「どう?ここの店」
「辰雄さんと来るお店はどこもみんな素敵」
「料理は?」
「お肉も、このちょっと酸味のあるソースと、あとワサビかしらこの味」
「うまいだろ?ステーキは肉もだけどソースが決め手だよな」
「お肉もブランドのA5ランクとかのなんでしょう?」
「それはどうだか知らないけど、ランクなんかどうでもいいと思うよ。
僕はここのシェフを信頼してるから、どんな肉でも美味しく出してくれるし」
「ワインも何だかとっても美味しく感じる」
「そう言ってもらえるとご馳走したかいがあるよ」
「フランス語かしら、読めないけど。この前のはたしかお城のラベルだったけど
これはとっても格式がある感じがするわ」
「これはペトリュス。最近はなかなか手に入らないんでフランスの友人に頼んで少し回して貰ったんだ。
この店に預けてあるから、気に入ったらまた来よう」
「お高いんでしょう?」
「うんまあね。でもワインも肉と同じで値段じゃ無いと思うよ。高くても美味しければいいし、安くても不味かったら嫌じゃないか」
「それはそう、でも…」
「留美子さんはそんなこと考えないで、美味ければ美味い、不味ければ不味いって言ってくれればいい。
ラーメンだってビストロのフレンチだって同じさ」
「辰雄さんがそう言うとそうなんだって気がする。
でもいつだって美味しいから、たまには美味しくないものも食べないと、こうゆうものだって思っちゃうのが怖いわ」
つづく