英国で上演された演劇をそのまま映像にして公開するntlive。トムストッパードの新作『レオポルトシュタット』が日本で上映されています。初日に見に行きました。ものすごい映画(演劇)でした。
ユダヤ人のおかれた状況、その状況の中でさまざまな困難を克服しながら生きていく人間の姿が描かれます。第二次世界大戦時のユダヤ人の苦しみは想像を絶するものがあります。
とは言えだれもが表と裏があり、自分勝手な部分があります。打算もあります。それが人間の真実であり、責める必要はありません。客観的に見ればダメな部分も含めて人間なのです。そしてその虚と実が歴史になっていきます。歴史の悲しさといとおしさが最後の場面にぐっとせまってきます。
この作品、登場人物も多く、しかも年代が長期にわたります。誰が誰かがわかりにくくなります。私は日本の上演の前に戯曲を読んだのである程度理解はできましたが、初めての人が理解できたのでしょうか。ちょっとした解説ペーパーがあればいいのではないかと思われました。
この作品、すでに日本の新国立劇場で上演されています。それも見ました。演出が小川絵梨子さんです。すばらしい作品で感動したのですが、さすがにロンドンで上演されたntlive版ははるかに上を行くものでした。日本で一生懸命上演してくださった方々には申し上げにくいが、やはり役者の質が違います。ミスキャストではないかと思われる方もいました。日本人にはユダヤ人の歴史が自分のものとしてとらえるのが難しかったのかもしれません。
日本も戦時中多くの人を苦しめていました。苦しめられた人たちの心をよく考える必要があります。戦後しばらくは日本人が苦しめられた経験もあります。今回の映画を見て、さらに意識が高くなり、よりよい日本版の上演ができることを期待します。