【台本・演出】
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【出演】
妻夫木聡 緒川たまき ともさかりえ
三上市朗 佐藤誓 橋本淳 尾方宣久 廣川三憲 村岡希美
崎山莉奈 王下貴司 仁科幸 北川結 片山敦郎
ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』という映画がある。私の大好きな映画だ。アメリカ映画でありながらワビサビのある、気の利いた泣けるおしゃれな映画だ。もしかしたら本来のアメリカ映画ってこういうものなのかもしれない。DVDも持っている。KERAが『カイロの紫のバラ』の「骨格をそのまんま借りる」と言ってできあがったのが、この作品である。絶対におもしろいに決まっている。
もちろん『カイロの紫のバラ』をそのままやるわけではない。日本に舞台を移し、日本だからこその風俗や人情が描写される。主人公はつまらない日常の中で映画が唯一の楽しみである。映画があるから生きていける。そんな厳しい現実の世界の中で、夢が現実のものとなる。しかしその夢ははかないこともわかっている。しかしそのはかない夢でありながらその夢に頼る決断をする。そのせつなさが切実に伝わってくる。
登場人物はみんな愚かで卑怯で、だからこそ逆に人間らしい親しみが感じられる。これはいつものKERAの芝居である。ウディ・アレンとKERAの見事な「アウフヘーベン」としか言いようのないすばらしい舞台だった。
緒川たまきさんがいい。「ごめんちゃい」を繰り返す控えめな女性でありながら、実はいざとなったら絶対にひかない女性をみごとに表現している。ともさかりえさんは日本の舞台にいなくてはならない女優になってきた。妻夫木聡君は当たり役だ。
映像の処理もまったく無理がなく、よくここまで作り上げたものだと感心するしかない。
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