今日は大晦日、今年のトリは除夜釜です。
暮れも押し詰まった27日に除夜釜へお招き頂きました。
「除夜」とは大晦日のこと、大晦日の夜に釜を掛け、
今年一年を静かに振り返り、我が身についた塵を祓い清め、
無事に新年を迎えられることに感謝しながら茶を点て、
客にふるまい、我ものむ・・・そんな除夜釜に憧れていましたので、
とても嬉しいお招きでした。
13時にお宅へ伺うと、いつもと違い雨戸が閉められていました。
ほの暗い待合へ入ると、丸行灯が柔らかい光りを投げかけています。
床には「富士越しの龍」、今年の干支にちなむ軸が掛けられ、
書院棚には伏見人形の辰が飾られ、ちょっぴり寂しそう。
火鉢の黒い藁灰と紅い輪胴の火に見惚れていると
奥様が甘酒を運んでくださいました。
六畳の本席へ入ると、二つの灯りがありました。
早や暗闇に慣れた目にはとても明るく感じられるから不思議です。
正面の床に和歌が書かれたお軸を小灯(こともし)を頼りに、
一字でも読めたらとAさんと目をこらしましたが・・・。
寂蓮法師の歌で、筆は南山陰士とあとで伺いました。
ふりそむる今朝だに人の待たれつる
深山の里の雪の夕暮
朝早くから除夜釜の準備をされ、天気を心配しながらも
雪の夕暮の風情を愛で、客を待ちわびているご亭主のお姿が重なります。
向切の炉の傍に雀瓦をのせた菊灯台(了入造)が置かれています。
雀瓦の蓋は外されていて、夜咄の茶事の後座の設えでした。
炉には炭火が赤々と炉縁を照らし、大きな姥口の釜が掛けられ、煮えがついています。
仙叟好みの柏釜は寒雉造、正面に柏葉の文様があるそうですが・・・。
「大したことはできませんが、一年間の感謝の意を込めて
毎年除夜釜を掛けさせていただいております。
一年間いろいろお付き合い頂き、ありがとうございました・・・」
とご亭主はお心こもる挨拶をされて、待合や本席の設えについて
お話してくださいました。
それから興味深い茶のあかりのお話もたくさん・・・。
お菓子が運ばれました。
塩芳軒の「雪もち」、黒糖餡が珍しい大好きな一品です。
菓子器は、永楽和全の菓子鉢、豊楽焼の高坏、椰子の実手で、
どれも存在感がありますが、久しぶりに豊楽焼に遭遇して感激しました。
豊楽焼は焼物ですが、塗が表面に施されていてキンマになっています。
ごろんと不安定な椰子の実が面白く、青海苔味の丸い干菓子が入っていて
美味しく頂きました。
「薄茶を差し上げます」
水指が運び出され、薄茶点前が静かに始まりました。
総勢九名の薄茶を二服ずつ、さらさらと、なごやかにお話ししながら
美味しく点てて下さって至福のひと時でした。
ひしゃげた形の水指は、古田織部の指導を受けた初期の高取で、
内ヶ磯(うちがそ)焼というそうですが、ひしゃげた形の蓋も見事でした。
次々と薄茶が点てられる茶碗がどれも趣き深く、愉しく拝見させて頂きました。
主茶碗は八代大樋、それから替は暦手(道八造)、
八代焼と尾戸焼の茶碗も渋い味わいで、印象に残りました。
私のは三人の合作という凝った茶碗でしたが、聞きもらして残念・・・。
待合へ戻り、豪華なお弁当とご亭主手づくりの汁椀に舌鼓を打ちました。
お酒はえーと、熱燗の灘の・・・?です。
そして、待合の設えがガラリと変わっていたのにびっくり!
暗い床の中釘に何やら箒らしきものが?・・と思っていましたら、
「箒と言われると悲しいかな・・・。
払子(ほっす)と言って煩悩を振り払う力を持つ仏具です・・・」
もう一つ、伏見人形が辰から巳へ変わっておりました。
こうして、壬辰年から辛巳年へバトンタッチされ、
「先今年無事 目出度千秋楽」です。
水屋は奥様と次男さんでした。
ご家族であたたかくおもてなし頂き、感謝しております。
ありがとうございました!
皆さま、どうぞ佳い年をお迎えくださいませ。
来年も宜しくお付き合いのほどお願い申し上げます。
(写真はありませんで、詩仙堂その他です)
暮れも押し詰まった27日に除夜釜へお招き頂きました。
「除夜」とは大晦日のこと、大晦日の夜に釜を掛け、
今年一年を静かに振り返り、我が身についた塵を祓い清め、
無事に新年を迎えられることに感謝しながら茶を点て、
客にふるまい、我ものむ・・・そんな除夜釜に憧れていましたので、
とても嬉しいお招きでした。
13時にお宅へ伺うと、いつもと違い雨戸が閉められていました。
ほの暗い待合へ入ると、丸行灯が柔らかい光りを投げかけています。
床には「富士越しの龍」、今年の干支にちなむ軸が掛けられ、
書院棚には伏見人形の辰が飾られ、ちょっぴり寂しそう。
火鉢の黒い藁灰と紅い輪胴の火に見惚れていると
奥様が甘酒を運んでくださいました。
六畳の本席へ入ると、二つの灯りがありました。
早や暗闇に慣れた目にはとても明るく感じられるから不思議です。
正面の床に和歌が書かれたお軸を小灯(こともし)を頼りに、
一字でも読めたらとAさんと目をこらしましたが・・・。
寂蓮法師の歌で、筆は南山陰士とあとで伺いました。
ふりそむる今朝だに人の待たれつる
深山の里の雪の夕暮
朝早くから除夜釜の準備をされ、天気を心配しながらも
雪の夕暮の風情を愛で、客を待ちわびているご亭主のお姿が重なります。
向切の炉の傍に雀瓦をのせた菊灯台(了入造)が置かれています。
雀瓦の蓋は外されていて、夜咄の茶事の後座の設えでした。
炉には炭火が赤々と炉縁を照らし、大きな姥口の釜が掛けられ、煮えがついています。
仙叟好みの柏釜は寒雉造、正面に柏葉の文様があるそうですが・・・。
「大したことはできませんが、一年間の感謝の意を込めて
毎年除夜釜を掛けさせていただいております。
一年間いろいろお付き合い頂き、ありがとうございました・・・」
とご亭主はお心こもる挨拶をされて、待合や本席の設えについて
お話してくださいました。
それから興味深い茶のあかりのお話もたくさん・・・。
お菓子が運ばれました。
塩芳軒の「雪もち」、黒糖餡が珍しい大好きな一品です。
菓子器は、永楽和全の菓子鉢、豊楽焼の高坏、椰子の実手で、
どれも存在感がありますが、久しぶりに豊楽焼に遭遇して感激しました。
豊楽焼は焼物ですが、塗が表面に施されていてキンマになっています。
ごろんと不安定な椰子の実が面白く、青海苔味の丸い干菓子が入っていて
美味しく頂きました。
「薄茶を差し上げます」
水指が運び出され、薄茶点前が静かに始まりました。
総勢九名の薄茶を二服ずつ、さらさらと、なごやかにお話ししながら
美味しく点てて下さって至福のひと時でした。
ひしゃげた形の水指は、古田織部の指導を受けた初期の高取で、
内ヶ磯(うちがそ)焼というそうですが、ひしゃげた形の蓋も見事でした。
次々と薄茶が点てられる茶碗がどれも趣き深く、愉しく拝見させて頂きました。
主茶碗は八代大樋、それから替は暦手(道八造)、
八代焼と尾戸焼の茶碗も渋い味わいで、印象に残りました。
私のは三人の合作という凝った茶碗でしたが、聞きもらして残念・・・。
待合へ戻り、豪華なお弁当とご亭主手づくりの汁椀に舌鼓を打ちました。
お酒はえーと、熱燗の灘の・・・?です。
そして、待合の設えがガラリと変わっていたのにびっくり!
暗い床の中釘に何やら箒らしきものが?・・と思っていましたら、
「箒と言われると悲しいかな・・・。
払子(ほっす)と言って煩悩を振り払う力を持つ仏具です・・・」
もう一つ、伏見人形が辰から巳へ変わっておりました。
こうして、壬辰年から辛巳年へバトンタッチされ、
「先今年無事 目出度千秋楽」です。
水屋は奥様と次男さんでした。
ご家族であたたかくおもてなし頂き、感謝しております。
ありがとうございました!
皆さま、どうぞ佳い年をお迎えくださいませ。
来年も宜しくお付き合いのほどお願い申し上げます。
(写真はありませんで、詩仙堂その他です)