○ 今回は、ちょっと変わって技術者の話です。私は技術者ではありませんが、技術の事業化会社の役員(常勤の代表取締役)を数年やったことがありますので、その経験なども踏まえて、技術者像を書いてみようかと思います。
○ 技術者は2種類に分けられると思います。学者型技術者とどぶ板型技術者です。
学者型技術者は、先端技術の研究を行い、学術論文を発表して学会で認められたり、大学の先生と共同研究したりします。でも先端技術ではお金になりません。ビジネスとしては成り立たないのですね。この先端技術が実際に世の中に広まり役に立つのは、7,8年から15年先の話です。しかも、花が咲くのは千三つとはいいませんが、百に3つぐらいでしょうか。でも大当たりは千三つぐらいかもしれません。
こういった先端技術を事業化しようとしても無理ですね。せいぜい政府の独立行政法人からの仕事や研究所との共同研究ぐらいしかビジネスになりません。継続性もマーケットもありません。先端技術や特許の事業化というのも道は千里で、先が見えません。
産業革新機構が出来ました。新銀行東京は見境無くでたらめ融資をしましたね。産業革新機構は、どういった投資をするのでしょうね。ベンチャー企業へのお金という点では、融資でも出資でもリスクマネーとしては殆どかわりませんね。
「機構の成否を握るのは先端技術の目利き能力」であり、能見社長は「出資企業や創業支援推進機構や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと協力して取り組んでいる」と言われています。どうしてこういった組織に目利き能力があるのでしょうかね。あるわけないでしょ。
また、投資銀行やファンドで投資経験を積んだ人材を採用しているようですね。まあ彼らは、「とらたぬ投資計算」は得意ですが、技術会社への投資眼というのは、人によって少し違いますが、おおざっぱに言えば「下手な鉄砲でも数打ちゃ当たる」ですからね。産業革新機構も、融資ではなくEquity投資で第2の新銀行東京みたいになるのでしょうかね?私が役員をやっていた会社にもベンチャーキャピタルからいろいろアプローチもありましたが、WEBを読んで理解もできないファンドマネジャーには会いませんでしたね。時間の無駄ですからね。もっともfinancial investorを入れるつもりは最初からなかったですけどね。
目利きが出来る人とは、企業の一線で活躍してお客さんと接している技術者ですね。時代の方向性を感じ取ることができる人です。NEDOで研究論文書いたり読んでいる学者型技術者には無理でしょうね。例えば、デジタルカメラの目である半導体のCCD(Charge Coupled Device)の将来性にいち早く目を付け人材・資金を投入したソニー元社長の岩間和夫みたいな人ですね。CCDの発明自体は日本ではありません。米国のベル研究所が69年に発明しました。 しかしソニーは70年から研究開発を開始し78年にやっとCCDカメラの開発に成功しました。8年がかりです。大変な苦労です。
東芝でフラッシュメモリーが発明されたとき、誰が注目しましたか?あるいはAT&Tでトランジスタが発明されたとき誰が注目しましたか。AT&Tは20世紀で最も革新的で価値ある発明の使用権をタダ同然の2万5千ドルで売りましたね。目利きと言われる人の言うことなど殆ど当たりません。
○ どぶ板型技術者について言いましょう。こういった技術者が技術関連ビジネスを作り、広めるんですね。時間軸としては、それでも初期の製品が完成してマーケットに受け入れられ始めるには、まあ3年ぐらいはかかりますね。
どぶ板型技術者は、基本的には顧客志向です。顧客のところに行って自社技術・製品の売り込みをします。でも、簡単に採用などされません。予算も今あるわけでもないですね。
顧客の声に耳を傾け、地道に改良します。しかも特定顧客だけの無理難題を聞いたら汎用性がなくなります。こつこつ製品の改良を重ねて、2-3年ぐらい立てば、トンネルの出口が見えます。そして徐々に製品を買ってくれる顧客が出てきます。
どぶ板型技術者の用いる技術は先端技術ではありません。既存技術の組み合わせと改良です。ですから、顧客にも受け入れやすいのです。自分だけではなくいろんな技術の得意分野をもった技術者が必要ですがキー技術者がいれば、その人の下が数人-10人ぐらいは、普通の能力の技術者を雇えます。そういうグループを徐々に広げて行けば、少しは雇用にも貢献します。どぶ板型技術者が顧客の声をもとに改良すれば、顧客に喜んでもらえます。喜んでもらえるということは、社会の中で必要とされるのです。即ち、それに対してお金を払う人が出てくる即ちビジネスとして成り立つということですね。
どぶ板型技術者を見つけて、製品改良の資金を提供するのがベンチャーキャピタリストの役目です。
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