空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「片眼の猿」 道尾秀介 新潮文庫

2012-10-29 | 読書



細かく文字の詰まった本を読んでいて疲れたので、ぱらぱらとめくってこの本に換えた。
最近の文庫は、以前のものに比べて1ページは二三行少ない、一行の文字数も、二三文字減っている。その分文字が大きくなって紙も少し厚めでページも少なく、気楽で読みやすい。
買うには躊躇するが借りる分には、気分転換になっていい。
本代を、乏しい小遣いから捻出していた子供時代は、文字がぎっしり詰まっていて分厚いものが嬉しかった。
重いので転がっては読めない、机に座って支えがあって読めるようなものだった。
このように会話も一行になっていると、ますます嬉しくなる。
これなら読み終わるのもすぐだろう、中身は読んでみてからとして、道尾作品はあまりはずれが無かったし。

* * *

主人公の三梨幸一郎は、冬はキャップで耳を隠している、キャップの無いときは大きな縦長のヘッドホンをいつもつけている。

遠くの音を聞き分ける才能で、探偵業をしているが、住んでいるローズ・フラットの家賃は払えるし部下を一人雇うくらいの収入はある。

通りがかりに聞いた話から、電車の中で不審な行動をする女に目をつけて部下に加える。

彼女は悪徳だという評判の興信所に勤めていた。実入りのいい裏の仕事を捨てて、なぜかあっさり承諾して仲間になった。

三梨は一年同居した秋絵が、7年前に自殺したことが心の傷になっている、採用した女は冬絵といった、名前を見ても縁があったのかもしれないと三梨は思った。

引き受けた仕事は、大手楽器屋の会長からで、競争相手がどうも新製品のデザインを盗んでいるらしい、という調査依頼だった。成功報酬も高い。

夜、聞き耳を立てながら人気の無い時間に、冬絵を忍び込ませて証拠を探すが、手がかりが無い。しかしそのあとすぐ、足音がして建物の中で殺人があったような物音と声を聞く。

通報で殺人が見つかり、警察が捜査を始める。三梨はその隙を狙って証拠集めをするが、いろいろと不審な出来事に思い当たる。

冬絵はなぜ二つ返事で承知したのか。

命日に参った秋絵の家で両親が死因に疑いを持っていることを知った。

引き受けた調査を断ると、あっさり認められた。

三梨は忍び込んだ楽器屋のビルで経営者のヤクザたちに暴行を受けた。

瀕死状態のとき、ローズ・フラットの住人が駆けつけてくる。中には地下のスナック「地下の耳」のマスターまでいた。
瀕死に見えたが、マスターからもらった人形が三梨を助け、三梨はそれでも壁際にあったデータサーバーを持って、一行は這う這うの体で退散する。

このデータがさまざまな疑問に答えてくれる。

だがそれだけではなかった。

* * *

読み始めは、道尾さんもライトになったのか。と思いながら小見出しの3くらいまで読んだ。
止めないでよかった、そこからが加速度的に面白くなった。
そして急転直下、命拾いをするところから、ローズ・フラットの住人(お爺さん、お婆さん、神様に脳をいじられた青年、特徴のある双子、過去が暗いらしいマスター、気のいい部下)のいわくのある話が、それまでの小出しにされた筋書きにつながり、冬絵のことまでうまく収まる。準備怠り無かった、書き出しまで解決する。

意識的なぼかしや消化不良になりそうな部分もあるが、この本は、読む前にネタばれの感想文は読まないほうがいいと思う。

冬絵さんについてはもう少し意外性もあっていいのではないかと思うが。犯人当てのミステリではなく、ストーリに巻きこまれて、流されて、ついに本音が聞けると思えば、理屈ではないところが面白い。
音楽の選びや、譬えに世代の違いを感じるところもあるがそれは態勢に影響は無い。
読みやすく面白かった。



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「特捜部Q -檻の中の女-」 ユッシ・エーズラ・オールスン 早川書房 

2012-10-23 | 読書

  

最近まで知らなかった、卵色(薄黄色)の紙のポケミス、こんなことを言うと笑われるかもしれないが、本屋さんではなんだかお手軽な製本だと思った、でも三冊しか読んでないが、中身が優れものぞろいだと知った。

何でも表面を見ただけで軽々しく考えるものではない、ミステリ初心者、この本を読んで選択肢が広がるなぁと嬉しくなった。初めて奥付を見たら、No.1848。
ということはそれだけ発刊されているのだろう。
昔なら1から挑戦したのに、、、読書力が落ちてからじゃ遅いな。
これも面白かった、特捜部Qシリーズの1作目。
最近、やっとヴァランダー警部の案内でスウェーデンの地理が大雑把にがわかりかけているが、

今度はデンマーク。

* * *

コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補は、捜査中に同僚一人が射殺され一人は脊椎損傷で入院した。

自分も額に傷を負ったが、その後遺症で無気力状態、すっかりやる気をなくしていた。

抜群の捜査力を持っていたが、殺人捜査からはずされ、地下にある新設の「特捜部Q」を任される。

未解決事件を扱う部署だと、聞こえはいいが、れっきとした左遷で、警察内でも誰知らぬ者はない。

ガラクタの散らばった部屋を与えられて、本人はかえって気楽なところもある。そこに助手のアサドが来る。

何かいわくのありそうなアサドだが、奇人変人振りを別にすれば、几帳面で頭脳的でもあり、役に立つ人物だった。

二人は次第に信頼関係が築かれてくる。

 

やる気のないカールの前に積み上げられたファイルを見て、アサドが事件を拾い出してくる。
5年前に弟を連れ、ドイツに向かった船から飛び降りて、自殺したといわれている、ミレーデ・ルンゴー事件。

死体は発見されていなかったが、おざなりの捜査は打ち切られていた。

彼女は優秀で、その上チャーミングな笑顔で政界では人気者だった。
しかし、5年前、船上にいた彼女は誘拐され、隙間の無い厚い壁で囲まれた「与圧室」の格納容器の中に監禁されていた。

一年たって誕生日が来ると気圧が1ずつ上げられ苦痛が増していく。
なぜこんな悲惨な目にあうのか、理解できないままに暗闇の中で耐えるミレーデは、5年間をどうやって生き抜くのか。

誘拐された2002年からのミレーデの話と、2007になって再調査を始めた「Q」の捜査の話が進んでいく。

紆余曲折を経て、カールたちはミレーデにたどり着けるか。
彼女が生きているという確証は無かった。


そして、誘拐したミレーデをモニターで見ている犯人の、狂った憎悪は次第に増幅していく。
話は現代と交互に、壮絶な5年間をたどっていく。

* * *

地理は、二作目に持ち越すとして、読みはじめで、勝手に組み立てた犯人像に、だんだん近づいていくのでますますわくわくした。
サイコ・ミステリというか薄気味悪いところもあるが、最後は感動的で、ホロリとする。

 

 


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石川県 尼御前崎の海

2012-10-22 | 日日是好日


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「シャドウ」 道尾秀介 東京創元社

2012-10-17 | 読書




図書館に返そうとして、あれぇメモしたかな?
忙しいと頭まで混乱する。

このごろまた読み始めて止める本が多くなった、評判の本でも、好みはそれぞれだと実感する。
娯楽小説・エンターテインメントという言葉は、楽しむ読書のことだと思っていたが、楽しみ方もそれぞれだといまさらながら思う。途中で読むのを止めるのに、いささか忸怩たる思いがあるので、自分への言い訳だ。

余談になるが、若いころ、初めて井上靖の「満ちてくる潮」という大衆小説と呼ばれる本を読んだ。
どういう経緯で手に入れたのか忘れたが、井上靖は詩人だと思っていたのでいささか面食らった。そのとき、浮世離れ気味の私は、詩人は小説を書くのだということにやっと気がついた。この恋愛小説は初めて出会った娯楽小説だったと思う。面白かったが、そのころの印象では軽い作品だと感じた。
その後「敦煌」「楼蘭」「天平の甍」などを読み、井上靖が詩人であるのはすばらしいことだと思うようになった。肩書きにこだわるわけではないが、ノーベル賞候補でペンクラブ会長でもあった方に失礼なことをした。
そして、現代詩人だと思っていた伊藤桂一さんも「蛍の川」で直木賞、清岡卓行さんが「アカシアの大連」で芥川賞、あぁ詩人はすばらしい作家でもあるのだと気がついた。
その後、ジャン・ジュネが詩人で泥棒であったことも知った、ひとつのことに気づくと関連して理解が深まる、当然のことだけれど。


退職して、ミステリが面白いことに気がついて読み始めた。
ミステリ初心者なので、知っていて当然の有名な作品も知らないで、今頃読んでいるのかとあきれられることもしばしばだが。
昔の探偵小説と違って、ミステリにもジャンルがある。言い切ってしまうのもどうかと思うけれど、長くなるので、勝手にそういうことにしておく。

この「シャドウ」は、よく出来たミステリアスなストーリーで、主人公の凰介は小学六年生である。「死」というものが理解できないながら、次々に周りで起きていく「死」に翻弄されつつ、大人が「死」をえらんだ意味にたどり着く。
今の小学生は知識の点でも世間知においても、このくらいの思考は出来るものだと思う。それだけに彼の悲哀がよくわかる。

面白かった。

道尾さんの作品は「向日葵の咲かない夏」と「光媒の花」を読んだ。解説にも出てくる有名な「向日葵の咲かない夏」は後半が少し安易にまとまった感じがしたが、この「シャドウ」は構成も、登場人物も、読者をミスリードさせるストーリーもよく出来ていた。

登場人物の書き分けが、人物ごとに独立した見出しになっていて、時間的に重なることもある。それぞれ本人にしかわからない込み入った事情が、出会って重なるとき、少しずつ謎が解けていく。
構成が優れている。

* * *

主人公、小学校六年生の凰介は、母を癌で失った。
通夜に父、洋一郎の友人で院生の同窓生だった水城とその妻が来た。母も水城の妻とは大学時代の同級生だった。
子供の亜紀と凰介もクラスは違うが、同じ学年だった。
水城は医科大学にある精神医学の研究室ではたらいている。付属の大学病院神経科の医師でもある。
その水城の妻が、夫の研究室棟の屋上から飛び降り自殺をする。
夫婦は水城の嫉妬から長く不和であった。そのことが自殺の原因となったような妻の遺書が見つかる。
折悪しく、娘の亜紀も交通事故にあう。
父の洋一郎の神経は総合失調症に侵されたことがあった、それはすでに治ったものと思われていたが、最近になって不審な言動を繰り返し、凰介には、また病気が再発したように思われた。
父の病気のことを、信頼している教授の田地に相談に行く。

* * * 

凰介の見る不可解な夢に暗示されるような出来事もある。

亜紀の秘密の過去に洋一郎はかかわっているのだろうか。

このあたりが旨い。

それぞれの過去と現在が、父親の病気に関連して展開する、後半は特に面白い。




最近の読書メモ一覧表
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「水滸伝 一 曙光の章」 北方謙三 集英社文庫

2012-10-15 | 読書




各所に暮らしていた豪傑やさまざまな天才たちが集って体制に反旗を翻す、王国を建てる、仇を討つというような物語が好きで、類するものを読んだり映像で見たりしてきた。
「南総里見八犬伝」もそうで、考えてみれば、仲間が増えてくる経緯や、それぞれの個性や育ってきた歴史が、ひとつの物語に縄を綯うように、カラフルな紐を組むように次第に太く強くなっていく構造が楽しめるということでもある。

赤穂の浪士がそれぞれ辛苦の中で流浪していても、行き着く先がすでに決まっていても、毎年同じ様なドラマになっても飽きないように、この種の物語は、サイドストーリーを含めて楽しむことが出来る。

この本を読んでみようとした切っ掛けは
最近のドラマで「孫子の兵法」「孔子」「三国志」を続けて見たからで、特に三国志は膨大な予算のせいか見ごたえがあり、孔明が消える「五丈原」で終わらず「司馬懿」に政権が移るところまで見せてくれた。次々に英雄が病に伏し、ついに老いて亡くなっていく、どの国でも、誰にしても人間として生まれれば、時には勝てない現実が、自ら進んでであっても、闘いに明け暮れることよりも、さらに残酷に思える。

アニメの「銀河英雄伝説」が面白かったのと同じように、金庸の「射雕英雄伝」など、中国、香港映画なども娯楽を求めて、見る機会があった、かって小学生の頃、少年少女向けの小説で読んだ「水滸伝」を、気の向くままに北方さんのもので読んでみようかなと思った。ほかに気になる本もあって何冊も併読しているので、やっと「一」が終わった。



【前巻までの梗概】より

中国,北宋末期。腐敗混濁の世を糺すために、済州鄆城県の役人・宋江は檄文を書き、同志を募る。その檄文を持って、花和尚・魯知深は全国を巡っていた。最初の同志は、禁軍の豹子頭・林冲、放浪する武松、青州の花栄、鄆城の雷横、江州の戴宗である。
 一方、済州東渓村の名主・晁蓋も呉用らと世直しを計り、兵を養うとともに、慮俊義に闇塩の道を作らせていた。蜂起の日のための財源である。
 禁軍の武術師範・王進は上司の高俅と衝突して、叛乱の嫌疑をかけられる。老母とともに開封府から逃亡した王進は、華州史家村にたどり着く。そこで、九紋竜・史進に武術を教えたあと、子午山に籠もって修行に励む。史進は少華山を拠点にして、朱武、陳達、楊春と官に反旗を翻した。
 林冲は、禁軍監視官の李富に疑われ、獄に落ちる。過酷な拷問にも沈黙を守り、滄州に流罪となった。妻が凌辱の末に縊死したと聞かされた 林冲は、絶望の底から這い上がり、医師の安道全、盗っ人の白勝らとともに滄州の牢獄を破り、柴進のもとに庇護される。
 梁山湖に浮かぶ山寨には、王倫を首領とする一団が籠って、官に反旗を翻している。
しかし王倫はすでに世直しの志を忘れ、ただの盗賊集団になり果てていた。宋江と晁蓋は、湖を見下ろす丘で出会い、血盟を誓った。そして、叛乱の拠点として、山寨を奪うことを決める。--。


全国を行脚して同志を募る魯知深でさえ信頼できる同志を見抜くには時間をかけている。心を許せる友人もおいそれとは出来ないものだ。
中でも王進が天才的に武術に長けた史進(九紋竜)を鍛え、恵まれた才だけでなく、傲慢な史進に武術の真の意味を教えるところがいい。その上、親に捨てられ野人のように育った男に、名(飽旭)を与え人間らしく育てて行く経緯もいい。
朱貴の抜けめのない商人振りや、青燕という蘆俊義の従者も得体が知れない、悪役の李富、大将の権限をふりかざす高俅らとどう関わり、梁山泊の集団がどのように形を成すのか、豪傑たちの動静を期待して、たのしみ。
 

 

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青山高原で

2012-10-14 | 日日是好日


作成が遅くなりましたが、青山リゾートにあるハーブ園です







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「幸福な朝食」乃南アサ 新潮文庫

2012-10-12 | 読書



いつかどこかで見たか聞いたかした記憶があるので、読んでみた。

平成8年に文庫になっているが、その年に直木賞を受賞しているので、その関係でデビュー作が文庫になったのだろう。

乃南さんの作品は最近読んだ「花散るころの殺人」が、面白かった。これは題名もあまりどぎつくなく読みやすそうだったので借りてきた。

* * *

沼田志穂子は美しいといわれ、自分でも容貌には十分自信を持っていた。将来は女優になると言い切り、高校卒業と同時に上京して劇団に入った。

ところが運の悪いことに、彼女にそっくりな柳沢マリ子という女優が一年先にデビューしてしまっていた。
志穂子のスタートはマリ子のそっくりさんから始まり、何をしてもどこに行ってもマリ子の影から出ることは出来なかった。

プライドを捨てず、マリ子に負けないと言う自信で、次々に劇団を代わり、チャンスを探すが、彼女に機会は巡ってこなかった。

30半ばになり、業界で暮らしているうちに何人かの男とも付き合ってきたが、今はマリオネットを操る人形使いになっていた。

人形遣いとして経験も積み、腕は認められてきたが、やはり夢は捨てきれないでいた。
その頃、彼女に憧れる後輩の弓子と、6畳と小さな台所のあるアパートに住んでいた、貧しい暮らしの中で、家事も不得手な志穂子は、献身的な弓子の手料理をさほどありがたくも感じないでいた。
志穂子が付き合っていた男の子供を妊娠した弓子に激怒して、アパートを飛び出し、帰ってくると由美子が出血し、その血の海の中で死んでいるのに気がついた。

志穂子はまた一人になった。人を寄せ付けない雰囲気はますます硬くなり年相応な僅かな衰えが見え始める。そこにまた彼女にあこがれる広美が現れる。

志穂子は編成替えで新しい人形劇が始まることを知る、主役の人形遣いになるためにディレクターと関係を持ち採用される。
そして、彼女の使う人形のアテレコをする新進俳優、良助と知り合う。

良助が大物女優になったマリ子に近づいているのを知り、ある計画を思いつく。
清純派女優として守られたきたマリ子を引き下ろす志穂子の計画は成功して、新進俳優だった良助にチャンスを与えた。

だが志穂子に運が向いて来る訳もなく、良助にも疎まれるようになる。

良助は健康的な広美に惹かれ、二人で結婚の約束をする。

志穂子は仕事は続けているものの、精神的に壊れていく。

弓子のように子供を生みたい・・・。
そして彼女は妊娠する。

部屋は子供を迎える準備が始まり、すっかりカラフルな幼児部屋に変身する。
子供が生まれる前に仕事の整理をし、仲間に妊娠を告げて祝福され、幸せだった。
元来食の細かった志穂子は料理もし、よく食べて、育児書を読みお腹の子に話しかけ、ミカという人形と出産の日を待っていた。

一方、父親は自分ではないだろうか。

付き合いのあった男たちは穏やかではない。

良助と飲んでいて、マリ子は志穂子の姦計にはまったことに気がつく。ついに良助もマリ子にひざまずき取りすがり真相を話してしまう。

しかし、そのころ、いつものように志穂子はお腹の子と、戻ってくる弓子を待っていた。

* * *

デビュー作だが面白い。さすがに女性の心理が人間臭く、うまく書かれている。
志穂子は容貌に恵まれただけに、いつまでも夢を捨てきれない気持ちがいつか、歪んでいく。
うまくいけば、いろいろな要素が絡んでいるので飛び切りの作品になっていた。でも残念ながら、シーンの切り替えが説明不足で、志穂子の心の揺れに緊迫感が足りない。
壊れていく心の流れが後半はメインになり、その原因も理由もわかるし面白いが、読むとなると少し物足りない。
なぜか肝心の部分が薄味で、残念だった。サイコっぽい。ホラーかな、とどちらとも言えない味があるが。

と言いながらも、この作品ストーリーはが面白いので読んでよかったとは思う。



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「楠の実が熟すまで」 諸田玲子 角川書店

2012-10-08 | 読書


京都に近い楠葉村は、今は枚方市樟葉という名前になっているが、我が家からごく近い町で、今は駅前も開発され、モールも高層マンションも出来た。
子供のころ一度来たことがある。その頃は単線電車が走っていて、無人駅で淋しいところだった。
馴染みの名前を見たので予約してみたら、すぐに連絡があった。

帯には
密命を受け、京に潜入した、女隠密!
武家対公家、静かな闘いの幕が開く---
女隠密利津の運命は?
これは面白そうだ

* * *

楠葉村の郷士、中井家の長男清太夫は秀才で、江戸の要職についていた。

帝のおわす京の公家から上がってくる費用が、幕府の財政を圧迫していた。
不正出費の内情を探る隠密御用という内々の役目で京に来た清太夫は、妹の利津を、御取次衆高屋康昆に嫁がせ、高島家にあるという裏帳簿を見つけることを命じる。

婚礼の日、康昆の息子の腹痛を助けて、高島家の信頼を得た。

京では三人が次々に惨殺されると言う事件も起きていた。

こんな中、期限は「楠の実が熟すまで」、、、秋には調べをつけなくてはならない。利津はそれまでに、無事に高島家にあると言う帳簿を見つけられるのだろうか。

楠の花が咲き、青い実がなり、少しずつ熟し始める。

期限が迫るころ、夫はなにかを悩み利津も苦しむ。

* * *

面白い設定で、登場人物もわかりやすい。 高島家には、開かずの間のような秘密の部屋がある、それが謎めいている。

子供もなつき、夫は思ったような公家のうりざね顔ではなく男らしい利津好みの男だった。

途中で、この夫婦のラブストーリーを盛り上げる舞台装置なのかと思った。

入り組んだ金の流れも案外あっさりとしているし、高島家の謎めいた、妖しい蔵の中にも入ることが出来る。
座敷牢のような離れも台風の日に、弟がいるというのがわかる。

利津の、役目と夫への愛情の板ばさみ、ということもあるが、隠密というには、彼女は育ちがよく、
案外周りの情に流されていく。利津の行動には多少緊迫感が薄い。

淀川べりには今も大楠が旧街道沿いに生えている。村の名前のように楠が多かったのだろう。
土師氏も住んでいて、土器が見つかることも多く、今でも楠葉では建物の基礎工事の時に茶碗のかけらが出て、史跡調査のために工事を長く中断することがある。
身近な土地で、昔の風景もすぐに思い浮かぶような話が、読みやすくより身近に感じられた。



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「死ねばいいのに」 京極夏彦 講談社

2012-10-06 | 読書



たとえば、京極堂シリーズとか巷説百物語シリーズなど、作者の長い薀蓄や、初めてお目にかかるような妖怪変化についての熱い興味や知識に出会っていると、今回のような、ダイレクトに発射されたような題名にショックを受ける。
これはどうにかして読まねばならない、でも、もしかしてイメージが崩れでもしたら。
どんなイメージかといわれても困るけれど。そのほかには「嗤う伊エ門」しか読んでないけど。
でもファンであってよかった。実に面白かった。
何気なく過ごしている日常の、隠れた深い心の底をあからさまに見せられるような作品だった。

話はそれるが、いつかテレビで言っていたが、大阪人の喧嘩で一番恐ろしいのは、相手が平静な態度で「それから」という時だと。
手も出さず、大声も出さず、「それから」「それから」という。
「舐めとんのかぁ」「それから」「殴ったろか」「それから」
果てしなく突っ込まれ、振り上げた手を一度は振り下ろしても、二度目は空しくなるような問いかけ。
それからって?ええと?と自問し始めたりする。振りかざしたこぶしがいつの間にか喧嘩の原因よりも言葉の迷路に振り下ろすことになりそう。ということで。
そういったような物語なので、これも一気読み。

* * * 

独り暮らしの亜佐美という女が殺された、首を絞められていたので殺人事件だった。部屋は荒らされてもいなくて、抵抗して暴れた様子も無い。警察は手詰まりだった。
ケンヤという若者が、アサミについて知りたいとあちこち訪ねていた。

一人目はまずアサミ上司から始まって6人目で終わる。彼はアサミとはどんな女だったのかを知りたがっていた。

アサミ死にましたよねー
亜佐美が死んだのはショックだったなーと。
だから、どうだと言うんだ。
「俺別に悪気ねぇし、でもこういう人なんすよ自分。あんたのこと責めてる訳じゃねぇすよ。ただ、話聞きたいって言っただけですから。そんなにいやならいいっすよ」
と言い、また、彼の自己紹介風で言えば
「好きなこととかねぇし。有名になりてぇとか金欲しいとか思わねぇし。人と比べてどうとか、そういうのもねぇし」
「俺、頭悪いしもの知らねぇし、」というようなことをいいながら質問する。

二人目は、隣の部屋の女、同じ派遣先で働いたこともあるという。彼女はアサミはいい子でもてていた、というような話をする。

三人目は、ヤクザで、母親が借金のかたに20万でおれの兄貴に売り、10万で買った。アサミは俺の持ち物だった、DVといわれてもいいが殴ったときも、この暮らしがアサミは幸せだといっていたという。

四人目は母親で、まずまず裕福な家庭で育ったが、20歳で妊娠して出産、子供のアサミは母親が育てた。懐いて可愛い、いい子だったという。

五人目は担当警察官。

マズいんすかね。尋き回んのは---
「だって不謹慎だろうよ。娘さん殺害された家に行って、見ず知らずの君が殺された娘さんのこと根掘り葉掘り訊いたりしたら---
怒るだろう。それでなくたって哀しいのに、殺人だぞ、しかも未解決だ。怒られなかったか。」
と正攻法で言いきかすが
「何度言ったらわかってくれるすか。俺、頭悪ィし態度悪いしもの知らねーし、学歴も免許もねーし、学習もあんまりしねーから、まず採用されねーし、されてもすぐクビになるんすよ。客と顔見知りになる程、耐久性ねーってか」
「なら何だ」
「だから友達っすよ   云々」

とストレートこの上ない質問がつづいているうちに、関係の無い自分の不満を話したくなるような雲行きで、とうとう日ごろの鬱憤までしゃべりだす。

どの人も、アサミの話から愚痴になり、現実は自分の思い通りにいかないものだという、そこでついに、ケンヤは
-----死ねばいいのに-----
といってしまう。

六人目がキーマンで、質問を受けるケンヤのその後の生き方になる。
そうだったのかと。

* * *

読んでみてください。
ニートとフリーターの違いがわかりました(今頃だけど)


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西澤保彦 「身代わり」 幻冬舎

2012-10-05 | 読書



これは前作の「依存」に続く作品で、メーンキャラクター(だそうだ)の四人の学生と、前作の顔見知りの警官が登場.
少し前の経緯などをたどりながら読まないといけない部分もあるが、発行順でなくても新しい事件にはついていける。
短期間に起きた話だが、前作の4人、目撃者、警官、被害者、被害者の親族など、登場人物が多い。
「身代わり」ということでそれぞれの関係を整理しないと、ストーリーが先滑りして、読み直さないといけないこともあった。

     (ニックネーム)
辺見裕輔(ボンちゃん)国立安槻(あつき)大学生
曽根崎洋(ソネヒロ) 死亡
石丸尚之(シシマル)   
高瀬千帆(タカチ)    
匠千暁(♂)(タック)  
羽迫由紀子(ウサコ)   
(コイケ)        
高良日南子(ナコorヒナ) 
飯野ひなた(ヒナ)   
(ハヤタ隊員)      
贄川(ニーチェ)     

鯉登(こいと)あかり 妊娠死亡  藍香(アイキョウ)学園
       母 直子
       父 一喜 

芳谷(はがや)朔美 死亡 藍香(アイキョウ)学園図書館司書
瀬尾朔太郎  朔美の婚約者

盛田清作   目撃者
       妻操子(みさこ)

三津屋怜 4月に結婚

七瀬  刑事 
平塚  〃
佐伯  〃
鶴橋巡査部長 鎌苑(カマクサ)交番
明瀬(みょうせ)巡査 鎌苑交番 死亡

 
<居酒屋 さんぺい>店主セリさん
常与神社
名理(ナトリ)家
酒屋<すが>

***

8月17日 夏休みも半ば過ぎ。夏恒例の「飲み会」が終わり、二次会になだれ込むところが、ソネヒロとシシマルが抜けた。

ソネヒロは会場(しけた居酒屋)を右手に折れて、結構先にある公園で、殺された。

帰宅拒否症で残業の後、必ずベンチで時間調整をする盛田は、自宅では禁じられているタバコをくわえたまま、近くで男女の争う声を聞いた。その後逃走する女を暗闇越しに目撃した。

しばらくして、藍香学園学園二年生の鯉登あかりが自宅で殴られ首を絞められて殺害された、遺体のあるリビングに巡査明瀬の死体もあった。犯行時間に4時間の間があった。

鯉登あかりは妊娠3ヶ月だった。彼女は年のわりに言動も大人びて人気があり、特に図書館司書の芳谷朔美になついていた。部屋に入り浸り、自作の作品「身代わり」を読んでもらって指導を受けていた。
だが芳谷朔美は玉の輿だと噂の許婚者と、近々婚前旅行に出ることになっていた。鯉登あかりとの間の不仲説がひそかに流れてはいたが。

鯉登あかりは婚約者とも顔見知りだったが、殺されたとき、芳谷朔美は旅行中で完璧なアリバイが有った。

この二つの事件のつながりも証拠も無いまま日が過ぎていった。
ところが帰国した芳谷朔美が殺され、「天狗つり」という呪いの儀式を行えば、霊験あらたかだと噂の、常与神社の境内に遺棄されていた。

国立安槻大生4人と、それを取り巻く面々が推理をたくましくする。
刑事たちはその推理を参考に情報を整理分析する。
ひそかに(こんな捜査状況を漏らしていいのだろうか)とも思うのだが、馴染みの彼らの話す推理は現実味があり捨てがたい。
そして、理解不能に見えた3つの殺人事件は、何とかつながり、解決の光が見える。

* * *

という読んでいても先が見えない事件で、その上読みづらい名前や地名が出て、最初は少しイラついた。
上のように書き出してみると、事件とのつながりがよくわかる。
事件としては単純だと思うがこういう風に繋げると作者も只者ではないといえる。
有りそうでなさそうな、犯人の心理や方法など、小説だから納得できるという部分も多いが、特異な事件にはそうたびたび遭遇するものではない。となればちょっと無理のある展開も作者の意図したところで、事実は小説よりも奇なり。殺人者の心理に巻き込まれ共鳴すれば、こういうことも起きるかもしれないが。
パズルのようなストーリーに惹かれて読んでみるのもいい。頭の疲れていないときに。



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「神去 なあなあ 日常」三浦しをん 徳間文庫

2012-10-03 | 読書

とても面白かったので、途中で止められずに読みきってしまった。
宮崎駿さんが二度読んで、一度目はアニメにしたいと思い、次はやっぱり実写かなと思ったとか。
それが噂にしてもよくわかる話で、日本的な風景の中に、受け継がれてきた山の生活や、変わらない習慣、懐かしい祭りや季節の行事、過疎地には今なお残っている心温まる人のつながりが書き起こされている。

* * *

高校を出たら、まぁ適当にフリーターで食っていこうと思っていた。

名前の勇ましい、平野勇気。卒業後もこうしてだらだら過ごす予定だった。ところが、式が終わった途端、担任に

「おう、平野。先生が就職先をきめてきてやったぞ」
「はぁ?」っつったよ。「なんだそれ、冗談じゃねえよ」


家に帰ると、母親も


「着替えや身の回りの品は、神去村に送っておいたから、みなさんの言うことをよく聞いて、がんばるのよ。あ、これはお父さんから」

と餞別と書いた封筒に3万円が入っただけで、あれやこれやの脅しもあってすごすご家を後にした。

神去村から屈強な体躯のヨキ(飯田寄喜)が迎えに来ていた。携帯は途中で圏外になるは、山の奥へ奥へとトラックは走り続けるし。杉山は頂に薄く雪をかぶり、うっそうと茂っているし。
そんな神去村は、人が行き会っても挨拶は「なあなあ」で「なあなあ、だからなあなあ」で通じるようなのんびりした、のどかな村だった。

そこで山仕事を仕込まれ、逃げ出したが連れ戻され、観念して、一年たった。
掌の豆が厚くなるころには、気心の知れたグループの一員になっていた。

冬の枝打ちがあり、整地したあとには植林が、伐採、運び出し。山の木々育てるこまごまとした手順に、戸惑い叱咤され、助けられて育っていく「勇気」の日常が彼の言葉でこっそり綴られていく。


林業を今も受け継いで、守っている人たちの心意気や、職人芸を極めた高い木登り、枝打ちを仕込まれ、チェンソーの扱いにもなれて、山の持つ魅力に捕らえられていく。

「勇気」の心身ともに、人間として豊かに育っていくさまが、過去も未来もあまり変わりない、ゆったりとした「なあなあ」生活に見えてくる。
山の匂いや木々のざわめき、季節の花や、秋の実の輝くような美しさ。女が料理を作り男は飲んで踊る祭りの楽しさ、もある。
時には大きな山鳴りを聞き、山火事を消し止める、小さな出来事に「勇気」は生きていることが肌で感じられ、山の呼吸が彼のものになっていくのがよくわかる。


45年ぶりに伐りだす大木を、そりのように並べた木材の上を山頂から滑りおろす。それに乗って恐怖の山くだりを体験をして「勇気」は仲間に認められる。このダイナミックな描写が盛り上がって、読んでいても心が躍る。

登場人物もいい。年寄りも味がある。Uターンした美人の教師は親方の妹で花を添えている。
険しい山道をモトクロス並みにバイクをのりまわし、勇気を鼻の先であしらっていたが、一年で随分態度も和らいだ、希望があるかもしれない。

まだまだ神去村のこと、ここに住むひとたちのこと、山のことを知りたいって思うんだ。
 たしかなのは神去村はいままでもこれからも、変わらずここにあるっていうことだ。
神去村の住人は「なあなあ」「なあなあ」っていいながら、山と川の木に包まれて毎日を過ごしている、虫や鳥や獣や神様、神去村に居るすべての生き物と同じように、楽しく素っ頓狂にね。
 気が向いたら神去村に立ち寄ってくれ。いつでも大歓迎だ。

この最後の言葉で「勇気」はほとんど神去村に溶け込んでしまったようだ。

* * *

どうでもいいことだが、私の先祖につながる人たちは、四国山脈で木を育てる林業と自給自足の野菜を育てて生活をしてきた。
枝打ちは出稼ぎの専門家を雇っていたそうだが、幼いころ 山は途中までは開墾され、その上は雑木林、それから尾根までは杉が植えられていた。
遠く続く峰々は、木の緑が模様を描き、春はこぶしの白で始まり山桜の薄いピンクが混じり夏は赤い山つつじ、秋は谷を紅葉が染めた。


昨今は、高価になった国内産の木材の販路は外材に代わり、家の構造も木材はあまり使わないこともある。天井に大きな梁のあった建物は古民家とよばれるようなった。床柱も見えるところだけに銘木を模したものも多い。


この本は、山に帰れと言うのではなく自然と一体になることから学んだ彼なりの体験談である。

読んでいるともう忘れかけていた深い山への畏れや、山の匂いやふかふかした落ち葉のことなど、ふるさとの自然に帰った感じがした。

秋には続編が出ると言う噂を聞いた。待っている。

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「猛禽の宴」楡周平 角川文庫

2012-10-01 | 読書

 

 

「朝倉恭介×川瀬雅彦」シリーズの三作目。これは「Cの福音」で登場した朝倉恭介のストーリーになっている。


 ***


 彼が考えた日本でのコカインの販売ルートは、7年後も順調に販路を拡大して、ニューヨーク・マフィアのボス「ファルージオ」にも信頼が厚かった。


だがファルージオの組織には亀裂が入り始めていた。 中国マフィアなど多くの人種で構成される組織との共存状態を、安定した形で仕切ってきたファルージオが襲撃され、半身の自由を失ったファルージオは、ボスの座を譲らなくてはならなくなる。


この機会を待っていた、部下「コジモ」の暗躍は、「ファルージオ」の失脚を初めから見込んだものだった。
彼は恭介のビジネスから上がる莫大な利益まで取り込むことを画策する。


恭介は「コジモ」の不快な命令から、ファルージオに対するコジモの卑劣な仕業に気づく。


 恭介は休日を楽しむためにターキー・ハントに出かけたケンタッキーで、同じ趣味のために来ていた「ギャレット」という男に出会う、彼は元海兵隊の戦闘へリ、コブラのパイロットだった。だが、薬物兵器に耐えるという薬剤を支給されて、強制的に飲み続けたため、今も副作用に苦しみ、筋肉の激痛に耐えていた。


かれを助けた恭介に軍の最高機密の入ったフロッピーを手に入れたことを話す。彼の仕事は軍の廃棄物の銃器や機器を、指示書どおりに分解処分することだった。しかし軍の管理の杜撰さで、機密書類が捨てられていることもある、払い下げられた機器や銃器は闇ルートで組み立てられて再販されていた。 恭介は日本の商社マンだと身分を隠して、そのフロッピーの内容によっては高価な取引が成立するとギャロットにもちかける。


 彼は「コジモ」の「ファールージオ」に対するやり口に復讐するために、ギャロットにフロッピーの前金50万ドルを渡し、払い下げ品を組みなおしたコブラをギャロットから手に入れ、パイロットを頼む。


優秀なパイロットだったギャロットは力強い身方だった、二人は別荘で寛いでいた「コジモ」を襲い、家ごと爆破してしまう。 廃品で改造したコブラで低空飛行する「ギャレット」の操縦は漫画やアニメで見たヒーローとダブってくる、レディはどこに(笑)


ギャング同士の抗争と、恭介が選んだ闇の世界、それに絡む人たち、恭介にあてがわれたチャーミングな高級娼婦の悲惨な境遇、さまざまな要素がダイナミックに展開していく。


一面、恭介の暴力的な凶暴さは、平常は深い心の裡に冷静に秘められているだけに、今回のような命の爆発力のすさまじさにはやはり読んでいても身を伏せたくなる迫力がある。


 静かに水面下で展開する恭介の麻薬ビジネスに、引き寄せられその犠牲になる、弱い人間を餌にした冷たい現実も見える。


 * * *


 登場する人物たちが、恭介の周りで彼の作戦通り動いていく様子は、物語だと思いながら、マァそうなるでしょうね、と納得、爽快な気分にさせられてしまうので、ストレスの解消になる。 フロッピーには何が入っていたのだろう、次で開くのかな。


 


 

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