医薬品産業は科学・技術の革新を推進力として事業を進める知識集約型産業です。この分野で活躍するには「リーダーシップとマネジメント能力の基になる素養を身につけてほしい」と、博士人財に対して語ったのは、スイスのロッシュ傘下に入った中外製薬の取締役副社長執行役員の山崎達美さんです。要は、問題発見能力と問題解決能力の下地を博士課程で身につけてほしいと伝えます。
山崎さんは、東北大学が開催した「高度イノベーション博士人財育成シンポジウム」で「グローバルネットワーク活用による研究開発戦略と博士人財の役割」というタイトルで講演されました。
講演会場は片平キャンパスの萩ホールです。空は晴れていながら、時々粉雪が舞う寒い日でした。
山崎さんご自身が東北大大学院農学部研究科の博士課程を修了後に、米国のハーバード大学の研究員などを経て、中外製薬に入社されます。「研究開発ターゲットは、当時は医薬品にはならないといわれた抗体医薬品と指示され、米国で、一から学んだ」そうです。抗体医薬品は、生体が持つ免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品で、一つの抗体が一つの標的(抗原)だけを認識する特異性を利用する理想的な医薬品ですが、当時は副作用も大きく、多くの企業が研究開発から撤退した経緯があります(現在は、治療効果が高く、副作用は少ないといわれています)。
中外製薬は抗体医薬品の「Actemra」(アクトムラ)と呼ばれる関節リウマチの製品化に成功しています。1986年に大阪大学の岸本忠三教授(元学長、現名誉教授)のグループと共同研究を始め、苦労して2008年に日本で関節リウマチの医薬品として承認されます。こうした研究開発成果から、日経バイオテク誌は「中外製薬を日本のバイオ企業の番付で、東の横綱」と評価しました。
山崎さんは「日本の医薬品企業は頑張ってきた」といいます。その証拠として、データが少し古いのですが、2005年に世界中で販売された医薬品の売上高上位100品目の中での国別のランキングでは、米国39品目、英国20品目、日本13品目、スイス9品目、フランス6品目という数字を上げます。「日本は第3位で、世界有数の新薬創出国の一つ」と、胸を張っていいます。ところが、医薬品には2010年問題がありました。「売上高上位100品目の1/4に当たる医薬品の特許が切れ、特許切れを待って後発品が市場に参入する」と見られていた年が2010年でした。事実、各社は医薬品事業の有力な収益源を失い始めています。
このためには、特許が切れた医薬品に代わる新薬を事業化しなければ、企業は存続できません。ところが、医薬品の新薬の成功確率は1/2万5482と非常に低く、しかも研究開発から新薬を発売するまでに9年~17年と長くかかります(2008年の調査データから)。最近は、成功確率が下がり、研究開発費が高騰する事態を招いています。売上高に占める研究開発費の比率は、全産業が3.11、製造業全体が3.92であるのに対して、医薬品産業は11.74と群を抜いて高いのです。研究開発費が高騰し、成功確率が低下している現状では、優れた研究開発者による独創的な成果に期待するしか手はありません。
博士人財に対して「自分の専門分野での基本的な論理分析能力や他分野の理解能力、事業化シナリオ能力を持ち、チームプレーができる人を求めている」といいます。今後は海外での研究開発・事業化プロジェクトで連携できる語学力も重要といいます。こつこつと身につけるしか、道は無いようです。
スイスの巨大製薬企業であるロッシュ(Roche)が、2002年に中外製薬の株をTOB(株式公開買い付け)によって過半数以上を取得したため、中外製薬はロッシュグループに入りましたが、同社とは戦略的アライアンスを締結し、「中外製薬としての独自経営と研究開発戦略を確保し、強い連携の下に製薬事業の効率性と生産性を高める努力を続けている」と力説されました。
山崎さんは、東北大学が開催した「高度イノベーション博士人財育成シンポジウム」で「グローバルネットワーク活用による研究開発戦略と博士人財の役割」というタイトルで講演されました。
講演会場は片平キャンパスの萩ホールです。空は晴れていながら、時々粉雪が舞う寒い日でした。
山崎さんご自身が東北大大学院農学部研究科の博士課程を修了後に、米国のハーバード大学の研究員などを経て、中外製薬に入社されます。「研究開発ターゲットは、当時は医薬品にはならないといわれた抗体医薬品と指示され、米国で、一から学んだ」そうです。抗体医薬品は、生体が持つ免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品で、一つの抗体が一つの標的(抗原)だけを認識する特異性を利用する理想的な医薬品ですが、当時は副作用も大きく、多くの企業が研究開発から撤退した経緯があります(現在は、治療効果が高く、副作用は少ないといわれています)。
中外製薬は抗体医薬品の「Actemra」(アクトムラ)と呼ばれる関節リウマチの製品化に成功しています。1986年に大阪大学の岸本忠三教授(元学長、現名誉教授)のグループと共同研究を始め、苦労して2008年に日本で関節リウマチの医薬品として承認されます。こうした研究開発成果から、日経バイオテク誌は「中外製薬を日本のバイオ企業の番付で、東の横綱」と評価しました。
山崎さんは「日本の医薬品企業は頑張ってきた」といいます。その証拠として、データが少し古いのですが、2005年に世界中で販売された医薬品の売上高上位100品目の中での国別のランキングでは、米国39品目、英国20品目、日本13品目、スイス9品目、フランス6品目という数字を上げます。「日本は第3位で、世界有数の新薬創出国の一つ」と、胸を張っていいます。ところが、医薬品には2010年問題がありました。「売上高上位100品目の1/4に当たる医薬品の特許が切れ、特許切れを待って後発品が市場に参入する」と見られていた年が2010年でした。事実、各社は医薬品事業の有力な収益源を失い始めています。
このためには、特許が切れた医薬品に代わる新薬を事業化しなければ、企業は存続できません。ところが、医薬品の新薬の成功確率は1/2万5482と非常に低く、しかも研究開発から新薬を発売するまでに9年~17年と長くかかります(2008年の調査データから)。最近は、成功確率が下がり、研究開発費が高騰する事態を招いています。売上高に占める研究開発費の比率は、全産業が3.11、製造業全体が3.92であるのに対して、医薬品産業は11.74と群を抜いて高いのです。研究開発費が高騰し、成功確率が低下している現状では、優れた研究開発者による独創的な成果に期待するしか手はありません。
博士人財に対して「自分の専門分野での基本的な論理分析能力や他分野の理解能力、事業化シナリオ能力を持ち、チームプレーができる人を求めている」といいます。今後は海外での研究開発・事業化プロジェクトで連携できる語学力も重要といいます。こつこつと身につけるしか、道は無いようです。
スイスの巨大製薬企業であるロッシュ(Roche)が、2002年に中外製薬の株をTOB(株式公開買い付け)によって過半数以上を取得したため、中外製薬はロッシュグループに入りましたが、同社とは戦略的アライアンスを締結し、「中外製薬としての独自経営と研究開発戦略を確保し、強い連携の下に製薬事業の効率性と生産性を高める努力を続けている」と力説されました。