今回は、福岡美術館の鉄絵双魚文盤を紹介したい。数多い鉄絵双魚文のなかで、当該盤ほどの力強い鉄絵盤は数点を知るのみで、中でもこの盤は最も印象強い。

見込み中央を塗りつぶした三重円圏は太陽文で、それを囲んで双魚が陰陽配置されている。その魚文は澱みのない線で、一気に描きあげられており、相当な腕前である。それゆえ他の魚文に見られない、活き活きした魚文になっている。
口縁の波状文も、その筆に澱みはなく、中国陶磁の波状文と形をやや異にしている。いずれにしても画工の腕前は確かである。尚、高台の畳付きの幅は、極狭くかつ高台は鉋目をもち、サンカンペーンの特徴がよく表れている。