
(つづき)
S先生がお持ち出しくださった茶碗を初釜の記念に記しておきます。
黒楽の主茶碗は大好きな一入作でした。
手に取ってじっくりと拝見出来て、なんて幸せなことでしょう。
程よい大きさの茶碗は形や作りに一入らしい味わいがあり、内側の寂びに歴史を感じます。
一入独特の朱釉が隠れるように胴に在り、「隠れ蓑」という不休斎の命銘がニクイです。
二碗目は古萩です。
井戸形の茶碗の内側が遠目に白蝶貝のように輝いて、手に取るのが楽しみでした。
どなたの銘かわからないそうですが、銘「富士」とある箱書を見せて頂きました。
三碗目は赤楽茶碗で、当代・15代楽吉左衛門作です。
当代作と言えば、暁庵が熱望しながら、叶わぬ夢とあきらめた楽茶碗です。
近づく者を遮って聳え立つ茶碗ではなく、穏やかで飲みやすい形の茶碗でした。
赤楽ですが、黒から灰色のグラーデーションを思わせる灰釉が美しく掛かり、流石、当代の作です。
胴のヘラ目も好ましく、手に取ると驚くほどの軽さでした・・・「好いなぁ~(ため息!)」
また、初釜できっと出会えますように・・・・。

茶入と茶杓も素晴らしいものでしたが、香合について書いておきます。
炭手前が無かったので、書院に香合が荘られていました。
濃茶の最後に香合も回してくださって、手に取って拝見することが出来ました。
10代旦入作の銘「鶴のたまご」(淡々斎の花押、箱書)です。
蓋の上部にベンゼン環化合物のような亀が描かれていて、目出度く鶴亀になっていました。
濃茶が終了し、薄茶は全員が薄茶を頂き、点てる員茶之式で行いました。
毎年、当番の班が楽しいアトラクションを考えてくださるので、こちらも楽しみでした。
皆さま、素晴らしい着物と帯をお召しなので、順番に点前座に座り、薄茶を点てる様子が何とも美しく、うっとり・・・。
初釜の三番目の楽しみとは、華やかでしとやかな薄茶の点前なのです。
員茶之式では十種香札の代わりに「上毛かるた」が使われました。
「上毛かるた」とは「群馬県のかるた」です。
小学生が郷土をよく知り、愛するようになってもらいたいと作られたものだとか。
群馬県の歴史上の人物、名所、名産等が読み込まれていて、群馬県人の郷土愛を感じるかるたでした。
S先生とIB氏も参加し、亭主はTさん、札元はYさん、目付はTさんです。
群馬県人・Yさんのお読み上げで、最初にOさんの「な」の札が当たりました。
「な」中仙道しのぶ安中杉並木 (なかせんどう しのぶあんなか すぎなみき)

中仙道の杉並木
安中市を通る旧中山道の両側に1㎞にわたって見事な杉並木があった。
江戸時代、宿駅を設け、一里毎にえの木を植え一里塚と並木が作られた。
最後に暁庵の「う」が当り、仕舞い花を務めました。
[う] 碓氷峠の関所跡 (うすいとうげの せきしょあと)

碓氷峠
日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の伝説に名高い峠で、関東地方の北西を押えているので、
昔から要地として知られた。中仙道がこの峠を通り、峠の下の横川に関所があった。
「上毛かるた」を楽しみながらワイワイ過ごした薄茶の後に、松花堂弁当と吸い物を頂戴し、お開きになりました。
末筆になりましたが、S先生、皆さま、2017年もどうぞ宜しくお願いいたします。
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