暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

自在ゆらゆら 茶飯釜の茶事-2

2013年03月20日 | 思い出の茶事  京都編
ご亭主Hさんが作られる懐石はどれも美味しく、
不肖、暁庵は重い腰を上げ、懐石を勉強しだしたばかりなので、
とても参考になり、刺激になります。
主な献立は、
   向付   平目、水前寺海苔
   煮物椀  カニ真蒸  しいたけ  鶯菜  木の芽
   汁    粕汁(鮭、季節の野菜)
   焼物   鰆
   炊合せ  鴨の丸  わらび  鶯菜
   和え物  蕪  イクラ  合せ酢
   箸洗   松の実  梅肉
   八寸   カラスミ(絶品!)  フキノトウ
   香の物

縁高でお菓子が運ばれ、開けた途端、息をのみました。
黒い縁高の中に、糊こぼしが一輪咲いていました。
赤と白の花弁、黄色い蕊・・・
思わず、懐紙へ取るのも、食べるのも忘れて、見惚れました。
3月12日にご一緒する「お水取り」へ思いを馳せて、
作ってくださったのです。

銅鑼の音で後入りすると、竹一重切に白椿が一輪。

炉には同じ茶飯釜が掛けられていましたが、
初座と後座では使い方が違うようです。
蓋は大蓋と蛇の目の二種類があって、
胴の表裏にある鋳込みの文字も違います。

初座では席中で飯を炊いて供するので大蓋を使い、「飢来釜」、
後座では蛇の目蓋に変わり、茶湯釜として茶をだすので「渇来釜」、
宗旦の弟子、堺の銭屋宗徳のお好みだそうです。
一つ釜をいろいろな趣向で使えるなんて、茶飯釜って面白いですね!

           

点前座には丹波焼の束柴水指と茶入が置かれ、
「渇来釜」とともに小間の空間を引締めて、心地好い緊張感を感じます。

井戸茶碗が運び出され、お点前が始まりました。
仕覆が脱がされ、茶入、茶杓が清められていきました。
茶碗へ濃茶が入れられたとたん、佳い薫りが漂いました。
そして、まさに「渇来釜」から湯が汲まれ、静中に茶筅の音のみが・・・。
熱く、まろやかな甘みのある濃茶でした。
茶銘は、茶道院家元お好みの「一滴翠(いってきすい)」、丸久小山園詰です。

井戸茶碗は奥高麗でしょうか?
添えられた古帛紗はエキゾチックなジャワ更紗、垂涎の的でした。
続き薄茶となり、干菓子が運び出されましたが、これもHさん手づくりです。

茶入は趣き深い瀬戸肩衝、大亀和尚の銘「松風」があります。
素敵な仕覆は「人形手」、「人形手」は大好きですが、
なかなか拝見できない裂地の一つです。
茶杓は、海田曲巷作の銘「心染め」・・・還暦に因む、思い出深い御品とか。

           

懐石、菓子、干菓子の他にも、手づくりのお道具が登場して話題騒然。
その一つ、木地曲げの建水。
香川県高松市にある三友堂の和三盆の桶に漆を塗った自作でした。
かぶれに悩まされたという話を聞きながら、Hさんのおもてなしの真髄を
改めて感じました。
一つまた一つと、積み重ねていかれる自作のお道具はまるで宝物のよう、
どんなに高価なお道具もかなわない魅力を放っています。
次はどんなお出会いが待っているのかしら・・・。

早春の一日をのんびりと、心豊かに過ごさせて頂きました。
連客の皆さま、ご亭主さま、水屋の方々に深謝いたします。
半東と水屋は茶事のお仲間が担当してらして、チームワークの良さが
いつもうらやましい限りです。
                              

   早春の自在ゆらゆら茶飯釜
      囲む炉の火に心染めして      暁庵    


        自在ゆらゆら 茶飯釜の茶事ー1へ戻る
          

自在ゆらゆら 茶飯釜の茶事-1

2013年03月19日 | 思い出の茶事  京都編
2月から3月にかけて横浜へ里帰り(?)していました。
その折にHさんから茶飯釜の茶事へお招き頂きました。
連客の茶友3名さま共々、浮き立つ思いで出かけました。

案内を乞わずにマンションのドアを開け、玄関から居間へ。
そこは寄付になっていて、隣の和室が待合です。
コートをたたみ身支度を済ませて待合へ入ると、
白い陶器に墨絵の花入には一足早く満開の彼岸桜、
明道和尚筆の短冊が掛けられていました。

「弄花香満衣」
 (花を弄(ろう)すれば 香(かおり)衣(え)に満つ)

春の香りに包まれたような、幸せな気分に浸っていると
半東さんが香煎を運び出し、腰掛待合へご案内がありました。
ベランダには腰掛待合と蹲のある緑の一画があって、
緑の苑は毎回進化していて、訪れるのが楽しみでもあります。

            

関守石の枝折戸が開き、迎え付けのご亭主と無言の挨拶を交わしました。
蹲で身心を浄め、席入です。
三畳台目向切の茶室はほの暗く、壁床に掛けられたお軸を
目を凝らして拝見すると、画賛のようです。
香合が荘られていました。

あとで伺ったところ、お軸は淡々斎筆で
竹の画と賛は「虚心」、「虚心」とは虚心坦懐のことでしょうか。
世俗のさまざまな柵や欲望を捨て去って、清寂な「虚心」をもって
Hさんのお茶に臨みたい・・・と密かに願いました。

向切の炉には煤竹の自在があり、茶飯釜が掛けられています。
挨拶のあとに初炭が始まり、自在の扱いが珍しく、
向切の炭手前を拝見するのも久しぶりのことです。
早く火を熾してご飯を炊くので、お香はなしとのこと、
荘られていた香合(楽焼のわらや)の意味がやっとわかりました。

            

ここで、ご亭主はお盆を運び出し、釜の右前に置きました。
お盆には米袋、片口、茶巾(蓋置の茶巾入れ)が乗っています。
米が片口へ入れられ、次に釜の蓋を開けて釜へ入れられました。
釜には予め分量の水が入れられていて、下火で温められています。

火加減にもよりますが、30分位で炊き上がるとか。
ご亭主が火吹き竹で吹くと、赤々と火力がつきだし、もう大丈夫。
火相を見届けたご亭主は、向付(平目のお作りと水前寺海苔)、
飯椀と汁椀の蓋のみが乗っている折敷を運び出しました。
一献の後、「平目と山口産のお酒が美味しい!」と一同味わっていると、
「ぷぅ~ん」と好い香りがして来て、さらに食欲をそそります。

今度は煮物椀が運ばれ、「どうぞ、お熱いうちに・・」
たっぷりのカニにくるまった真蒸、椎茸、鶯菜、木の芽の煮物椀に舌鼓です。

炊きたてのご飯を一文字より多めに盛って手渡してくださいました。
釜に代って鍋が掛けられ、鮭や野菜がたっぷり入った粕汁を頂戴しました。


(食べるシーンのお話しばかりで恐縮ですが、茶飯釜の扱いや順序に興味津々、
 温かな料理が出てくるタイミングの絶妙さに感動!でした・・・)

                                 
 

        自在ゆらゆら 茶飯釜の茶事ー2へつづく




伝言板  ただ今、メール不通です 

2013年03月17日 | 閑話休題
すっかり温かくなりました。
子供のように「春が来た!」と喜んでいましたら
京都では春が来るのはきちんと順番があって
「お水取り、お彼岸、比良八荒(ひらはっこう)が終わらないと
 本当の春はきいしません」・・・そうどす。

長らく留守をしていましたが、やっと京都へ戻ってまいりました。
・・・が、手違いがありまして、しばらくメールが通じません。
復旧の手続き中ですが、まだ時間が掛かりそうでご迷惑をおかけします。
御用の方はメールではなく、電話にて宜しくお願いいたします。

これから又、ゆっくり関東での茶事の思い出、
奈良のお水取りなどを書いていけたら・・・と思っております。
懲りずにお付き合いくださいまし。

                               


京のさんぽみち  船岡温泉へ

2013年03月10日 | 京暮らし 日常編
ときどき温泉へ行きたくなります。
「今日は温泉へ行こう!」と、近所の銭湯へ。
小さいですがスーパー銭湯のようにバラェティに富んだ湯舟、
サウナ、水風呂も備わっていて、京都の銭湯はなかなかのものです。

雪の夕去りの茶事の翌日、叫びました。
「温泉へ行きたい!」
もちろん疲れをとることが目的ですが、
茶事で興奮気味の心身をクールダウンさせたいためでもあります。

午後、かねてから行きたかった船岡温泉へ繰り出しました。
場所は千本鞍馬口通りの近くで、建勲神社のある船岡山の南です。
その日は風もなく好い天気だったので、歩くことにしました。
鴨川、賀茂川を遡り、あっちこっちキョロキョロしながら
鞍馬口通りをぶらつきました。

             
                   銭湯の外観を保つ「サラサ西陣」
               
             

すると、見たことのあるカフェ「サラサ西陣」を見つけました。
あとでテレビ「美の壷」で紹介されたことがわかったのですが・・・。
築80年以上、大正時代に創業した「藤森湯」を改造したカフェは、
外観、内部の構造、タイルなどに銭湯の面影を残しており、
特にタイルの美しさに目を見張りました。
カフェだけでなく、ギャラリー、古書、洋服のショップでもあるみたいです。

             
                   時が留まったような不思議な空間
             
             
                      店内を彩るタイル

どこか中近東のカフェへ入ったみたいで、外人さんが多いのも
妖しい雰囲気づくりに役立っています。
・・・ここに寄って好かった!
銭湯の造りを生かしてカフェにするなんて、アイデイアもステキですが、
何度も通いたいほど魅力的な空間でした。

             

             

 
            
珈琲と紅茶を注文しましたが、お隣さんのメニュウが気になり
「ごめんなさい。今食べていらっしゃるのはなんですか?」
「〇〇丼です。ランチメニューですが、夕食では別のメニュウになるんです。
 エスニックでとても美味しいですよ」
夕食には早いし、銭湯が目的なので次の機会に食べることにしましょう・・。


             
                 自転車が一杯の船岡温泉入り口

船岡山の建勲神社へお詣りしてから船岡温泉へ。
ここは元料理旅館(国登録・有形文化財)だったそうで、
銭湯とは思えない立派な構えです。
宮崎駿のアニメ「千と千尋の神かくし」の舞台(アイデイア?)に
なったところとして有名なんだとか。
私のような観光客や外人さんが多いのにびっくりです。

             

             

湯女が出てくる雰囲気が天井や二階欄干の彫刻にありましたが、
中は普通の銭湯でした。
不動明王が見下ろす露天風呂、サウナ、水風呂、ジェット機能付き、
湯質や湯温のちがう湯舟があり、京都の銭湯はがんばっています。
それでも均一料金で410円でした。

             
                    船岡温泉のタイル

ゆっくり風呂につかり、全ての湯舟を体験して、すっかり元気になりました。
ロビーのような待合で、主人と合流。
あれこれ感想を話しながら、どっぷり暮れた北大路へ出て、
バスにて帰宅しました。