地方にこもる若者たち | |
クリエーター情報なし | |
朝日新聞出版 |
気鋭の社会学者が岡山での社会調査を基に描き出すリアルな地方社会の現実と新しい日本の姿。
が書かれている本であると言う。
イオンモール倉敷での若者に対するフィールドワークを基にJPOPも参照しつつ若者論が展開されていく。
思いのほか面白い本である。
ーーー以下レジュメ
イオンモールとは、大都市ほどの刺激はないにせよ、「ほどほどに楽しめる場所」地方の若者に提供していると言えるだろう。32
⇒モータライゼーションが進んだ地方に置いては、商店街ということばが聞かれなくなっている。
もともとの商店街の意義:
若者に取って、地位域社会における人間関係を学ぶ場所であるとともに「よく分からない人」に出会わないと生活必需品を手に入れることが出来ない「ノイズ」だらけの場所であった。52
彼らがノスタルジーを感じる「地元」とは、モータライゼーション以降のファスト風土、ショッピングモールやマクドナルドの風景なのである。87
★本書のメインコンテンツでもあるJPOPのトレンドから見るその時々の若者文化の変遷の分析はとても面白い。
2010年代前半の代表的なJPOPとして取り上げられているOne OK Rock世代の分析として、
「一部の若者の間で、<試行錯誤する自分らしさ>という新しい<自分らしさ>のモードが受け入れられつつあること」167
という分析が非常に面白い。
いま世界中でブレークしつつあるBaby Metalというグループも鳴かず飛ばずとまでは言わないが、さくら学院という一部のマニアックなオタクにしか支持されていなかったグループの中の3人から誕生していること、
羽生結弦などの若いプロスポーツプレイヤーの活躍とも通じる何かを感じる。
本書中で、もうひとり、2010年前半の象徴的なアーティストとして取り上げられているのが、
RADWIMPSとうアーティスト、彼らも菓子の中に「試行錯誤する自分らしさ」というのが
もろにでているという。
彼らの「おしゃかしゃま」という歌にも、
「反発や努力や関係性といったかつての若者たちを支えていた自分らしさはない。あるのは、壊れてしまった社会とその前で呆然と立ちすくむ」168
というスタンスが貫かれているという。
※著者はきちんと本書中でボクの分析のように短絡的な結論を言っているわけではない。著者の分析によると最近の若者は、ハイポコミュニカティブ(過小にコミュニケーション志向)な集団と、ハイパーコミュニカティブ(過剰にコミュニケーション志向)な集団に二分しているという。177