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本多コレクションの名品

2023-03-13 08:02:25 | 東南アジア陶磁

今回のブログ・テーマは、東南アジア古陶磁愛好家の方々向けである。日本において幾つかの東南アジア古陶磁コレクションが存在する。今回は福岡市美術館に一括寄贈された本多コレクションの名品を紹介する。

過日、『東南アジア美術を旅するタイ、カンボジア、ミャンマー』との企画展が開催され、出かけてみた。展示品は陶磁器43点、土器5点、粘土焼成塼仏17点、その他16点の合計81点である。本多コレクションのごく一部であるが、展示された陶磁器には優品が多かった。今回は名品中の名品と云おうか、品々を前にしてジット見つめた品である。

鉄絵魚文盤 スコータイ窯 タイ 14-15世紀 口径28.5cm

本多コレクション図録は日頃眺めている。その時は感じなかったが、実物を前に注視すると、白化粧にムラはなく、ガラス質は透明でカセとか傷はなく光沢が良い。鉄絵の運筆は迷いがなく勢いを感ずる。口径も28.5cmと大きく優品である。

白褐釉刻花龍鳳凰文水注 シーサッチャナーライ窯

タイ 15世紀 高さ27.4cm

注ぎ口先端と把手(とって)の盤口下の部分に龍鳳凰の造形をみる。胴体の主文様は刻花の唐草文である。高さは30cm近く、堂々とした姿で、造形や文様に緩みがない。

本多コレクションでは白褐釉〇〇と呼んでいるようだが、これは安南陶磁の白釉褐彩の影響を受けている。いわゆる宋胡録(スコータイ、シーサッチャナーライ)は、中国陶磁のみならず安南陶磁の影響を受けているが、それをモン(Mon)人陶工やタイ人陶工は咀嚼し、彼らの造形感覚に変更したものである。安南陶磁の白釉褐彩陶磁を下に掲げておく。

白釉褐彩花鳥文広口壺 13-14世紀 於・ハノイ国立博物館

3点目の優品である。それはサンカンペーン窯の鉄絵双魚文盤である。

鉄絵双魚文盤 サンカンペーン窯 タイ 14-15世紀 口径25.8cm

この盤は鉄絵描線が活き活きしており、文様も的確で緩みがないのが最大の特徴である。陶工ないしは絵付工の腕の確かさが伝わってくる。サンカンペーンの鉄絵双魚文盤を紹介した次いでである。

当該ブロガーが自称している、サンカンペーン3大名盤である。一番目は上掲の本多コレクション盤。2番目は、現在富山市佐藤記念美術館蔵品の敢木丁(カムラテン)コレクションである鉄絵四魚文盤である。

見込み中は草花文であるが、写真で云う見込み下側に魚の頭部が描かれており四魚文となる。描線に勢いはないがぎこちなさも感じない。このような魚文はサンカンペーンで唯一のものである。

3番目は不詳当該ブロガーの鉄絵草花文盤である。口径は約30cmとサンカンペーンにしては大径の盤で器面全体が鉄絵で覆いつくされている。

残念なのは、写真では分かり辛いが、長さ約8mmほどの虫食い状のホツレが1箇所存在する。発掘時の鍬等の金具傷である。このような鉄絵草花文盤はBKKの東南アジア陶磁館が所蔵している。

上掲写真の見込みやや右側付近に、青色マジックで丸印があるが、その場所を蛍光X線分析した場所で、鉄絵顔料の組成分析をしたものである。その結果は、他の鉄絵文様盤の鉄絵顔料組成と同じもので、低火度の科学顔料は一切検出されていない。

本多コレクションの紹介から、蛇足にいたったが、魅力ある数々の本多コレクションは、別途紹介したいと考えている。

<了>



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