「大ガラス」 吉村益信
横浜美術館コレクション展「ヨコハマ・ポリフォニー」が「トライアローグ」展と併設で展示されています。
創立30年を過ぎた横浜美術館は今回の展示(2021年2月28日まで)を最終として、大掛かりな改修工事に入るため、約2年間休館になるそうです。
休館前に所蔵の名品や優品を是非見ておきたい・・・と、こちらも楽しみに出かけました。
「ポリフォニー」とは、独立した複数の旋律とリズムの声部から成る「多声音楽」を意味するそうで、次のような解説がありました。
1910年代から60年代に横浜で育まれた作家たちの声と創作の響き合いに耳を傾けながら、横浜を磁場としたアートシーンを探訪します。この50年の間に横浜は関東大震災(大正12年、1923年)と第2次世界大戦による空襲(昭和20年、1945年)により2度も壊滅の危機に瀕し、そのたびに不死鳥のごとく復活を果たしています。
凄まじい破壊と創造のはざまで横浜に縁があり、育まれた作家たち・・・初めて名前を知る作家、有名な作家、大好きな作家や名前だけ知っていた女流画家もいて、写真を撮りながら楽しくまわりました。
順不同ですが、我が心の「ポリフォニー」に耳を澄ませて、気の向くままに心に残った作品を書き記しておきます。
「大ガラス」 (何を話しているの?)・・・ステキな女性にモデルをお願いした1枚
写真に一番多く撮ったのは「大ガラス」(吉村益信)でした。
展示室の入り口近くに巨大なカラスがいて、「う~ん、なんで? ここに「チコちゃんに叱られる!」のキヨエがいるの!?」
・・・でも、明るく広い展示場に「大ガラス」がユーモラスに空間を引き締め、他の作品を引き立て、独特な雰囲気のあるアートシーンを創出していました。「これだからアートって、面白い!」
「岩の上の女神」 ギュスターヴ・モロー 1890年頃
お馴染みの大好きな作品の1つで、今回見れて嬉しい! 女神の魅惑的な美しさ、いろいろ想像を掻き立てられる背景もさることながら、額縁の美しさにも惹かれます。2年後にまたこの画に逢えますように・・・。
「緑陰」 片岡球子 1939年(昭和14)
片岡球子(1905ー2008)は北海道に生まれ、1926年(大正15)から1955年(昭和30)まで横浜市大岡尋常小学校(現・市立大岡小学校)で教師をしながら横浜を拠点に日本画家として活躍した。「緑陰」は教え子を描いて、院展の院友となった記念作。
「三立婦」 江見絹子 1953年(昭和28)
「土」 江見絹子
江見絹子、お名前だけ知っていて、どのような作品を描く方か知りませんでした。
江見絹子(1923ー2015)は兵庫県生まれ。1951年(昭和26)に横浜に移り、ほどなく渡米、さらにパリで研鑽を積んだ。1955年(昭和30)に帰国後は、「土」などに見られる壁画にも似た抽象画に転じた。帰国後、横浜の山手にアトリエを構え、そこで終生制作に打ち込んだ。
川上澄生(かわかみ・すみお)
1859(明治28)川上澄生は横浜市紅葉坂に生まれました。3歳の時に東京へ移りましたが、異国情緒あふれる横浜の街並みを生涯愛し、文明開化を主題に制作を続けました。
以前、初恋をうたった「初夏の風」という詩とエキゾチックな版画に出会って以来、川上澄生のファンとなりました。
終生愛した横浜についても次のような詩を残しています。
「横濱」 川上澄生 (1967年)
よこはまは わがふるさと・・・
みなとのふねは まんかんしょく
たちならぶ いじんかん
ばしゃみちと いえるところあり
ばんこくばし は むかしのはし いまはいしのはし
(題がわかりませんが「コロナ禍にふさわしい作品」、村上義男作)
10日(?)のテレビで、コロナウイルスのワクチンを注射する針にデッドスペースがあり、6名分のワクチンが5名しか注射できないと報じられていました。ワクチンが届くのだろうか? いつワクチンを打てるのかしら? と、待ち遠しい思いでいたので、注射針のことが頭の片隅にこびりついていたのかもしれません。
この作品は、よくみると注射針が画面に貼り付けられているではありませんか。注射針を画材として使う発想にびっくりしたり、違和感なく注射針が溶け込んでいる作品も素晴らしかったです。 これぞ「コロナ禍にふさわしい作品」と思いました。「釘打ちシリーズ」も見てみたいです。
村上善男(1933-2006)は、盛岡、仙台、弘前と土地の文化を内包した作品を発表してきました。村上は1960年代から、注射針を画面に貼り付ける作品で一世を風靡しました。その後、弘前に移り住んでから開始された古文書や染め布を画面に貼り付けた「釘打ちシリーズ」では、民俗と現代美術を融合した新たな表現性を打ち出しました。
まだまだ紹介したい作品がありますが、2年後の横浜美術館での再会を待ちながら、こんへんでおしまいにします。
13時を過ぎていたので、近くのビルの蕎麦屋で昼食を食べました。冷たい蕎麦が美味しかった!!
外食も久しぶりでしたが、親子ずれの客がたくさんいらして、緊急事態宣言中とは思えない状況でした・・・。