暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

忘れたくない「茶の教え」

2014年12月24日 | 稽古忘備録
 Merry Christmas!

今日はクリスマスイブ・・・
来年1月末に引っ越しが決まり、いろいろ片づけなくてはなりません(苦手です・・)。
いざ始めると、捨てられないものも多く、日々葛藤していますが、埋没していたお宝に出会う愉しみもあります。
大事に取っておいた「言の葉」のコピー類がでてきました。
出典不明もありますが、忘れたくないものをこちらへ書いておくことにします。

                  

1.募集された「座右の銘」の中から

人生の醍醐味は、開き直った時に味わえる

「優秀賞」に輝く。京都市の秋岡翔さんの自作とのこと。
受賞者コメント:ゼミ、サークル、バイト、就活の準備に追われる日々。ちょっとしたことから全てのバランスを崩し上手くいかない毎日にイライラしていた時に、普段、無口な父がポツリと一言。
大した意味は込められていなかったかもしれないが、この一言で前を向けた。
(出典は「目の眼」10月号No.409)

(感想)けっこう好きな言葉。茶事をしていると、開き直らないと前へ進めないことが多かったので、勇気づけられました。

               

2.忘れたくない「茶の教え」
・・・それは稽古ノートの表紙裏に印刷されていた、S先生のメモ(教え)です。
ノートは既になく、コピーだけが仕舞ってありました。

薄茶点前
〇 呼吸を良くととのえること
〇 吐く息の時に右手茶碗にいく
〇 釜の蓋をまっすぐにしてもってくる
  しづくを落とせば、そのお点前はゼロである
〇 自分が気持ちよく出来た時は我が出ている
〇 服の良き様に
  四季、寒暑、食前、後、に応じて茶を点てる
〇 一楽 二唐津 三萩
  一番最初に楽茶碗でけいこをすれば、すべて他の茶碗にも応用されていくことを言っている

点前上の注意
〇 点前の後には客同志で後礼する
〇 点前をくずすのは何時でも出来るから、絶対くずさないでけいこする
〇 点前は軽く、重く、ふくみをもってする
  ぎこちない点前は自分でなおすこと
  点前の働きに何時も気をつけること
〇 点前はゆとりを持って、環境に飛び込む
〇 けいこ上、湯水をこぼすのは修練が足りないからである
〇 茶は幾つになってもかくしゃくとしている所を見せるもの

・・・ここで終わっていますが、S先生(故人)の厳しく有難かったご指導がこれを見るたびに思い出されます( )。そして、いつも自分自身に問うのです・・・
「あなたの点前は?」「あなたのお茶は?」と。

                

来年は
  真摯な気持ちを忘れずに
  「じぶんのお茶」を大事に
  ゆっくり丁寧に暮したい・・・と今は思っています。
                                     

 
  

炉開きの日に・・2014年11月8日

2014年11月22日 | 稽古忘備録
                  だいぶ紅葉がすすんでいます

2014年11月8日はS先生宅の炉開きでした。
毎年、11月の最初の稽古日に炉開きのお祝いをしてくださいます。

床には「万年松在祝」、江雪和尚筆が掛けられ、
濃い紫の飾り紐で真行草に結ばれた茶壺が飾られています。
存在感溢れる茶壺は瀬戸の祖母懐(そぼがい)、鵬雲斎大宗匠により銘「香楽」です。
お軸と茶壺に再会すると、今年も炉開きへ参加できた喜びがこみあげてきました。

              

床柱の花入には白玉椿とハシバミが生けられていました。
竹花入は箆筒(へらつつ)写、職人が使う箆差しの形をしています。
本歌は四代仙叟の好みで、ごま竹の箆筒だそうです。
あとで「古宗室好 箆ら津々 碩叟(淡々斎)」の箱書きを拝見しました。

書院に置かれた優雅な「板文庫」に惹かれました。
料紙筥と硯箱を兼ねた文具で、文挟み板のような板に紐を通して、
上に料紙、硯をのせて紐で結び、書院などに飾ります。
手に取って拝見させて頂きましたが、料紙にさらさらと和歌を書くのでしょうか。
利斎作、蒔絵の硯箱は三代宗哲、文庫結びのひもかざりは友湖です。

              
                        珍しい板文庫              

ご挨拶の後、Kさんの台子の初炭手前から始まりました。
風炉から炉へ変わり、炉の設えが新鮮です。
淡々斎好の松唐草蒔絵の炉縁が炉開きの釜を華やかに惹き立てています。
釜は古芦屋の常張釜(上張釜とも)、胴に文字の鋳込みがありました。
釜の上に板状に突き出て、外側に張っている鐶付にびっくりです。
この珍しい鐶付は常張鐶付といい、唐犬釜や九輪釜にも使われているそうです。

常張鐶付なので、鐶も初めて見る常張鐶(掻立鐶とも)でした。
先生が手品師のように鮮やかに片方だけを返し、使い方をご指導頂きましたが、
何回も練習しないとかっこよく出来そうもありません。
釜が上げられ、炉中の様子、湿し灰の撒き方を実際に見せてくださったり、
炉開きの日の稽古は、道具や設えと言い、所作と言い、覚えることばかりで
頭がくらくらするほど満杯でした・・・。

             

初炭が終わると、湯が湧く間に大好物のぜんざいを頂きました。
先生と奥様の手づくりの粟ぜんざいは程よい甘さで、もう美味しく頂戴しました。
さて、炉開きの一番の楽しみな濃茶となりました。
いつも先生が濃茶点前をし、点ててくださいます。

先生の足運び、姿勢良い点前、流れるような所作、皆、息を呑んでみつめます。
ぷう~んと茶香が漂い、一碗目の濃茶が古帛紗を添えて出されました。
Tさんが茶碗を取り込み、一同総礼をし、次々と三服点てられた濃茶を頂きました。
丁寧に練られた濃茶は香り好く、まろやかな甘みが口の中でとろけるようです。
たしか「炉開き用の濃茶」で小山園だったような?
私は桜高台の古萩で頂戴し、古帛紗は淡々斎好みの七宝雪月花金襴です。

濃茶の後は、Yさんと私が台子薄茶点前のお稽古を兼ねて薄茶をお点てしました。
薄茶を頂きながら、炉開きのために準備してくださった、台子や道具組のお話を
愉しく伺いながら、先生のお心入れを一入感じ、一同幸せなひと時でした。
心の中でいつまでもこの時間が続いてほしい・・・と思いました。

午後も、行之行台子、台子の平花月とびっしりお稽古が続き、充実した一日でした。
先生宅へ伺う炉開きも最後かしら・・・寂しいより残念です。

                                   



炉開き(2013年11月)の日に

2013年11月24日 | 稽古忘備録
               (写真がないので昨年の写真です

2013年11月23日は先生宅の「炉開き」でした。
毎年、11月の最初の稽古日が「炉開き」となり、
先生が私たちのために濃茶を点ててくださる、嬉しい祝い日です。

床には「万年松在祝」、江雪和尚筆が掛けられ、
素晴らしい瀬戸の祖母懐(そぼがい)の大茶壺が置かれていました。
濃い紫の飾り紐で真行草に結ばれています。
この茶壷にまた逢えて嬉しく、見ただけで「炉開き」が実感されます。

床柱の花入には白玉椿と伊予水木が生けられていました。
花入は竹一重切、淡々斎銘「遠音(とおね)」です。
口切のあと、水屋から聴こえる石臼を引く音を
「遠音」と言うのでしょうか。

               
                     東福寺の紅葉 (21日撮影)

ご挨拶の後、台子の初炭手前から始まりました。
Fさんが緊張した面持ちでふくべ炭斗次いで灰器を運び出しました。
鐶(石目)が掛けられ、釜が上げられました。

釜は菊地文真形で五代寒薙造。
江戸時代後期でしょうか、時代を経て好い鉄味が出始めています。
浮き出た菊の花が炉開きに華やぎを添え、
淡々斎好の松唐草蒔絵の炉縁の立派さに目を見張りました。

ここで炉中、先ず下火について、
風炉と違い、炉用の炭は大きいので、炭の置き方を頭に描いて
下火3本の位置を考えるように、早速、講義が始まりました。
湿し灰の撒き方、灰匙の持ち方、撒く位置、何故撒くのか・・・。
さらに稽古か茶事か、風炉か炉か、炭火を早く熾したいか否か、
場合に応じた炭の継ぎ方を考えて、炭を置くように・・・など。

内心「へぇ~ほう~ひっ~!」
驚いたり感心したりため息をついたりしながら・・・
先生の手の動きを必死で追いかけます。
Fさんもきっと汗を掻きながら、身体と頭をフル回転させたことでしょう。

               
                       朝の東福寺・通天橋にて

火が熾きるのを待って、粟ぜんざいが運ばれ、美味しく頂きました。
先生と奥様が作ってくださったもので、嬉しいご馳走です。
いよいよ濃茶です。
先生のお点前を拝見できる好機ですので、皆、真剣そのものです。
し~んと静まり返り、緊張感のある空気の中、濃茶点前が行われました。

腰から紫の帛紗がとられ、帛紗を捌き、茶入、茶杓を浄めていきます。
蒸気を上げている釜から素手で蓋がとられ、蓋置へ。
台子正面にまわって柄杓がとられ、茶碗に湯が汲まれます。
茶筅通しの茶筅と茶碗の清め、濃茶が茶碗に入れられ、
柄杓から流れ落ちる湯の流れと音・・・・
いつもの点前風景ですが、夢の中のワンシーンのような・・・。

                
                   京都は今が見ごろです (21日撮影)

現実に戻り、濃茶を取りに出ました。
濃茶は柳桜園詰「炉開き抹茶」、
甘みと、渋みが少し効いている、マイルドな濃茶でした。
「大変美味しく頂戴いたしました。
 心をこめて先生が練ってくださった濃茶を頂けて、一同幸せでございます。
 ありがとうございました・・・」
というような気持をお伝えしたかったのですが、何と申し上げたか・・・
すっかり舞い上がって記憶がありませんの。

先生の濃茶の後、Nさんの台子薄茶点前で薄茶を頂戴しました。
昼食後、Sさんの行之行台子、貴人清次花月と稽古は続きました。
炉開きの日の充実した稽古に感謝です。

                           


師走の朔日稽古

2012年12月05日 | 稽古忘備録
             
                     (南禅寺にて)

師走の朔日稽古へ茶友が東京からやってきました。
今日庵が近々大改修に入るので、今日庵での朔日稽古は
当分できなくなるかもしれない・・・とお誘いしたのです。

前日に灑雪庵へお茶のみに寄って頂きました。
Kさん、Aさんとの嬉しい再会・・・Iさまのお香を聞く会以来でしょうか。

           

できるだけ普段のままお迎えしようと、
お軸は「平常心是道」、清水音羽山良慶和尚の筆です。
花は、寒菊と黄色の嵯峨菊を竹尺八へ入れました。
主菓子は「北野大茶の湯」(老松)、濃茶は「錦上の昔」(柳桜園)です。
台子点前で濃茶と薄茶を差し上げましたが、身体と頭が思うように動かず
稽古中の真之行や大円之真より難しかったような・・・。

「紅葉も好かったし、手塩にかけた庵で美味しいお茶を頂けて
 幸せなひと時でした」とAさん。
こちらこそ拙いお点前で失礼しました(汗)。
翌日に朔日稽古が控えているので、夕食は外でご一緒しました。

             

翌日、朝8時に会館へ伺うと、受付に大勢の方が並んでいました。
Kさん、Aさん、Oさんと合流し、今日庵の朝礼へ向いましたが、すでに満席でした。
今日庵との名残りを惜しんで大勢の方が全国から参加されたのでした。
かろうじて咄々斎へ入られるお家元と大宗匠をちらっと見ることができました。

その日のお家元のお話は、今日庵の解体修理のことでした。
今日庵の建物は人間と同じで、その生命は限りがあります。
伝統ある建物を後世へ引き継いでもらうためには
建物の体力があるうちに修復を行う必要があり、
お家元は「今やらねば・・・」と決断され、総会で承認されたのでした

今日庵には最も由緒の古い又隠席と今日庵席をはじめ、多くの茶室がありますが、
時間をかけて一つずつ解体し、材を全て残し、再利用するそうです。
そのため平成の大修復が完成するのに約7年の歳月を要します。
兜門南側に新しい稽古場・平成茶室が完成しており、修復に入っても
これまでと同様に行事、稽古、講習はそちらで続けられるとのことでした。

             
                 (冬の風物詩・・鴨川のユリカモメ)

             
             
                     (敷紅葉を愛でながら)

今日庵席が満員でしたので、KさんとAさんにはそちらへ入るように勧め、
Oさんと茶道会館席へ行き、I先生のご指導を賜わりました。
「稽古とは一からはじめ十を知り 十から帰る元のその一」
という利休道歌を引かれて、真之行という十をきちんと習得することで
一へ帰っても十を学ぶことによって得られたものがその点前に必ず現れる・・・
というお話など、含蓄ある内容で、楽しく学ぶことが出来ました。

KさんとAさんも朔日稽古へ伺って多くのことを学び、良い経験ができたことを
喜んでくださって、私も安堵しました。

                         

炉開き 時雨紅葉の日に

2012年11月28日 | 稽古忘備録
            (南禅寺・天授庵にて 22日撮影)

京都の紅葉は今が最盛期、時雨の季節でもあり、傘が手放せません。
時雨に濡れている紅葉を愛でるのもあと僅かとなりました。

11月23日は先生宅の炉開きでした。
利休さまは風炉から炉へ変わる時期について
「柚子の実が色づく頃・・・」としていますが、
今は11月の声を聞くと、風炉から炉へ変わります。

風炉から炉へ、炉から風炉へと、炉の設えが変わるたびに
点前も変わり、道具も変わり、また新たな気持ちで稽古に取り組みます。
最初は面倒くさいこと・・・と思いましたが、
今は季節の移ろい、歳月の重なり、気持のけじめを感じるようになりました。
炉開きは茶人の正月とも言われ、ことさら新たな気持ちで望みます。

                              

先生宅へ伺うと、炉開きの設えをして迎えてくださいました。

床の間には、大徳寺江雪和尚筆「万年松在祝」、
そして葉茶壺が荘られていました。
こんなに大きく立派な茶壺を美術館ではなく拝見したのは初めてのことです。
茶壺は江戸時代に瀬戸で焼かれ、形よく気品があり、
土色の肌には黒の釉薬が所々に残っています。
紫の紐で、真、行、草に結ばれ、口覆いは江戸時代の帯で作られています。
「あの壷を手に取って拝見したい・・・」と密かに思いました。

                 

白玉椿とはしばみが旅枕に生けられています。

控えの間の床に絵が掛けられていました。
眼鏡がなかったので、右上に書かれた語句はパスし、
「お正月だから鶴の絵かしら? 」と思っておりましたら、
先生のお話を伺ってびっくり!

その絵は、松屋三名物の一つ、如熙(じょき)筆「白鷺緑藻図(鷺絵)」の写しで、
土佐光貞(1738-1806)が描いたものでした。
鶴ではなく鷺だそうです・・・
その後、本歌は松屋から島津家へ移譲され、
明治10年の西南の役の折、島津家の蔵ごと焼失したので、
今は写しから本歌を偲ぶしかすべがなく、大変貴重な画なのだとか。

               

そんな先生のお話を伺いながら、社中による初炭点前が行われました。
釜は菊地文平丸釜、五代寒薙造、炉縁は松丸太に蔦蒔絵です。
釜に浮き出る菊の花、美しく火照る蔦の紅葉をしばし楽しみました。
炭斗はふくべ、灰匙は仙叟お好みの小判でした。
あこがれの柿の蔕香合(宋胡録:すんころく)を手に取って拝見しました。
香は、天薫堂の「ふじばかま」です。

それから恒例の手づくりのぜんざいが運ばれました。
粟餅に粒あんのぜんざいが乗っていて、懐かしく賞味しました。
「お代わりもありますから遠慮しないでね」と奥様。
「それではお代わりをお願いします」と頼もしい若人たち。

一段落して、いよいよ先生の濃茶点前が始まりました。
棚は銀杏棚、又玄斎(八代)のお好みで、台子濃茶点前です。
風炉と違い、どこからでもお点前が見やすいのが炉の大好きなところで、
みんな、息をのむように先生の所作を見つめています。

濃茶は、小山園の11月限定の口切用抹茶です。
ふくいくとした香り、練り加減よく、熱々の濃茶をみんなで頂戴しました。

一碗目、大樋焼茶碗・銘「筑波」も好かったですが、
二椀目の銘がなんと「時雨紅葉」、
箱書きに「鷹ヶ峰以土造」とあり、玄沢焼きとお聞きしました
・・・今調べているところです。

               
                      (南禅寺方丈にて)

床に荘られている茶壺の拝見について伺いました。
茶壷の大小ではなく、紐飾りがされている場合は拝見は乞わない・・・
という約束になっているそうです。
逆に、網袋に入って荘られていたら、
「ご都合により御壷の拝見を・・・」
とお願いしないと、ご亭主はがっかりなさるでしょうね。

今年は口切にご縁がなさそうで、ちょっぴり寂しいです。

                         その日は  ときどき