『吾輩は猫である』を読んで、メモしていく。今回はその3回目。第三章。
【ようやく「苦沙弥」という名前が現れる】
「主人」は原稿を書いているが進まない。「妻君」は「今月は足りませんが・・・」と不満を訴える。そこに「迷亭」があらわれる。「迷亭」と「妻君」との会話から主人の名前が「苦沙弥」であることがわかる。苦沙弥も小説の中ではまだ名前もない状態だったのだ。ここまで続くとは思ってなかったのに、まだしばらくこの小説を続けなければならないとなったがために、構想を練り直して設定も明確にしていこうとしている様子が伺われる。
【「寒月」と金田家の娘の結婚話が始まる】
「寒月」が現れる。その日の晩の演舌の稽古を始める。罪人の絞罪の刑についての考察である。絞首刑のことである。話が盛り上がらず途中で帰る。
数日後、「迷亭」がまたやってくる。そこに女客がやってくる。金田家の細君である。鼻に特徴があり、「吾輩」から「鼻子」と名付けられる。「鼻子」は娘の結婚相手として「寒月」のことをいろいろと聞いてくる。「苦沙弥」は「鼻子」に失礼なことを次々に言う。
「吾輩」は金田家をさぐりに行く。探偵小説のようである。しかし、自分がいくら探ったってそれを「苦沙弥」たちに伝える手段はない。それでも義侠心から行くのだと言い訳をする。この言い訳がこの小説らしいところである。
金田家では「苦沙弥」の悪口のオンパレードである。その娘は別室で電話をしている。「吾輩」も電話は初めてらしい。この時代に電話が始まったということであろう。この娘の名前が「富子」であることがわかる。「吾輩」は「苦沙弥」の家にもどる。
そこにはまだ「迷亭」がいる。「寒月」も来ている。「迷亭」は鼻についての学術的な考察を行う。とは言ってもいつものごとく出鱈目なものだ。そして鼻は遺伝するので金田富子と結婚してはいけないと「寒月」に言う。この話を近所の人たちが垣根のそばで聞いていたのか、「苦沙弥」に対して馬鹿にしたような声を上げる。「苦沙弥」は怒って往来にでるがすでに誰もいない。
「寒月」と金田家の関係はこの小説の主たる筋になる。とは言えまともな展開にはならない。筋としては何の面白みもない。
続けるつもりもなかった小説が人気になったために無理矢理続けるためにいろいろな苦労が伺える。そんないい加減さ見える章である。しかしその軽さが時代を表しているようにも感じる。