暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

初釜の会 in 2020・・・(2)百人一首

2020年01月29日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

あいにく18日(土)は雪交じりの天候でした。

・・・ですが、皆さま、初釜らしくステキなお召し物で来てくださって、もう感謝感激です。

暁庵も気合を入れて、朝早く美容院で髪を結い(凄い余裕・・・)、古代紫色の紋付に金茶地唐花文の丸帯、帯締めは白で臨みました。身支度を調えると、中身や気持ちまでしゃんとして、活力が漲る気がします。

席入りは11時、百人一首のテープを流してお迎えしました。歌会始のように和歌が朗々と優雅に詠まれ、少しはお正月らしさが感じられたかしら?

   難波津に 咲くやこの花 冬ごもり

       今を春べと 咲くやこの花    王仁(わに)

手持ちの古テープはこの歌から始まります。百人一首に入っていませんが、競技かるたでは一番最初に読まれる和歌だとのことです。

 

 

詰Kさんが打つ板木の音が聞こえ、半東Uさんが温かな甘酒をお出しします。

庭の腰掛待合や蹲は使えないので、急遽、玄関先の蹲と湯桶を使って席入りをしていただきました。

ここで大失敗! 「先生!釜がかかっていません。何か特別なご趣向かな?と思いましたが・・・」とやさしいN氏。

湯桶や濡れ釜に気を取られて、釜を掛けるのをコロリ忘れていました(たしか、昨年も仁庵で同じ失敗を・・・う~ん?)。

 

 

さて、気を取り直し、ご挨拶に出ました。

  新年 おめでとうございます

  今年もどうぞ宜しくお願いいたします

お一人、お一人と新年の挨拶を交わしたのち、今年の抱負や今思うことなどをお話していただきました。

皆様のお茶への思い、目標や楽しみたいこと、近況などを伺いながら、いろいろな思いが駆け抜けていきます。

ささやかな暁庵の教室ですが、お茶の力に触れ、稽古や茶事に精進し、お茶人との交流を楽しみ、明日への活力を生み出す場になってくれたら・・・、そしてお一人お一人の状況に合わせた対応やご指導が出来たら・・・と。

 

(ふりふり香合・・・暮れに宇和島市に住むお茶の先輩から贈られたもので、嬉しい初使いです)

 

初釜の会は初稽古を兼ねているので、全員に台子のお点前をして頂きました。

真台子に青磁茶道具一式(皆具ではなく、水指は青磁太鼓胴(浮牡丹)写)、天板に花兎文大棗、ふりふり(ぶりぶりと読む)香合と羽箒(シマフクロウ)を飾りました。

台子初炭手前(N氏)から始まり、炭が熾り湯が沸く間に別室(テーブル席)にて一献と昼食を頂き、銅鑼(KTさん)で後入りし、濃茶(暁庵)、後炭(KTさん)、薄茶は全員で員茶之式と続きます。

  

(松花堂弁当にお吸い物と一献を皆で美味しく頂きました)

 

員茶之式のことを書いておきます。

正客N氏、Iさん、SYさん、KTさん、暁庵、目附:Uさん、札元:Kさんの順で席入りし、亭主M氏の迎え付けで主客総礼し、客、目附、札元は袱紗をつけました。

員茶之式では十種香札を使いますが、お正月らしく百人一首の札を使いました。

百人一首の下の句の札を引いて、札元が読み上げた札の人が名乗ってから干菓子を頂き、薄茶を喫み、点前をします。
薄茶の亭主M氏に茶碗2個を持ち出して2服続けて点ててもらい、お点前さんを一人ずらしました。

お点前の順番を一人ずらしたのは、百人一首を詠みあげるのに時間がかかること、干菓子が3種なのでお菓子も薄茶もゆっくり味わってもらいたい・・・と思い、このようにしました。

干菓子3種は、霜柱(仙台・玉澤)、蕎麦板(京都・尾張屋)、薄紅(京都・末富)でした。

 

 

ここで員茶之式と少し違うやり方を忘備録として書いておきます。

席入りし、亭主の迎え付けで袱紗を付けます(札元、目附も)。

煙草盆は今回省略し、干菓子器2つ、次いで百人一首の札が入った姫箪笥を亭主は正客前に運び出します。

「どうぞ、箪笥の一番上と二番目の引き出しから札を1枚ずつ取ってお回しください」と亭主一礼。

亭主は茶碗2碗を運び出し、お点前を始めます。(建水と一緒にもう1碗運び出す。大きめの建水に途中で変えました)

茶碗に湯が入った頃に札元は一番下の引き出しから札を取り出し、茶巾で詠みあげます。当たった人(仮にAさん)が下の句を詠むと、干菓子器が回され、茶が出るとAさんが取りに出ます。

もう一服、亭主が続いて替茶碗で薄茶を点てます。次に当たったBさんが取りに出ます。

その間にAさんはゆっくりと干菓子とお茶を頂き、飲み終わると「札およけを」と札元に言って、タイミングを計って茶碗を返し、その足で点前座へ進みます。

・・・この方式ですと、2人お点前がずれるので最後が少しややっこしいのですが、

引き出し1段目は人数分の下の句の札(1椀目)、二段目に2枚(2人2椀目を頂く)プラスババ札で人数分の下の句を札を入れて置きます。

札元は1服目の読み札を詠んだ後に2服目の読み札を詠みあげます。最後の札を詠むと、  

「これにて御終いです(本来は「これにて一巡」)」と札元が正客に挨拶します。

最終詠み札が当たったCさんはお茶を頂かずに、そのまま点前座に進み、茶碗を取り込んで総礼。仕舞付けをし、建水を踏み込み畳に置いて、自席へ戻ります。

Cさんが仕舞い付けにかかると、札元は札を元の引き出しに入れ、正客まで箪笥を回し、一同札を戻します。

亭主は建水、茶碗を引き(2碗目の茶碗は茶道口に戻しておく)、水次をして下がります。亭主が姫箪笥を取りに出て、主客総礼。

亭主の送り礼で主客総礼。袱紗を懐中して、順次退席します。

 

・・・書いてみると、すらすらといったように思いますが、実際はこの方式に慣れていないので試行錯誤でした。必要に応じて途中で新しい建水や茶巾を交換します。

 

 

あれこれお話しながら、美味しいお菓子と薄茶を頂き、全員お点前が新鮮な員茶之式(台子薄茶点前)でした。

・・・こうして、2020年、令和になって初めての暁庵の茶道教室の初釜が無事に終わり、新たな気持ちで皆、スタートです。

 

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初釜の会 in 2020・・・(1) 準備中

2020年01月26日 | 暁庵の裏千家茶道教室

     (待合に「灑雪庵」のお軸を掛けました)

 

2020年1月18日(土)は暁庵の茶道教室の初釜の会でした。

昨年は箱根湯本の旅館・玉庭の茶席・仁庵でしたが、今年は令和になって初めてのお正月なので我が家での開催です。

初釜の数日前から雨の予報が続いていたので、早めに準備に取り掛かりました。

先ずは庭の落ち葉の掃除です。そういえば、暮れから庭へ降りていません。

開門落葉多・・・蝋梅の黄ばんだ葉が落ち、黄色の花が咲き、甘い芳香を放っていました。

当日晴れることを期待して、蹲や黒石もせっせと洗いました。長時間作業すると腰や膝が痛くなるので作業時間を1時間と決め、2日に分けてしています。

もう一つは、花の採取です。

「利休のかたち」展を見た折、展示場に設えてあった待庵写しの床に一輪の梅がいけられていました。

うす暗い床の中、凛とした一輪の白梅にしばし見惚れ、シンプルな尺八(利休作「竹尺八」のような・・・)が削ぎ落された美を引きたてていました。

実は、この梅は本物ではなく、須田悦弘氏の木彫作品と知り、直島のベネッセハウス・ミュージアムにある彼の作品「雑草」を思い出しました。

そして、初釜の床には梅一輪を・・・と、早咲きの梅を探し歩きました。

散歩道の帷子川添いに目指す梅の木がありました。花は小さめですが、びっしりと蕾を付け、ほころび始めている花もあり、2枝を持ち帰りました。

でもね・・・煩悩が多い暁庵は、梅一輪に徹する覚悟が足りませんで、椿一輪も足しました。

 

     初釜の床の花(白梅と椿)

 

床の正月飾りに欠かせない「結び柳」、注文し忘れて困っていましたが、暮れにN氏から立派な柳が届けられ、間に合って一安心(いつも助けてくださって有難う!)。

「結び柳」があれば、あとはお軸とお花でシンプルな床飾りにしたいと思いました。

「結び柳」の由来について利休居士が
「人の門出の茶の湯ニ、鶴の一声ニ柳を結で入シハ綰柳条(わんりゅうじょう)の故事カ」
と述べた茶会記録が「茶道四祖伝書」にあるそうです。
綰柳条の故事とは、中国の漢の時代、西へ旅立つ友を長安郊外の覇橋まで送り、柳の下枝を折って輪にして手渡したことを言います。綰柳と呼ぶ環に結んで、旅に疲れた心が体から放逸しないように繋ぎ止め、一日も早い帰還を柳の環に託しました。


本席のお軸は、「応無処住而生其心」(金剛経の一節、前大徳 泰道老師の御筆)です。

いつの間にか身にくっついている煩悩を無くし、清浄無垢の真心でやるべきことに丁寧にあたりたい・・・と、自分に言い聞かせる禅語です。

 

 

あれやこれや、道具類の設え、外腰掛用の大火鉢の用意、濃茶点前の稽古など準備にいそしんでいましたが、どこか気持ちにゆとりがありました。それは昼食を懐石ではなく、松花堂弁当を外注したからでした・・・これも時々は必要ですね。

天気予報ばかり見て、初座の席入りに晴れてくれたら・・・と願っていました。(つづく)

 

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立礼の会の初稽古・・・in 2020

2020年01月22日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 (華やかな繭玉かざり・・・歌舞伎座にて)

 

令和2年(2020年)1月14日(火)は立礼の会の初稽古でした。

立礼の会は毎月1回、第2火曜日に開催しているので、教室の初釜(18日)に先立っての初稽古となりました。

それで、お客様を2名お招きし、お道具もいつもと少し違え、お昼に点心をお出しすることにしました。

AIさんが11時に到着。早速に初炭手前、濃茶、薄茶の準備に取り掛かり、12時にいらっしゃるお客様をお待ちしました。

お客様でお付き合いくださっているYさまは小堀遠州流のご近所さんです。もうお一人のお客様Nさんは裏千家流、初めての来庵でお会いするのが楽しみでした。

お稽古の前に手作りの点心をお出しし、AIさんと暁庵もお相伴しました。

点心は3種、かぶら蒸(蕪、アナゴ、銀杏、白ブナピー、木耳、ワサビ)、盛合せ(黒豆、鰊昆布巻、紅白かまぼこ、数の子、粟麩田楽、春菊お浸し、ミニトマト)、雑煮椀(餅、里芋、大根、人参、ゴボウ、小松菜)です。

かぶら蒸は白身魚の方がよかったかしら? ・・・作り手としてはいろいろ反省もありますが、手軽に暖かい点心を差し上げたいと思い、あれこれ迷い楽しみながら作りました。4人でにぎやかに談笑しながら完食しました。

 

(立礼席の壁床に「灑雪庵」のお軸を掛けました)

 

さて、いよいよ初稽古です。

最初に初炭手前、松唐草文炭斗(玄々斎好み)を点茶盤の中棚に莊付けておくのですが、今回は運びとしました。

初炭は12月に続いて2回目なので、だいぶ慣れてきたようです。

「どうぞお香合の拝見を・・・」とYさまからお声が掛かりました。

香合はお目出たい独楽香合、甫斎作です。

 

 

花びら餅の入った縁高が運び出され、いつものように挨拶(セリフ?)のお稽古です。

「お菓子をどうぞ。お菓子をお召し上がりになりましたら、席を改めとうございますので・・・(後略)・・」

いつかAIさんの立礼の茶事ができること楽しみに、茶事を前提としたお稽古をしています。

濃茶点前が始まりました。

丁寧にしっかりと4人分の濃茶が練られ、「お服加減はいかがでしょうか?」

暁庵もAIさんもお相伴しましたが、香りも練り加減も好く、とても美味しかったです。AIさんも満足そうでした。濃茶は天王山、山政小山園詰です。

 

 

薄茶は、小堀遠州流のYさまにお願いしていました。裏千家流とは茶巾の大きさから違うそうで茶巾を持参され、お正月から小堀遠州流のお点前を拝見することができました。

武家流なので帛紗は右に着け、袱紗捌きや茶入と茶杓の丁寧な清め方に見惚れます。皆で目を丸くして拝見しているうちに、薄茶が点ち、美味しく頂戴しました。薄茶は金輪、丸久小山園詰です。

もう一服薄茶を頂きたく、Nさまにお点前をお願いしました。

Yさま、初めてお目文字のNさま、AIさまと干菓子(霜柱と蕎麦板)と薄茶を頂きながら、茶談義が弾みました。それぞれ懸命に歩んで来た人生にどのようにお茶がかかわっていたか・・・とても味わい深いお話を伺うことができました。

このようなお話を分かち合えることが嬉しく、これからのお茶人生が勇気づけられるような、令和2年(2020年)「立礼の会」の初稽古でした。

 

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「利休のかたち」展におもふ

2020年01月19日 | 美術館・博物館

     京都の永観堂にて (1月6日撮影)

 

1月10日に、松屋銀座の「利休のかたちー継承されるデザインと心ー」展へツレを誘い出かけました。2人で出かける久しぶりの銀座です。

「東銀座」駅で降りると、来月の歌舞伎座のチケット予約を・・・とすぐに決まり、売り場へ寄ると、なんと上演中の寿・初春大歌舞伎の良席が空いていたのです。早速、某日昼の部のチケットを購入し、松屋銀座へ向かいました。

 

 

以後、感想などというものではなく、勝手な独り言です。

利休形(好み)と称される展示品を見ながら、私の数少ない茶道具の中に多くの「利休形」が含まれていることに改めて気づきました。

例えば、最初に購入した楽茶碗は長次郎「喝喰」の写しです。端正な形、カセタ黒釉薬、ヤットコの跡などがあるお気に入りです。

他にも桐木地丸卓、角棚、木地釣瓶水指、旅箪笥、角不切折敷、黒塗小丸碗、朱塗引き杯、黒塗縁高、黒塗手燭などなど。

どれも木地や漆で黒く塗られたシンプルな印象のものばかりです。

展示もしかり、とても地味で控えめで・・・けれど長い年月を経て伝えらえてきた物の持つ、静謐な美しさに惹きつけられました。

茶道具における「利休形」とは「標準形」という意味ではないだろうか・・・という意見に頷きながらも、それとは違う感情、感覚が身体を駆け抜けていくのを感じます。

・・・それはまるで、道具たちからひそやかに発せられるささやきのようでした。その日はすいていて、ゆっくり展示品を鑑賞できたからかもしれません。

 

〇 赤楽茶碗 銘「白鷺」

  長次郎作 安土桃山時代 16世紀  裏千家今日庵

 2年前の東博でこの茶碗に出逢ってから2度目の出逢いですが、その時の繊細で素朴な印象とは一味違っていました。白鷺を思わせる白い繊細な縦線が前より濃く荒々しく(ライトの当て方のせいか?)、指跡でつけられたという解説を読み、長次郎の息づかいを間近に感じる思いでした。

この茶碗に魅せられて、茶碗の面影を慕って「小鷺」と名付けた白楽茶碗(染谷英明作)を愛用しています。

 

〇 黒楽茶碗 銘「万代屋黒」

  長次郎作 安土桃山時代 16世紀  楽美術館

 長次郎作の黒楽茶碗の中でも好きな茶碗の一つで、この茶碗に逢うと、京都の楽美術館を思い出します。ほの暗く静かな展示室で何度も何度もお逢いしました。

端正な形、静かで厳しい美しさを感じます。時代を経てカセタ黒釉薬がこの茶碗をより美しく魅力的にし、何度見ても見飽きません。主張があるようでもあり、無いようでもあり、使ってみたいです。

〇 湯の釜 

  与次郎作 安土桃山時代 16世紀  武者小路千家官休庵

 釜好きなので、宗易の釜コーナーで釘付けに・・・・。

「湯の釜」は初めてのお出逢いでしたが、大きさと言い、魅力あふれる肩の形と言い、なんておおらかで素敵な釜なのだろう・・・と感動しました。最初に「湯の釜」を観たせいか、「阿弥陀堂釜」や「芦屋霰地真形(尾垂)釜」などがかすんでしまうほどでした。「湯の釜」という、これといった気の利いた名前がないのもゆかしいです。

〇 本手利休斗々屋茶碗

  朝鮮 朝鮮時代 16世紀  藤田美術館

 韓国で山清窯のミン・ヨンギ作の斗々屋茶碗を入手して以来、斗々屋茶碗の古作を見てみたいと思っていました。

この斗々屋茶碗は利休所持と伝わっているそうで、興味深く拝見しました。

斗々屋茶碗にはいろいろ特色があり、見込みが深いものは「本手ととや」、浅いものは「平ととや」と呼ばれています。「本手ととや」には高台がきっちりと削り出されている、釉薬の灰色部分と枇杷色部分がいろいろな景色を織りなすなどの特色があります。

しかし、「本手利休斗々屋茶碗」は釉薬の窯変はほとんど無く枇杷色が強く、高台が低いなど、おおらかで自由な作りになっている。それ故、静かで落ち着いた佇まいであることが利休の目にかなったのではないか・・・と解説にありました。

〇 利休形茶器 十二

  三代中村宗哲作 江戸時代・18世紀  中村家

 表千家七代如心斎が利休形茶器として制定し、三代中村宗哲が作った十二器が展示されていました。薬器、白粉解、下張、スンキリの形と名前が一致せず、茶桶(さつう)と面中次の違いなど、わかっていないことだらけに愕然とし、勉強不足を実感です。

〇 唐物丸壷茶入 利休丸壷

  中国南宋~元時代・13~14世紀  香雪美術館

 今回展示されていませんが、利休所持の大好きな茶入です。香雪美術館で不思議な出逢いがありました。ぜひ、丸壷茶入を見てほしいです。

 

 

「利休のかたち」展を拝見して、道具たちのひそやかなささやきに耳を傾けながら

「利休さんのデザインや心を深く考えながら、お茶事をしてみたい!」・・・とおもふ、懲りない茶事バカがいました(お道具もないのにねぇ~・・・影の声)

 


京都・お初釜の茶事に招かれて

2020年01月15日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

    冬の京都は静かで寒くって好きかな・・・・南禅寺三門にて

(三門とは、仏道修行で悟りに至る為に透過しなければならない三つの関門を表わす、空、 無相、無作の三解脱門を略した呼称だそうです)

 

 のち  のち 

有馬温泉・雅中庵の初稽古の後、京都のYさまのお初釜の茶事にお招きいただきました。

その日は生憎の小雨模様、タクシーを降り、大きなカバンを引きずりながら3人(正客Oさま、次客暁庵、詰YYさま)で路地奥のYさま宅を目指しました。

到着すると、奥から調理の軽快な音が聞こえてきました。お正月早々のこと、さぞかしご準備が大変だったと思いますが、素晴らしいお茶事でございました。

「守破離」という道を指し示す言葉がありますが、多くの茶事や茶会を積み重ねて、到達されたYさまらしい独自の世界や表現に随所で感じ入りました。

 

 

御床の斬新なむずび柳に目を見張りました。”輪と和”が柔軟かつ芸術的に広がり、大綱和尚の「壽」のお軸と相和してシンプルでステキな空間です。

初炭では釘環とその扱いが珍しく、炉縁のほんのりとした赤(・・に見えます)や楽入の灰器がはんなりを醸し出し、ご亭主の所作を美しく引きたてていました。

香合は正月らしくお目出たい鶴、どこかで亀が出てくるのかしら? 

 

懐石になり、「いつも美味しい懐石をたった一人で手際よく、どのようになさるのだろう・・?」と不思議なのですが、今回もまたどれもこれも美味しゅうございました。「今度作ってみたい・・・」と憧れ、大いなる刺激を頂戴しています。

そして、毎回ステキな懐石の器が登場するのも楽しみです。

 

 

懐石献立 (既に忘れていますが、参考にしたいので書きとどめておきます)

向付      蕪蒸 (白身魚、ゆり根、蕪、ワサビ)  

汁 (熱)   慈姑  白味噌  辛子

煮物椀(熱)  蟹真蒸  シイタケ 三つ葉  柚子 

焼物      鰆の西京漬 (銘々皿で)

炊き合せ    海老芋  棒鱈  春菊のお浸し

和え物     きのこ  水菜  青菜 ?

箸洗      柚子 

八寸      カラスミ   芽キャベツ  

湯斗      おこげ

香の物     千枚漬  赤カブ  沢庵  すぐき  もう1種

酒       新潟産の ?   

 

  

          向付のかぶら蒸

懐石後に出されたお手製の花びら餅、お餅(雪平せっぺいとか)がやわらかく、中のゴボウと味噌餡が絶妙で感激しながら頂きました。

雨が本降りになり、待合へ中立し、銅鑼の音で後入りしました。

後座の御床がユニークで印象に残っています。

花は水仙と乙女椿、花が斜めにいけられているのですが、酒器だったという花入との出会いの妙でしょうか。

結び柳の縦の線と重ならず、見事に調和し、ご亭主の創意工夫が楽しく伝わってきます。

 

 

後座の点前座には棚(旅卓)が置かれ、小ぶりの水指(京唐津)がお似合いでした。水指に合う棚を探したそうです・・・。

金春金襴の仕覆が脱がされると、赤絵の小壷風茶入が現われ、早や心を奪われます。(紅安南かしら?) 

茶入から濃茶が、床の柳のように美しい筋を見せながら回しだされると、すぐに茶香が漂い始めました。

熱い湯が注がれ、心を込めて練ってくださった濃茶の、なんと馥郁とまろやかで美味しいこと。濃さも程よく、飲みやすかったです。

「天授」(丸久小山園詰)という茶銘を聞いて、思わずうなずきました。

茶碗は大樋焼の飴釉(大樋年朗造)、形や飴釉が美しいだけでなく、口縁から濃い釉薬が少し垂れてモダンな景色を生み出していました。

 

     点前座の旅卓(表千家流の棚です)

後炭もしてくださって嬉しかったです。

釜をあげたときの炉中の景色、胴炭は大きかったのでまだ黒々としていましたが、他の炭はほぼ燃え尽きて、過ぎた時間を告げています。

丸ぎっちょ、割りぎっちょが1個ずつ継がれ、丸管・割管・枝炭2本の4本を持ってさらりと置かれ、日頃の修練がしのばれます。

匙香ではなく、香合を取り出し、香(松濤)が炊かれました。香合は萩焼の分銅亀(田原陶兵衛造)、ここで鶴亀が揃い、めでたしめでたしでした。

 

   (手作りの5種の干菓子が圧巻で美味しく・・・)

薄茶になり客3名でしたが、1人ずつお茶碗を変えて薄茶を点ててくださいました。お手作りの干菓子5種を1つずつ味わいながら、干菓子も薄茶もお話も堪能し、充実した時間を過ごしました。

 

 (茶事後の写真なので替え茶器がかざられています)

 

Yさま、お心こもるおもてなしを頂き、ありがとうございました!

客一同、深く感動し、たくさんの刺激を受け、令和2年・お茶事の幸先良いスタートを切ることができたと、喜んでおります。

足腰が動くうちに、我が家の拙い茶事へ足をお運びくださると嬉しいです。 

 「お待ちしています・・・」