○ 企業間で取引をする場合、契約書の記名・捺印欄に、例えば取締役(調達部長)等と記載されていることがときどきありますね。取引相手方が小さな企業だと代表取締役社長との間の契約書になります。契約相手方に、単に取締役とだけ書いていても、果たして社内で授権されて契約締結の権限があるのかどうかといった事は調べません。普通は、当然権限があるものとして取り引きします。
取引の時に登記簿謄本など調べませんからね。基本契約等を締結するときは、登記簿謄本を提出したり、印鑑証明を出したりすることもありますが、基本契約を締結せずに取引をする場合も多いですね。これが実際の取引の実態ではないでしょうか。
○ 会社法では、取締役会非設置会社について、349条で「取締役は、株式会社を代表する。」と規定されました。取締役副社長等と記載して有れば、表見代表取締役の規定(354条)に従い「株式会社は、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」となります。
取締役会非設置会社では、単に名詞に「取締役」とだけ記載されていても、会社を代表します。取締役会設置会社では、「取締役」とだけ記載されていても、会社を代表しません。これが、第三者にすぐにわかるでしょうか。またいちいち調べるでしょうか?
○ また、業務執行取締役(ここでは代表権の無い選定業務執行取締役の事とします)というのも規定されています。これまた、相手に、会社から正当に権限が授権されている、当該行為に正当な権限があります等といちいち説明しません。契約書に取締役営業本部長等と表示されていると、相手方は、仮に正当な権限がなくても、授権されていて当然権限があるものと普通は認識します。
○ 今度の会社法では、代表権があるのかないのか、当該法律行為をする権限が授権されているのか、取引相手先にはよくわからなくなりましたね。勿論、実際上はあまり弊害はないでしょうけどね。日常取引の推進では、そこまでいちいち認識して取引はしませんし、世の中の取引の99%以上は、それでスムーズに済みますからね。でも、何かすっきりしないと言うか、その内に代表権について問題になるような案件が起こるかもしれませんね。