世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

ガティン祭りとは収穫儀礼であった

2016-06-28 07:07:42 | タイ王国
2010年の多少古い噺で恐縮である。ローイクラトンを1週間後に控えたターペー通りを歩いていると、百足(ムカデ)の幟がたっている。何か意味がありそうなので知人に聞くと、種々教えてくれた。
曰く、ガティンと云い、それは寺で一年に一回行われる功徳を施す行事だそうで、ガティンの式には象徴であるムカデの旗が必ずある。この旗には色々な意味があって、ムカデは「怒り」ということらしい。ムカデは毒を持った生き物で、噛まれたらすごく痛い。でも薬で治る。それと同じで、「怒り」も起こるがすぐ落ち着く。
また、昔の言い伝えに以下のようなものがあると云う。ある日、お金持ちでケチなおじいさんがいた。功徳を施すのが大嫌いでお寺に行かなかった。死ぬ前には自分の宝物を地下に埋めた。そして、死んでから自分の宝物を守るためにムカデになって生まれ変わったという。その後、「ムカデになって生まれ変わりたくなければ、ガティンの儀式で功徳を施しに行くように」・・・という教えになったとのことである。
タイ人は輪廻にこだわる。タンブン(功徳)を積み、来世はよりよき人間に生まれ変わろうとする。その一端が垣間見える噺である。
その年一回のガティンの儀式が、何故ローイカトンの直前に行われるかについての説明はなかった。・・・・ということで、分かったような分からないようなことで月日が過ぎた。
先日、「岩田慶治著・日本文化のふるさと・角川選書」を数十年ぶりに読み返していると、北タイのタイ・ヤーイ(シャン)族の稲作儀礼が記述されていた。曰く、稲穂が成長すると稲田の端にケーン・ピーと称する小祠を建てるとのことである。ケーン・ピーに招かれるのは、稲の守護神であり、それは女性のピーであると云う。そのケーン・ピーの周囲には、色々なターレオを掲げて悪霊の侵入を防いでいるが、幟状のそれは百足の形、魚の形をしたものである。岩田慶治氏によれば、陸棲動物の代表ムカデと水棲動物の代表魚がともに稲のピーの守護にあたっていると云う。図が示されていて、ターレオから吹き流しのように吊るされているのが、ムカデを表しているとのことである。
つまり、ガティン祭りは稲作社会における収穫祭で、ムカデは稲のピーを守護する象徴であった。ローイクラトン月に行われるのは、この時期に収穫が終わるためであり、この時期にガティン祭りが行われるのも頷ける。・・・当時、もう少し調べておれば、分かったであろうが、今日ようやく気付いた次第である。
この時期から北タイの気候はよくなる、茹だるような暑さは遠のき、多少なりとも涼しさが感じられようになる。ローイクラトンも情緒ある祭りで、まさに観光シーズンとなる、この時期にチェンマイへ旅されることをお薦めする。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿