2005年の第一回「日本ラブストーリー大賞」受賞作
なのでラブストーリーなのかと今まで読まずに来たが、原田マハさんは美術系でないエンタメ作品も好きだったので借りてきた。「シネマの神様」なんてもう面白すぎたし。
沖縄の小さな島に住む青年、明青がもらってきて可愛がっているイヌの名前がカフーという。
カフーは沖縄の言葉で果報というそうだ、いい題名だ。
明青は家族をなくして一人で雑貨屋をついでいる、
今では家族になったそのカフーが彩りを添えて、顔を出してはいい役割を果たす。海に行けば海中に投げた珊瑚を間違いなく拾ってくる、飽きもしない遊びをねだり、時にはうまい具合に刺されないようにハリセンボンを咥えてきたりする。隣に住むこれまた独り暮らしの巫女、オバアが喜んで汁物にしてくれる、という具合。
島の行事で、能登のはずれ日本海にある孤島のリゾート地に旅行に行き、そこの小さな神社の絵馬に「嫁に来ないか」とかいた。い
暫くして「もらってください」という返事が来た。
そして娘がやってきた。店を手伝いこまごまと家事をこなす、ただし料理は下手という所も愛嬌の綺麗な人だった。言葉通り嫁に来たものか、観光ついでに寄ったものか悩みながら様子を見ていた。
島は、リゾート施設を建てて開発しようと言う計画が持ち上がっていた。島を出て行った同級生がリゾート会社からやってきて、家を開けわたすように勧める。
彼女は本当に嫁になるつもりで来たのか。条件のいいリゾート開発にのるべきなのか。
出て行った母親のその後の消息は。
いそいそと働いてオバアにまで気にいられた彼女の過去は。
明生の心の微妙な揺れや、帰るつもりのなさそうな人に寄せる思い、などがほんわかかした雰囲気の中で進んでいく。
立ち退きに同意する村人や同級生もそれとなく優しい。とはいえ人生の一大事に向かって明青の決心はちょっと辛いが。
最後まで沖縄言葉を混ぜながら紡いだ物語は、とても優しく気持ちのいいものだった。