まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

監査役制度について

2007-03-26 00:35:16 | 商事法務

○ 取締役会設置会社の前提ですが、会社法381条では、監査役は、取締役の職務の執行を監査する。また、監査役は、監査報告を作成しなければならない。とされています。一方、362条第2項には、取締役会は、取締役の職務の執行の監督と規定されています。即ち、日本では、二元的監査制度になっており、その違いは下記と言われていますね。

 監査(事前・事後の検査を含む)≧監督(事前の検査)

     監査役監査=会計監査を含む業務の違法性監査+著しく不当な場合の妥当性監査

     取締役会=違法性・妥当性の監督

       日本の得意な米国の猿まねをして、日本でも日本版SOX法だとか内部統制がやかましいですね。米国は、取締役会による監査だけであり、監査役・監査役会の制度・機関がありません。取締役会・取締役と監査役・監査役会の問題点・あり方・位置づけと内部統制・その分担等について、どれだけ検討したのですか?そういった議論がきちんとされた様には見受けられません。

     監査役の機能強化の為に、従来いろいろ試行錯誤的な事をされて、監査役会設置会社の監査役は過半数が社外監査役でなければならない規定や任期の延長等がされましたが、昨今の内部統制の会社法の規定や議論・動きを見ていると、いつの間にか、監査役はあまり重視されていない感じがしますね。まあ一応会社法施行規則100条3/4項には、監査役の機能強化の規定はありますけどね。

       取締役・監査役・会計監査人等がその任務を怠ったときは、会社に対して連帯して損害賠償の責任を負う(423)とされています。また429条では悪意又は重大な過失があったときは、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うとして、注意を怠らなかったことを証明したときを除き、監査役等が、監査報告に記載し又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録をしたとき、会計監査人について、会計監査報告に記載し又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録したときの責任を規定しています。

・ 会社に損害が発生しても、自主的に損害賠償する人などいないですよね。株主からの代表訴訟でないとね。しかし、これも時間がかかるし、普通の個人株主が、自分に損害賠償してくれるわけでもないのに手間ですよね。カネボウ・ライブドア等の場合は、「有価証券の虚偽記載」ということで、証券取引法違反で争われています。取締役については、株主代表訴訟も出てきていますが、監査役を訴えたケースはあまりないのでは無いのではないでしょうか。カネボウ・ライブドア事件でも報道に監査役が出てきません。監査報告書も出している筈なのにですね。何をしているのでしょうか?これらの点からも監査役は影が薄いというか、相手にされていないと言うことでしょうか?

      

監査役制度機能不全の理由等

1.       仲間に対する監査:監査役は、日本では、退任した取締役や取締役になれなかった従業員に割当られるのが普通です。周り、即ち社長や他役員は、かつての上司や部下ですので、監査し難いし、厳しい意見をいいずらい事情があります。

2.       指名権を社長等に握られている:役員の指名は、会長・社長等が掌握している、当然社長などは自分に、「心地いい人」を指名します。会社から報酬も出ます(形式的には、総額を総会で承認を取りますが)

3.      監査組織・スタッフを持たない場合が多い:大企業では、監査役には、そのスタッフ   がいないときちんとした業務が出来ません。何十人というきちんとした組織がないと、監査業務など出来ません。その部門で、どの取引で、どのような巧妙なやり方で、あるいは取引先を巻き込んで違法行為を行います。それをチェックするには専門組織が必要です。内部統制ではこの組織を、会社法施行規則の規定にも拘わらず、一般的にはどうも監査役(会)の傘下ではなく、取締役のコントロール下で組成しようとしています。

4.       違法行為は裏で行われる:粉飾は、巧妙にかつ表に出ないように行われる。2-3人の幹部(カネボウでは社長と副社長)とその部下によって行われるのが一般的。粉飾を行おうとする事を、取締役会等で「粉飾やりまーす」等と馬鹿なこと言う筈ないですよね。社内開示すること等ありえないですよ。監査役が取締役会に出席して、話を聞いているだけで違法性監査(違法行為の発見)などできる筈がありません。

5.       違法であっても書類上は適法であると仮装する:例えば、取引先と組んで期末に利益操作をすることがあります。裏で買い戻しの約束をしても、社内にだす書類は、売買契約書とそれに基づく履行・請求・決済です。裏の覚書に基づいて翌期買い戻し書類をあたかも、そのとき理由が生じて新たに発生したふりをして作ればいいわけですね。

○ 社外監査役は機能するか?

     違法行為の阻止、不祥事等への対応とか、M&Aの買収防衛策発動のときには社外監査役(社外取締役にも当てはまる)が、しっかり意見を言って差し止めてくれるとか、客観的判断を適正に行えて良い等と言われています。社外監査役は非常勤も多いですし、当該会社の業務も精通していません。違法行為は、現場で起こります。現場の経験・知識を知らない人が、現場で行われる操作など見抜ける筈がありません。

M&Aの買収防衛策でも、報酬を受けている、自分を指名してくれた人に対して、防衛策発動中止、あんたも保身などせず止めた方が良いんじゃないのとは、仲違いな祖しない限り意言えないですよね、普通は。

     社外監査役には、上記の1)以外全て当てはまります。社外監査役に期待するのは誤りですね。

結論としては、まあ一番効果があるのは内部告発でしょうね。社外監査役を社内告発の窓口にすれば、ほんの少し良くなるかもしれませんね。まあ、最近公益通報者保護法も出来ましたからね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする