○ 最近政府が発表した「イノベーション25」には、2025年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造のための長期的戦略指針が示されています。その中で、科学技術・社会・人材のイノベーションが必要であると言っています。具体的には、20のイノベーションの代表例を上げていますが、例えば「ヘッドホンひとつであらゆる国の人とのコミュニケーション」という、実現すれば素晴らしい事も唱われています。
随分先だなあという感じと、やはり、うまく行ってもこれぐらいは掛かるだろうなという思いもあります。
○ 携帯・デジカメを例に挙げましょう。フラッシュメモリーは元東芝・現東北大学の舛岡教授が1987年に発明されたものです。もう20年もたっています。また同じく固体撮像素子であるCMOSセンサー等は、原理の考案が60年代後半であり、実用化されたのは半導体の微細加工技術が高度化した90年代以降です。電池もリチュームイオンの進化、それだけでは無く、コンデンサーの極小化等も必要です。携帯に組み込まれているソフトウェアは、20年前の大銀行の基幹システムを上回るぐらいの、何百万行のソースコードが入っています。多くの技術・エンジニアの努力の結晶です。ソースコード等は、もう誰がどんなソースコードを書いたのか、中身がどうなっていうのかわからなくなっていますし、ある日突然不具合が見つかりあわてて、応急修理というのが現状です。
○ 政府が、目標として、従来から構想があった身につけ持ち運びできるウェアラブル・コンピュータを発展させて、ヘッドホン型多言語会話機の様なものを作ろうと花火を揚げるのは良いのですが、実現させるためには、非常に多くの地道な要素技術の積み上げと、その絶妙の組み合わせ、これを如何に普通の人が使えるように製品化し、社会に貢献・浸透させるためには、膨大が人の知恵が必要ですね。しかも絵を描いたとおりになるはずもありません。出来るだけ具体的な計画に落とし込んで、いろいろ失敗もあるでしょうけれど、一歩一歩明るい未来を目指して地道な積み上げを行うしか無いですね。
○ 政府の提言では、「科学技術のイノベーションには、基礎研究の更なる推進と多様性確保、世界の頭脳が集まる研究拠点づくり、大学等の研究力強化、ライフサイエンス・IT等の新たなプロジェクト推進、基礎研究と市場の間での双方向の異業種連携等が必要と述べています。壮大で長期的な計画です。政権が変わったら、いつの間にか忘れた等とならないようにして欲しいですね。
○ しかし重要点があります。今までに政府が打ち上げたプロジェクトで、本当にうまくいったのは、私の理解では70年代後半の超LSIの研究組合の1件だけだったのではないでしょうか。政府は、いろいろ提言などして、莫大な予算を多くの独立行政法人に配賦して種々のプロジェクトに使っています。なぜあまりに多くの失敗ばかりするのでしょうか?なんとかならないのでしょうか???
まあ、政府の予算の無駄遣いはさておき、人のまねの出来ない技術の確立には、最低10年、製品化には更に4-5年はかかると思いますね。大作業ですね。