暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「惜春のコラボ茶会」・・・暁庵の第4席(香と薄茶)

2023年04月29日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

        (薄茶の点前座の様子です)

つづき)

暁庵の第4席(最終席)は香と薄茶にしました。

第4席のお客さまは6名様、正客Iさま、次客から四客までは小堀遠州流のお客様、五客HYさま、詰Y氏、14時45分~15時45分の予定です。

亭主KTさんが香たどんを熾し香の準備をしています。その姿を横目で見ながらKTさん、M氏、AYさんに後を託して、橘楽庵の最終席(第4席)へ急ぎました・・・それで、想像を逞しくしながら書いています。

裏千家流では七事式(香付花月、且座之式、仙遊之式、三友之式、唱和之式)で香をすることがあり、香道の仕方とは違うと思いますが、香をお客さまに愉しんでいただけたら・・・と思いました。

香木は真那蛮ですが香銘がないので、社中で募集したところ、Iさんが西行法師の次の歌から香銘を「春風」と名付けてくださいました。

  春風の花を散らすと見る夢は

     覚めても胸のさはぐなりけり    西行

 

春風の和歌は読めば読むほど味わい深く、胸に迫ってくるものが・・・。

出家していても、西行の人としての想いや魅力を感じる御歌です。お客さまに香「春風」を聞いて、和歌も味わってもらいたくって、短冊にしたためお回ししました。

偶然にも(お申し合わせで?)第4席の正客Iさま(香の命名者)がお香を焚いてくださったそうです。

香好きの某氏からの情報によると、「春風」という名を持つ香(もちろん名香です)が9種も「香銘録」にあったそうで、そのような記録がしっかり残っていることにもう!びっくりです。4種だけ「春風」をご紹介しますね。

 1 百二十種名香 真南蛮 辛甘

 2 中院通村公銘 真南蛮 甘シオカラ

   玉鉾の道のゆくての春風に たか里しらぬ梅かゝそする

 3 中院通村公銘 伽羅 中中 甘苦酸

 4 後水尾帝勅銘 伽羅 上上 甘辛

      たか里の梅の立えを過つらん 思いの外に匂ふはるかせ

 

第4席の薄茶点前は第3席に続いてAYさん、半東(後見)はM氏です。

いつもAYさんは上手に美味しい薄茶を点ててくださるのですが、いかがでしたか? 三客様まではAYさんがお点てし、四客様からは水屋からお持ち出ししました。薄茶は「金輪」(丸久小山園)です。

一方私は、毎回上手に・・とはいきませんで、薄茶はとても難しいです。水屋で点てていましたが、泡立たない時もありSOSして手伝ってもらいました。キメ細かい泡でふっくらと、そしてたっぷりとお出ししたい・・・濃茶もですが、薄茶も奥が深いですね

(左は醍醐桜(京焼、桜谷作)、右は仁清・薔薇の絵(山岡善高作))

大平棗と茶杓が拝見に出されました。

大平棗は几帳蒔絵で鳳凰と牡丹が描かれています。山中塗の中村宗恭作です。

「春風」に揺れる几帳の陰で、お客さまが香を楽しみ、和やかに薄茶を喫して談笑している・・・そんな風情を思い描いていただけると嬉しいです。

茶杓は銘「雲錦」、聚光院の雪山(隋応戒仙)和尚八十九歳の御作です。

「雲錦」は季を問わないそうですが、若葉や花たちがパステルカラーで折り重なっている「雲錦」の野山を楽しんでいただけたら・・・と選びました。

ブログを書きながらお席に入っていないので、次回は水屋ではなく席中でお客さまとお話したり、社中の方の活躍ぶりをこの目で見たい・・・と思いました。

次回は来年の風炉の時期にどうかしら?・・・橘楽庵様と一緒に、早くも夢見ています・・・。その時はどうぞよろしくお願い致します。

 

   (茶会後に、頂いた耳付花入に残花を生けてみました)

 

 「惜春のコラボ茶会」・・・橘楽庵の第4席へつづく   暁庵の第1席へ戻る

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「惜春のコラボ茶会」・・・暁庵の第2席(花所望)と第3席(後炭)

2023年04月28日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 (鉄線と、小葉のズイナまたはリョウブ?だと思う。志戸呂焼ちまき)

つづき)

暁庵・第2席のお客さまは7名様、正客YKさま、次客から五客までは小堀遠州流のお客様(橘楽庵のYさまも)、六客宗加さま、詰M氏、11時15分~12時15分の予定です。

第2席では炭手前がないので、花所望と薄茶にしました。

今年は花の咲く時期が超早く、予定していた花がなくって本当に困りました。

S先生によると「炉の時期には炉の花を・・・、風炉の花しかなくなったら炉を塞いで風炉に変えてください」と。 風炉は全く考えていなかったので、何でも花をお持ち寄りくださいと社中にお声掛けしました。

・・・すると、思いがけないくらい沢山の花が集まり、花積もりした亭主T氏は選びたい花ばかりで嬉しい悲鳴だったようです。

花台に、姫日向ミズキ、小葉の随菜(またはリョウブ)、都忘れ、梅花うつぎ、卯の花、鉄線、芍薬、アヤメ、苧環、紫蘭、ミズキ、茅(ちがや)などが溢れています・・・心配していたけれど ヨカッタ!(アリガトウ

亭主T氏がご挨拶の後、花所望となり、各流派の代表者に活けてもらいました。花器は2つ、奈良古寺瓦(写し)とちまきの掛け花入(志戸呂焼、廣前心斎作)です。

裏千家流ではお正客YKさまの推薦でM氏が、小堀遠州流は申し合わせでI氏が活けてくださいました。偶然ですが、お二人とも男性でした。

M氏は鉄線と小葉のズイナ(またはリョウブ)、生き生きとお互いが引き立て合って素晴らしいと思いました。また、I氏は初めての花所望だったと思いますが、ステキにすっきりと活けてくださって、壷珊瑚がかわいらしく魅力を添えていました。今後がとても楽しみです。

   (姫日向ミズキ、紫蘭、壷珊瑚・・・奈良古寺瓦(写し))

薄茶になり、お点前はY氏、半東(後見)はIさんです。

Y氏の端正な点前を見て頂きたくって、「柄杓を引いた時ではなく、茶杓を清めた頃に席へ入ってね」と半東Iさんにお願いしました。

薄茶では社中の皆様思い入れの茶碗が大活躍です。

暁庵の御正客様は裏千家流と決まっていたので白楽(染谷英明作)で、次客様は小堀遠州流の方なので楽茶碗ではなくトト屋(山清窯、ミン・ヨンギ作)で、三客様は絵唐津(西岡小十作)でY氏が心を込めて点てた薄茶を喫して頂きました。

四客様からは水屋でお点てし運び出しました。茶碗ですが、醍醐桜(京焼、桜谷作)、堤焼(仙台・伊達藩のお家焼、針生乾馬作)、「春の夢」(与論島窯)、仁清・薔薇の絵(山岡善高作)でした(順不同)。

 (左が白楽(染谷英明作)、右がトト屋(山清窯、ミン・ヨンギ作))

   (左が絵唐津(西岡小十作)、右が唐津焼です)

 

     (写真が無く、或る日のベランダです・・・)

昼食はなだ万のお弁当、ベランダ席と待合席へ分かれて食べて頂きました。新緑や花を見ながらのベランダ席が好評でした・・・

昼食タイム(12:30~13:15)をはさんで、午後の部が始まりました。午前(第1席と第2席)と午後の部(第3席と第4席)で暁庵社中はスタッフと客が交代しました。

   (手入れは今一つですが、新緑が助けてくれました・・・

 

暁庵・第3席のお客さまは6名様、正客T氏、次客から四客までは小堀遠州流のお客様、五客・KYさま、詰・EKさま、13時30分~14時30分の予定です。

第3席では、亭主M氏の後炭から始まりました。特に小堀遠州流のお客さまに後炭を見て頂きたい・・・と思いました。

透木の扱いも見どころですが、胴炭が割れるのがご馳走とされています。透木釜のせいでしょうか、胴炭に火が回るのが遅く割れなかったようで、ちょっぴり残念です・・・。

後炭の香は匙香(香は初炭と同じ「松濤」)、初炭の時に使い残した湿し灰が撒かれました。初炭と反対に炭を継いでいきます。

迫力のある又陰口透木釜が濡れ茶巾で浄められ湯気を上げて喜ぶあの瞬間、後炭の醍醐味を味わっていただけたかしら。

薄茶のお点前さんはAYさん、緑色の友禅をお召しのAYさんの優雅なお点前で薄茶を楽しんでいただきました。半東(後見)はKTさん、水屋はM氏と暁庵です。

平棗を使ったので平棗の扱いが見どころの一つです。もう一つ、釜が掻き立て鐶なので、持ち方や扱いも見どころです。

さて、茶碗の続きです。正客様から三客様までの3碗は毎回同じですが、四客様からはその時によって多少違えて楽しみました。

  (左は「春の夢」(与論島窯)、堤焼(針生乾馬作)の茶碗)

「春の夢」(与論島窯)、堤焼(針生乾馬作)、醍醐桜(桜谷作)、唐津焼、御本手(杉本貞光作)、仁清・薔薇の絵(山岡善高作)などの茶碗が登場しました。 つづく)

 

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    橘楽庵の第4席へ   「惜春のコラボ茶会」の準備中です


「惜春のコラボ茶会」・・・暁庵の第1席(初炭と薄茶)

2023年04月26日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

 

4月23日(日)、小堀遠州流の橘楽庵と裏千家流の暁庵にて「惜春のコラボ茶会」が開催されました。

その日は曇りのち晴れ、朝はヒンヤリして寒いくらいでしたが、昼間の最高温度は20℃、暑くも寒くも風もなく、絶好の茶会日和でした。ベランダ席を有効に使いたかったので先ずは一安心です。

 

(第1席の花・・・前日のこと、ご近所さんの鉄線がとてもステキだったので、勇気をだしてピンポンして分けて頂きました。ふぅ~っ! 汗

暁庵・第1席のお客さまは6名様、正客KTさま、次客から四客までは小堀遠州流の方、五客宗弥さま、詰AYさま、10時~11時で初炭と薄茶をいたしました。

待合で身支度をした後にベランダの腰掛待合でお待ちいただきました。迎え付けと蹲は無し、銅鑼を5つ打って席入りの御案内です。

待合の掛物は「松風傳古今」と書かれた銀杏唐草文の扇子、教授の親授式で坐忘斎お家元から頂いたものです。

 

 

本席の床には「喫茶去」の横物、御筆は足立泰道師です。

「喫茶去」とは「まあ、お茶を一服召し上がれ」ということですが、その一服、亭主は客の流派、初心者か熟練者か、老若男女・・・などの違いにかかわらず、一様に心を込めてお茶を供しているか。

また、客として亭主が未熟で、道具が粗末であっても、その一服にいつも同じ心構えで感謝の念を込めて喫しているか・・・厳しい問いかけをしている禅語でもあります。

第1席では、亭主(Iさん)の初炭、次いでY氏のお点前で薄茶を楽しんでいただきました。半東(後見)はT氏、水屋はIさんと暁庵です。

裏千家流では3月に釣釜、4月に透木釜を掛けます。4月になると暑い日もあるので、少しでも火を見せないように透木釜で・・・という配慮だそうです。透木は宗旦好みの桐を使いました。

それで、橘楽庵は釣釜だそうです(・・・密に情報交換できてヨカッタ!)

 

        (初座の点前座の設え)

初座の点前座には、13代円能斎好み猿臂(えんび)棚に白鳥の羽箒と香合を飾りました。

釜は又陰(ゆういん)口透木釜(菊地政光造)、8代一燈好みで、釜の口は今日庵・又陰の躙り口を意匠したもので、正面胴に「又陰」の鋳込みがあります。

 

       (又陰(ゆういん)口透木釜)

第1席の亭主Ⅰさんは丸管と割管を一緒に持つのが難しく(左利きなので)、自主練を何度も繰り返して取り組んだと思いますが、いかがでしたかしら?

炭手前は小堀遠州流とは大違い、炭の種類や大きさ、炭斗の中や炉中の置き方などが違うので、きっと半東(後見)T氏がさらさらとお話してくれたことでしょう。

コラボ茶会で炉の炭手前は今季終了になります。水屋で備前焼灰器に湿し灰をたっぷり盛りながら「よくぞ最後まで湿し灰が足りたこと・・・」と一人、感無量でした。

香合は飴釉香合「聴松風」、暁庵が裏千家教授の伝授の記念として坐忘斎お家元から頂いた宝物です。

「聴松風」の彫字(釘彫)は坐忘斎お家元、大樋焼で大樋陶治斎(10代大樋長左衛門、年朗)作です。蓋裏に坐忘斎花押、畳みつきに陶治斎の印があります。

香は「松濤」(坐忘斎好み、松栄堂)です。

猿臂棚は運びの棚なので、茶道口でY氏が水指を置き、「薄茶一服差し上げます」

薄茶は金輪(丸久小山園)です。独楽盆と大内塗盆に干菓子「山宝果」と「ひとひら」(共に美濃忠・名古屋市)をお出ししました。

緊張しながらY氏が心を込めて点ててくださった薄茶はいかがでしたか・・・  つづく)

 

「惜春のコラボ茶会」・・・暁庵の第2席(花所望)と第3席(後炭)へつづく

    暁庵の第4席へ    橘楽庵の第4席へ   「コラボ茶会」の準備中です

 


「惜春のコラボ茶会」の準備中です

2023年04月20日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

      (朴の花が咲いていました・・・散歩道の公園にて撮影)

 

長らくブログをお休みしていましたが、いかがお過ごしでしょうか?

お休みしていた内にソメイヨシノや八重桜が散り急ぎ、早や藤の花や牡丹が満開です。今年の春はなんて!速足で去っていくのでしょうか・・・。

4月23日(日)に「惜春のコラボ茶会」を開催するので、暁庵はただ今忙しく過ごしています。

ずっ~と前からお近くに住む小堀遠州流Yさまと、気軽でアットホームなコラボ茶会が出来たら・・・と夢見ていたのですが、ついに実現することになりました。

Yさまの橘楽庵と暁庵でそれぞれ薄茶席を設け、惜春の半日をお客さまに楽しんでいただこう・・・と思っています。

 

    (鬱金桜の花房・・・浅黄色ですが最終的にはピンク色になります)

・・・それから、茶会というとなかなか社中の方が席へ入って楽しめないことをいつも申し訳なく思っていました。それで、今回は午前と午後で入れ替わり、全員がスタッフにもお客さまにもなれるようになっています。

Yさまの小堀遠州流と暁庵の裏千家流では道具や点前はもちろんのこと、席中の作法(例えば亭主へのお声掛け、道具拝見のタイミングなど)が違いますので、橘楽庵では小堀遠州流の方、暁庵では裏千家流の方へ正客と詰をお願いすることにしました。

(そうすれば、どちらの流派のお席でも真ん中に入った方は気楽にそれぞれの流儀の仕方でお茶を飲んで、くつろいでいただけるかしら・・・)

特に炭手前はびっくりするほど違いますので、出来る範囲で炭手前を茶会で拝見できるように工夫したり、それぞれの流派独特の趣向を盛り込むなど、Yさまと一緒に楽しみながら準備中です。

 

       (白い牡丹の花・・・気品があって華やかですね)

・・・それから、暁庵の道具組ですが「ないものはない」と割り切って(居直って?)、とにかく「あるもの」であれこれ思い悩みながら楽しんでいます。

薄茶の茶碗を社中の方にお持ち出しして頂きました。

「この茶碗で薄茶一服飲んでいただきたい!」と思う茶碗を選んでね・・・と私。

お気に入りの一碗、ご縁があった作家さんの作品、転勤途中で出合った茶碗、春の花に思いを寄せた一椀、旅の思い出の一碗、詩銘のついた茶碗など・・・それぞれ茶碗の持ち主の想いがあふれる茶碗がお客さまをお待ちしています。・・・

あとはお天気でしょうか・・・またはで、暑くもなく寒くもなく、雨は降らずに、ベランダの腰掛待合で新緑を楽しんでいただければ言うことなしです。

 

     (熊谷草・くまがいそうを発見・・・散歩道の公園にて)

 

  「惜春のコラボ茶会」

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