○ 会社が取得する財産価格の適正性を確保する目的で検査役の調査制度があります。現物出資に関する規制は、今回の会社法で大幅に緩和されました。尚、現物出資の件ではありませんが平成2年の時代錯誤的商法改悪で事後設立に導入された検査役の制度は、合理性が無いとして廃止されました(特別決議は残っていますが)。しかし、まだ規制は残っています。
○ 会社設立の場合には、定款に記載して、更に裁判所の選任する検査役の調査が必要とするのが原則ですが、①500万円以下の少額、②市場価格のある有価証券、③弁護士等の証明を受けた場合(不動産は鑑定士の鑑定評価付き)には調査は不要となりました。また、会社設立後は、取締役会の決定事項となり、上記に加え、④発行済株式総数の1/10以下の新株発行の場合、及び⑤デット・エクイティ・スワップの場合も不要となりました。
○ 私は、検査役の調査制度(裁判所の選任する検査役は、弁護士経由裁判所に選任を求めますが、かなりの場合、その弁護士が検査役として選任される)あるいは弁護士等の証明の制度は、ピントのぼけた制度だと考えています。
私は、現物出資は、その内容を1)既存株主に事前通知し、その内容に不満がある株主には、株式買取請求権を与える。2)情報を公開する事によって自己規律が働きますから、その概要を登記事項とする。(謄本=証明書を入手すれば債権者にも内容が判明する)とするのが適切ではないかと考えています。
○ 理由は以下の通りです。
1) 例えば、特許権・著作権・商標権等を現物出資する場合、当然の事ですが弁護士等にその評価能力等がある筈がありません。特許権など、その道のエンジニアやプロが読んでも難解ですし、プロの評価も果たしてどれだけ当たるか見方が分かれる場合もあると思います。素人には、やはりもちんぷんかんぷんです。弁護士への説明や、素人にわかる資料作成だけで疲れ果てます。
2) お友達の弁護士さん・税理士さん等に、算定根拠を渡してお願いして「お礼」をすれば、むちゃくちゃな内容で無い限り顧客の意向に沿った証明を出してくれると思われます。というのは簡単で、弁護士さん等が自分で、別の算定根拠等考えられる筈もありませんからね。即ち、弁護士・公認会計士等の証明は、財産価格の適正性を確保するのでは無く、適正であるかのように仮装することが出来ると言うことです。
3) 例えば特許などの適正価格算出は極めて難しいというか、そんな価格など無いと言うことです。その特許を自分のノウハウや周辺・関連特許と組み合わせれば大きな価値・新製品等を開発出来る人にとっては大きな価値はあります。しかし、そんな特許など興味の無い人には無価値です。豚に真珠。猫に小判です。
4) 内容を開示するということは、不公正・妥当性を欠くことを行うことは、取締役は責任追及される可能性が高くなる訳ですから、逆に現物出資の適正性について合理的説明が必要となり、あるいは客観的資料を取りそろえる必要があり、またその分野(特定の技術なら、その評価が可能な人)の専門家の鑑定等を取締役は用意をしなければいけないと言うことです。
ここで私が言いたいことは、財産価格の適正性を確保する制度に、適正性を判断する能力も資格も疑わしい弁護士等の証明を求めることは、不適切であり、開示の制度でコントロールするのが良いのではないかと言うことです。