暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

師走の月釜 

2011年12月30日 | 茶会・香席
12月27日に都筑民家園の師走の月釜へ出掛けました。

今年3月、大震災のあと、外出を敬遠気味だったIさんをお誘いして
月釜へ出掛けたのが最初でした
ご亭主と半東さんのお二人だけで、濃茶と薄茶のおもてなしをしてらして、
あたたかい雰囲気がお気に入りでした。

毎月いきたい・・・と思ったのに、6月に一人で伺って以来
なかなか行くことができません。
今年最後の月釜へIさんと伺いたいと、10月末に予約を入れました。

広間(待合)の輪亭前の池には厚い氷が張って、鈍色の光を反射しています。
第一席のお客は五名、着物のせいか、正客をおおせつかりました。
蹲をつかい、にじり口より三畳台目の鶴雲菴へ席入しました。

              

床には、太玄和尚筆の「無事」、瓢花入に白侘助が清々しくも一輪。
点前座を拝見すると、炉には優雅な釜が掛けられ、湯気を上げています。
炭火にジョウが厚く付いていて、早くから炭を熾し、湯を沸かし、
部屋を暖めてくださったご亭主の心遣いが伝わってきました・・・。
兎の耳が付いた水指が興味深く、あとでお尋ねしてみましょう。

お菓子が運ばれました。
銘は「冬籠り」、青年部の友人の作だそうで、
栗と黒餡が白い薯蕷(?)で巻かれていて、雪国のかまくらを連想しながら、
美味しく頂戴しました。

美丈夫なご亭主が茶碗を運びだし、いよいよ濃茶点前です。
丁寧な所作で茶入、茶杓が清められ、茶碗へ湯が注がれます。
釜の湯がたぎっていて、熱い濃茶を練ってくださいました。
香りや色を愉しみながら、素晴らしい萩茶碗(十二代休雪作)で頂戴しました。
甘みのあるマイルドな濃茶は九州の八女茶だそうです。
茶入は丹波焼の肩衝、森本陶谷造です。

半東さんが運んでくださった干菓子は新潟・大和屋の「越の雪」。
和三盆の純粋な甘みと舌に転がる触感が印象に残りました。
小振りの三嶋の茶碗で、薄茶をたっぷり頂戴しました。
五人とも違う茶碗で薄茶を頂き、お茶碗を拝見しながら
しばしお話に花が咲きました。
Iさんと私以外は毎月いらっしゃる方たちで、月釜で仲よくなったそうです。

            
            
                (都筑民家園のひだまり)

薄器は吹雪、塗師は不明ですが円能斎の花押がありました。
茶杓は黄梅院の太玄和尚作「埋み火」です。
気になっていた水指ですが、玄々斎お好みの兎耳水指でした。
ユニークな兎耳、源氏香の優雅な絵柄、傘を連想する形は
現代にも通じる斬新さで、玄々斎に思いを馳せました。

最後になってしまいましたが、
師走の月釜に掛けられた釜は天猫の甑口釜。
地紋は遠山ということですが、山が地紋にみつからないそうです。
「変わったカン付きの形が山を表わしているのではないか?」
というご亭主のお話(推理?)を興味津々で伺いました。

あわただしい師走にもかかわらず、
ご亭主はじめ、半東さん、Iさま、ご連客の皆さまと一座建立、
師走の月釜で今年を締めることができ、お茶のご縁に感謝いたします。

「師走の釜を無事に迎えることができました。
 心を新たにして来年の月釜にのぞみます」
・・・というご亭主に心より応援の拍手を送ります。 

来年もどうぞ宜しくお願い致します。

             
               (かわいい門松  都筑民家園にて)

 

当ブログもこれにてしばし正月休みに入ります・・・・
皆さま、佳いお正月をお迎えください!
                   
                  やっと今年最後の 


クリスマスの茶事へ招かれて (2)

2011年12月28日 | 思い出の茶事
 (つづき)
中立で庭へは出ず、廊下を通って待合へ戻りました。
いつの間にか露地ぞうりが玄関に戻されていて、
初入と同様に、玄関から庭へ廻り、腰掛で迎え付けを待っていると、

大・・・小・・中・中・・・大

銅鑼の音色、いいですねぇ・・・!


後座の床を拝見して、「ハッ」と息をのみました。
竹の花入に紅白の侘助が入れられています。
紅侘助は可憐な笑顔を向け、深緑の葉に露が清々しく打たれています。
白侘助は蕾、こちらの緑葉には露がありません。
シンプルな美しさに感動し、しばし動けませんでした・・・。

点前座には朱塗りの棚が据えられています。
紹鴎水差棚に似ていますが、三段になっていて初めて見る棚でした。
あとでお伺いするのが楽しみです。

               

濃茶点前が始まりました。
リズムのあるしっかりした点前は、言葉のいらない濃茶の世界へいざないます。
ふくいくとした香りが部屋を満たし、丁寧に練られた濃茶がだされました。
Kさんと二人でたっぷり味わいました。
程よい苦味の残る濃茶は一保堂です。
前席の主菓子は「粉雪」、白餡に白いきんとん、金粉は星でしょうか?

お茶碗は、かせた色合いがやさしい黒楽でした。
手に取ると、小ぶりな茶碗側面に一周、へら目が模様のようにあり、
一入の「あけぼの」写だそうです。
織部を思わせる美濃焼の耳付き長茶入、仕覆は花文暈繝錦、
気になっていた棚は、雪輪棚という江戸千家流のお好みです。
ご亭主は最初江戸千家流を長く学んでいたそうで、思い出の棚を
クリスマスに因んでお使いくださったのでした。

               

後炭になり、炉を拝見すると、炭がきれいに流れていて
うつろいの風情に見とれました。
胴炭が見事二つに割れて、これもめったにないご馳走です。
「ゆっくりして頂きたいから・・・」
と炭をたくさん置いてくださいました。

「雪とモミの木」の干菓子が運ばれ、
イタリア製(?)の楽しいクリスマス絵の茶碗と唐津焼の茶碗で、
薄茶を二服ずつ美味しく頂戴しました。
クリスマスのムードも最高潮となり、どこからか
「シャンシャンシャン・・」とそりの音が聞こえてくるようでした。

棗は玄々斎お好み豊兆棗、茶杓銘は「氷柱」です。
拝見をお願いした蓋置は、三人の天使が手をつないでいて、
ガラス製のように見えましたが鋼製だそうです。

後炭や薄茶の間に、初対面に近い関係にもかかわらず、
いろいろなことが愉しく話し合われ、お茶の持つ力に感謝です!

さりげなく散りばめられた、クリスマスのご趣向を堪能しましたが、
後礼を書きながら、ご亭主がサンタさんだったことにやっと気が付きました。
黒地にモミの木やトナカイのそりが描かれた帯をお召しになった
サンタさんから、今年最後に素敵な茶事をプレゼントして頂きました。

Merry Christmas ’2011
               
                          

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クリスマスの茶事へ招かれて (1)

2011年12月26日 | 思い出の茶事
12月25日、クリスマスの茶事へ伺いました。

ご亭主のOさんと知り合ったのはほんの1か月前ですが、
何か響きあうご縁を感じ、メールでの交流が始まりました。

「ご丁寧な自己紹介をありがとうございます。 
 ・・・いつか、Kさんと私をご自宅での一服へお誘いください。
 くれぐれも無理はなさらないでください・・・」

そんなメールがきっかけになって、クリスマスの日に茶事へお招き頂きました。
お手紙に添えられた地図を見ながら、見知らぬ街を辿ると、
閑静な住宅地の一画にOさん宅がありました。
仕事場である診察室兼書斎が待合になっていて、つい物珍しくキョロキョロ。

半地下のような設計になっている待合(書斎)の窓から庭の木々が眺められ、
山中の景を思わせます。
文透かしの煙草盆に黄瀬戸の火入が置かれていました。
Kさんが板木を打つと、熱い昆布茶がだされました。
半東なしで、Oさんお一人でこなされています。

             
                  (人待ち顔の黄瀬戸火入の灰型)

初めてのお宅で、「茶室はどこかしら?」状態ですが、
実は此のへんがとっても楽しいのです。
ご案内に従い、玄関から露地草履を履き、建物をぐるっと半周すると、
庭へ入る木戸があり、その向こうに椅子が二つ用意されていました。
向うに蹲が見え、筧の水音が清らかに響いてきました。

まもなく、庭に面したガラス戸が開けられ、ご亭主が現れました。
蹲をつかい、挨拶を交わし、
「どうぞお入りください。こちらに踏み台が置いてございます」
蹲をつかい、中へ入ると窓の板間から一段と下がったところに廊下があり、
その向こうが障子の入った四畳半の茶室になっていました。

床には足立泰道老師の筆で「無事」、
釜は平丸筋釜、海老のカン、地紋に海老の髭が意匠されています。
改めてご亭主とご挨拶を交わしました。
「茶事をする機会がありませんので
 仕事の合間に茶事のことをあれこれ考えたりして、
 楽しみながら今日を迎えることができました」
というご亭主の言葉が嬉しく、安堵しました。

炭手前が始まりました。
ご趣向で、初炭所望となり、炭を置かせて頂きました。
炭の置き方ですが、何も考えずに、火が熾きるように隙間を開けて置きましたが、
あとで研究会でお教えいただいた冨士田先生のお言葉を思い出しました。

「懐石、中立の後の濃茶に合わせて、炭を置くように・・・。
 懐石の時間の長短、人数にもよりますが、早めに沸きすぎる傾向があるので、
 初炭の置き方は火がゆっくり熾きる工夫がほしい・・・」
というような内容でした。
すぐに火が真っ赤に熾って、
「濃茶まで火勢が持つかしら?」と心配になりました。

香合はかわいらしい雪だるま、隅田川焼です。
香銘も香元もはじめて伺う京都のものをご用意いただきましたが、
失念してしまい、ごめんなさい。

               

「軽い点心で・・・」とのことでしたが、
寒菊の葉や紅葉をあしらった盛付が美しく、一つ一つ嘆声を上げたくなるほど
美味しい点心で、Kさんと感激しながら賞味しました。
煮物椀は、カニ真蒸のクリスマスツリーで星形の柚子が添えられ、
モミの木を連想するヨモギ麩(?)とともに美味しく頂きました。
お持ち出しをお願いし、ご亭主と歓談しながら頂けたのも良かったです。

やがて主菓子が出され、中立となりました。
                                

        クリスマスの茶事へ招かれて (2)へ 
 
        写真は、神戸異人館のクリスマスの飾りつけです。


骨董市の掘り出し物

2011年12月24日 | 茶道具
Merry Christmas !       


今朝は寒いですね。 横浜でも震えあがっています・・・。

久しぶりに平和島の骨董市へ行ってみました。
(正式名称は「平和島 全国古民具骨董まつり」です)

この骨董市の魅力は、何だか訳の解らない掘り出し物があることでしょうか?
それから、茶道具以外の物が多いので、見立てを捜すのも面白いかも。

お目当ては、籠と古布でした。
籠に布を貼りたくて、民具のような古い味のある籠を捜しました。
けれど、籠とのご縁はありませんでした。
古布も気に入ったのは値段が高く、手が出ません。
やっと布製の「赤い椿」(写真)を一つ買いました。

掘り出し物もなく、疲れてもう帰ろうかしら・・・と思う頃、
店先に無造作に置いてある一品が目に留まりました。
見れば、東美正札会で似たようなものが〇万円で売られていたような?
うそのような値段(ナイショです)でしたので、値切るのも忘れて購入しました。

これが掘り出し物です(クリックすると少し大きくなります)。
             
                  

生け花に使う道具一式(小刀、のこぎり、ペンチ、花ばさみ、もう一品?)が
布製の道具入れに収められています。
風炉の灰型に使う灰匙や筆を入れる、このような道具入れを
作りたいと思っていたので、応用できそうです。

内側に張られている布は更紗でしょうか? とても素敵です。
調べてみると、すぐに使える道具ばかりでしたが、花ばさみに錆がありました。

それで、散歩途中で発見した「高橋刃物製作所」へ持っていきました。
ここは包丁、小刀、はさみ、農具などの刃物を製造しています。
販売もしていて、料理関係者が包丁を買ったり、研ぎにだす店のようです。

                 
                 

「少しお待ちいただけますか?
 すぐにかかりますので」と、店番のお姐さん。
店内にはお客さんが三人ほど待っていましたが、
ショーケースの包丁やハサミを見ていると、まもなく研ぎ上がりました。

同行の主人は、新しい包丁をまた買いました。
京都で料理修行をするつもりかしら? ひそかに期待しています。
親方が奥の工場から出てらして、包丁の使い分けや研ぎ方を主人に教えてくれました。
私は、お姐さんおすすめの「さびとり」を買って、早めに対処することにします。

                           

古都  町家探訪(4)

2011年12月22日 | 京都へ家うつりします
町家を借りる話が進み、一部改修して頂けるかどうか、
大家さんへお尋ねしていました。
すると、思いがけないメールが不動産屋Hさんから届いたのです。

    ご要望の内容を大家さんにお伝えしましたところ、
    「出来るだけご意向に沿うように検討します」
    とのことで、以前にこの町家の改修を担当された設計士さんと
    相談してくださいました。

    設計士さんへ見積もりを依頼されたところ、
    「検討くださっているお客様の意向を直接確認した方が
     行き違いがなくてよいのでは?」
    という話になりました。
    そこで、京都にお越しいただくことは可能でしょうか?
    もし可能でしたら、その日程をおしらせください。
    設計士さんと日程調整します。

町家のことをよくわからないでコトを決めようとしている私たちにとって
専門家が立ち会ってくださるのは、とても有難いお話しでした。
それで、その町家をまだ見ていない主人と京都へ向かいました。

約束の時間より早めに着いたので、十二段屋(丸太町)で昼食後、
周囲をぶらぶら歩き回り、近くの神社に「無事成就」をお願いしたり、
スーパーの品揃えを見たりしました。

               

路地の入り口でHさんが待っていてくれました。
小さな路地なので「わからないのでは?」と心配してくださったのです。
設計士のSさんもご一緒です。
戴いた名刺に「京町家作事組」とありました。

「京町家作事組」は、「京町家net」という京町家を保全・再生・活用するための
プロジェクトに属していて、町家再生の実戦部隊です。
最初に訪れた「京町家情報センター」も「京町家net」の一つです。         

大家さんにお目にかかってご挨拶し、みんなで町家へ入りました。
家というものは人が住んでいる時と、住んでいない時とで、
こんなにも印象が変わるものか・・と思いながら、
「お茶」の温もりが消えた、寒々とした空間を眺めました。

台所は、前借主Sさんが町家の伝統工法にこだわって、
わざわざ床板を取り外して通り庭へ戻したのですが、
また、床板を張りたいということで、ややっこしいことです。

この辺りが同じ「町家に住む」ということでも、住み方やこだわりに
違いが出てくるところなのかも?
町家の伝統的工法や風情は大好きですが、毎日の生活も大事にしたいです。

               

家に合わせて暮らすのか、生活に合わせた家にするのか、
町家の個性と利便性との妥協点を捜すことになりそうですが、
住みながらゆっくり考えていければ・・・と思います。

しかし、2時間の打ち合わせ中に身体(特に下半身)が冷え切ってしまい、
これからが本番の「京の底冷え」恐るべし・・と、
見えない敵(?)に震えあがったのでした。 (つづく)
 
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     写真は、「お参りした神社」
           「昼食に食べた十二段屋のすずしろ」
           「町家内部」