○ 欧州の投資会社のポートフォリオを見ると、投資先の出資比率と議決権割合という項目があります。例えば出資比率は20%、議決権割合は30%とかです。これは、複数議決権株を発行している会社が結構あると言うことですね(フランスと北欧がメインであり、ドイツ・イギリスでは1株1議決権が原則です)。日本では今のところ、議決権の無い種類株式として優先株式を発行している会社は最近いろいろ出てきましたが、逆に複数議決権株を発行している会社はありますでしょうか。
多分無いと思いますね。というのは日本では、議決権はあるか、又はないかですからね。
1株0.5個の議決権というのは認められていません。複数議決権株を発行しようとすると、種類株を発行して、株式の種類毎に単元株のくくりを調整する必要がありますから、邪魔くさいですよね。
(公開会社の場合です。公開会社でない場合は109条2項により可能)
○ 複数議決権で有名な会社は、グーグルですね。クラスA普通株は1株1議決権ですが、クラスB普通株は1株10議決権で創業者等が持っていますね。
詳細は、ここ↓ Google Form S-1 Page 86
http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1288776/000119312504073639/ds1.htm
○ では、例えば、取得日後1年以上株式を保有している株主には、1株について2個の議決権を付与するという株式は如何でしょうか?即ち、1年未満なら1個の議決権が、1年以上保有で2倍に増えると言うことですね。この制度も買収防止策になりますね。株数は増えないが、時間の経過で議決権が増えるということですね。
○ 保有期間が、一定期間を越えれば議決権が増える、結構合理的ですね。長期保有者・安定株主には2倍の議決権を差し上げましょう、経営に対する発言権も2倍差し上げましょうということです。つまり、その会社に何の興味も無く、ただ儲かるかもしれないと株式を売買する株主には、1株1議決権で十分。デイトレーダー等は、金儲けの手段で一瞬持つだけだし、特に経営に関心がある筈もありません。たまたま基準日に株主で議決権行使書を得てもゴミ箱へ、配当金さえ貰えれば、後は儲かるかしか関心が無いという人も多いですね。
○ 確かに普通の個人株主の場合1千万分の1とかの割合的地位・単位を取得しても経営に影響力がある訳でもありませんが、例えば沿線に住んで優待定期がもらえるので持っている電鉄株、親戚が役員しているので長期保有している株、環境に優しい事をしているので気に入って長く持っている株、そういった安定株主様には2倍の議決権を差し上げましょうということです。(私は、がめついので、議決権より保有期間に比例して配当金が増える株式にして欲しいですけどね!)
○ フランスの会社法では、保有期間により議決権が増える株式があるようです。株式には、記名式と無記名式の両方がある。(日本は、名義を株券の裏に記入しますが法律上は無記名証券ですね)。どちらを選択するかは株主が選択できる。2年以上記名式株式を保有している株主には2重議決権を付与できる。一方10株未満の株式保有者からは総会決議参加権を定款の定めにより奪うことができる(但し、この定めをしている会社は殆ど無い)。尚、一般の株主は、無記名株式なので、会社からは保有期間は分からない。と言うことらしいです。
○ 会社法では、105-1各号の権利(配当・残余財産分配・議決権)について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができるとしています。ただ、今の解釈では、議決権はあるかないか(優先株等)ですね。
○ 日本の法制度の下では1株2議決権というのは難しそうですね。では新株の場合なら、新株発行後1年以上経過した場合に行使できる新株予約権付きの株式を発行すれば、出来そうですが、1株ではなく2株2議決権となりますね。1株利益が希薄します。また既存の発行済み株式で1年以上経過したものは無理となりますね。転換権付き種類株式などでも可能かもしれませんが、この場合も株数が増えますし自動的に議決権が2倍になるわけではないですね。
あるいは、これも新株ですが1年を経過すると1株が2株に株式分割されるという株式は考えられるのでしょうか?勿論希薄化しますが。