次に工房を見学させて頂くと、丁度「打ち刷毛目」の作業中であった。まことにラッキーである。
宮内窯で用いる胎土は、磁器質に近いほどの白さで、打ち刷毛目の装飾をしてもコントラストの無い文様となる。そこで轆轤引き後半乾きさせ、その上に鉄分の多い泥漿で化粧しており、何やら磁州を思わせる。
その黒化粧土が半乾きすると、上の写真のように絵付け用の轆轤にセットし、轆轤をゆっくり回転させながら、スポイトを軽くつまんで白化粧用の泥漿を「の」の字状に絞り出す。そして写真のように刷毛で皿全面に、泥漿を刷毛掛けする。
毛が柔らかいたのと腕であろうが、器面に刷毛目が残らず均一に刷毛掛けされる。
刷毛掛けによる白化粧が終わった器胎である。次に器面のカーブに沿った曲線をもつ刷毛で、轆轤をゆっくり回しながら、その刷毛を上下に動かしながら器面をなぞっていく。
そうすると、写真のように鎬状の文様が現れてくる。見込み中央は刷毛が当たり続けるため、下の黒化粧が透けて見える。
打ち刷毛目の作業が終わった皿である。当該作業は3-4分であろうか、まことにテンポの良い作業であった。
宮内窯では、胎土が白く黒化粧してからの、打ち刷毛目作業であり上述の手順となるが、小石原皿山の「打ち刷毛目」は、轆轤引き後即白泥漿を刷毛により生掛けし、その手で打ち刷毛目の細工をしている。
その打ち刷毛目の実演がYouTube「小石原焼陶器市、刷毛目実演。」で公開されているので、御覧願いたい。宮内窯と小石原では手順がことなるが、双方共に素焼き後の作業ではない点が共通である。
そこで、先日紹介したサンカンペーンの打ち刷毛目と思われる盤、写真ではあるが見て頂くと下の2点は「打ち刷毛目」であろうとの見解である。
(出典:Ceramics of Seduction)
(出典:インターネットオークションの部分写真)
(出典:バンコク大学付属東南アジア陶磁館)
飛び鉋の技法で可能かどうか質問すると、回答できる見識を持たないとのこと、誠実な陶工さんである。小石原や小鹿田皿山の飛び鉋にも、このような放射状の文様を見ないので、これは片切の刃物であろうか?更なる追及が必要である。
<了>