カウントが0になった瞬間シートに押しつけられる強い加速度を感じた。だがそれはほんの一瞬だけで、すぐに浮き上がり、続いて落ちていく感覚になった。体中の血液が心臓のポンプの力だけで移動する無重力状態だ。
通常スペースギアの室内は床面に対して常に1Gの重力が得られるように調整されている。それは宇宙空間を移動中でも、強大な引力で飛来物を捕らえようとしている大きな惑星の軌道をすり抜ける時も常に同じ状態に保たれている。重力加速度排斥システムの働きだ。
コンソールパネルを見ると、スイッチはオンのままになっている。
「ワープ中は無重力なんですね」
「そうなんだ、3次元の空間を飛び越してしまうからね」
「トンネルですか?」
「いやそうではない。空間の上を飛び跳ねていると言った方がいいだろう。」
「空間の上ですか?」
「宇宙(ひろし)君は川に石を投げたことはあるかな。」
「はい、ちいさい頃。あれは平べったくて丸い形の石がよく跳ねるんです。」
「ワープは空間を移動するトンネルと考えていた時もあったが、今は川の上を飛び跳ねていると考えた方が分かりやすいんだ。」
「空間の外を飛び跳ねているんですか?」
「前に光の速さについて話したね。」
「はい、どの状態でもいつも同じ速さで、何よりも早い。」
「光は屈折したり反射することも知ってるね。」
「はい、プリズムやコップの水で簡単な実験ができます。」
「そうだ。空気中からガラスや水に入ったり出たりする時に光は屈折する。」
「反射もします。」
「それだよ。宇宙君は勘がいいね。ガラスだと42度、水だと49度以上で光は全反射する。3次元空間の境界面に物体を計算通りの角度でぶつけるとそれと同じような事が起こるんだ。」 つづく
通常スペースギアの室内は床面に対して常に1Gの重力が得られるように調整されている。それは宇宙空間を移動中でも、強大な引力で飛来物を捕らえようとしている大きな惑星の軌道をすり抜ける時も常に同じ状態に保たれている。重力加速度排斥システムの働きだ。
コンソールパネルを見ると、スイッチはオンのままになっている。
「ワープ中は無重力なんですね」
「そうなんだ、3次元の空間を飛び越してしまうからね」
「トンネルですか?」
「いやそうではない。空間の上を飛び跳ねていると言った方がいいだろう。」
「空間の上ですか?」
「宇宙(ひろし)君は川に石を投げたことはあるかな。」
「はい、ちいさい頃。あれは平べったくて丸い形の石がよく跳ねるんです。」
「ワープは空間を移動するトンネルと考えていた時もあったが、今は川の上を飛び跳ねていると考えた方が分かりやすいんだ。」
「空間の外を飛び跳ねているんですか?」
「前に光の速さについて話したね。」
「はい、どの状態でもいつも同じ速さで、何よりも早い。」
「光は屈折したり反射することも知ってるね。」
「はい、プリズムやコップの水で簡単な実験ができます。」
「そうだ。空気中からガラスや水に入ったり出たりする時に光は屈折する。」
「反射もします。」
「それだよ。宇宙君は勘がいいね。ガラスだと42度、水だと49度以上で光は全反射する。3次元空間の境界面に物体を計算通りの角度でぶつけるとそれと同じような事が起こるんだ。」 つづく