サンカンペーン印花魚文の装飾は、以下の組み合わせにより成立している。その内容について順を追って説明するが、パヤオと同様に多様性に富んだものである。装飾の構成は「器胎形状」、「釉薬の発色」、「魚文数」から成立している。
「器胎形状」
1.鍔縁
2.カベットの鎬加工方法(形状)
器胎成形に僅かながら違いを認めることができる。ここで1.鍔縁形状は、大別して、下の2種類がある。
1)立上がる鍔縁・・・量的には少ない
2)横に開く鍔縁・・・一般的にこれを鍔縁と呼ぶ。量的に多い。
次に2.カベットの鎬加工方法である。
① 片切り・・・L字形の刃物を上から下へ運び、片切りのように鎬を形成
② 丸削り・・・丸みをもつ刃物を上から下へ運び、縦縞文様を形成する
「釉薬の発色」
A 光沢褐色(飴色)
B 無光沢褐色
C 黒褐釉
D オリーブグリーン
「魚文の数」
ア 双魚
イ 三魚
ウ 四魚
以上の組合せにより、実に多数の装飾文様が存在する。以下、代表的な事例を紹介する。
〇褐釉印花四魚文盤・・・バンコク大学付属東南アジア陶磁博物館
組合せは1)-①ーA-ウの組合せである。釉薬表面に油をはじいたような斑が見られるが、これはサンカンペーンの特徴の一つである。この鎬をどのようにして形成したのか? 九州の小鹿田焼のように、飛び鉋の技法とも考えられるが、鎬形状の規則性がうすく、掘り込みの深さもそれなりであり、L字形の刃物で上から下へ、彫り込んだものと思われる。
20年以上前にバンコク・オリエンタル・ホテル近くの骨董店で、印花四魚文盤を1回見た経験があるが、上掲盤は2点目で、数量は極めて少ない。
〇褐釉印花双魚文盤・・・バンコク大学付属東南アジア陶磁博物館
2)-②ーA-アの組合せである。彫刻刀の丸刃のような道具で、カベットを縦に削り取っている。この手の鎬というか縦縞文様は、比較的少ない。
〇褐釉印花双魚文盤・・・当該ブロガー・コレクション
2)-②ーB-アの組合せで、釉薬に光沢はない。
前掲盤に比較し、幅の狭い丸刃でカベットを縦に削り取った鎬文で、釉薬表面に光沢は無く、日本で云う伊羅保釉のような発色である。
〇黒褐釉印花双魚文盤・・・当該ブロガー・コレクション
2)-①ーC-アの組合せ。黒褐釉としたが、緑掛かったようにも見へ、サンカンペーンでは希少。
〇青磁印花双魚文盤・・・当該ブロガー・コレクション
2)-①ーD-ウの組合せ。釉薬の発色はオリーブグリーン。
以上、5事例を紹介したが、一見単調に思える印花魚文ではあるが、多様な技法が存在することをご理解頂けたであろう。
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