○ 経団連の御手洗会長の講演↓=「希望の国、日本」の実現に向けて(2007.2.19 於:経団連会館)にて、「イノベーションの推進とならんでもう一つ、日本経済の成長戦略の重要な柱となるのが、法人税の実効税率の引き下げであります。」と言われています。続けて「日本の法人実効税率は現在約40%と、欧州の先進国に比べましても、10%程度高いという状況にあります。――法人実効税率を、現在の40%から30%程度へ引き下げていくことを、掲げているのであります。」と言われています。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/20070219.html
○ 経団連の会長さんが、嘘とまでは言いませんが、不適切・不正確な事を言っているなあと思いますね。欧州と比べて10%程度高いと言われていますが、本当にそうでしょうか?欧米とは言っていません。これは正解ですね。
・ 米国では、ニューヨーク州では46%弱、カリフォルニア州では41%弱ですからね。
・ では欧州では、確かにイギリスは30%(2008年4月から28%に税率引き下げすると発表されましたが、環境関連の自動車税は増税するようですね。)ですが、ドイツは39.9%です。フランスは33.3%イタリアは37.25%です。(=欧州は30%というのは、やはり嘘と言ってもいいでしょうね)
・ 日本は、東京は40.7%、標準税率だと39.54%ですね。
(日本は、事業税・法人住民税込み、海外も営業税とか生産活動税など込みの実効税率です)
○ イギリスは、法人税率は確かに30%です。しかし、付加価値税率はどれだけでしょうか。17.5%です。EUは、欧州理事会指令で付加価値税は15%から25%ですよね。
○ 経団連が、40%から30%に下げろと言うことは、当然税収減を他の税源で賄わないといけません。税収を増やす税目は消費税しかないですね。即ち消費税を大幅に上げろ(又は上げざるを得ない)と言うことが背後に有るわけですね。経団連の主張は全く身勝手ですね。企業は栄えても、教育ローン・住宅ローン・日常生活で苦しめられている一般消費者、即ちかなりが会社員ですが、個人レベルでは、消費税をどんどん払えということでしょうか?こんなのイヤですよね!!
・ 経団連の会長さんが言っている事は、我々が身勝手に「所得税を減税しろ、生活改善するために」(税収減なら法人税上げろ)と言うことと同レベルの話です。
・ 確かに、法人課税の実効税率が低くなれば、利益留保は多くなります。銀行・その他社外からの借入・社債等を減らして、投資などに回すお金は増えるかもしれません。企業競争力も少しは増えるかもしれません。しかし、庶民は所得税・住民税等の他に、消費税の大重圧がかかるわけですね。
○ 同講演で会長はこんな事も言っています。「企業は、研究開発から生産、販売、流通に至るまで、国境をまたいで、常に立地を最適化していくことが求められております。そうした中で、企業の公的負担、とりわけ、法人実効税率の水準が、企業が投資を判断する際の、重要な指標となってまいります。」即ち、大企業は、税務戦略も一つの要素として、例えば中国で外資優遇税制を利用して、税金の安い地域で工場等を保有している訳です。大企業は、既に、低い実効税率を享受しているのです。
○ 例えばトヨタの今期業績予想は、連結税前利益2兆3000億円、税後1兆5500億円です。
こんな数字を見ると、税前1兆円以上は、その部分に付き追加10%税率アップ、2兆円以上は追加20%アップ等の累進税率にした方が良いのではと思います。トヨタは、自動車という環境を損なうものを作っていますし、エンジン等の主要部品を除けば他から部品を調達して組み立てている組立屋さんなのに、良くこれだけ儲かるな?下請けだいぶいじめているんじゃないのと思いたくなりますね(勿論トヨタの大変な努力によって達成している事は分かります。またデンソーみたいな立派なところはそれなりに儲けていますが。しかし、取引先・下請けいじめの話は良く聞きますね)。やはり儲けすぎはいけないよと言いたい。トヨタだけじゃなく、がっぽり儲けている企業には、追加課税しても良いんじゃないでしょうか。最近は企業は業績を改善していますが、個人の懐は改善していませんという人も多いのでは無いでしょうか?
○ まあ、それはともあれ、私は、日本の法人課税の実効税率は、まあいい線行っている、決して高くないなと考えています。
【財務省のWEB】
・法人所得課税の実効税率の国際比較
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/084.htm
・付加価値税率の国際比較
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/102.htm