あけましておめでとうございます。今年は私にとっても変化のある年なので、なんとかふんばっていきたいと思います。
去年から渡辺努氏の『世界インフレの謎』という本をゆっくり読んでいました。それを元旦に読み終えました。この本は現在進行しているインフレがどういうメカニズムで起きているかを筆者なりの解釈を示してくれているものです。
筆者はこのインフレの原因はパンデミックによる行動変容であると説明します。経済はすでにグローバル化しており、パンデミックはこのネットワークを機能不全にしてしまいました。その結果、供給不足になり物価上昇が始まります。しかし多くの人はパンデミックがおさまり経済を回し始めればおさまると思っていました。ところがそうはいかなかった。その原因はパンデミックによって行動変容が起こったからだと筆者は主張します。一つは労働者が職場にもどらなくなったということです。これによって供給不足になります。もう一つはサービス消費からモノ消費へと消費の行動が変化したということです。これによってモノへの供給がさらに不足することになります。以上のようにインフレが進行しているのです。
以上の説明のあと、日本の状況に言及します。日本においてはなかなかインフレが起こらなかった。その原因は日本がデフレが起きていたからだと言います。日本だけがここ何十年にわたって物価の上昇がほとんどなかったのは、デフレのせいだと説明します。アベノミクスはこのデフレマインドを改善するために行われたのです。しかしアベノミクスもうまくいきませんでした。それだけ日本のデフレは強力だったのです。
ここに来てようやく日本も物価が上昇してきました。私も2022年に入って急激に物価が上昇しているのを感じます。特にコンビニで買い物をするとそれを強く感じます。5年前の5割増しの値段になっているように感じるのです。その結果コンビニで買い物なんてほとんどしなくなりました。
物価上昇が起こっても、その分の賃金上昇が起これば問題はありません。この機会を逃さず、賃金を上昇させ、デフレから脱却させるべきだというのが筆者の主張のようです。
さて、筆者の主張は学ぶところが多く、納得できるところも多いのですが、もっと重要な視点が必要なのではないかと私は思っています。日本のデフレマインドを生み出している要因です。
日本のデフレマインドを生み出している要因は次の2点だと私は考えます。ひとつはバブル崩壊の後遺症、もう一つは急激な少子高齢化の進行です。
一つ目の要因はバブル崩壊の後遺症です。バブル崩壊を直撃したのは今の50代から上の世代です。あの時のショックは大きかった。だから50代以上の高齢者は値上げに対する警戒心を強くしています。それがデフレマインドを生み出している一つの要因です。トラウマになっているので、なかなか変化させることはむずかしいのです。
もうひとつの要因は急激な少子高齢化です。つまり年金の問題です。バブル崩壊を経験した日本の高齢者は、日本の経済を信用していません。だから高齢者は将来が心配でたまりません。だから少しでも貯金しておきたいのです。数年前、老後に2000万円のたくわえが必要だという話が政府側から出てきました。それはすぐに引っ込められましたが、実はあの言動は強く頭に残りました。それ以前から将来に対しての不安はみんなが持っていましたが、それを証拠立ててしまったのです。高齢者は高いものを買わなくなります。より安いものを求めて消費活動をおこないます。これがデフレを生み出していたのだと私は思っています。
今、政治にもとめられているのは少子高齢化対策です。安心感を高齢者に与えると同時に、少子化に歯止めをかけるように、子育て支援を行っていくことが重要な政策になるはずです。
さらには、国の借金の急激な増加に対する不安があります。
結局は今の日本の政治に対する不信感を解消していかなければなりません。