暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

お祝いの茶会 (1)

2010年11月08日 | 茶会・香席
11月4日、先生の喜寿と正教授の拝受、
S先輩の傘寿、K先輩の古希、四つのおめでたが重なり、
お祝いの茶会が慈緑庵(じろくあん:大和市中央林間)で行われました。

先生とS先輩が離れの間(四畳半台目)の濃茶席、
K先輩は書院の八畳広間で薄茶席、立礼席で点心です。
Kさん、Tさん、私は薄茶席の半東と水屋を担当し、
一席九名さまを四席お迎えしました。

床の軸は高野山座主・栄覚師の筆で「貴和」(わをとうとぶ)です。
照り葉、ツワブキ、野菊が朝鮮唐津の花入によく映えています。
おめでたい鶴の香合は不昧公好の布志名焼です。

K先輩のご挨拶の声が聞こえてきました。
いつもと変わらぬ穏やかな様子ですが、
お客さまを迎えられた高揚感が伝わってきます・・・。

S先輩社中のTさんとMさんが交代でお点前です。
お二人とも一回目は緊張したそうですが、
その緊張感も含めて茶会での点前や雰囲気を楽しまれたようでした。
時間もお席もゆとりがあり、薄茶もゆっくり三客さまから点だしし、
主と替茶碗、棗と茶杓の拝見もお客さま全員に見ていただけました。

                

K先輩の主催する茶会は今回が初めてとのことで、
K邸のお蔵に眠っていたお道具たちが日の目を見ることができて、
お道具もさぞや喜んでいることでしょう。
K先輩に代わって素敵なお道具の一部を紹介します。

  釜   松地紋立口平丸   角谷与斎造
  棚   寿棚        富悦造
  水指  耳付高取      亀井味楽造
  薄器  紅富士 黒平大棗  前端春斎造 (大宗匠箱書)
  茶杓  千年の翆      大亀老師
  茶碗  萩         十一代休雪 (大宗匠箱書)
  替   三島        嘉祥造        

最初の席のお客さまが帰り際に
「とても好いお席でした。
 今日、参席させて頂いて本当に良かったです・・・」
と声を掛けてくださり、嬉しく安堵しました。

翌日、K先輩からお礼の電話が掛かりました。
心なしか、声が潤んでいたような・・・。
「本当におめでとうございます・・・」
                           
     お祝いの茶会(2)へ       

    写真は、「薄茶席の床」と「薄茶席の点前座」

紅葉舞秋風

2010年11月05日 | 茶道具
「紅葉舞秋風」(こうよう しゅうふうにまふ)の画賛のお軸を
或る方から頂戴しました。
秋深まるある日、床に掛け、閑座してお軸と対面しました。

               


かさこそ かさこそ
赤 黄 褐色の落葉を踏みしめて山道を行く時
ささやくようなサウンドが聞こえてくる
聞きとれないけれど 何か言っているような・・・

見上げると真っ青な空に
緑の葉 真っ赤な葉 黄色い葉が重なって
キラキラ光っている
まるで人の一生を見ているような複雑な彩りだ

やがて おだやかな秋の風が吹くと
全てをやりつくしたように
紅葉がひらひら舞い落ちる
誰でも見ることができ、誰にも訪れる自然の摂理

目のまえにあることを
はっきりと見ることの出来る日が
いつか来るのだろうか

                    

紅葉の色素、アントシアニンについて興味を持ち、調べてみました。

植物の緑葉にはクロロフィル(葉緑素・・・緑の色素)や
カロチノノイド(黄色の色素)という色素が含まれています。
植物は、日光の光エネルギーを利用して光合成によって
グルコース、クロロフィルなど生命活動に必要な化合物を作り出します。
特に、クロロフィルは光エネルギーを受け取るアンテナとして、
光合成に重要な役割を果たしているのです。

冬近く日光が弱くなると、光合成の効率はがっくり落ちてきます。
すると、生命維持コストを削減するため、葉そのものを落として
冬支度をし、春の芽吹きに備えます。

この頃になると、クロロフィルを作るのを停止し、
葉の中に多量に含まれていたクロロフィルは分解されます。
すると、葉の中にあった少量のカロチノイドが頭角を現し、
イチョウのような黄葉になるのです。

カエデやツタなどの植物は、光合成の効率が落ちてくる時期になると
アントシアニンという色素を作り出し、葉は紅葉します。

1日の最低気温が8℃以下になると紅葉が始りまりますが、
昼夜の気温の差が10℃以上と大きいこと、
それから十分な光と適度な湿度もきれいな紅葉には必要です。

なぜ、この時期にカエデやツタがアントシアニンを作り出すのか?
いろいろな説がありますが、
本当のところはわかっていません・・・。
                          

緑葉、黄葉、紅葉、そして落葉、朽葉・・・
最初は紅葉の画賛を眺めて愛でていただけでしたが、
なかなか奥の深い禅語の世界です。
お軸をありがとうございます! 大切に使わせていただきます。

                                 

   写真は上から、「湯河原巻山の紅葉」
             「横浜三渓園・春草廬の紅葉」 (三渓園提供)
             「ツタ紅葉」

アート茶会 (2)

2010年11月02日 | 茶会・香席
(つづき)
お点前が始まり、菓子は都筑民家園名物の「民家園饅頭」です。
最初に絵唐津に似た、親しみのある茶碗で薄茶を頂戴しました。
少し熱めだったのでゆっくり頂いていると、
次客のIさんへダチョウの卵を割ったような白い茶碗で
薄茶が運ばれてきました。
「あらっ!どこから喫もうかしら?」

それからが大変!
現代アートな茶碗で薄茶が次々と出てきます。
一番「ぎょっ!」は、手の形をした茶碗でした。
手の平の窪みに薄茶が入っていて斬新ですが、
喫みにくそうだし、点てにくそう・・と思いました。

アーティストたちがこの茶会のためにつくったという、
十数個の茶碗を全員で輪になって廻しながら鑑賞しました。
私のお気に入りは、「逆さ富士」と名付けられた朝顔形の茶碗です。
形も面白く、釉薬の流れがとても素晴らしい・・と思いました。

黒柿の棗と「喫茶去(きっさこ)」という銘の茶杓が拝見に出された後、
アート茶会の主催者でもある作家さんたちが登場して、
茶会の趣旨、床の不思議なオブジェや茶碗のお話がありました。

                 
               

「床の掛物は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をイメージして作りました」

「茶碗は、今までの茶碗とかけ離れた発想のもの、飲みにくいもの、
 という指示を出して作ってもらいました」

「これは外側に金色を吹き付けたり、いかにチープな感じをだそうかと、
 苦労しました・・・」

「ガラス花器の中がU字管になっていて、水を入れたり、光をあてると
 このように新しい色や味わいがでます」

「現代アートと茶の湯、敷居が高いもの同士がコラボして、
 敷居を少しでも低くすることができれば、とても嬉しいです」

                

それから、参加者全員の意見やら感想やらが求められました。

「蜘蛛の糸ですか? 星座のような宇宙空間を思いました」

「はじめてのお茶体験ですが面白かったし、現代アートは難しいと
 思い込んでいたので、少しでも触れることができて良かったです」

「床の花器を一つに絞って、それに野の花を入れてみては?
 余計なものを削ぎ落とすお茶の良さを取り入れて欲しい」

「最初は驚きましたが、いろいろな茶碗で茶を点てれたのは
 とても良い勉強になりました」

「茶を美味しく点てて飲んで戴くことが原点だと思うので
 製作した茶碗で是非お茶を点ててのんでみてください」

                

話は尽きませんが、次回のお茶とアートのコラボ茶会が楽しみです。
いつもの茶会にはない、ざっくばらんな話し合いのコラボが
新鮮でした・・・。

       アート茶会(1)へ              

  写真は上から、「都筑民家園 輪亭(りんてい)」
            「池の水面のオブジェ・・夜になると光るそうです」
            「鶴雲菴(かくうんあん)の蹲のオブジェ」
            「母屋の入り口にあった、ナナカマドと大釜」
            「古民家の縁側が腰掛待合」



アート茶会 (1)

2010年11月01日 | 茶会・香席
都筑民家園(横浜市都筑区)茶室・輪亭(りんてい)
行われた「アート茶会」へ茶友と出かけました。
台風のため30日の予定を31日に変更して頂きました。

都筑民家園は、都筑郡牛久保村にあった旧長沢家住宅を移築復元したものです。
18世紀中ごろに建てられた旧長沢邸は、名主を勤めていただけあって、
十畳二間の畳み敷きの部屋、板敷きの二間、囲炉裏のある広い板の間、
炊事場のある土間があり、とても大きな古民家です。
長屋門公園と同様に、魅力的な文化交流イベントが繰り広げられていて
10月は「民家園チョットいっぷく祭り」です。

                

今年5月に母屋の奥庭に茶室がオープンしました。
三畳台目の鶴雲菴(かくうんあん)と八畳広間の輪亭です。

民家園へ着くと、「アート茶会」ご案内の栞を頂きました。

 「アートお茶会」参加のみなさまへ

  本日は都筑アートプロジェクト2010「アートお茶会」に
  ご参加いただきありがとうございます。
    (中略)

  今回、芭蕉の句「静かに観すれば物皆自得す」をテーマに、
  身の回りをほんの少し注意深く観ることで、
  私たちをとりまいているさまざまな物の、色や形、
  手触りや温度、匂いなど、普段何気なく感じていたけど、
  確かには気付いてはいなかった、そんな物の特性や多様性に気付き、
  新たな発見をしていただければと考えています。

  アーティストたちが作り出した不思議なお茶碗や茶道具に掛け軸などなど、
  普段ではありえないお茶席の空間の中で、美味しいお茶を飲みながら、
  アーティストたちとのお話を楽しんでください。

                 
                                 

輪亭入口でソックスを履き、露地草履を履いて、蹲へ進みました。
客は十名でしたが、大日本茶道学会の先生方の丁寧なご指導で
全員がきちんと蹲をつかい、席入りをしました。

床には透明な紐の、網の様なオブジェが掛けられ、
もの珍しい花器が三つ、畳付き、床柱、琵琶床に置かれ、
芥子を連想する、金属質な人工の花が入れられ、
さらに畳付きには何故かスリッパのオブジェが荘られていました。

なぞなぞのような不思議な空間(床)を拝見してから
風炉と釜を形通りに拝見して席へ着きました。
風炉は大板、中置です。

       アート茶会(2)へ          

   写真は上から、「都筑民家園の母屋」
             「囲炉裏ばた」
             「緑の中のアート茶会の輪亭(りんてい)」
             「池で見つけた不思議なアート」