
後座の床・・・・薄紫の小菊を献上飾りにして
(つづき)
ハレの席なので懐石は佐藤愛真さんにお願いしました。
9月末に打ち合わせを済ませ、すっかり安心していたのですが、長雨と台風の影響で鱚(喜びの魚)が手に入らず、向付が小鯛の湯引きに変更になりました。
それに前日、怪我したそうで・・・・あとで知ってびっくり! そんなことは微塵も口に出さず、最後まで立派にやり遂げてくださいました(涙)。

茶事にはハプニングがつき物ですが、懐石も同じでいろいろありますね。
佐藤愛真さんが一生懸命考え、作ってくださった懐石は随所にお祝いの気持ちが込められている、素晴らしいものでした。
お客さまも堪能してくださったようで、亭主としても趙!嬉しいです。
献立を記念に記します。
向付 小鯛の湯引き 黄菊 水前寺海苔 山葵加減酢
飯 一文字
汁 紅白結び麩 小豆 白味噌 辛子
飯 二回目の飯器は赤飯 三回目は白飯
煮物椀 鯛の菊花椀 隠元 青柚子
焼物 かますの松茸包み焼き
強肴 茄子 石川芋 鴨治部煮 紅葉麩 針柚子
箸洗 岩梨
八寸 車海老 若桃の蜜煮
香の物 沢庵 小茄子 柴漬け
湯斗
酒 千寿(久保田酒造)

ハレの器・古伊万里にかますの松茸包み焼き(絶品でした!)を盛りました
初炭は炭所望、申し合わせでHさまが炭を置いてくださいました。
たぶん下火はほとんど落ちていたのでは・・・と心配していたのですが、すぐにパチパチとはぜる音が聞こえ、流石ご名炭でございました。
香合は、裏千家流茶道を学んだご縁でKさまや皆さまに出会ったことに感謝して、裏千家八代・一燈好みの「つぼつぼ香合」です。
香は桜の落葉の付け干し香、付け干しの香は半東Fさんのお香の先生から頂戴したものなので名香ぞろいです。
やがて、得も言われぬ芳香が茶席や廊下を漂い始めて、期待以上でした。

一燈好み「つぼつぼ香合」と付け干し香

(実際には縁高ではなく菊の蒔絵の蓋物でお出ししました)
主菓子を菊の蒔絵のある蓋付き漆器に入れ、運び出しました。
淡い紫とクリームの掛け分けのきんとん、金箔が飾られています。
こちらも佐藤愛真製で、菓子銘は「紫の上」としました。
中立の後、銅鑼を5点打ち、後座の席入りです。
後座の床は、「七事式偈」をそのまま残し、薄紫の小菊を献上飾りにしてみました。
昔は11月3日の明治天皇の誕生日をお祝いして菊をこのように飾ることを神戸の茶友Mさんから教えて頂きましたが、今はすっかり目にしなくなりました。
せめて茶席にその習わしを残しておきたいし、11月誕生日のKさまのお祝いに献上飾りを・・・と思いました。

点前座は長板二つ置き。
風炉は唐銅道安、一之瀬宗和造です。
釜は桐文車軸釜、総糸目の胴に団扇、中に桐文が鋳込まれていて優雅な趣きがあります。
この釜は和づく釜と言い、日本古来の和鉄で造られた特注のお気に入りです。
作者は長野新氏(茶友長野珠己さんのご主人さま)、喜びの席に桐文車軸釜を掛けれて好かった!です。
水指は青磁太鼓胴(富田恒峰造)、本歌は静嘉堂文庫に所蔵されている「青磁牡丹唐草文水指」(14世紀元時代、龍泉窯)です。
この日が初使いでしたが、歴史と存在感を漂わせる青磁水指は茶席の雰囲気を格調高くしてくれるように思います。
複雑な蓋のつまみは美しいのですが立てかけにくく、蓋は長板上に置きました。

濃茶器は凡鳥棗、かつて横浜に住んでいた庸軒流の茶人・伊藤庸庵が作らせたものの一つで
「凡鳥之棗 反古庵好ミ写也 庸菴」と箱書に書かれています。
これも頂戴したものでして、姫路のSさんから
「横浜に縁のある庸軒流茶人・伊藤庸庵の箱書があるので、横浜へ帰る暁庵さんに使って頂きたい」
と託された棗でした。
仕覆は茶地唐華鳳凰文緞子、お仕覆をお習いしていた小林芙佐子子先生の仕立てです。
この仕覆を扱う度に、紐の柔らかさ、つがりと紐の塩梅などとても使いやすく、先生のお心入れを深く感じます。
ここまで書いてふぅ~~う! ちょっと休憩します。

少ない茶道具の中から一生懸命選んだり、無い知恵を絞ったりしたものですから、つい力が入ってしまって・・・。(つづく)
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