暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東美アートフェアと青磁花入

2023年10月25日 | 茶道具

   (散歩みちで採取した野の花を桂籠に生けました)

 (薄、力芝、萱つり草、背高泡立ち草、アベリア、狗尾草、もう1種)

  

10月13日(金)~15日(日)まで東京美術倶楽部で「東美アートフェア」が開催されました。

なかなか行けませんでしたが、S先生から入場券を譲って頂いたので久しぶりに出かけることにしました。

初日の11時頃に到着すると、びっくりするほど入場者が溢れていて「コロナも一段落して、やっと美術やお茶の世界も活況を取り戻したのね・・・」と思い、活況ぶりがとても嬉しかったです。

4階へ上がり、先ずは4階から見始めました。内心、何か良い茶道具との出会いを期待していましたが、桁が1つか2つ違う値段のものが並んでいるのを見て、すぐに購入ではなく古美術鑑賞へ気持ちを切り替えました。

ブースによって、素晴らしい書の床飾りや古色のある花入に実ものなど秋の草花が風情よく生けられていて、カメラを持参しなかったのが悔やまれました(もちろん、店によっては撮影禁止もありましたけれど・・・)。

茶道具や古美術の他にも現代作家の絵画、古い日本の人形、竹製品、高麗や李朝の骨董など多彩なアートフェアです。先日出かけた徳川茶会の絵高麗槌形花入(瓢壷)とそっくりな展示品もありました。

4Fのお店で青磁の花入が目に留まりました。形の素晴らしさ、心に沁みいるような青磁色、優美で上品な雰囲気に惹かれて、手に取らせて頂きました。作家は川瀬忍氏、前からとても気になっていた青磁を追及している作家さんです。

「もう1つ、川瀬忍の青磁花入があるのでお見せしましょう。でも、こちらの方が好いと思い、こちらを展示していました」と女性の店主さん。

もう1つの青磁花入も見せてもらいましたが、最初に目にしたものにかないません。お値段を伺うと、なんとか手に届く額だったので、思い切って購入を決めました。

家に帰ってから古いなごみ(2015年7月号)の特集「陶芸家・川瀬忍とたどる あこがれの青磁」を読み直したり、早速、青磁花入へ金木犀を生けたりして楽しんでいます。(いつかお目にかけれるかしら?・・・)

 

 

なごみ(2015年7月号)より川瀬忍氏の一文を転載しました。

 

  青き姿へのあこがれ     文・川瀬 忍  

天青、紛青、藍青、灰青、卵青、浅青、翠青、油青、碧青・・・・、

これらは、清時代の皇帝・乾隆帝が青磁の美しさを

表現するために名付けた青の色である。

それ以前、唐時代には 越州窯の美しい青を「秘色(ひしょく)」と呼んだ。 

・・・中略・・・

そして日本人(茶人)は、青磁の美しさを

砧(きぬた)、天龍寺、七官と作品の持つ位取りで分類していた。

それぞれの青の美しさと形の品格からである。

私の場合、その砧青磁と出会ったのが、

青磁の魅力にのめり込む第一歩であった。

形の厳しい南宋官窯、

柔らかな温かみを感じさせ、

見る人を包み込んでくれる汝官窯(じょかんよう)(伝世汝窯)。

すべて「青」である。

 

雨過天青(うかてんせい)という青磁の青を表わした言葉がある。

私はその言葉に、雨上がりの、

まだ湿潤なうるおいに満ちる大気を通して見た、

空の色を思い浮かべている。

 

               

追伸)

たくさんの美術品を見くたびれて、休憩所のベンチで、豪華かつ躍動的に生けられた生花の大作を見ながら休んでいました・・・。

隣に座っている女の方が立ちあがったので

「すみませんが、時計(携帯)を忘れて時間がわかりません。何時かお教えください・・・」と声を掛けました。すると、その方と顔が合い、もうびっくり! 15年前にお茶事や花月でお世話になったK先生でした。

15年ぶりの思いがけない再会に手を取り合って喜び合いました。

今つくづくと、K先生との再会が東美アートフェア最大の掘り出し物(宝物)だったと思うのです。

お茶の神さまとS先生に感謝でございます。

 

 


令和5年度 徳川茶会へ・・・(2)

2023年10月23日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

         (山ノ茶屋の副席)

つづき)

山ノ茶屋の副席(薄茶席)へ回りました。

薄茶席は山ノ茶屋と呼ばれるように、どこか風流な作りになっていて、開け放たれた窓辺から庭の緑が美しい茶席でした。茶室は上段、中段、下段によって構成され、床は奥に行くほど高くなり、天井や柱なども違うそうです。

床には二代将軍・徳川秀忠筆の和歌色紙が掛けられていました。「神風や・・・」の和歌は読めませんでしたが、色紙と書はとても美しいなぁ~と。

席主さんの説明によると、徳川家歴代将軍の中でも徳川秀忠は書に優れ、和歌をたしなむ方だったそうです。

床には秋の花がいっぱい・・・ススキ、紅水引、鉄線、男郎花、野紺菊が絵高麗の侘びた風情の花入に生けられていました。

絵高麗槌形花入、武野紹鴎所持と伝えられています。花の持つ力でしょうか、秋の花たちと絵高麗槌形花入がぴったりとお似合いでお互いを引き立て合っています。

槌形とは俵を横にした形の胴に口と高台がつけられていて、「俵壷(ひょうこ)」とも呼ばれています。白釉を掛けまわした上に、中央に牡丹文、両脇に唐草文と草花文の鉄絵が描かれています。とても風雅な侘びた印象の花入で、秋の花もお似合いだけど、武野紹鴎はどのような花を入れたのかしら?・・私だったら??・・・と想像するのも楽しい!

 

 

本席同様に副席の釜も垂涎ものでした。会記に「達磨堂 尾垂 下間庄兵衛」と書かれています。大徳寺塔頭・芳春院の達磨堂にあった香炉(八角形?)を尾垂釜に仕立てたそうです。胴に達磨堂の鋳込みがあり、細長い鐶が釜の上部に付いていて香炉鐶というそうですが、初めてお目にかかりました。

鉄絵・兎雲鶴模様のある水指は名残りの茶会にふさわしく、欠けた壷の上部を切り取って水指に作り直したそうですが、説明を伺わなければわからない出来でした。

主茶碗は渡辺又日庵作の黒楽が使われ、拝見にも回されました。   

上段の間の、昔は川を眺めたという窓辺の席で菓子と薄茶をいただきました。濃茶の後の薄茶はとても美味しく喉を潤していきました。

薄茶は濃茶と同じ松柏園詰の「初昔」、菓子(吉光製)がえ~っと?思い出せません・・・

副席から点心席(宝善亭1F)、道具飾席(宝善亭2F)へ回りました。

その後に徳川美術館へM氏と行きましたが、常設展と特別展をしっかり見て回るのは大変で、つい急ぎ足で・・・。

さすがに見ごたえがありました。特に次の4つの展示品が心に残っていて、今も思い出すたびにときめいています。またいつか、お目にかかれるかしら?

① 国宝 太刀 銘 来孫太郎作(花押) 正応五年壬辰八月十三日

     徳川家康所持  鎌倉時代  正応5年(1292)

② 猿面茶室の展示品の内

  芦屋籬に秋草文甑口釜   室町時代  15-16世紀

  伯庵茶碗      岡谷家寄贈  江戸時代  17世紀

 (ここで伯庵茶碗に逢えるなんて! 前に調べた伯庵茶碗10個のうちの一つ、岡谷家寄贈伯庵・徳川美術館蔵でした)

③ 国宝  納涼図屏風二曲一隻  久隅守景筆

 (昔から大好きな図でしたが、徳川美術館蔵とは知らず、今回感動の初対面で・・・感激一入でした)

 

記念に副席の会記を記します。

副席  山ノ茶屋 (太字は道具飾席(宝善亭2F)に展示されていました)

床  二代将軍・徳川秀忠筆 和歌色紙「神風や」

   伝来 藤田家ー森川如春斎

花入 絵高麗 槌形   裏千家十一代 玄々斎箱

   伝来 武野紹鴎ー尾張家茶頭 山本道傳家

香合 鎌倉彫 仙人

香木 伽羅  伝来 三代将軍・徳川家光ー尾張家二代光友正室・千代姫

釜  達磨堂  尾垂  下間庄兵衛作  

風炉 古銅 遊鐶

水指 鉄絵 兎雲鶴   遠州流八世宗中箱

茶器 葵紋散蒔絵 棗

茶杓 織田道八作 共筒  銘 こなた共六本の内

茶碗 萩 三島写 俵形  伝来 尾張家二代・徳川光友

 替 渡辺又日庵作  黒楽   安井家寄贈

建水 塗曲

蓋置 竹

御茶 初昔    松柏園詰

菓子       芳光製     以上

 

     (晩秋の野の花を生ける・・・我が家の床ですが)

 

     令和5年度 徳川茶会へ・・・1)へもどる

 

 


令和5年度 徳川茶会へ・・・(1)

2023年10月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

    (徳川茶会の会場の徳川美術館・・・曇り、時々秋時雨

 

10月9日(月、祭)に令和5年度・徳川茶会へ出かけました。

10月8日(日)から11月3日(金、祝)中の開催日(8日間)を表千家、裏千家、石州流、宗徧吉田流、大日本茶道学会が持ち回りで担当しています。

念願の茶会の一つでして、社中M氏が茶券の手配をしてくださり、この度初めて参席できて嬉しいです。

茶会の会場も主催も徳川美術館で、本席・濃茶席(餘芳軒)、副席・薄茶席(山ノ茶屋)、点心席(宝善亭1F)、道具飾席(宝善亭2F)が設けられていました。

     (同席の皆さまと本席の外待合へ向かいます)

 

M氏が開館1時間前から並んでくださったので、運よく第1席目(18名)の本席・餘芳軒へ入ることが出来ました。

寄付(後で入る薄茶席の山茶屋にあり、ちょっとわかりにくい・・・)の床には徳川家康の書状、「茶壷口切・・云々・・長原弥左衛門尉宛」が掛けられていて、口切の季節の到来を思わせます。

 

さて、本席の床には「応無所住」

鎌倉時代に来朝した中国の高僧・一山一寧(いっさんいちねい)の墨蹟です。辺りを祓い清めるような凛とした気迫と、枯淡を感じる筆遣いに圧倒され、惹きこまれて、その意味するところと共に「応無所住」がM氏と私に迫って来ました。

伝来は徳川家康の遺品(駿府御分物)として尾張徳川家・初代の徳川義直へ伝わりました。署名も落款もないそうですが、徳川家康のお気に入りだったとか・・・。

M氏が昨年準教授を拝受した折にM氏にふさわしい禅語と思い、お贈りした軸が「応無所住 而生其心(おうむしょじゅう にしょうごしん)」でした。

「ここでこのような素晴らしい墨蹟に出合うなんて! これだけでも来て良かった!」と思いました。

床の青磁浮牡丹の花入に西王母の蕾が一輪、生けられています。

床脇には唐物茶壷(銘「安国寺」)、こちらも伝来は徳川家康から尾張初代・徳川義直です。

・・・そして、炉に掛けられた釜(芦屋、松竹梅)がもう~垂涎でした。釜肌や蓋のやつれた風情と言い、芦屋の持つ高雅な文様、釜の気品存在感が上り立ち、しばし見惚れてしまいました。(独り言・・・こんな釜を懸けてみたい

その釜の湯で表千家流のお点前で薫りよく濃茶が練られました。主茶碗は会記に書かれた副茶碗の高麗雲鶴が用いられ、拝見にも回されました。濃茶は蓬左の昔、とてもまろやかでよく練られ、美味しゅうございました。久しぶりに表千家流のお点前を拝見できたのも嬉しく心に残りました。

主菓子は銘「玉兎」(栗きんとん)で、両口屋是清製です。織部の銘々皿(幸兵衛窯)でだされ、皿はお持ち帰りでした。

      (心空庵・・・徳川美術館の茶室の一つ)

濃茶席(餘芳軒)のお道具はどれも素晴らしく(流石!徳川茶会!)、記念に会記を記します。(太字は道具飾席に展示されていました)

 

本席  餘芳軒   

床  一山一寧墨蹟「応無所住」 伝来 徳川家康ー尾張家初代・徳川義直

床脇 唐物茶壷 銘 安国寺 伝来 徳川家康ー尾張家初代・徳川義直

花入 青磁浮牡丹

香合 呉須赤絵 扇  遠州流八世・宗中箱 伝来 尾張家二代・徳川光友

釜  芦屋 松竹梅 

長板 真塗

水指 染付 獅子麒麟 象耳

杓立 古銅 柑子口  金森宗和箱  岡谷家寄贈

飾火箸 砂張 椎頭         岡谷家寄贈

茶入 大名物 瀬戸 銘 筒井 伝来 筒井順慶ー尾張家初代・徳川義直

仕覆 角龍金襴  雲麒麟金襴

茶杓 豊臣秀吉作 共筒 銘 ひがし山ごぼう

茶碗 大名物 大井戸 銘 大高麗 伝来 安宅冬康ー尾張家初代・徳川義直

 副 高麗 雲鶴 歌銘 高浜  松尾流六代箱

建水 唐銅 銀象嵌

蓋置 唐銅 七宝透

御茶 蓬左の昔

菓子 銘 玉兎   両口屋是清製

器  銘々皿    幸兵衛窯製       以上

 

      令和5年度 徳川茶会へ・・・(2)へつづく

 

 


「野月の茶事」を終えて・・・(3)後座は夕去り風

2023年10月14日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

      (後座の席中です・・・夕去り風に蝋燭を灯して)

つづき)

銅鑼の合図で蹲を使い、後入りです。

野月にこだわり、夕去りの茶事風にしたかったので、雨戸を閉め、蝋燭(燭台2つ、小灯し1つ)を灯しました。

そんな私の試みを知っていたのでしょうか・・・茶事の数日前に宇和島市に住むお茶の先輩Kさまから大きな燭台が2つ送られてきました。鉄細工を趣味としているご主人が特別に作ってくださったとか・・・嬉しく有難く、早速使わせてもらいます。

ススキとシュウメイ菊を古銅桔梗口花入に生けました。庭のシュウメイ菊の蕾が1つ、今にも咲きそうでしたがなかなか咲いてくれません。毎日祈っていました。

・・・当日の朝に一輪だけ咲いてくれて、もう感激! 

 

       (ススキとシュウメイ菊)

蝋燭の灯に温かく見守られて、茶入を清め、茶杓を清めて、濃茶を茶入から掬いだし、一心不乱に濃茶を練りました。

蝋燭の元では茶碗の中はほとんど見えません。何処かで「心眼で練るのよ・・・」というN先生のお声が聞こえて来るようでした。

気持を集中し手先の感覚を研ぎ澄ませて、湯を入れ、茶筅で濃茶を練り始めると、すぐに好い薫りが立ち昇りました。濃茶は「延年の昔」(星野園詰)です。

「美味しい濃茶が練れますように・・・」と念じながら各服で4碗を練り上げ、お出ししました。正客M氏の主茶碗は黒楽(一入作)、次客KRさまは萩焼、三客Y氏は大樋焼、詰Iさまは高麗三嶋です。

「お服加減はいかがでしょうか?」「大変おいしく頂戴しています」

その声を伺って心から安堵します。

茶入は薩摩焼の胴締め(15代沈壽官作)、仕覆は能衣装裂(小林芙佐子仕立て)、茶杓は銘「無事」で後藤瑞巌師の御作です。

後炭の時に風炉中を拝見して頂きました。後炭で胴炭が上手に割れたのと、正客M氏から「胴炭が割れてご馳走ですね・・・」とお声が掛かったのが嬉しかったです。

 

 

後炭で炭を直し、薄茶になりました。

実は、薄茶が一番のご趣向で、風炉を中央に動かして茶箱の月点前で薄茶を差し上げました。お点前は半東のKTさんがつとめます。

茶箱の月点前は、茶箱の中でも一番美しいと言われており、香(白檀)を焚き、器据(きずえ)やウグイス(これに茶筅を立てる)を使ってお点前します。

器据は、茶箱の蓋とほぼ同寸の板4枚を紫の紐で綴じつけたもので、器据を広げた上に道具を置き合わせ、点前をします。器据は溜塗で秋の野月の蒔絵が描かれています。箕輪一星作です。

 

    (野月の蒔絵の器据・・・茶箱・月点前にて)

KTさんの流暢な月点前で薄茶が4碗点てられました。薄茶は「舞の白」(星野園)です。

正客M氏に出された主茶碗は手に取ると驚くほど軽く、ギヤマン製なのがサプライズの茶碗です。

茶箱は麻葉一閑張で、高台寺蒔絵の香合、棗、茶筅筒があり、茶巾筒と振り出しは京焼です。この茶箱はKTさんが茶名拝受の折に恩師から頂いた記念の御品でした・・・。ギヤマン茶碗と茶箱の写真がなく残念です。

 

       「秋の薔薇」 (山岡善高作)

       銘「淡路」 (琴浦窯 桐山作)

次客KR様は「秋の薔薇」(山岡善高作)、三客Y様は虫明焼12カ月茶碗の1つで「紅葉」(森香泉作)、詰I様は銘「淡路」(琴浦窯、桐山作)で薄茶を差し上げました。

薄茶席では半東でしたので、社中のお客さまとお道具や入門当時の思い出などを親しくお話しできて、普段の稽古とは違う親密感や一座建立の連帯感を心地よく感じました。でも、そう感じたのは私だけで、お客さまは緊張されていたかもしれません・・・。

さて今回も、5月に立礼の茶事を始めてから5回目の茶事を無事に愉しく終えることが出来、安堵しています。

今回は社中の方がお客だったこともあっていろいろな想いが去来しますが、半東KTさん、水屋AYさん、懐石・小梶由香さんの惜しみないご協力に感謝いたします。

皆さま、ありがとうございました!  

   

     「野月の茶事」を終えて・・・(1)へ   (2)へ  

      野月の茶事支度・・・花を生ける

 

 


「野月の茶事」を終えて・・・(2)

2023年10月08日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

         (初座の点前座の設え)

つづき)

挨拶が終わると早や12時近くになり懐石をお出ししました。

またまた伏傘懐石です。颯々の茶事曉雪の朝茶事夕去りの茶事に続いて4度目ですが、社中のお客さまに経験して頂きたくって伏傘懐石にしました。

今回も小梶由香さんに懐石をお願いし、給仕は水屋のAYさんが前回の夕去りの茶事に続いて活躍してくださいました。

 

 

伏傘懐石の最初の御膳です。飯椀に2回分のご飯を入れ、蓋は汁椀をかぶせます。向付を正面に置いて持ち出します。

盆に一人二杯分の汁の入った金色(鍋)を載せて正客へ持ち出し、セルフサービスで汁をよそっていただきます。

伏傘懐石の献立を記します。テーマを取り入れてくださった向付の鯛の月見仕立て、そして今や高級魚となった秋刀魚の八寸、なめこ、南瓜、秋茄子・・・季節のシュンを取り入れた懐石料理をきっとお客さまは舌鼓したことでしょう。

献立(小梶由香作成)

  飯   二杓

  汁   合わせ味噌 なめこ みつば

  向付  鯛 月見仕立て 浅草海苔 山葵

  椀盛  南瓜饅頭 隠元 青柚子

  焼物  丸茄子鳥味噌餡

  預け鉢 小芋 とり オクラ

  箸洗  蓮の実

  八寸  秋刀魚煮 ししとう焼き

  湯斗

  香の物 沢庵 赤蕪 胡瓜

  酒   「大七」(だいしち) 福島県二本松市 大七酒造

     (椀盛  南瓜饅頭 隠元 青柚子)

 

     (初炭に用いた玄々斎好みの松唐草炭斗)

初炭になり、玄々斎好みの松唐草炭斗を点茶盤の下段から取り出し、水指前に置き、灰器を持ちだし点茶盤下段の右側に置きました。円椅を風炉前に動かして座り、羽箒、香合、袱紗をさばいて釜の蓋・・・と社中の皆様が見つめる中、手前を進めていきました。

下火は丸ギッチョを4本入れてましたが、伏傘で懐石がスムースに進んだので十分間に合いました。下火を直し、炭を置きます。

香合は琵琶香合(山中塗の中村孝也作)、武蔵野を彷彿させるススキが原に月が上る蒔絵が描かれていて、「野月の茶事」に使わずにいつ使うの?と思いながら選びました。香は沈香(松栄堂)です。

 

   (主菓子は「すや」の栗きんとん、銘「やまじ」です)

待合の椅子席へ動座して頂き、半東KTさんが主菓子をお出しし、中立のご案内をしました。

主菓子は岐阜県中津川市の「すや」の栗きんとん、銘「やまじ」です。水屋でお相伴しましたが、しっとりとした栗きんとんに小さな栗が絶妙に混ざり合ってとても美味しく、「すや」の栗きんとんをご用意できてヨカッタ・・・。

先ほどの通り雨で腰掛待合が濡れて使えず、銅鑼の合図で待合から露地へ出て頂き、蹲を使って後座の席入りをしていただきました。 つづく)

 

    「野月の茶事」を終えて・・・(3)へつづく  (1)へ

     野月の茶事支度・・・花を生ける