僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 その家の弓

2009年06月22日 | ケータイ小説「パトスと…」
開け放した玄関が垣根続きの門から見えた。

小さな平屋の家で、薄暗い室内に何年も使い込まれた廊下が黒く光っている。
のぞき込んで妖しい奴と誤解されてはいけないと思いながらも立ち止まってしまった。そこに懐かしいものを発見したからだ。

それは弓だ。

洋弓に対して和弓と呼ばれることもあるが、2メートルほどのそれが弦を張った状態で立てかけてあった。そばに「ゆがけ」と呼ばれるグローブ状の指手袋もある。
通常弓は弦を外して保管する。弦が張ってあるということは今使う事を意味している。

改めて狭い庭を見ると、巻藁もあったことに驚く。
巻藁は弓の練習用に藁を俵のように堅く巻いたもので、直前で射る羽のない専用の矢を受け止めるものだ。

辰雄は弓道部だった高校時代を思い出し、弓の持ち主が現れるのを待った。


バタバタと廊下を走る音が聞こえ、奥の暗闇からスリップ姿の老女が何事かを叫びながら走り出てきた。






弓がけ(かけ)











コメント (1)
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