暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

許状式に励まされて・・・

2023年05月20日 | 暁庵の裏千家茶道教室

 

5月14日(日)に許状式をしました。

Iさん、SYさん、Aさんが真之行台子の許状を、Y氏が四ヶ伝の許状を拝受しました。

誠におめでとうございます!

立会人としてKTさんとT氏に参加して頂きました。

裏千家流ではこれから習う科目の許状を予め頂いてから修練することになっています。

許状式で暁庵は坐忘斎お家元の代理として許状を差し上げるので、いつも緊張感を持って臨みます。

 

いつものように床に利休居士の画像の御軸を掛けました。裏千家・今日庵に伝わる土佐光たかが描いた画(複製)ですが、今年4月19日に100才を迎えられた鵬雲斎大宗匠の素晴らしい賛があります。

  今日親聞獅子吼  
  他時定作鳳凰兒        宗室(花押)


  読み下しは、

       今日(こんにち)親シク獅子吼(ししく)ヲ聞ク
    他時(たじ)定メテ鳳凰ノ兒(ほうおうのこ)ト作(な)ル

今回は(毎回お話しする内容が少し違うのが、我ながら興味深いことです・・・)、

「今日、親しく茶の道の教えを聞くことが出来ました。いつの日か修練を積んで鳳凰の児と言えるような境地へ辿り着いてください」と。

・・・私自身も修行中の身で鳳凰の児とはなっていませんが、鳳凰の児をめざして共に修練を積んでいきましょう・・・というようなことをお話し、許状をお渡ししました。

これからも繰り返し稽古を重ね、努力することで、確実に身につく何かがあると思っています。そして、稽古だけでなく、茶事やいろいろなことを学び、考え、実行しながらお茶を大いに楽しんで欲しい・・・と願っています。

許状をお渡しした後に、立会人のKTさんとT氏からお祝いと激励のお言葉をいただき、許状を頂いた方からも感想、抱負や悩みなどをお話して頂きました。その中で

「私は山の高さがどれほど高いのかもわからない状態ですが、その山へ登りたい!です」とY氏。

その言葉にとても感動!しました。感動と共に深く私の心の内を衝き動かすものがありました。

なんて!素晴らしい意志なのだろう。一方で指導する立場の私は茶の道の理想や信念をしっかり考え、極めるべく努力しているだろうかと・・・反省もし、逆に自分の茶の道を進むべく励まされたのでした。

許状を頂くことは生徒さんの茶の道の道しるべとなりますが、暁庵にとっても新たな道しるべになってくれたました・・・ 共に一歩一歩ゆっくりでも歩んで(実行して)参りましょう。

その後、KTさんが真之炭、T氏が真之行台子、Iさんが唐物を披露してくださいました。

T氏の真之行台子の前に一旦、待合の椅子席へ移動し、こちらで菓子7種を縁高でお出ししました。

菓子7種は、薯蕷「兎」、金団「杜鵑」、練切「藤丸」、棹物「青楓」、餅「桜道明寺」、「煮物」(ピリ辛蒟蒻)、水菓子(キュウイン)です。

とても食べきれないのでタッパー持参でお持ち帰りしてもらいました。

真之行台子と唐物で濃茶を飲んで頂きましたが、お練り加減はいかがでしたか?

濃茶は「延年の昔」(星野園詰)です。

最後は員茶風(東はAさん)の薄茶です。順番に薄茶を点てて薄茶を飲んで、私もやっと干菓子と薄茶でひと息つきました。  

こうして許状式が無事終了し、安堵しています・・・。

       

許状式の次第とメモ

汲出し(桜湯、待合)~挨拶~許状伝授~お祝いの言葉~お礼の言葉~真之炭~菓子7種~真之行台子~昼食・休憩(真台子をしまい、唐物と員茶の用意)~唐物~員茶之式風で薄茶(全員喫し点てる)~終了の挨拶

 

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風炉の稽古が始まりました・・・カキツバタづくし

2023年05月15日 | 暁庵の裏千家茶道教室

   (「杜若」の御軸と花は「一尺アヤメ」です)

 

窓を開けると、爽やかな(ここのところひんやりした・・・)風がジャスミンの花の香りを運んできました。今年のジャスミンは花付きが悪いのがちょっと心配・・・。

さぁ~!5月5日から風炉の稽古が始まります。それに見学者がいらっしゃいますので、ちょっとお支度も風炉らしく頑張らねば・・・。

初風炉にふさわしい待合や床の掛物を何にしようかしら? と考えましたが、待合は短冊「薫風」(紫野・総見院 久祐師筆)にしました。

床には昨年は掛けずに終わった「杜若」(栖鳳画)を掛けることにしました。京都暮らし中に出逢った扇面「杜若」を表装して御軸に仕立ててもらったものです。

丁度、真MLのバーチャル香会「杜若香」へ久々に参席させて頂いたので、主催者T氏へのお礼の気持ちも込めています。

5日にIさんが唐物と薄茶(棚)を、6日にはM氏が初炭と薄茶(棚)、T氏が真之行台子を稽古しました。難しい唐物や真之行台子を風炉の最初の稽古でするわけは、14日に許状式があり、IさんとT氏が唐物と真之行台子の点前を披露するからです。

初風炉にふさわしい花が何か咲いているかしら? 庭のあちこちでひっそりと、雪ノ下、二人静、都忘れ、壷珊瑚、紫つゆ草、定家葛が咲いていて、シモツケや撫子も蕾をつけています。 

5日の待合のお花は、鮎籠(訂正:賀茂川)の掛け花入へ定家葛と都忘れを入れましたが、定家葛の水揚げが悪く、薄紫の花(名前が?)に変えてみました。

     (「薫風」の短冊とお花・・・待合にて)

翌日の朝、「一尺あやめが咲いているよ」とツレが教えてくれました。早速、初花の一輪を切り、古銅唐銅(尊式)の花入へ生けました。御軸とダブってしまいましたが、まあ~よろしいでしょう。

 

     (5月の或る日の薄茶の点前座)

5月の稽古科目は風炉の基本点前(薄茶、濃茶、初炭)です。

2科目を稽古して頂くので、薄茶でも平点前と棚を使った薄茶点前になります。たくさん茶道具を揃えているわけではありませんが、限りある中で生徒さんが選んだ道具組がとても楽しみです。

そんなお稽古の合間に根津美術館の特別展「国宝・燕子花図屏風ー光琳の生きた時代1658-1716」へ出かけました。会期が5月14日までだったので駆け込みでした。

    (国宝「燕子花図屏風」・・・ポスターを撮影しました)

何年ぶりでしょうか、本当に久しぶりの「燕子花図屏風」との対面でしたが、音声ガイドのお陰で作者・尾形光琳のこと、構図や色づかいの特徴、使われた貴重な絵の具など、改めていろいろな視点から鑑賞することが出来ました。とにかく間に合ってヨカッタ!です。

美術館庭園の「弘仁亭の燕子花」は終盤を迎えていましたが、それでも健気に咲いていてくれました。

       (弘仁亭の燕子花)

新緑の力みなぎる楠の大木が見下ろし、青楓に囲まれた茶室・披錦斎で、「燕子花」のお菓子で薄茶一服いただけたのも良い思い出です。

     (「終始一誠意」(青山書)の御軸・・・披錦斎にて)

 

カキツバタづくしの5月の前半でした・・・。

 

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令和5年5月・・・風炉の灰形と炉の湿し灰

2023年05月09日 | 暁庵の裏千家茶道教室

       床の御軸は「杜若」(栖鳳図)

 

5月2日と3日に炉を塞ぎ、風炉の準備をしました。

この日を選んだのは風が比較的少なかったからですが、それでも風が凪ぐ夕方16時~18時、午前8時~10時頃までを選び、灰を篩いました。

風炉は3つ、眉風炉、唐銅道安風炉、切掛け風炉です。腰と相談しながら2日掛けて眉風炉と道安風炉の灰を篩い、釜据えと灰入れが終わりましたが、切掛け風炉は先になりそう・・・。

5月5日から稽古が始まるので、4日にこちらも2回に分けて、腰痛のため途中で1回休憩を取りながら灰形を整えました。灰形は二文字押切です。

灰を篩ったばかりだと灰がふわふわして落ち着かないので、一日待ちました。

そのせいか、半年ぶりに持つ灰匙が思った以上に動いてくれて、スムースに二文字押切の灰形が出来たような・・・。

 

     (ベランダが灰を篩う作業場になります)

 

風炉の灰形といえば、昔、東京支部の研究会で伺ったN先生のお話が思い出されます。

一人の男性が手を上げて質問をしました。

「風炉の灰形が上手に出来ません。どうしたら上手に出来るようになるのか、どうぞお教えください」・・・すると、N先生はしばし沈黙していましたが、

「ところで、あなたは今まで何回灰形をつくりましたか? 200回以上つくりましたか?

 200回灰形をつくってみてください。200回つくると、きっと今のような質問はしないと思います」

これがN先生の回答でした。私は素晴らしい示唆に富む回答だと思い、「私も200回を目指して灰形を頑張ろう!」と思いました。

特に灰形はもう「やるっきゃない!」のです。回数を重ねながら、何処が悪いのか、どうしたら納得いくように出来るのか・・・と自問自答し、失敗しながらそのコツを探り、修練していくしかないのです。

素晴らしい示唆を頂いてから灰形を続けていますが、何回になったか回数はわかりませんが、15年近い歳月が流れました。が、未だ我が目指す美しい灰形(下の写真のような・・・)とは程遠いところにいます(トホホ・・・)。

 

 (某氏作の灰形です。こんな灰形がつくれたら・・・いいな!)

     (鉢植えですが、大好きな「定家葛」が満開です)

風炉灰を篩うのと同時進行で湿し灰を作っています。

夏の暑い日は避けて5月の連休あたりにやるように心がけています。でも、5月の紫外線はとても強いので麦藁帽子、長袖シャツ、軍手などで日よけ対策が必要です。

先ず取っておいた炉灰をザルで篩って炭やゴミなどを取り除き、2~3日くらいかけて炉灰を水洗いします。水を3回以上変えて炉灰を洗っては沈殿させ、上澄み液を洗い流し、小さなゴミを除きます。

上澄み液がきれいになったら液を捨てて、番茶を煮出した液を入れて撹拌し、2、3日放置します。その上澄液を捨てて、数日間乾燥させるためにそのまま放置し、天気の良い日に灰を古畳にあけて、さらに乾燥させます。

乾燥具合を見ながら、手もみして団粒を小さくし最後に、ザルで篩って湿し灰が完成です。

私のやり方ですと日数がかかりますが、天気や時間や身体と相談しながらのんびりやっています。

1年分を作って、大小2個のクーラーボックスに炭を数個入れて(炭は消臭のため)保存します。クーラーボックスがいっぱいになった時はとても心豊かな気持ちになります。

3月末頃に残り少なくなって、廻り炭の筋半田に使う湿し灰をあわてて購入することもありましたが、あまりの高額にびっくり! それで湿し灰づくりにせっせと励んでいます。

 

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「惜春のコラボ茶会」・・・橘楽庵の第4席へ

2023年05月07日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

          「円相 本来無一物」(小堀宗通師の御筆)

つづき)

橘楽庵の第4席(最終席)へ入らせて頂きました。

既に皆様が待合に集まっていたので、ご挨拶し、慌てて掛物を拝見しました。

「和敬静寂」(小堀遠州流・宗圓家元筆)の短冊が掛けられています。

「本当! みんなで相和して浮世の憂さを忘れて、誠心誠意感謝しながら、清らかな心持で茶席へ入り、一服頂きたい・・・」と思いました。

短冊の下に橘楽庵・Yさま自筆の絵入りの会記が置かれていて、じっくり読みたかったのですが、ユーモラスな雰囲気の小堀遠州公の絵を拝見して、思わずにっこり! 

第4席の正客は小堀遠州流S氏、次客T氏、三客暁庵、四客EKさま(次客から四客までは裏千家流)、五客KYさま(江戸千家流)、詰は小堀遠州流Sさまです。

すぐに白湯がだされました。白湯の出され方が小堀遠州流でした・・・

正客S氏だけ茶托のような台に白湯の茶碗が乗っています。本来なら全員が順番にこの茶托のような台に乗せて白湯を頂くそうですが、茶会なので省略し、次客からは台なしで頂き、詰Sさまがトライアングルを鳴らして合図し、腰掛待合へ動座しました。

腰掛待合で待っていると、第4席の亭主前田氏が羽箒を持って現われ、枝折戸で一礼を交わしたのち、蹲で身を清めて席入りしました。

床の御軸は「円相 本来無一物」(小堀宗通師の御筆)です。

「円相のようにまぁ~るく仲良く手とつないで、今日のコラボ茶会を一緒に楽しみましょう・・・」橘楽庵Yさまのお話に大きく頷いていました。

お花は杜若でしょうか、もうすぐ端午の節句ですね。

荷駄を背負った馬の香合が珍しく、何処か異国の香りがしました。

点前座の設えがとても素敵で、硯屏(けんびょう、筆を立てかける文具)を使うお点前と伺っていましたが、水指の左側に硯屏が置かれ、その前に蓋置があり、硯屏に柄杓が掛けられていました。

硯屏は遠州好み、七宝透瓢箪蔦絵という素晴らしいものでした・・・この時から小堀遠州流の魔法に掛けられ、次はどんなサプライズがあるのかしら?と興味津々でした。

 

                              (クリックしてね)

風炉先屏風は先代家元・小堀宗通筆の小色紙貼り混ぜ風炉先屏風、色紙は小堀遠州旅日記の和歌だそうです。水指はイタリー紅毛花弁丸型(小堀宗通箱書)です。

前田氏による「硯屏の点前」が始まり、Yさまが後見役でいろいろお話をしてくださいました。

前田氏(亭主)とYさま(後見)のコンビはもう息ぴったりで、お二人の長い交友と麗しい信頼関係をうらやましく思います。

硯屏に掛けられた柄杓を左膝上で構え、蓋置が置かれました。柄杓の構え方、蓋置の位置、袱紗のさばき方と清め方、茶巾の畳み方など裏千家流とはまったく違いますので、いつも目をまん丸くして拝見しています。

 (釣釜は「六瓢釜」、鵬雲斎好みというお心遣いが嬉しい!)

釣釜が掛けられ、釜は「六瓢釜」(鵬雲斎大宗匠好み、菊地正直造)、形良く無病息災を表している釜には6個の瓢が隠れているそうで、クイズみたいに種明かしをしてくださいました。

釣釜の鎖と金銀象嵌の弦(ツル)が優雅で素晴らしく、目を引きます。ふき漆が美しい炉縁には松唐草文様が描かれていました。

お菓子が運ばれ、「唐衣」(東宮製)という銘でしたが、紫のグラーデーションが繊細で美しく、上品な甘みを味わいました。銘々盆には百人一首が書かれ、敷紙の裏には英訳が貼られていて、こちらも心遣いがステキです。

     (紫のグラーデーションが美しい「唐衣」)

   ながらえば またこのごろや しのばれむ

       憂しと見し世ぞ 今は恋しき      藤原清輔

 

心を込めて薄茶が点てられ、客一同感謝しながら頂きました。

喉が渇いていたのでとても美味しく、心身が潤っていくようでした。薄茶は「和光」(丸久小山園)です。

主茶碗は、高い高台が存在感を放つ紅安南茶碗(京焼、国領寿人作)です。他にもYさまが選んでくださった安南手茶碗(蘭山作)、三島茶碗(森里陶楽作)、赤膚焼(大塩昭山作)などの茶碗を皆で鑑賞しながら、薄茶席ならではのお話が愉しく交わされました。

最後に拝見に出された茶器、茶杓、蓋置を書いておきます。

茶器は遠州好み鉄刀木粒菊棗(宗玄箱書)、逆樋の味わい深い茶杓は銘「好日」(小堀宗通師作)、拝見の出し方が裏千家流と違うので新鮮でした。

蓋置にびっくり! 小さな小さな旅用の硯だそうで、硯屏の前に置く蓋置としてこの硯ほどピッタリなものはない・・・と感心しました。

こうしてあれこれ楽しく過ごさせて頂いた1時間のなんと!短かかったこと。

でも、その凝縮された1時間だからこそ、かけがえのない交友のひと時だった・・・としみじみ思うのです。

皆さま、惜春の「好日」をご一緒させて頂き、ありがとうございました!

 

 「惜春のコラボ茶会」・・・暁庵の第1席へ   暁庵の第2席と第3席へ  

     暁庵の第4席へ   「惜春のコラボ茶会」の準備中です