まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

 企業価値向上議論の不思議

2007-05-10 00:28:48 | 企業一般

     敵対的買収であっても、企業価値を向上させるものならOKしてこれを容認して買収防衛策を発動しないとか、買収防衛策として、買収されないように企業価値を上げなければならないとか、最近「企業価値の向上」という言葉がはやっています。

     「企業価値とは何か」については、先のBlog↓で述べていますが、私は「社会への貢献度・大きさである」と思います。定性的には、その会社が社会・顧客に有用なものを提供し、これに対して顧客が価値を認めてお金を払う、従い事業として成り立っているということであり、貢献度が大きい会社ほど企業価値が高いと言う事ですね。また、定量的に言えば、その会社の生み出す「付加価値額」ではと思います。(ここでは買収価格としての価値ではありません)。従い、私の考えでは、利益が同額の会社でも従業員への報酬額が多いほど企業価値があると考えています。

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2007/01/index.html

     最近の企業価値に関する新聞・雑誌記事を見ていると、ちょっと変な議論が行われている感じがします。即ち以下などの点ですね。

       企業価値は、一朝一夕には向上しない。経営者のビジョン・経営力の下、役職員が額に汗して、努力を通して時間をかけて向上していくもの。ペンタックスの経営陣が急遽、企業価値向上の代替案を作成しているようですけど、そんな短時間で作文しても、それが実現できるのでしょうかね?

       他社を合併・子会社化等で統合して、企業価値が1.5(2未満)になっても、それは企業価値を下げる・毀損することですよね。1+1>2超でないと企業価値が向上したことにならないです。1+1=2だと唯の現状維持ですね。どうも他社を買収するときなどは、自分の会社だけみれば1.5になりそうなので、それで企業価値が向上すると勘違いしている人がいるのではないかと思います。

       買収者が、単に株式を買い占めただけで企業価値がどうして上昇するのですか?単に、株主になっただけですね。企業価値を向上させるには、共同で相乗効果・相互補完のある事業を現実に展開して始めて価値が向上してきますね。買収者が、買収前から相手の内情にも精通しておらずに企業価値向上策が作成できるのですかね。せいぜい、例えば地域的補完関係が見えるばあい等は1+1=2になりますが、これに追加する価値向上の経営戦略を作成しないといけませんけどね。

       企業価値と株主価値(=株価上昇)とは、関連性があるが別物ですね。経営者は企業価値の向上に務める一次的責務がありますね。即ち従業員にやる気をもって働いて貰って、それにきちんと答える報酬を支給し、果敢にあるいは堅実に設備投資を行い、かつ適正利潤を上げ、しっかり株主に配当を行う事が責務であり、その結果株価が上昇することが望ましいが、株価自体の短期的な動きには責任を負える立場にありません。

       買収防衛策発動を検討する「企業価値評価委員会」等の独立社外者等に、本当に企業価値が上がるか等という判断ができるですか?裁判等は一件の事件で、何ヶ月もかけて確定判決がでます。企業の課題は1件では無いですね。どこの企業も山ほど課題を持っています。またどこの会社も、外部から見えない、様々な事情・問題を抱えています。独立社外者が、事業について経験・知識もろくに無い、会社の種々の内情も知らない人たちが、単なる外形的な事業をチェックして会社の企業価値向上の判断を適切に出来るのでしょうか?

⑥ 買収を仕掛けられたときに、企業価値向上策を検討するという経営者がいます。「あほかいな」ですね。経営者としては失格です。あんたは今までどのような経営をしてたのですか?ということです。下から上がってきた書類に判子押してただけですか。取引先に挨拶して、会食してゴルフしてたのですか。まあ、普通の経営者は日々企業価値向上策を考えています。買収攻勢をかけられて、もっと向上策を考えますと言っても簡単に出てくる筈ないでしょう。

     ともかく企業価値があがったとして、企業価値向上の独り占めは良くないですね。ステークホルダー(従業員も含む)と一緒に向上した価値を享受すべきですね。例えば、買収企業が、厳しい企業で人の2倍働かせて給与を1.5倍しか払わない企業の場合(そういう会社よくありますよね。実名は挙げませんが)とか、買収者が被買収企業に乗り込んで、利益を上げる手っ取り早い方策があります。被買収者の人員をカットしたり(例えば、日産にゴーン氏が来て改革が始まった時に、大量に人が辞めましたよね)、また納入業者をいじめ倒して買値をたたいて利益を上昇させる事等です。まあ企業の体質は筋肉質が良いですから、一概には否定しませんが、やりすぎは良くないですね。自分だけ儲けて下請けは青息吐息では、下請けはただ食べるだけです。利益が上がれば、株式市場は歓迎します。株価も上がるでしょう。でもこれが果たして長期的観点にも立った企業価値の向上でしょうか?