○ 日本のVC等の日本のベンチャー企業への投資を見ていると、ベンチャー企業側の事情もあると思いますが、まだまだ普通株式の取得が多いですね。さすがに最近は、同時に投資契約書等を締結して株主の権利などを保持しているケースが増えてきましたが、昔は投資契約もろくに結ばずにともかく株式を取得して、あとは経営者任せ、運任せ、景気任せ、上場してくれたらラッキーとか、いつの間にか破綻してたら、はずれとか、まあほったらかしでいい加減というか、ベンチャー企業の経営者側から見れば、いったんお金を引き出せば、日本のVCは「ちょろい」ちょっと脅せば、まあサラリーマンがやっているから楽賃と言うことでしようね。まあ、これは仕方が無いですね。体を張って、自分の個人財産も賭けて事業をされていますから、一方VCのお金は自分のお金でも無いですし、投資が失敗しても生活は安泰ですし、真剣勝負の事業家に、竹刀をもって「こて」とか言っても通じません。
私も、人生を賭けて仕事するつもりもないです。ローリスク・ローリターンの人生です。(だいぶ話が横にそれました)
○ 外国VCではそうは行きませんね。一般的にはベンチャー企業経営者に、4年とか5年以内に上場を約束させて、それを資本注入のときに、転換社債や、優先株等により強制でも無いですけど、プレッシャーを与える条文で縛る場合が普通です。勿論、うまく継続的成長が出来ない場合は、これもただの空約束になりますけれども。また、性悪説でも無いですけれども、事細かに契約で規定します(日本のように法令が整っていれば良いのですが、判例法の国なのでというのも理由ですが)。経営者もずっと経営しますとか。ずっと株式を保有しますとかの契約書と同時にいろんな誓約書を出さないといけません。そのかわりVCは汗もかきます。一緒に経営も考えますし、手助けもします。お金だけではありません。
○ 簡単な例として、CBを使った例と、優先株を使った例の条件概要をご紹介しましょう。
① CB(例:US$4 million Convertible Loan Facility)
・ Loanですから、金利が生じますがCBですから低金利ですね。
・ 上場時(直前の上場が確定したとき)に、CBですから、これを普通株に転換します。
・ 転換価格が問題ですね。額面株の額面(米国の様に、US$0.01では駄目で、台湾とかタイ等の様にNT$10.00とかBahts10とかの場合)、例えば1/4のUS1m相当現地通貨だけを額面で転換を認めるというのもあるし、US$4m相当現地通貨額とも転換を認める例もありますが、転換価格の設定をどれぐらいにするかですね。
・ もし、5年以内に上場しなければ、例えば、10%のイールドを保証して、Loanを返済する。→この部分が経営者に対する圧力ですね。
・ Loanですから、優先劣後も決めます。担保付きにすれば、かなりの圧力になりますが、経営者の(再起を潰す)自宅不動産というのは外国ではまず無いでしょう。経営者の保有株式というのはありますが。
② 優先株・償還株(取得請求権付株式)
・ 議決権は、1株1議決権で普通株と同じ。
・ 配当は、普通株と同じ。
・ 優先株の優先は、残余財産分配権のみで、普通株に優先する。
・ 5年以上経過した場合(5年内に上場しない場合)には取得請求権が効力を有する。この場合は、投資金額に 10% p.a (複利)で計算した配当を付して償還する。
・ 総会は、普通株の総会と同じで種類株のみの総会は、残余財産分配のときに限り開催。
どちらが良いでしょうか?ケースバイケースですね。優先株の償還の配当は、あくまで配当可能の剰余金が無いと出来ませんね。 CBの金利は利益剰余金と関係なく払わないといけないですが。まあ、他にもいろんなバリエーションがありますが、典型的にはCBを利用するケースと優先株&償還株を利用するケースが多いのではないでしょうか。