高校二年だった、カラスの落としていった碧い玉を手に取ったとき、外に出て歩いている道が広い野原に出た。そしてジオラマと同じ町ができた。ということだった。
二人でそこから帰って入院した、長船さんも病気だった。胸に入ったと思った玉が出てきたと言って私にくれた。
そして長浜さんはあの町に行ってしまった。私も玉が有るからいつでもいけるそうだ。私もその町に行き長浜さんは亡くなった。大風が吹いて町も無くなった。

朝の野原に霧がでる。
時折、その霧の中に町の幻がぼんやり現れる。
私は野原に椅子を出してその町を凝視する。
彼の町、私の町、記憶の町、夢の町、みな重なり合っている。
やがて幻はどんどん薄くなっていき、朝霧と一緒に消える。


美奥行きのトロッコ列車に乗ると玉は見る見るうちに小さくなって見えていた過去が遠ざかり、カラスが小さくなった玉をつかんで飛んでいった。





夢のような、懐かしいような面白い話だった。

昔、ブラッドベリの「何かが道をやって来る」を読んだ。あの時こういう話もつれてきたのかもしれないな、あると思えばあるかもしれない、そんな夢を見るかもしれない。短編だけれど連作になっている。
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アジサイなど 14.06.22

2014-06-22 | 山野草


公園に行こうと用意したのですが、小雨が降り始めたので、庭のアジサイなどを写してみました。
今年のアジサイは赤い色が多く咲きました。
切り詰めたのですが、オレガノが増えてあちこちの鉢から溢れています。



アジサイなど 14.06.22
写真面、右下の拡大マークをクリックしてください。あまり大きくなりませんが(;^ω^A ァ




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「パレード」   吉田修一  幻冬社文庫

2014-06-20 | 読書

第15回山本周五郎賞受賞作


 都内の2LDKのマンションに男女4人が暮らしている。男部屋、女部屋と名づけて一部屋に二人ずつ住んでいる。
最初は「直樹」と「美咲」が住んでいた。二人の仲が冷め始めた頃、「美咲]の友人が行きどころが無くなり一緒に住み始めた、これが雑貨店の店長をしている「未来」。そこに直樹の後輩の後輩「良介」が上京して同居することになる。その頃美咲は新しい恋人を見つけて、マンションを出て行く。

「美咲」は大手化粧品メーカーの秘書、「直樹」はインディペンデント映画の配給会社に勤めている。

そこに「琴美」という娘が、田舎のコンパで知り合った若者が、人気俳優になったので追って上京してくる。彼女はナンパした男の子のお兄さんのトラックに乗って築地まで来た。「良介」が迎えに行き、住む所のない「琴美」は「未来」の部屋に同居する。

四人はうまく距離を保っていて、これが居心地がいい暮らしだと感じている。

「良介」は大学の先輩の彼女に一目惚れして、先輩のいないときは彼女と付き合うようになる。同居人が彼女は二股だといったりするが気にしない。両親に大切にされ、心身ともに柔らかい人柄で、みんなとうまく暮らしている。
古い車を買って姓名判断で「桃子」と言うぴったりの名前をみつけて可愛がり、同居人の気分転換にドライブに誘ったりして付き合っている。
4階のベランダから、退屈で下の道路をぼんやり見ている。次々と走ってくる車が、交差点では停止線の前で距離を保って止まる。信号が青になるとまた次々に走り出して事故が起きることが無い、そのうち自分も時間の輪の中にいるように思えてくる。
そして、誰かと本音をぶちまけて正直に話してみたい、本音でぶつかってみたい、相手は可愛い子でなくてもいい、少し能天気ぐらいがいいと思ったりもしている。

「未来」はイラストレーターでもあって、体の一部のイラストを書いている。同居の男たちをモデルにして撮影し、そのイラストを公園で売っている。美人の琴美が隣に座ると、買い手がつくといって喜んでいる。
未来は
ここで暮らしている私は、間違いなく私が創り出した「この部屋用の私」である(「この部屋用の私」はシリアスなものを受け付けない)よって、実際の私は、この部屋には存在しない。ここの住人(良介や琴や直樹やサトル)とうまくやっているのは「この部屋用の私」だと思う。・・・がしかし、ここにいる彼ら(良介や琴や直樹やサトル)が、私と同じように「この部屋用の自分」を創り出していないとも言いきれない。とすると、彼らも実際にはこの部屋に存在していないことになり、畢竟、この部屋には誰もいないことになる。

そして、ここは無人の部屋?いや無人になるには私たちがいなくてはならない、などと考えて、結局は、今の状況が良くわからないと思う。

「琴美」は日がな一日、その人気俳優の電話を待っている。枝毛を切ったり眉毛を抜いたりして、ほとんど家にこもっているが、綺麗好きで料理上手なので、一応兄貴分で部屋の借主である「直樹」は同居を認めている。

 酒癖の悪い「未来」が「サトル」を連れてくる。だが本人は酔っ払っていて連れてきた覚えが無いと言うが、「サトル」も「未来」の部屋だと思って入ったが、朝になって、どたどたと目を覚ました同居人たちが現れ、あたふたと出掛ける支度をして消えるのにあっけにとられてしまう。
「未来」は、男娼の群がる地域で見かけた「サトル」を不審に思っているが、「サトル」は昼間うちにいる「琴美」と気があったらしく出たり入ったりし始める。

みんなは思っている。こうして居心地がいいというのは、言わなくてもいいことは言わない、住みやすい距離を保って暮らしているからだろう。

 「直樹」は同居人たちと十分距離をとって無関心でいたいと思っている。ところが何かしら相談事を持ち込まれて関わりを深めていく。
彼は家出をしたことがある。道に迷って恐ろしくなっていた時に、古い山小屋を見つけた。そこには食べ物が蓄えられていて、恐怖心が薄れると火をたいて温まりながら数日そこで暮らした。
「あそこで暮らした時間はほんとにすばらしかったよ。すばらしいなんて、今どき使わない言葉だろうけどさ、あそこで過ごした数日間は、ほんとにすばらしかったんだ。・・・・・すばらしかった、ウン、マジですばらしかったんだ」
と「直樹」は「サトル」に話した。

そして、恐ろしい事件が起きる。犯人のやり場のない気持ちについては巧みな文章の中にこめられている。

誰も気づかないふりをしている。この部屋用の住人は「未来」の言うように、みんないるから無人なのである。

考えれば生きていることはそれぞれの距離が保たれて生活できる時間が流れている、しかし、内心をむき出すと、それが自分の心であっても改めて気がつき、見聞きしてしまうと恐怖感が湧くかもしれない、といって生活の外に出てしまおうとすれば、結果は自由であっても孤独な世界に放り出されることになる。
 地球の外の宇宙に出てしまいたい、「直樹」の見る夢の中の宇宙、そこには彼が望む開放感がある、だが宇宙の広さはやはり孤独で、目覚めれば5人が暮らすこの部屋は、窮屈でも本音さえ話さなければ住みやすい。

最近の若者の付き合い方はこんな風に内面を語らず、気楽な付き合いで日々を過ごしていくのはたやすく、それが世知というのことかもしれない、若者に限らず、、、。

ただ、それはどこと無く淋しい。そんなことを感じさせる意味のある話だった。


映画化されている

直樹・・・藤原竜也   
良介・・・小出恵介
未来・・・香里奈
琴美・・・貫地谷しほり
サトル・・林遣都


藤原竜也は前にも書いたが、なんだか少年のような印象がある。最近婚約発表もしたというが、演技派ということでそうなのかとは思うがどうも私の中では年をとらない。

小出恵介の善良そうな楽天的な様子は適役かな。
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「パーク・ライフ」  吉田修一   文春文庫

2014-06-18 | 読書


以前、話題になった「悪人」を読んだ感想で、可もなく不可もない話だと書いた覚えがある。被疑者にされた恵まれない育ちの素朴な青年と、電話で知り合った女性が逃げているうちにお互いに情が湧く、ストックホルム症候群的いきさつだろう。それがそんなに話題になるほどいい小説なのか、長いし。と思って感想を書いた。

この「パーク・ライフ」を読んで、自分はとんだ勘違いで、浅い読み手だったと反省した。いい話だった。
取り立てて驚くようなこともなく、公園でふと知り合ったサラリーマンと、何処かに勤めているが(尋ねもしない)自然体の女性が、顔見知りになり、時間を共有する。そんな話だった。

初めて出会った時、
僕はドアに凭れたまま、ガラス窓の向こうに見える日本臓器ネットワークの広告をぼんやり眺めていた。広告には『死んでからも生き続けるものがあります。それはあなたの意思です』と書かれてあった。(略)
 「ちょっとあれ見て下さいよ。なんかぞっとしませんか」
ガラス窓に指を押し当て、僕は背後に立つ見知らぬ女性に笑みを向けてしまった。

先輩が電車を降りたのを忘れていた。女性がなにごともないようにこたえてくれた。そいうことで知りあって、いつも行く日比谷公園のベンチで再会する。それから時々会っては、ベンチに座って、持ってきたスタバのコーヒーを飲む。いつも気球を上げている老人に話しかけたり、人体解剖図に興味を持ったときは、二人で町の店に入り人体模型を手にとって見たりする。
 写真展に誘われると、その写真は彼女の育った所の風景だった。それまで聞きもしなかったが秋田の角館の人だとわかる。
 平凡なような、ちょっと変わったような淡々とした男女の付き合いがある、公園の中の出来事や、公園の中の出会いが書いてある。
 それでどうなったかと言うものでもなく、自由で行動的な彼女は「よし決めた」と言って人混みの中に消えていく。
 なんだかいい。ちょっと普通でないようだけどそんなことも普通にあるかも知れない、そんな時間がとても奥行きがある表現で書かれている。静かに読むにはいい話だった。

 もう一編、「frowers」がある。
 この話は、また違った奇妙な重みがある。
 墓石屋の仕事を辞めて上京して、水の配達をする会社に入る。そこで「元旦」と言う名前の水配達人の助手になる。
 社長は2代目でわがまま放題、常に部下の一人を目の敵にして叱りつけている。部下も弱みがあるので見苦しく従っている。
 「元旦」はその妻と不倫中なのだが、そこに呼びつけたりする。
だが、無骨な「元旦」が生花をしていて床に飾るのが抵抗なく感じられたりもする。暑い暑い日、疲れ切った運転手の男たちが、混み合ったシャワーで汗を流している。外から社長が、中にいる部下を怒鳴り始める。もう、汗の匂いと疲れた男たちと、怒鳴り声と、それをやめさせようと土下座する「元旦」と、たまらない様子が、息苦しい。暮らしの中で様々なことが起きる。短い中に暑い夏の、人のつながりが書き込まれていく。

そして突然「元旦」がやめ、それでも日が過ぎ、田舎を出る時結婚した女優の卵の妻と相変わらずの暮らしを続けている。「元旦」から年賀状が届く。

謹賀新年 元旦

 たぶんこの「元旦」というのは、自分の名前のつもりなのだろうと、空白の多いその紙面を眺めた。どこかで元気にしているわけだ。

 

 毎日重い墓石を運んでいるとふわっと飛んでみたくなる。
 夕立に濡れながら歩き回って花の無い墓石を探し、泥が跳ねた足元を見て「東京へいってみようかなぁ」と思う。
 心の動きの小さなゆれが伝わってくる。平凡な日常がふと遠くに思われたり、何か変化があればいいと思ったり、そして暮らしを変えてみても変わらない日々が続いていく。

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「去年の冬、きみと別れ」   中村文則  幻冬社

2014-06-18 | 読書


  
図書館ばかり利用していたが、新しい本も読みたくなって久し振りに、ゆっくり本屋さんを歩いてみた。
本屋さんはスーパと並んでいるので、必ず通ってみるのだが、読みかけの本があると、買わないでざっと一覧して帰ってくる。同じ傾向のものは集められているし、話題の本は特に目立つところに有って、売れ筋がわかる。

今読んでいるシリーズ本の続きを探したが置いてなかった。少し古くなって人気が無いと見ると探しても見つからなくなってしまう。大阪駅あたりの大型店と違って、探す本がすぐ見つかる事は無くなった。注文するくらいなら図書館で待とうと思ってしまう。

新刊本コーナーで立ち止まって、初めての作家のものを読んでみようと思った、少し買って、中古本の店舗の方に入ってみると、誰も読んでなさそうな綺麗な本が半額くらいで並んでいた。開けるとページがぱりぱりと音がするくらい新しい。
もう嬉しくなって、見たことのある題名の本をどんどん籠に入れると重くて持ちきれないくらいになった。
帰って数えてみると新旧あわせて丁度40冊あった。
気持ちがふわふわとなるくらい嬉しかったが、図書館の本と違って自分の物だと思うと喜びが違う。

ただ読んだ後どうしよう、、、とチラッと考えた。


しばらく雑談しなかったので前置きが長くなった。

さて、この本「去年の冬、きみと別れ」ファンも多いと言う中村文則さんを読んでみるかなと思った。この作者の「掏模」でも「遮光」でもなく順不同でこの本から読んでも、初めてなら作風はわかるだろう。200ページ足らずだし、すぐ読めるツモリだった。
だが、てこずった。

ジャンルもミステリでは有るが、人物の絡みや流れはホラーかもしれない。重要な登場人物で精神的に安定してる人がいない。自覚があったりなかったり、やはりどこか狂っている、そういう人間の話なので、読むほうも何か不安定な状況に紛れ込んでしまう。

「君と別れたのは冬」なので、物悲しい別れとなると男女の別れか親子、友人、あたり、もしかしてラブストーリーかな、背表紙を見て思った。しかし帯を読んでみると凄い。それでも結局買ったけれど。

愛を貫くのは、こうするしかなかった。
 ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみこまれていく「僕」。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かをなくした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し真相は迷宮入りするかに思われた。だが――――。 

大筋は話せるところだけで帯に載せるとこうなるのだが。実は冬に誰と誰が別れたか、それもひとつのポイント。

ライター(僕)が一応主人公で、被告と会って話し(録音もして)真相に近づいていくと言うのは普通の進み方。そこを作者は難しい転開にしている。これが短いセンテンスの文章になって進行する。

取材も何も、カメラマンだった被告自身、自分がわかってない。チョウの舞う幻想的な写真が一時評判になったが、それを越える作品が撮れないでいる。それで撮影状況を作り殺人を犯す。
被告の理屈の多い芸術論や、現状をわかってない話に巻き込まれ、ライターも自分の位置が不明になってくる。その絡まった様子を作者はどんどん書いていく、被告は写真に取り憑かれて女性を焼き殺すと言う残虐な殺人を犯した、と回りも思い自分もそうだと思っている。蝶を超える作品を生み出すために、芥川の「地獄変」の迫力を現実の写真で試そうとしたと言う理由がある。

姉は、被告とともに養護施設の出身である。遺産があり食べるに困らない。姉を取材をするために遭いにいき、不思議な魅力に引き込まれてしまう。
ライターには恋人がいるが、姉の魅力に逆らえず、姉は暗に恋人と別れろというようなことを言う。
ライターまで迷わせるのね。

被告を取材している中でK2というグル-プが出てくる。被告もライターもメンバーで、そのな中に人形師がいる。
被告はその人形師が天才だといい、彼の作る人形は愛する対象をそのまま模倣するのではなく、愛している本人が作り上げた恋人の幻想(イメージ)を的にその特徴をデフォルメしている、それが天才と言われる所以でごく一部の人形マニアは、恋人に執着しすぎるという時点で既に精神にヒビが入っているが、その結果、依頼者は人形のほうにより愛情をそそぐようになる、と言う。

人形師の取材で、彼は人形を作って入るが、その後の出来事からもう手を引きたいと思っていた。人形が呼んだと思われる事件に、人形師は戸惑っているようだ。

ミステリだし大雑把なストーリーを書いたが、それでも作者の意図は最後までわからない。こういうのをどんでん返しと言うのだろうか。
病んだ人たちのドラマがこんな小説になるなら、ストーリーは混乱する。
それが意図なら少しは糸口をつけないと、読むほうはよほど注意しても混乱の中に埋まってしまう。

どんな面白い設定でも、多少は読み解けるくらいの正常な部分があってほしい。作者以外でも。
作者の中では全てが解決しているのだろうが。最後を読んでもう一度読み返すと随分明らかになるところも有るが、文字や文章だけで引っ張るのは、引っ張られるほうも力の込めようが無い。

面白いストーリーで、文章も嫌いではない。だがスッキリ解決してくれる病んでいない探偵はもう古いかもしれないが(一応気づくのは僕だけれど)、周りが皆おかしいと、方向音痴になりそうだ。最後まで読まないとわからないストーリーもある、だがそうでっても筋は通してあって欲しい。私の理解力が及ばなかったのかもしれないが。この作品が嫌いでない読者のお願いとしてでも。


人形師の薀蓄や、引き合いに出した「地獄変」はどうなのかな。無くてもわかりすぎるくらいなのに。
カポーティの「冷血」は象徴的でうまいと思う。

最後のイニシャルは読者と関わりないお遊びでしょうね(笑)
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😢「まぁ なんてことでしょう」 気が付いたらもう今日も終わりです🎇

2014-06-17 | その外のあれこれ
日曜日は中学のクラス会で、二次会や三次会、老骨に鞭打って、若い人たちよりもりあがりまぢた🌸
月曜日は恒例で、話し足りなくて、電話がガンガンなってました。
自分が暇だと人も暇だと思うなよ。
私は電話の合間に今日出す宿題をパソコンでポチりポチりと打ってました(真面目です)
そして、午後から文章教室ですが、駐車場が満車で、ポールギリギリに並べ、片輪は、危なそうな溝蓋に引っかけて走り込みセーフ🚗🚕🚙そこまでで、クタクタ~~~~~😇


でも、読むものは読みました。新刊と中古あわせて40冊買ってきて。
うち、ハードカバー2冊、文庫二冊、すみました。
また、なんか書いておかないとすっからかんの頭が綺麗に忘れてくれてまた読むはめになる、とわかっているけど、夕方になって図書館から特捜部Qがきた!!

カールさんも、アサドもローセも張り切っている?
久し振りだねぇ元気だった🚓 舞い上がりそうだ✈️
でも今日は忙しくてもう11時半か、お肌に悪いね、特捜部さんたち、明日にしましょう。
10部までは出るそうで、楽しみ🎈🎈

取り敢えず、pおやすみない 🌟💫💤






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「教場」   長岡弘樹   小学館

2014-06-15 | 読書




少し前に「陽だまりの偽り」「傍聞き」を読んで、好きな作家ベスト10になった。暖かい作風で種明かしも絶品だと思い久々に気持ちのいい読後感だった。



やっと「教場」を読むことができた。ふんわり暖かい作風だと言う先入感は読みはじめから少し違っていた。

警察官が勤務先が決まる前に入る警察学校が舞台だった。警察官の卵が受ける教育は、過去の遺物のような規律厳守の軍隊方式で問答無用の世界だった。

入学するとまず警官としての心得が叩き込まれる、平常の生活にはない規律で縛られた世界は、ゆとり教育で育ったいまどきの若者には耐え難い、厳しい訓練がある。
適正が認められなければ退学になる、警察として生き残れるかどうかの「篩」にかけられる場所であった。

訓練中に起きるエピソードが6話とエピローグからなる。

独立した短編のような6話は、学校内の行事や、訓練の様子などともに警官教育の中で起こる個人的な問題が書かれる。狭い校内なので、問題解決後はそれが校則関係ならば違反すれば退学しなけれならない。

職務質問は二人一組で練習するが、教官と組むこともある、これにも手順があり、相手の心理を読む想像力がいる、人間性も出る。読んでいて、なるほどこんなことも基礎はきちんと習うのかと納得した。

警官として向き不向きは有るだろう。しかし天職とは自分で作る以外にはめったに出会うものではなく育っていくものだとしみじみ思った。

職務質問は受けたことがないが、身に着ける基本的なテクニックは読み手にも雰囲気がわかる。職務質問での検挙率は高いそうで教えるのも気合が入る。
幸い現実では体験することは少ない、でも大切な仕事なのだ。
平凡な日々で育った学生たちが、緊張してこの授業に臨むが気もちはわかる。

こんな世界をよく書き上げられたものだ。警察や犯罪小説ではない。
狭い教場が舞台でも、スリルも、ミステリも、嫉妬もライバル心も 、復讐もある。

背後には教官の温情もある、この話は厳しい生活を潤すエピローグとして生徒にも読者にも心に残る。

友情も壊れたり繋がったりする。起伏に富んだとても面白い一冊だった。
身近なおまわりさんもこうして公務を身につけていたのかと思う。そんな発見もあった。








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「果断」 隠蔽捜査2  今野敏  新潮文庫

2014-06-13 | 読書

山本周五郎賞 日本推理作家協会賞


竜崎は、息子の不祥事で大森署に移動になる。
署長になっても、前例を引くまでも無くわが道を行く。部下たちはまごまごするが、困らせることが本意ではない。竜崎も少し譲り新しい任地は動き出す。

高輪の強盗事件で大森署でも緊急配備をしいた。ところが犯人たちはそれをすり抜け、先で待機していた機捜が身柄確保をした。
どこであっても捕まえればいいことだ。ではすまなかった。
友人の伊丹捜査部長から、管理官に手を回し穏やかに収めようとするが、勇みたって管理官が来るというので、緊張している署員に竜崎は言う。

「驚くことはない、向こうが無茶をいってきたんだ」
「所轄が方面本部や本庁に楯突くことはまずありません」
「警察組織と言うのは、上位下達が基本だ。軍隊と同じで、上の作戦を現場が滞りなく遂行することが第一だ。そういう意味では、所轄は、うえの指示に逆らったりしてはいけない。だがね、上が明らかに不当なことを言ってきている場合は別だ。方面本部の管理官の面子など、職務上意味がない」


近隣のパトロールに出ていた地域課の報告で、小料理屋で喧嘩が有ったらしい。開店も遅れている。
それが緊配に引っかからなかった犯人の一人か。
訪問しようとした係員に向けて二階から発砲された。逃げた強盗のうちのひとり、実行犯だろう。人質をとって立てこもったのだ。
強行犯係が来る、
先に捕まえた仲間が言うには、引き籠り犯は10発以上の銃弾を持っているという。

竜崎は署員のとめるのも聞かず現場に出る。

SITも出動、SATも出てくる。
大森署はSITの指揮下に入った。SITは人命を尊重し、時期が来るまで説得し調査し、解決しようとする。竜崎はSITの小平係長の指揮下に入る。
しかし犯人はまた発砲し、時間切れと判断して、SATが突入となり、竜崎は狙撃命令を出す。

犯人は射殺され人質は救出される。事件は無事解決。のはずだったが。

犯人が持っていた拳銃には弾が入っていなかった。

それについての情報は事前に確認した。その上での突入、狙撃命令だったが、空砲を撃った犯人を射殺したことは問題になる。

事件は混乱してくる。

そのとき、竜崎に酷く反感を持っているはずの戸高が、経験上なにか腑に落ちない点があると言ってくる。竜崎は再調査を許可する。




面白かった。竜崎の家では奥さんが救急車で運ばれ、家庭に疎い竜崎は困ってしまい娘や息子の助けを借りる。次第に家族のことを考え直す。人並みに妻のストレスに気が付いて家族を思い遣る気持ちが沸いてくる。


官僚の社会から話は主に地方警察の内部に移るが、竜崎のぶれない気持ちは健在であり、そこに家族の話も加わって、少しやわらかい風味が増してきた。

「SIT」は「捜査一課特殊班」の頭文字だそうだ。覚えやすい(^^)

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「隠蔽捜査」  今野敏  新潮文庫

2014-06-12 | 読書

20年の2月に文庫になって、22年の5月で23刷だから、ずいぶんたくさんの人に読まれているのを知った。古い本を出して来たので26年の今はもっと増えているに違いない。
今野さんの本を見ると裏表紙などに紹介がある、シリーズは5まで出ているそうで、よほど面白いのだろう。
いまごろ? そう、今頃やっと手にとってワクワクした。

東大法学部卒のエリート竜崎伸也という主人公は、変人だといわれている。彼は公務員の本筋通り、国のために奉仕し、国を守るために働いている。本質さえ違えなければ、面倒な縦横の付き合いなどは無用だと思っている。
長官官房で総務課長、身分は警視正なので多岐に亘る職務に忙殺されている。

埼玉で、暴力団員が射殺されたが、よくある暴力団員同志の揉め事だということになった。過去に起きた少年グループの女子高校生の、誘拐、監禁、陵辱、殺人事件の犯人グループのひとりだった。社会的反響の大きな事件だったので、被害者の過去は伏せて、内外に箝口令をしいた。
その事件が頭から消えかかっていた頃、埼玉市内でまた、射殺事件が起きた。
過去の事件との関係がクローズアップしてくる。

ところがまた三人目になる、過去の少年仲間が撲殺された。
被疑者は現職の警察官だという。これが知れると日本の警察機構の汚点になる。
解決方法を求めつつ、固く隠蔽されて捜査が進む。

一方、竜崎の家庭でも問題が起きていた。息子がヘロインの粉をタバコの先につけて吸っていた。粉も見つかった。さすがの竜崎も解決に迷う。
少年法が適用される年齢である、しかし身内の犯罪の責任を取らなければならない。
一直線に目指して耐えて来た今までの努力と、手に入れた地位をなくすだろう、そうなれば家族の将来が不安になる。

軽微な少年犯罪だから、簡単に揉み消せる、と同期で小学校からの敵のような友人が言う。
その友人は伊丹という。小学生の頃いじめられたことを竜崎は忘れられず、そのことをバネにしてきた。磊落そうに見えマスコミ受けのいい伊丹は、有名私大卒ながら今では、キャリアの、刑事部長になっている。
伊丹は事件についてなんとか内部で収めたいと言う。

同じように、息子の件ももみ消せと言うが・・・。



龍崎の本質、見識は組織の中では孤立することもあり、ときには周りの人たちを圧倒する。
反感や非難もまるで眼中に無い。公務員の心得、守るべき国民に対しての責任のみが彼の生き方である。、それらはじわじわと周りに染み込んで行く。
管理社会の中で縛られているサラリーマンにとってこう言う正論に沿った生き方は憧れである。憧れるだけである。建前もなく本音だけで通るのはまぁこの人くらいだろう。
現実では生きていけないなぁと思う。理解されるような事件も人間も見つからないのが実情だ。だからこの話は面白い。

そして、独特のキャリアとノンキャリアの厚い壁の前では、竜崎のいう、受験勉強以外の楽しみを犠牲にしてでも手に入れるべき道順は、まず東大に受かること。それもありなのか。
しかし、彼はそれだけではない何かを感じることのできる柔らかい部分が、少しずつみえてくる。そこがいい。


やはり、解説者や世評の通り傑作に違いない。おもしろかった。
シリーズは5まであるという、手元にあった2の「果断」まで勢いで読でしまった。続きを買いにいかねばp(*゜▽゜*)q 。
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「藁の盾」  木内一裕  講談社文庫

2014-06-10 | 読書




本を読んでいても、人物のイメージはあまり鮮明に沸かない。キャラクターの造形は言葉だけでは浮かんでこないことが多い。
これは映画化もされているしYou Tubeで少し見てみた。

配役を見て人物像がつかめたところで読んでみたが、設定がとても面白かった。

少女を残虐に殺し犯して捨てた犯人が出所してきた。間もなくまた一人の少女を犯して殺した。その子は大富豪の孫だった。
金を使って三大紙に全面広告を出す。

<この男を殺してください>
黒々としたバカでかい文字が踊っていた。
 その下に大きな顔写真と<清丸国秀 三十四歳>さらに<御礼として十億円お支払いします>と続き、<蜷川隆興>という署名とWebサイトのアドレス、携帯サイトのアドレス、フリーダイアルの電話番号。
 広告はそれで全てだった。


身の危険を感じて、清丸が福岡県警に名乗り出た。
検察庁まで送致しないといけない。
警護課から銘刈と白石が、捜査本部から奥村と神箸、福岡県警捜査一課の関谷を加えた五人が東京まで警護する。
しかし年のわりに幼い顔をした清丸は罪の意識はまるでなく、開き直って横柄なふてぶてしい態度だった。
引き取りに行った時は既に三度襲われ、殺されかけて傷を負っていた。殺せば十億円、彼が札束に見えてもおかしくない。
移送手段を選ばなければならない。
航空会社には断られた。ヘリは狙われる。
350人体制の県警の移送部隊に守られて、4WDの大型車に乗せた。だが反対車線は大渋滞、命を狙った車は突っ込んでくるはで、高速道路は無理だとわかった。
山口で新幹線に乗り換える。多目的室に清丸を閉じ込めて見張ることにする。

しかし銘刈は、安心できない。
清丸を狙うのは誰でもできる、特に銃を持った警察官、隙間なく取り囲んでいる警ら部隊、そして身近にいる5人も心から信用できない。

予想通り、様々な形で清丸が狙われ、ついに殉職者がでる。
一方この生き残りゲームは、犯人の残忍さと10億円の重みで人々は沸き立つ。警護する銘刈までが非難されることになる。

命と国費までかけて移送するのはなぜか。10億円は誰の手に入るのか。そういう類の本だった。


読み終わって、You Tubeを最後まで見た。
警護の銘刈と組む白石が女性だった(松島奈々子)がっかり。
銘刈の大沢たかおは安定感もあってイメージどおり。
清丸の醜悪なところ、藤原竜也は曲がった悪を憎憎しいほどうまく演じていた。彼はこんな作品で良く見るように思うが、無邪気な青年役も似合う気がする。

ドラマでは撮影も制約があるだろうが、原作を離れて見れば面白かった。


移送の行程は、緊張感がある。銘刈と清丸はどうなるのか。
こういうストーリーは乗りやすい。
小説としてどうかよりも、場面の進行に乗って読んでしまう。
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「初秋 」   ロバート・B・パーカー  早川書房

2014-06-08 | 読書


  随分前に同級生にこの本を薦められたことがある。すっかり忘れていたが、すずらん本屋堂のオススメで思いだした。

映画「海辺の家」に似た父と子が家を建てる話のように思ったが、スペンサーと、親に見捨てられた子という設定は少し違った。

両親が自分の都合で、押し付けあったり 、取りあったりする家庭の中で育った息子は、当然普通でない。

そこに関わりあったスペンサーという探偵は、数ある探偵の枠にははまらない。さまざまに個性的な探偵とは一味違った持ち味がある。スペンサーはごく普通の、真っ当な探偵で、私生活に乱れもない。体を鍛え、調理をして、生活はきちんと管理している。

それでも、彼の生きている世界はなかなかくせのある環境で、友達もそれなりに裏があったりするが、その中で智恵を働かせわなを仕掛け、それでも泳ぎ切っていると言うのが、スペンサーシリーズの面白くいいところだ。

そんな彼が、生きることに無関心で、周りに目もくれない少年をなんとか自立させようと思う。嫌な親に目も心も閉ざして、世界は自分の中だけだった15歳の男の子を引き取り、育てようとする。

離婚した両親には金に絡んだ思惑もあって、未だ金づるになる息子を手放そうとしない。
そこでスペンサーが探偵業を駆使して、両親の弱みを握り有無を言わさず追い詰める、なかなか胸のすくところ。

少年は、家を建てようというスペンサーに無関心だったが、彼は強引に自分の生き方を教え込む。男が未だ男らしかった頃の、男らしさを教え込むのが面白い。
しかし少年も、未だまっすぐなところが残っている。おしゃべりなスペンサーの話には難解な詩や文章が混じる。それを「どういうこと?」と聞くのがまたほほえましい。
少年の好奇心は、これも前向きでほほえましい。


家が建ち、少年は心身ともに成長する。背が伸び筋肉がつき若者らしい将来の目標も持つ。

読みやすく、おせっかいなスペンサーの面目躍如、感動的な一冊だった。
コメント (6)
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