ヒトリシズカのつぶやき特論

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特許庁・INPITTが派遣する知財プロデューサーの話を伺いました

2011年01月27日 | イノベーション
 今年4月から特許庁・INPITは知財プロデューサーという知的財産のプロを“ナショナルプロジェクト”に派遣する事業を本格的に始めるそうです。INPITとは、独立行政法人工業所有権情報・研修館という特許庁傘下の独立行政法人で、特許の活用を活発化する事業を担当している組織です。特許を出したり、使ったりする方には良く知られた組織ですが、一般の方にはあまり知られていない存在だと思います。

 1月25日に東京都港区で開催された国際特許流通セミナー2011(主催は工業所有権情報・研修館)のパネル・ディスカッション「研究開発コンソーシアムの成果を事業化につなげる知財マネジメント 知財プロデューサーの挑戦」という野心的なパネル討論がありました。このパネル討論が行われた背景は、最近の日本は「優れた技術を持っているのに、事業では勝てなくなっている」という疑念が高まっているからです。

 研究開発で優れた成果を上げ、それに基づく特許を多数出しているのに、国際市場では事業収益を上げられないという傾向が高まっていると、日本人は感じているようです。例えば、液晶テレビは国際的には韓国のサムソン電子やLGディスプレーが高いシェアを獲得しています。液晶テレビのコアデバイスである液晶パネルも、韓国や台湾の企業が大きなシェアを採っています。携帯電話機も、国際市場での日本企業のシェアはあまり高くありません。

 このため、優れた研究成果から産まれた特許などの知的財産を十分に活かして、収益が上がる事業を設計し運営することが、日本企業にとって急務であるとの見解が強まっています。そのためには、研究開発段階からどんな強い特許を手に入れるかを考える知財戦略を立案し、同時に事業戦略を立てて連動させることが不可欠になります。こうした研究開発戦略と知的財産戦略、事業戦略の3者を“三位一体”で設計し動かしていく“知財プロデューサー”と呼ばれる専門人材が重要になります。こうした知財プロデューサーを“ナショナルプロジェクト”に派遣する事業が本格化しようとしているそうです。来年度の平成23年度の予算が決まらないと正確には分からないのですが、20人程度は派遣する計画のようです。

 実は今年度から試行として、INPITは知財プロデューサーを既に数人を派遣しています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が研究開発費を提供しているナショナルプロジェクト「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」(通称、BEANSプロジェクト)に2008年12月から知財プロデューサーとして小野寺徳郎さんを派遣しています。


 小野寺さんは2009年4月からBEANSプロジェクトの一部が入居している東京大学生産技術研究所に常駐し、知財マネジメントを担当し始めたそうです。優れた特許を出願し、目標としている製品化・事業化に成功するための下地をならしています。
 
 今回、特許庁・INPITTが知財プロデューサーを派遣する理由は、国際特許流通セミナー2011で開かれた、関連するパネル・ディスカッション「知財ファンド等による知的財産活用の新たな試み」に登場した産業革新機構の執行役員・企画調整室長を務める西山圭太さんの説明が的を得ています。


 西山さんは「日本は外国に比べて、研究開発費や特許数は多く、日本の大学や公的研究機関の基礎技術レベルは世界最先端を達成している」ものの、「こうして得た独創技術を事業化に結びつける実力が弱い」と、冷静に分析します。そのためには、「優れた研究成果を強い特許で権利化し、優れた知的財産戦略を練り上げ、国際市場で勝てる事業を展開するようにしましょう」と、鼓舞します。

 ナショナルプロジェクトに派遣される知財プロデューサーの役割は、当初の予想以上に重要になりつつあると感じています。知財プロデューサーは最終的には、各人の精力的な活動の集積が結果に表れます。数年後には、知財プロデューサーの成果を是非、拝見したいと思います。運不運にかかわらず、成果表を見せていただきたいと思います。企業の経営者と同様な成果表を見せていただきたいと思います。この結果表に応じて、報酬額を大幅に増減するやり方がほしいと思います。今回も事実上、「ベルギーのIMECは、なぜ強いのか」という話につながる話です(この話題から、数日間離れます)。