
新国立劇場で少年王者館という劇団の『1001』という作品を見ました。不思議な空間を作り出し、30年~40年くらい前のアングラ劇や小劇場を思い出させるワクワク感のある演劇でした。しかしそういうかつての演劇はどうしても客席と舞台の一体感が必要になるものであったように思います。今回の新国立劇場はあまりにきれいに整いすぎているのか、どうしても遠くの出来事に感じてしまいました。
新国立劇場は主催の演劇はほとんどプロデュース公演だったのですが、今回は芸術監督の小川絵梨子さんがぜひとも紹介したいということで招聘公演の形での登場とのことです。ポスターなどからイメージするように見世物小屋的なノスタルジックな芝居です。内容は千夜一夜物語をベースにして戦時中の日本の姿をそこに絡めます。昭和を感じさせてくれます。物語は行ったり来たりしながら、物語の構造を解体しながら進んでいきますので、何が何かがわからなく目くらましにあったような気分にさせられますが、それがまた面白いのだと思います。とても計算された舞台です。
ただし私はいまひとつ入り込めませんでした。こういうかつてのアングラ演劇などのような舞台は異空間に連れ出されたような気分にさせられます。かつてのテント公演とか小劇場公演というのはどこに連れていかれるのだろうという、ちょっとした恐怖感と期待感がありました。見ず知らずの観客が連帯感を持ち、空間の中で一体になっていきます。この経験こそがあの時代の演劇でした。しかし今回の新国立劇場はきれいすぎました。そこが今一つ入り込めない理由だったのではないかと考えます。
あるいは私が年を取りすぎてついていけなくなってしまったのかもしれません。日本が高齢化社会になり、若い人の文化があまり日の目をあたらなくなってきました。そういう意味では若い人がのめりこむ演劇は必要です。若い人が本当に楽しめる演劇であれば、私ももっと学ばなければいけません。
もう一度チャンスをいただき、いつも公演をしている場所に行き見せていただければと思います。
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