暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東海道を歩く(1) 吾妻山からの富士

2010年01月31日 | ハイキング・ぶらり散歩
1月のハイキングは東海道を歩きました。
コースは、大磯駅から湘南平、浅間山、高麗山を経て
花水橋を渡り、旧東海道を歩き、平塚駅の予定でした・・・。

その日は快晴、絶好の富士山日和です。
電車に乗ると「先ずは富士山を観たい・・」ということになり、
すぐに予定変更。
富士山のビューポイントという吾妻山へ向いました。
二宮駅で下車し、急登の階段を30分ほど登ると山頂です。
斜面には水仙が咲きそろい、甘い芳香を漂わせていました。

富士山、箱根連山、相模湾、伊豆半島が見渡せる山頂は、
菜の花が花盛りで、カメラを持った人たちが
「富士山と菜の花」を撮ろうと溢れていました。
私も一枚パチリ。

二宮から大磯をめざし東海道を歩きました。
軒の低い家並み、格子戸の家に東海道を偲びながら
道祖神に手を合わせたり、梅の花に見とれたり、
大銀杏の巨大な乳に驚いたり・・・知らない街は新鮮でした。

          

一里塚を過ぎて地図をみると「県立大磯城山公園」がすぐそばです。
ここは元三井家別邸の跡地で、かつて国宝「如庵」があった処です。
友人に愛知県犬山市へ移築された「如庵」のことを話すと、
寄り道することになりました。

三井別邸・城山荘が建っていた丘の休憩所で昼食を広げました。
今日はコンビニで買ったおにぎり2個だけです。
その代り(?)会津菓子「」を懐紙にだし、
平和島骨董市で購入した根来塗り(風)木碗で
薄茶をニ服ずつお点てしました。

キラキラ輝く海を背景に長閑な丘での点前は心地好く、
友人たちも「美味しい!もう一服」と喜んでくれて、
1リットルのポットを持参した甲斐がありました。

      (つづく)     
    写真は「吾妻山からの富士山」と「双体道祖神」                      


                        

釜師長野家の初釜

2010年01月28日 | 茶会・香席
釜師の長野家の初釜へお招きいただきました。

・・・ところが、新年早々の大失敗。
乗るつもりの電車に遅れ、後の電車で行き先を間違え、
間違った事に気づかず、かなり先へ行ってから引き返し・・・
というドジで、お招きの時間に大幅に遅れてしまいました。
何とか初座の濃茶席へ滑り込み、冷や汗を拭いました。

長野てつ志さま、奥さま、長野新さま、新氏夫人の珠己さま
遅れましたのに何かとお気遣いいただき、感謝申し上げます。
残念ながら肝心なお話を聞き逃しましたので、
長野家初釜のハイライトである釜のことだけ書き留めておきます。

初座の釜は長野てつ志氏の「鷺文丸釜」が掛けられていました。
丸いお形が優しく、ざわつく心を鎮めてくれます。
釜肌、色が何ともいえない好い味わいでした。

中立で近寄って拝見すると、胴に鷺と水辺の景色の模様があり、
一瞬、鷺模様の古芦屋釜を連想しました。
鐶付は茄子でした(一富士 二鷹 三茄子の茄子でしょうか?)。
最近のお作ではないそうですが、
形、釜肌、色艶、模様ともに素晴らしく
初釜でのお出合いは何とも嬉しいことでした。

後座は「肩付釜(月光の銘あり)」が掛けられました。
長野新氏の作です。
初座の丸釜と対照的な、きりりと清新の気が漲る釜です。
肩の上方と下方では釜肌が少し違うように見えました。
胴に日(光)月の模様があり、鐶付は兎です。

謡曲「竹生島」の一節
   緑樹影沈んで
   魚木に登る気色あり
   月海上に浮かんでハ 
   兎も波を奔(カケ)るか
   面白の島の景色や 

を思い出し、日月の波間を兎が駆け抜けていく様が
頭の中をよぎりました。
とても清冽な一瞬でした。

後でお話を伺うと、昨年の伝統工芸東日本支部展に出展した作品で、
ご自身で初めて銘を付けられた釜だそうです。
きっといろいろ苦心、工夫されて、会心の一作となったことでしょう。
蓋は神輿蓋で、透かしのあるツマミは花びらと鳥の模様でした。
蓋もツマミも釜と一体となって溶け込んでいました。

最後に福引があり、お正客さまが引き当てた
長野てつ志氏作の「ふなくぎ」の鐶がこれまた素晴らしく、
羨ましかったです・・・。

釜師の初釜らしく、お二人の釜とご一家総出で
お心こもるおもてなしを頂き、お客さまとのお出逢いも楽しく
「今年は春から縁起がいいわいなぁ~」


                       のち 

     写真は、太郎冠者(有楽椿)です。

縁起菓子  小法師

2010年01月26日 | 閑話休題
先日、茶友からかわいいお菓子を頂戴しました。

八角形の箱を開けると、起き上がり「」が入っていました。
小豆餡と白小豆黄味餡の石衣でをかたどり、
赤い帯を巻いています。
一つだけ本物の玩具の「」がちょこんと座っていました。

会津に伝わる縁起菓子だそうです。
会津の人たちは初市の十日市で家族の数より一つ多く「」を
買い求めて神棚にお供えするそうです。

        

「そうだ。そうだ。仏様にお供えしなくっちゃ・・・」
あわてて「」をお供えしました。
上品な甘味の、どこか懐かしい石衣で薄茶を一服。
会津若松市の会津葵製でした。

五事式の会と埋火 (1)

2010年01月18日 | 茶事
今年も五事式の会がスタートしました。

五事式とは、七事式のうち五つの式を取り入れた茶事で、
修練のための一会だそうです。

初座は、廻り炭 懐石 菓子、中立のあと、
後座は、廻り花 且座 花月 一二三で、
客四人、亭主一人、炉の時季のみ八畳で行います。

我ら五事式の会のメンバーは六名、
亭主、半東、客を持ち回りで行います。
1月から3月まで月1回、3回を予定しています。
メンバーの半分が入れ替わりましたが、
参加条件は五事式を勉強しよう、やってみようという意欲があり、
3回連続して来ていただける方でしょうか。

新たなご縁が得られて、嬉しく頼もしく思っています。
みんなと気持ちを合わせて修練することが大事ですが、
勉強もし楽しみもする会になりそうです。

        

五事式は廻り炭之式から始まります。
互いに炭を置くことで、炭の持ち方、置き方、
つぎ方を拝見して、風情や変化の妙を学び合います。

亭主は炉中の火を巴半田へ全部とり、炉灰の中央を掘り、
火を1個埋めて灰をかぶせておきます。
この火を埋火(うずみび)といい、あとで下火として使います。

亭主のSさんが炭台の炭をたくさん炉中へついでくれました。
正客だったので、亭主がついだ炭を逆の順で筋半田へ上げました。
次に筋半田の炭を選び炉中へつぎました。

「花」を目指しましたが、出来は今一つ。
丸ぎっちょを二本一緒に持つのが超難しく、
握力と修練不足を痛感しました。
次客のIさんが正客のついだ炭を上げ、炭をつぎ・・・
一巡したので「炭にてお釜を」の声を掛けました。

ここで亭主は炭を全部上げてから埋火を掘り出し下火にします。
「埋火は?」
みんな期待と不安を込めて見つめます。

廻り炭のクライマックスですが、毎回埋火が消えてしまっていて、
巴半田に残っている火を持ち出して下火にします。
今回も残念ながら・・・。

実は埋火で上手に火が熾きたという経験がなく、
拝見したこともありません。
それで
「どうしたら埋火で火を熾すことができるかしら?」
と、茶事が終わってから皆さんへ問題提起してみました。

「灰の温め方が足りないのでは?」
「下火5個で暖めたつもりだけれど足りないかしら?」
「灰のかぶせ過ぎかしら?」
「もっと大きい火を埋火にしたら?」
 
「埋火で火を熾すこと」が課題の一つになりました。

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はじめての初香席

2010年01月15日 | 茶会・香席
茶友のIさんの初香席へお招きいただきました。
私は勿論、香席が始めての方がほとんどでした。
それで、別席で資料が渡され、ご説明頂きました。

先ず、香木の分類や鑑賞の基本になる
「六国五味(りっこくごみ)」をお話してくださいました。
六国とは、香木の産地や品質によって
五味とは、味によって香りの違いを分類するそうです。

  (1) 伽羅(きゃら)    苦味  ベトナム
  (2) 羅国(らこく)     酸味  タイ
  (3) 真那伽(まなか)  甘味  マラッカ
  (4) 真那蛮(まなばん) 甘味  カンボジア
  (5) 佐曾羅(さそら)   酸味  産地不明
  (6) 寸聞多羅(すもたら) 自然の味  スマトラ

一つの香木が一つの味という訳ではなく、いくつもの味があるので、
ゆっくりしっかり三回聞いて毎回の特徴をメモするようにとのことでした。

次の資料には「香道○○流 組香中十種 三夕香」とありました。
茶友の集まりなので、三夕の和歌より香銘がつけられています。

  一.浦の苫屋   二チュウ
  二.鴫立つ沢   二チュウ
  三.真木立つ山  二チュウ

  各一チュウ宛試み 残三チュウの内二チュウを選び本香とす
  焚かれざる一チュウを名乗り紙に記す

 名乗り  一.花も紅葉も
       二、心なき身にも
       三.その色としも

七事式の茶カブキと似ていて、最初に試みの香三種を聞きました。
「浦の苫屋」などの香銘を朗々と述べて次の方へまわします。
その後で本香を二種聞きました。

本香の一番目は「出香(しゅっこう)」、
二番目は何も言わずにまわします。
焚かれていない名乗りの香銘(例えば 花も紅葉も)と名前を
名乗り紙に書き、盆に掛けてまわしました。

本当は記録調書の方がいて、各自の名乗りを奉書に書き、
全当り者に「秋の夕暮」を添えるとのことです。
幸運にも「秋の夕暮」を頂戴しました。

一は伽羅、二は羅国、三は真那伽を焚かれたそうで、メモを見たら
「①バニラ 松の香 くせ弱し ②くせやや強し 樟脳系
 ③男の汗の匂い くせあり・・・」
とあり、ご指導のメモが役にたったのでした。

それからが大変。
Iさま心づくしの昼食をみんなでワイワイと賞味した後で
濃茶、薄茶を点て合って新春の一時を過ごしました。

ご亭主に感謝しつつ裏山に狸が遊びに来るというI邸を辞しました。
素晴らしい一日でした!
                        

                   新古今  藤原定家
   見渡せば 花も紅葉もなかりけり
          浦の苫屋の 秋の夕暮れ

                  新古今  西行法師
   心なき 身にもあはれは知られけり
          鴫立つ沢の 秋の夕暮れ
   
                  新古今  寂蓮法師
   さびしさは その色としもなかりけり
          真木立つ山の 秋の夕暮れ