・ 会社法に規定されている株主の権利で、(勿論持株比率等で異なりますが)実際上殆ど役立たない権利、無価値な権利、行使してもなかなかうまくゆかない権利等を列挙してみようと思います。しかし、例えば最近株主提案権を行使する事例が出てきましたので、少しは変化の兆しが出てきたのかもしれません。経営者もますます緊張感を持った経営が要求されますね。他にもお気づきの権利があれば、ご教示お願いします。
○ 残余財産分配請求権―存続期間を決めている会社・投資法人(会社型投資ファンド)等を除けば、普通は会社が倒産したときには、一般債権者でも8割・9割の債権カットですね。株主に残余財産分配請求権があっても実際一文も戻って来ませんね。大半のケースで価値無しですね。
○ 累積投票請求権(342条)―日本の大半の会社は定款で累積投票を排除していますから、こんな権利があっても請求できませんね。
○ 定款・株主名簿(125条)・総会議事録(318条)等の閲覧(債権者もOK)―定款は別として、株主名簿の閲覧について、会社法は「所定の場合を除き閲覧を拒むことはができない」と規定しました。従来は請求しても「合理的理由を説明して下さい。説明すれば見せます・見せます」と言って見せない企業が多かったですが、少しは改善しているのでしょうかね。(尚、定款はEDINET見れば公表していますね)。まあ、10%とか20%とか持っている株主には開示しているようですけどね。それだけ持っておれば、また楽天の様に大きく報道されていれば、会社側としては拒否できないですね。
○ 取締役会議事録の閲覧(371条*。債権者も可、ただ条件が少し違う)―監査役設置会社&委員会設置会社は裁判所の許可が条件ですし、その理由を疎明しないといけません。実際上内部がわからない株主に疎明も難しいかもしれませんね。内部協力者がいれば別ですけど。企業によっては議事録なんか見ても、「案件を十分説明して承認可決」――、これぐらいしか書いてなくて何かわかりますかね?労多くして殆ど意味の無い権利かもしれません。大企業の場合は、議事録よりも、稟議書及びその補足資料等を見ないと意味がないのにね。
*商法時代は、裁判所の許可が条件でした。会社法になって、取締役会設置会社の株主は、いつでも閲覧・謄写可となりました(371-2)。
○ 取締役の違法行為差止請求権(360条。行使前6月保有)―この権利がどの程度行使された事例があるのか、私はよく知りません。派閥抗争・内紛会社、株主運動等で行使例があるとは思いますが。これは単独株主権なので株主なら行使できますね。
○ 議案提案権 (303条:取締役会設置会社の場合:行使前6月保有:1%以上又は300個以上)―昔電力会社の個人株主が共同で提案した事例など、それなりに権利行使の事例はあると思いますが、単に提案だけで可決承認の可能性は、普通の場合はありませんね。でもペンタックスのケースでもスパークスが提案権を行使していますし、その他の事例がだいぶ(といっても全体から見ればほんのちょっと)出てきましたね。2-3年前と様変わりですね。
○ 帳簿閲覧権(433条:3%以上)―商法時代は、会社は、何かとけちをつけて、簡単には見せないようにしていました。これも株主名簿と同じように所定の場合を除き「拒否できない」としましたが、実態はどうでしょうか?少しは改善しているのでしょうか?
○ 株主総会招集権(297条:行使前6月保有:3%以上)―招集はできるが、何十%と持っていないと議案が承認される可能性は少ないですね。最近はいちごアセットが東京鋼鉄の株主総会で委任状争奪戦をして株式交換契約承認決議を否決に追いやりましたが、これはまだまだ例外ですね。嫌がらせで招集権行使という事例はありそうですね。
○ 役員解任訴権―(854条:行使前6月保有:3%以上→譲渡制限会社は別。総会の日から30日以内)―不正の行為、重大な法令・定款違反→普通は株主は、外から見ている訳ですから、分かりませんね。また裁判所への請求ですからね、訴訟中に役員の任期が切れて、重任しなければ訴えの利益がなくなりますね。日本の裁判所のスピードは、どれぐらいでしょうか?人力車並みでしょうか?
○ 解散判決請求権(833条:10%以上)―株主は有限責任ですね。出資すればそれ以上の責任は負いません。出資金をあきらめてしまえば、それで済みます。火中の栗を拾おうとする株主がどれだけいますかね?また要件が厳格ですからね。どれだけの事例があるのか、私は知りません。
○ 合併・分割・株式交換・移転等の際の事前・事後開示制度―どの程度利用されているのかよく知りません。あまり利用されていないのでは無いでしょうか。
これぐらいでしょうか、他にもありますか?