11月23日 NHK海外ネットワーク
イランの核交渉問題は10年越しの大詰めを迎えている。
イランと欧米など関係6か国はウィーンで閣僚級の交渉を続けていて合意の期限は24日である。
34年前からイランと国交を断絶しているアメリカもケリー国務長官が現地に入り
歴史的な合意を目指してぎりぎりの調整に当たっている。
世界中の企業がいま熱い視線をおくるイラン。
資源が豊富で人口7600万の巨大な市場である。
10月首都テヘランで開催された見本市では経済制裁の解除を見越して各国から209の企業が参加。
その数は去年より30%増えた。
産業機械や医療機器など様々な製品が展示ブースに並び
複数の日本企業も参加した。
(日本の産業機器メーカー 担当者)
「制裁解除になるのが近いと言うことで今回出展させていただいた。」
イランの経済界もこれまでにない期待を肌で感じると言う。
(イランの闘志が顧問会社 社長)
「イランに投資したいという外国人投資家が急激に増えている。」
イランが持つ市場としても魅力。
ヨーロッパでは核協議の進展を後押しする声の高まりにまでつながっている。
(投資フォーラム主催者)
「我々としてはイランの核問題の先を見据えてビジネスの力で外交を動かしたい。」
10月にロンドンで開かれたイランへの投資や貿易に関するフォーラム。
イラン大統領府も後押ししヨーロッパでは初めて開催された。
核開発をめぐるイランとの交渉の当事国であるイギリスとフランスの元外相も参加。
経済界が政治を動かす時が来たとして制裁の解除を求めて声を挙げるべきだとまで述べた。
(イギリス ストロー元外相)
「ビジネス界が圧力をかければ制裁解除に向けた動きも大きくなる。」
欧米などがイランとの関係改善に前向きなのは経済面の期待だけではない。
ここにきてイスラム国との戦いもイランへの接近を後押しする要因となっている。
イスラム国はイスラム教スンニ派の組織でイラクやシリアで勢力を伸ばしている。
イランはシーア派。
同様に国内で多数派のイラクのシーア派ともつながりがある。
イランはイスラム国の存在は自らにとっても脅威だと受け止め
イラクやシリアでのイスラム国との戦闘にひそかに加わっていることが次第に明らかになってきている。
イスラム国との戦闘を続けているイラクのシーア派民兵組織のパレード。
イスラム国と書かれた瓦を叩き割って気勢を上げる。
(パレードに参加した民兵組織のリーダーの1人 アブザハラ氏)
「イスラム国はイスラムを冒とくしている。
奴らはイスラムの組織ではない。」
アブザハラ氏は自分たちとイランとのつながりを明らかにした。
今年8月イスラム国との間で激しい戦闘になったと証言する。
そうした戦闘でアブザハラ氏の民兵組織は手助けを受けたのである。
(アブザハラ氏)
「イランはイスラム国の侵入ルートなどの情報を提供し支援してくれた。」
さらにイランがイスラム国との戦いに戦闘員を送り込んでいるという証言も得られた。
爆発物を作る特殊工作員の男性は
イスラム国と戦うため爆発物を作る訓練をイランで受けたと言う。
(特殊工作員)
「シリアでの戦闘にはイラン人が200~300人は参加している。
我々はイスラム国をせん滅させるまで戦う。」
イランと欧米などとの協議は核開発をめぐる交渉ではあるが
経済やイスラム国との戦いなど中東情勢全体にも大きな影響を与える可能性がある。
11月16日 NHK海外ネットワーク
約700万人が暮らすミャンマー最大の都市ヤンゴン。
電線による事故が相次ぐミャンマー。
今年6月には古くなって切れた電線が落下。
2人がこの電線に触れ感電して亡くなった。
(目撃者)
「雨が激しく降り電線が切れた。
よけようとする人に当たった。」
「みんなパニックになって逃げた。
振り向いたら犠牲者がいた。
感電して激しく震えている人もいた。
まるで地獄のようだった。」
ヤンゴンではこうした死傷者が出た事故が今年だけで100件以上起きた。
事故が多発するのは町中に張り巡らされた電線に問題があるからである。
日本の電線は電気が通る金属部分がカバーで覆われていて触れても感電しないようになっている。
しかしミャンマーの電線は金属がむき出しになっているいわゆる裸電線である。
さらに電線と電柱のつなぎ目部分が弱いため電線が切れやすい。
現地に技術指導を行う日本の専門家は
裸電線は別の問題を起こす原因にもなっていると指摘する。
金属線を電線にひっかけ違法に電気を引き込む“電気泥棒”。
無造作に枝分かれした電線は重みが増しますます切れやすくなる。
(JICA 西野稔さん)
「誰がどこに接続しているかよくわからない状態。
誰でも電線をひっかけに行くことができる。
電気をとっている人はいると思う。」
脆弱な配電設備の影響でミャンマーでは頻繁に停電が起きる。
ヤンゴンでは年間200件以上停電が起きる地域もある。
アジア最後のフロンティアと呼ばれ注目をあびるミャンマー。
しかし長年続いた軍事政権のもとインフラを整備するための資金や専門の人材が不足していたことが問題の背景にある。
電力が安定して供給される環境を作り日本企業の進出を後押ししたい
日本の大手商社と電気工事会社が連携して現地で技術者の育成に乗り出した。
20代の若者を中心に40人を指導している。
日本から来た技術者が電気が流れる仕組みや仕事の心構えなど安全管理の基本から丁寧に教えている。
(学生)
「日本の先生たちは早く的確な仕事をしていてすごい。
とても貴重な経験をしているので頑張って勉強したい。」
(住友商事 ヤンゴン事務所 渡辺達也課長)
「電気がなければ事業そのものが立ち行かないと認識しているので
将来我々のビジネスにも間接的に跳ね返ってくると思う。」
開発ラッシュに沸くミャンマー。
しかし企業が安心して進出できるようになるまでにはまだまっだ時間がかかりそうである。
11月16日 NHK海外ネットワーク
G20サミットで夕食会や昼食会も含め10時間にわたって意見を交わした米中の首脳。
習近平国家主席は超大国アメリカとの対等な関係を強調した。
(中国 習近平国家主席)
「両国による新しい形の大国関係の構築は双方の利益に一致する。
両国関係は新しい歴史のスタートラインに来ている。」
習近平主席はニュージーランドと南太平洋のフィジーを訪れ
アジア太平洋地域での中国の影響力拡大を図る狙いである。
一方 オバマ大統領は中国のあとミャンマーとオーストラリアを訪問。
中間選挙の敗北で求心力の低下も指摘されるなか
“アジアでの主導権は手放さない”と強調した。
(アメリカ オバマ大統領)
「アジア太平洋地域でアメリカが指導力を発揮することは常に外交政策の基軸だ。」
米中が覇権を争うアジア。
こうした中で難しい対応を迫られているのが韓国である。
10日には中国との自由貿易協定の交渉が実質的に妥結。
両国の蜜月ぶりをあらためて示した。
しかしアメリカが韓国に配備しようとしているミサイル防衛システムについて中国は激しく反発。
ミサイル防衛システムの配備を推し進めようとするアメリカ。
そして反対する中国。
これまで両国と良好な関係を続けてきた韓国は
今そのはざまで難しい対応を迫られている。
アメリカが韓国に配備しようとしているミサイル防衛システムはTHAADサードと呼ばれている。
飛んでくる弾道ミサイルを強力なレーダーでとらえ上空で迎撃することが狙いである。
レーダーで監視できる範囲は1,000km以上。
アメリカはあくまで北朝鮮のミサイルの脅威に対抗するものだとしている。
しかし韓国に配備されればこのレーダーの範囲は北朝鮮を超えて中国の東北部にまでカバーする。
これが中国が配備に強く反対している理由である。
中国との関係を損なってまで配備を進めるべきなのか。
韓国では活発な議論が起きている。
韓国ではTHAAD配備をめぐり国民の間でも議論となっている。
関心が高まるきっかけになったのが8月に出版されたベストセラー小説「THAAD」。
アメリカが中国との戦争をひそかに企てているというストーリーのサスペンス小説。
作者は韓国きっての人気作家で
アメリカの軍事戦略にのって配備を認めれば韓国は中国と決定的に対立しかねないと警告している。
(小説「THAAD」を書いたキム・ジンミョン氏)
「韓国は安全保障はアメリカ
経済は中国とうまく使い分けてきたが今後はそうはいかない。
決断を迫られる時が来た。」
アメリカは重要な同盟国の韓国を北朝鮮の脅威からまもるため
3万人近い兵士を駐留させている。
北朝鮮がミサイル発射など挑発的な言動を繰り返していることから
アメリカは韓国へのTHAAD配備を検討。
9月にはワーク国防副長官が配備したい意向を公の場で明らかにした。
(アメリカ ワーク国防副長官)
「韓国へのTHAADの配備を検討している。
配備するかどうかは韓国政府と調整中だ。」
これに強く反発したのが中国。
北朝鮮の脅威を口実にアメリカ軍が中国の軍事施設をレーダーで監視することを警戒しているのである。
中国の習近平国家主席は7月の首脳会談でパク・クネ大統領に対し
YHAADを配備しないよう直接迫ったと韓国メディアは伝えている。
韓国政府の外交政策に深くかかわってきたムン・ジョンイン氏は
10月に中国を訪れた際
政府や軍の高官から激しい反発を受けたと明らかにする。
(韓国の外交政策にかかわってきた ムン・ジョンイン教授)
「THAADを使えばアメリカは中国のミサイルの動きを探り先制攻撃もできる
中国を威嚇しているとしか思えない。
だから配備には反対だ。
中国側ははっきり言った。」
こうした事態を受けて韓国政府は
サードは国の防衛には役立つという立場を示してはいるものの
具体的な検討を行っていないとして態度を明確にすることを避けている。
一方 韓国の国会では配備をめぐり11月に入っても賛否両論。
激しい議論が続いている。
(配備に賛成の議員)
「配備をあきらめれば国民を北朝鮮の核ミサイルの脅威にさらすことになる。
国家戦略の大失敗だ。」
(配備に反対の議員)
「THAADがはいびされれば米中の対立に巻き込まれる可能性がある。」
(韓国の外交政策にかかわってきた ムン・ジョンイン教授)
「国民的議論を経ずにTHAADを配備すれば国内でも激しい抵抗にあうだろう。
現政権は極めて慎重に判断せざるを得ない。」
韓国政府やアメリカ軍の当局者からは
THAAD配備は既定路線という声も聞かれる。
しかし反対派は世論を味方にして配備を断念させようと活動を強めている。
また将来 北朝鮮との統一を目指す韓国にとって
北朝鮮に強い影響力を持つ中国の協力は欠かせない。
受け入れを基本にしながらもぎりぎりまで中国の意向や国内の世論を見極めるとみられる。
韓国が徐々に中国に引き寄せられている印象は否めない。
これに対してアメリカはいらだちを強めている。
去年 バイデン副大統領はパク大統領に
“アメリカの反対側に賭けるのは良い賭けではない”と直接述べた。
これはアメリカの警告だとして韓国政府内に衝撃が走った。
中国の台頭とアメリカの指導力の低下という変化の中で
必死にバランスをとろうとしているのがいまの韓国である。
ただ韓国にとって問題をさらに複雑にしているのが実は日本の存在である。
アメリカは同盟国の日本・韓国と協力し
3か国で中国に対抗したい考えである。
しかし歴史問題や集団的自衛権などをめぐる韓国の日本への反発で
3か国の協力が進んでおらずアメリカをいら立たせている。
今後 韓国は日本との関係も視野に入れながら
米中のはざまで難しい決断を迫られていくことになる。
11月9日 NHK海外ネットワーク
今年で誕生から40年となる日本生まれのキャラクター ハローキティ。
その人気は世界中に広がっている。
人気歌手アブリル・ラヴィーンさんが歌うハローキティーをテーマにした曲。
ファッションモデルのパリス・ヒルトンさんのドレスには小さな顔がたくさんあしらわれている。
世界的人気を誇る歌手 レディー・ガガさんも。
10月30日 ロサンゼルスでハローキティ誕生40年を記念したイベントには大勢の人たちが集まった。
グッズ販売やハローキティの歴史を振り返る展示が行われた。
入場券は完売し
4日間で約2万5千人が訪れた。
「とにかくカワイイわ。」
「1970年代から40年近くファンです。
娘もそうなのよ。」
ハローキティが誕生したのは1974年。
世界的に知名度が高まったきっかけは販売戦略の転換だった。
子ども向け中心の商品作りだったのが
近年は海外の服飾ブランドとのライセンス契約に力を入れるようになった。
大人の女性もターゲットにしたのである。
グッズの販売は現在世界70以上の国と地域にまで広がっている。
なぜここまで浸透したのか。
ハローキティに詳しい文化人類学者 ハワイ大学のクリスティン・ヤノ教授。
人気の理由に挙げたのはデザインのシンプルさである。
変幻自在でどんないでたちをしても似合う可愛らしさが強みだと言う。
(ハワイ大学 クリスティン・ヤノ教授)
「エレガントでシンプルなのが成功の秘訣でしょう。
柔軟性や創造性
そして“遊び”を兼ね備えたキャラクター。」
ファンは何処に魅力を感じているのか。
ロサンゼルスに住むマリア・フレイシュマンさん(34)。
身の回りはすべてハローキティに囲まれている。
自分を理解してくれる話し相手のような存在だと言う。
(マリア・フレイシュマンさん)
「いつもそばにいてくれた。
友だちのような存在。
落ち込んだ時に元気づけてくれる。」
趣味が高じて仕事もキャラクターデザイナーの道を選んだ。
いつかは自分もだれかの大切な存在になるようなキャラクターを作るのが夢。
今後は歌って踊れるキャラクターとして新たな展開の計画されているハローキティ。
戦略を担うデザイナーは時代の風を柔軟に取り入れ
変化していく姿を見せたいと話す。
(デザインを30年以上担当 山口裕子さん)
「また40年後が楽しみ。
さらに進化していく。
オンリーワンのキャラクターだと思っている。」
11月9日 NHK海外ネットワーク
現在も一部がそのまま残されているベルリンの壁。
25年前 1989年11月9日に壊された。
ドイツの統一が実現。
ヨーロッパは大きな発展を遂げる。
EUは東方へと拡大。
ソビエト解体後に誕生したロシアとも共に歩んできた。
ベルリンの壁崩壊を記念した2009年の式典では“東西の共存共栄”が演出された。
しかし今年 情勢は大きく変化。
ウクライナ危機をきっかけにヨーロッパとロシアの関係は悪化した。
ウクライナではロシアとの国境に新たに壁を作る動きが出てきている。
ヨーロッパを取り巻く環境は緊迫している。
ウクライナ東部で政府軍と新ロシア派の間で続いた先頭をきっかけにロシアの脅威が高まっているためである。
ドイツは統一後 経済や資源取引でロシアとの関係を深めてきた。
欧米とロシアによる制裁合戦の影響は実体経済にも及んでいる。
ロシアと取引をしている企業の中にはロシアへの輸出が滞り打撃を受けているというところもある。
(ドイツ 機械メーカー 販売部長)
「企業としては非常に厳しい状況だ。
我々とロシアの間では長い間良い関係が築かれてきた。
ドイツとロシアともに高い代償を支払うことになるだろう。」
ドイツは冷戦下で国の分断を経験するなど対立の歴史に翻弄されてきた。
それだけに市民の平和に対する思いは強い。
まるで過去に戻ったかのような対立の再燃に不安を感じていると言う人は少なくない。
「お前たちがベルリンの壁の向こう側に行くことなどありえない。
当時の東ドイツの学校ではそう当たり前のように教えていた。」
若者たちに語りかけるのは旧東ドイツで生まれ育ったジャーナリスト ジークベルト・シェーフケさん(55)。
かつて東ドイツの民主化を求める反体制派として活動していた。
東ドイツの実態をひそかに取材し西側に発信し続けた。
1989年にシェーフケさんが撮影した東ドイツの町の様子には
言論や集会の自由が制限され
経済の疲弊で貧しい生活を余儀なくされていた人々の姿が収められている。
「私たちはなんとか生きている。
このことを報道して。」
つもりに積もった不満は人々を行動へと駆り立てた。
シェーフケさんはその決定的な瞬間を撮影した。
1989年10月9日 東部の都市ライプツィヒ。
7万人が行ったデモ行進である。
自由を求めて叫ぶ人たちを目の当たりにし
民主化のうねりはもはや止めることはできないと思ったと言う。
(ジークベルト・シェーフケさん)
「この映像はドイツだけでなくヨーロッパや世界を変えると確信した。」
撮影した映像は秘密警察の厳しい監視の目をくぐり抜け西側に届けられた。
シェーフケさんは身の危険も感じたが強い思いが必死の行動を支えた。
「壁と共に生活することが我慢できなかった。
それは自由でいたかったから。」
シェーフケさんの映像は世界を駆け巡り各地の民主化運動に火をつけた。
デモから1か月後ベルリンの壁は崩壊した。
30年近くドイツを分断してきた壁の崩壊は冷戦終結の象徴となった。
しかしシェーフケさんは今ウクライナ危機をきっかけに25年前に勝ち取った自由と平和が脅かされていると感じている。
冷戦時のような東西の対立が再び起きるのではないかと強い危機感を抱いている。
「25年前と同じような不安な気持ちだ。
今すぐそばに戦争がある。」
ヨーロッパ28か国の若者たちを相手に行った講演で
シェーフケさんは自分がかつて撮影した映像などを見せ
新たな対立は防がねばならないと訴えかけた。
「今のヨーロッパの状況を見ると焦りを感じる。
ニュースではこの10日間で300人の死者がでたというが
けが人は1,000人規模でいるはず。
これらは私たちのすぐ玄関先で起きている。」
(参加した若者)
「若者にはやれることがたくさんあるし現状を変えることができると思った。」
「かつてドイツでは独愛体制に平和的に打ち勝つことができた。
ウクライナ危機も同様の平和的手段で解決してほしい。」
(ジークベルト・シーフケさん)
「私は世界は平和になると期待している。
私が東ドイツ時代に何を経験し
自由がないことが何を意味するのか
そのことを若者たちは自国に持ち帰って伝えてくれるだろう。」
歴史を決して逆戻りさせてはいけない。
シェーフケさんは自由と平和の重みを伝え続けていくと決意をあらたにしている。
11月9日 NHK海外ネットワーク
11月4日 上海で日本の60余りの企業や自治体などが参加して工業製品の展示会が開かれた。
注目されたのは大気汚染物質PM2,5を取り除く空気清浄器。
それに工場の排ガスを処理する設備だった。
(参加した日本企業)
「中国にも装置があるがメンテナンスや効率などを含めたら日本の物を買おうかと。」
日本が環境対策で培ってきた優れた技術が中国側の関心を集めた。
(中国企業の担当者)
「日本の技術は進んでいるので中国では需要が高い。
良い製品があれば導入を検討したい。」
中国では車の排気ガスや工場からの煙などを原因とする大気汚染が深刻な問題となっている。
このため日本のメーカーの中には空調設備の製造工場を新たに中国に設けたところもある。
大気汚染対策の重要性が高まるにつれ空調設備は中国企業の間でも導入が進んでいる。
日中関係が冷え込む中でも空調設備の売り上げは毎年10%の伸びを維持してきた。
(大手電機メーカー 中国総代表)
「かつての日本の公害問題の取り組みで環境対応技術が
今急速に発展する中国市場でうまく適合させられるのではないか。」
環境対策に加え
高齢化で中国でも需要の拡大が見込まれる医療技術の分野に注目しているメーカー。
去年 大連に医療機器の開発拠点を新たに設立した。
中国の理工系の大学などの卒業生200人以上雇い
中国でのニーズに合った製品の開発を進めている。
日中関係の冷え込みが長引くなかメーカーではAPECでの首脳会談が両国の関係改善につながってほしいと期待している。
(大手電機メーカー 中国総代表)
「日中関係が良い方向に向かうことで
事業の面でも良い影響が現れることを願う。」
(北京大学 王勇教授)
「日本は非常に重要な隣国、経済大国で両国の経済関係は大事だ。
中国は日本との関係が元に戻ることを希望している。」
11月2日 NHK海外ネットワーク
カンボジアでは毎年夏に高校3年生を対象にした全国一斉の卒業試験が行われる。
この試験で不合格になると卒業はできず留年である。
例年は8割の生徒が合格するこの試験に
今年は約10万人の受験生のうちわずか26%しか合格しなかった。
なぜ今年に限って合格率が激しく落ち込んだのか。
その背景には長年行われてきた不正行為があった。
首都プノンペンの高校。
授業を受けているのはこの夏の試験で不合格だった生徒たち。
4人に1人しか合格できないという前例のない結果になった今年の試験。
不合格の生徒を救済しようと政府は急きょ11月に追試を行うことに決めた。
なんとか卒業したいと生徒たちは秋になっても高校に通い特別授業を受けている。
去年までは8割の生徒が合格していた全国規模の卒業試験。
しかし高い合格率の背景にはカンニングなどの不正行為があるとかねてから言われてきた。
そこで政府が今年から不正行為を厳しく取り締まったところ合格者が一気に減ってしまったのである。
今年の試験当日の朝
プノンペン市内のコピー店で事前に流出した試験問題の正解が書かれた紙をコピーしている生徒たち。
スマートフォンで撮影。
また隠し持てるように小さく切る生徒もいる。
試験当日には毎年のように見られる光景だという。
カンニングなどの不正がここまで広がったのは7,8ほど前から。
給料が安く生活に困った教師らが金と引き換えに
試験の答えを生徒に教えるなど手助けするようになったことが背景にあると指摘されている。
そこでカンボジア政府は今年初めて全国で本格的な対策に乗り出した。
まず行ったのが試験会場での持ち物検査。
カンニングペーパーや携帯電話の持ち込みは一切禁止。
事前に厳しくチェックしていく。
没収品を集める袋はあっという間に一杯である。
さらに試験問題は厳重に管理。
内容が事前に漏れることを防ぐ。
試験場の監視も強化した。
3千人もの監視員を全国の会場に配置。
生徒から賄賂をもらった教師がカンニングに協力しているケースもあったためである。
不正行為の撲滅に全力を挙げたカンボジア政府。
しかしその結果皮肉にも多くの生徒が不合格となり追試が行われることになったのである。
プノンペン市内の高校に通うル・ペックさん。
カンニングに頼ろうとしたもののうまくいかずに不合格になった一人である。
生活を切り詰め学費を出してきた両親も心を痛めている。
(ペックさんの父親)
「息子は学校の成績はトップなのに試験に落ちるなんて本当にショックだ。」
心を入れ替え追試に望むことにしたペックさん。
(ル・ペックさん)
「もうしないよ絶対に。
100%自分で頑張ります。」
カンボジア政府は
優秀な人材を求めて進出してくる日本など外国企業の期待に応えるためにも
不正防止の対策を強化したいとしている。
(ハン・チュオン・ナロン教育青年スポーツ相)
「政府が教育に力を入れなければ海外からの投資家を引き付けられない。
この取り組みはこれからの若者のためになる。」
11月2日 NHK海外ネットワーク
オバマ大統領の支持率は就任当初は68%もあった。
しかし医療保険制度改革の実施をめぐって野党共和党と激しく対立したことなど議会の不毛な対立ばかりが目立つ結果となり
最新の調査では42%にまで落ち込んでいる。
こうした中で行われる今回の中間選挙は
議会下院のすべての議席
上院の100議席のうち36議席が改選される。
現在の勢力分野は下院は共和党が多数を占めているのに対し
上院はオバマ大統領の民主党が多数派である。
下院は今回共和党が多数派を維持することが確実とみられていて
最大の焦点は上院の議席の行方である。
仮に野党共和党が上院でも多数を握るということになると
オバマ大統領は2年余の任期を残して一気に急進力を失うことにもなりかねない。
民主党のクリントン元大統領の地元アーカンソー州。
接戦が続いている。
共和党の新人トム・コットン候補はイラクやアフガニスタンでの兵士の経験をアピールして支援者に投票を訴えている。
コットン候補は37歳。
いま民主党の現職を上回る勢いで支持を集めている。
(共和党 コットン候補)
「弱腰な外交政策はいやだと大統領に伝えたいなら民主党候補を落とすべき。」
(支援者)
「彼は軍人としてアメリカに尽くし我々と同じ価値観を持っている。」
コットン候補は徹底してオバマ大統領を批判する戦略を続けてきた。
特に外交や安全保障政策の対応が後手に回ってきたと責任を追及している。
(コットン候補のCM)
中東の狂信的なテロリストはアメリカ人を殺害し勢力を拡大している
しかしオバマ大統領はイスラム国を過小評価してきた
コットン候補と共和党を支持しているロス・ブリザードさんは
かつては変革をかかげるオバマ大統領に期待していたが
イラクやシリアに地上軍の派遣をためらうなど弱腰の対応だとして今では強い不満を募らせている。
かつて兵士としてベトナムや中東に派遣されアメリカを守ってきたと自負するブリザードさん。
今のオバマ政権は世界の中で強いリーダーシップを示せていないと感じている。
(ブリザードさん)
「戦争を終わらせる厳しい決断をすべきだ。
アメリカは世界から尊敬されない国になった。」
一方 必死の巻き返しを図る民主党。
現職のプライアー議員は2期12年の実績をアピール。
アーカンソー州で盛んな農業の保護や中間層の生活改善に尽くしてきたと訴えている。
(民主党プライアー議員)
「皆さんのおかげでこれまでやってこられた。
これからも懸命に仕事をしていく。」
応援に駆け付けたのは逆風のオバマ大統領ではなくクリントン元大統領。
知事も務めた地元ではいまも高い人気を誇る。
(クリントン元大統領)
「プライアー議員こそが君たちの意見を本当に代弁できる候補者だ。
みんな投票日は頼んだよ。」
そして行われたテレビ討論。
コットン候補はエボラ出血熱の対応でも
“何の策も講じなかった”とオバマ大統領への批判をたたみかけた。
これに対しプライアー議員は
(民主党 プライアー議員)
「コットン候補の選挙戦は大統領1人を批判するための戦いだが
私はアーカンソー州の300万人のために戦うのだ。」
オバマ大統領への最後の審判とも位置付けられる今回の選挙。
苦境のなか選挙戦は最終盤を迎えている。
10月26日 NHK海外ネットワーク
インドで10月 新しいプロのサッカーリーグ“スーパーリーグ”が発足した。
海外から一流の有名選手を集めているのが売り物で
各国の元代表選手
監督では元日本代表のジーコ氏も采配を振るっている。
インドはワールドカップへの出場を目標に掲げ
サッカー人気と競技力の向上を図ろうとしている。
元イタリア代表のデルピエロ選手。
元日本代表監督のジーコ氏。
インド各地で行われた新しいプロサッカーリーグの開幕戦で観客を大いに沸かせた。
「とてもすばらしかったわ。」
「これからはサッカーですよ。」
インドの国民的なスポーツといえばクリケット。
これまでサッカーは盛んではなかった。
しかしヨーロッパのプロリーグが放送されるようになると若者を中心に人気が上昇。
そこで初めてのワールドカップ出場を目指して創設されたのがこのプロリーグである。
8つのチームが2か月という短い期間で優勝を争う。
インドの選手の底上げを図るため高額の年俸で海外のスター選手を招いた。
(元イタリア代表 デルピエロ選手)
「インドの文化に触れ
一緒にサッカーができることはこの上ない喜びです。」
日本を含め海外の企業もスポンサーとして支援している。
新しいクラブチームの共同オーナーになったウッサブ・パレック氏は投資会社の社長を務めている。
グッズ販売などにビジネスチャンスがあると考え日本円で約7億円をチームに出資した。
1人でも多くの人にスタジアムで観戦してほしい
パレックさんは他のスポンサー企業とともにスタジアムに大型スクリーンを新たに設置したり
街角に宣伝のポスターを張り出したりしている。
(アトレティコ・コルカタ共同オーナー ウッサブ・パレック氏)
「サッカーは新たなビジネスを開いてくれます。
そして我々はサッカーフィーバーを巻き起こしインドサッカーを世界レベルへと引き上げていくのです。」
華々しく開幕したインドの新しいプロリーグ。
しかしスタジアムの改修や選手の獲得に巨額の費用がかかったことで新たな課題を背負う形となっている。
チケット代が高すぎるという声が挙がっている。
インドでの一般的なサッカーの観戦チケットは10ルピー(約17円)から販売されている。
しかし東部コルカタで行われた開幕戦は安いチケットでも900円近くした。
「チケットが高いので見に行けません。
テレビで見ます。」
観客が思うように集まらず
開幕戦ではチケットの半分が売れ残ったスタジアムもあった。
インドの選手をどう育成していくかも課題である。
新しいリーグは選手の半数近くが外国人。
インドの選手が出場するチャンスは限られているからである。
インドのサッカー関係者は外国人選手と一緒にプレーすることでレベルアップを図ってほしいと期待している。
(インドサッカー協会 ブラフル・パテル会長)
「海外の選手から技術や知識を学ぶことでインドの選手たちは大きく飛躍するだろう。
ワールドカップ出場につなげていきたい。」
10月26日 NHK海外ネットワーク
北朝鮮による見本市が開かれたのは中国東北部の国境の都市 丹東。
中国と北朝鮮の貿易の一大拠点である。
(北朝鮮の担当者)
「見本市では両国間の経済・科学技術の交流・投資の誘致活動を行います。」
会場にははちみつや漢方薬などの商品が並んだ。
これまで築いた経済面での結び付きを失いたくないという北朝鮮の意気込みがうかがえる。
中国側に経済特区への投資を呼びかける説明会も開かれた。
北朝鮮の担当者が国内の資源や人材は充実しているとアピールして各地の経済特区を紹介した。
(北朝鮮の担当者)
「少ない投資で多くの利益を出せますよ。」
しかし大規模なプロジェクトとを見ると政治面での両国の冷え込みが露呈している。
中朝両国が丹東で開発を始めた経済特区「黄金坪(ファングムピョン」。
3年前に華々しく着工式が開かれた。
北朝鮮側で開発を主導したのは中国との太いパイプを持っていたチャン・ソンテク氏だった。
しかしその後キム・ジョンウン第一書記は中国の反対を振り切って核実験を強行。
さらに中国も重視していたチャン・ソンテク氏を処刑した。
反発を強めた中国は北朝鮮への金融制裁に踏み切り両国関係は急速に悪化した。
この影響で経済特区ファングムピョンの開発が滞り
進出した中国企業はまだ一つもない。
工業団地や自由貿易区になるはずの広大な敷地には現在住民の姿がわずかに見られるだけである。
一方 中国側が工事の全額を負担して建設している丹東と北朝鮮を結ぶ橋でも中朝関係のほころびが見えた。
橋そのものは10月末にも完成するとみられている。
ところが北朝鮮側では橋にいたる道路が整備されていないのである。
関係改善の兆しが見えない中朝関係。
そこで北朝鮮が接近を図っているのがロシアである。
かつてキム・ジョンイル総書記が特別列車で往来するなど歴史的にも地理的にも近い距離にある北朝鮮とロシア。
北朝鮮指導部はその伝統を生かして貿易を拡大しようと働きかけている。
10月にはリ・スヨン外相がロシアを10日間以上も訪れた。
ラブロフ外相などと会談を重ね経済面の結び付きを強めることで一致。
ロシア側も地理的な観点から北朝鮮を重視し始めている。
今年7月 北朝鮮北東部ラソン経済特区にロシアが主導して石炭の輸出ターミナルを完成させた。
日本海に出る新たな拠点にしようというのである。
さらに10月にはロシアが2兆6,000億円かけて北朝鮮の鉄道網の近代化を進めることで合意し
ピョンヤン市内の駅で式典が開かれた。
(朝鮮中央テレビ)
北朝鮮とロシアの発展と利益にかなう鉄道改修が
両国の経済協力を発展させルという演説があった
北朝鮮は中国への依存を減らし
代わりにロシにへ急接近している。
10月26日 NHK海外ネットワーク
イスラム過激派組織の中でも最大の脅威となっているイスラム国。
いわば中東の主戦場地域でいま新たぬ語気を見せている。
これまで勢力を拡大してきた地域はシリアとイラクだった。
それがシリアの隣のレバノンにまで攻め込む動きを見せている。
その直接の狙いはレバノンにあるイスラム教シーア派の武装組織ヒズボラの拠点を攻撃することにあるとみられる。
イスラム国はシリアの内戦でヒズボラと敵対しているからである。
これに対しレバノン側ではヒズボラだけでなくレバノン政府軍もイスラム国の侵入を食い止めようとしている。
しかし現地ではイスラム国を支持する国民も増えていてその勢いを止めるのは容易でない情勢である。
イスラム国は去年の終わりごろからレバノンに攻勢をかけ始めた。
年明けには首都ベイルートで爆弾テロが起き80人近くが死傷した。
イスラム国が敵対するシーア派武装組織ヒズボラを狙った犯行とみられる。
1月 イスラム国は“レバノンに歩戦線を拡大する”と宣言。
そして8月 シリアから国境を越えてレバノンに侵入した。
レバノン軍兵士24人が死亡するなど激しい戦闘となった。
3か月近くたった今もレバノンとシリアの国境付近では一進一退の攻防が続いている。
レバノン首相府の前に掲げられた数々の顔写真。
国境付近での戦闘でイスラム国に拘束され
殺すと予告されているレバノン軍の兵士たちである。
兵士の家族らは開放に向けた交渉を進めるよう今月からテントに泊まり込んで政府に訴えている。
息子がイスラム国に拘束されその映像がインターネット上に公開された男性。
(兵士の父親)
「息子を開放してほしい。
ただそれだけ。」
(殺害された兵士の父親)
「これは犯罪だ。
こんなことをするのは人の心を失った連中だ。」
しかしさまざま宗教や宗派が混在するレバノンは反イスラム国で一枚岩ではない。
一部の地域ではむしろイスラム国に共感を示す動きが見られる。
そうした町のひとつ 中部のアイン・アル・ハロワ。
街のいたる所に組織の旗が掲げられている。
4か月前より旗の数は明らかに増えている。
なぜ残忍さが際立つイスラム国を支持する人が増えているのか。
イスラム国と同じ宗派スンニ派の指導者は
シーア派と対立するイスラム国への期待に加えて
この夏以降の米軍主導のシリアやイラクへの空爆への反発を指摘した。
(スンニ派の宗教指導者)
「空爆を受けているのはシリアやイラクの一般市民だ。
このような空爆を非難します。
アメリカに憎しみを感じる。」
イスラム国がレバノンに攻め込むのにはさらに大きな狙いがある。
それは地中海に接するレバノンに拠点を築き
海からの輸送ルートを確保しようという思惑である。
それが現実になると武器をさらに大量に入手することも可能になる。
(レバノン軍の元司令官)
「イスラム国は港や海への出入り口を持っていない。
港があれば海から軍事的な支援が得られるため
イスラム国にとってはねらい目だ。」
イラン、シリアさらにはレバノンを通じて地中海尾も目指し始めたイスラム国。
その脅威は新たな段階に達する恐れがある。
10月19日 NHK海外ネットワーク
インドネシアと同様に多くのイスラム教徒が暮らしているマレーシアでは
イスラム国以外の過激派組織に加わる若者の動きも目立っている。
シリアの内戦で反政府勢力側の過激派組織に加わって命を落とした人々を英雄視する風潮もあり
当局は過激な思想が広がりかねないと警戒を強めている。
マレーシア人のロトフィ・アリフィン氏はシリアの内戦でイスラム過激派組織の一員として戦闘に参加。
9月戦死した。
シリアに発つ前 家族には“イスラム教の仲間を弾圧するアサド政権を倒すために戦う”と話していたということである。
ロトフィ氏が生まれ育ったマレーシア北部のケダ州。
人口の8割近くがイスラム教徒である。
ロトフィ氏はイスラム教の神学校に通い厳格なイスラムの教えを学んだ。
そして年を重ねるにつれ
イスラムの教えを守るためには武力で敵を倒してもよいという過激な思想に傾いていった。
神学校の校長はいまロトフィ氏の兄が務めている。
授業では子どもたちに“ロトフィ氏はイスラム教徒のために戦った英雄”だと教えている。
学校側は過激な思想を植え付けようと特別な教育を行っているつもりはない。
しかし子どもたちはロトフィ氏は正義のために戦って亡くなったなどとたたえるようになった。
(神学校の生徒)
「ロトフィさんは英雄です。
シリアに渡ったのは正しい行いだったと思います。」
マレーシアにはイスラム教の神学校が100校以上あるとされる。
学校で過激派組織の戦闘員が英雄であるかのように扱う授業が行われれば過激な思想に傾く若者が増えるのではないかと
マレーシア政府は警戒を強めている。
(マレーシア ナジブ首相)
「イスラムの名のもとでの残虐な行為に我々は立ち向かわなくてはならない。
目的のために死んでもよいという考えを我々は断固として拒否する。」
10月19日 NHK海外ネットワーク
シリアとイラクで勢力を拡大しているイスラム過激派組織「イスラム国」。
世界各地の若者を勧誘して取り込むことで組織の強化を図っていて
欧米だけではなく東南アジアからも加わる動きが後を絶たない。
中でも世界で最も多い2億人のイスラム教徒を抱えるインドネシアは深刻な事態となっている。
9月14日 インドネシアの警察に逮捕された7人の男たち。
イスラム過激派組織とのかかわりが深くイスラム国に加わろうとしたとみられている。
(警察署長)
「イスラム国はインドネシアの社会にとって大きな脅威だ。」
インドネシアではいま警察がイスラム国支持者への取り締まりを強めている。
イスラム国への警戒感が急速に高まったのは今年7月。
戦闘員を勧誘する動画がインドネシア語でインターネット上に掲載されたのである。
政府は国民がイスラム国を支持したり支持を呼びかけたりすることを禁止。
それでも支持者たちは活動を続けている。
西ジャワ州チアンジュール。
インドネシアでイスラム国支持者のリーダー格となっている人物 チェップ・ヘルナワン氏。
2002年 日本人を含む200人余りが犠牲になったバリ島での爆破テロ事件。
ヘルナワン氏は事件を起こした過激派組織の精神的指導者と関係が深いとされている。
警察は要注意人物として監視を続けている。
欧米を敵視し厳格なイスラム法に基づく国家の樹立を唱える過激派組織にイスラム国の理念に共鳴するヘルナワン氏。
欧米諸国と戦うイスラム国を支援するためインドネシアの若者を戦闘員としてシリアやイラクなどに送り込んできた。
渡航させたインドネシア人は約150人にのぼると言う。
戦闘員を勧誘する動画に映っている男たちもヘルナワン氏が送り込んだ。
「これはウスタド・バクランという男でイラクにいる我々の仲間のまとめ役だ。」
ヘルナワン氏が明かした若者たちを送り込む手口は
ますは偽のビザを取得させ隣国のマレーシアに出国させる。
そこからパキスタンを経由して陸路でシリアなどに密入国させると言う。
費用はほぼ全額ヘルナワン氏が負担している。
ヘルナワン氏のもとへはイスラム国に参加したいと言う若者たちが全国から集まる。
(過激派組織のメンバー)
「神の意志に従って中東に行きたい。
戦闘で殺されているイスラム教徒を救いたい。」
なぜ残虐な行為を繰り返し国際社会からも強く非難されているイスラム国に若者たちを送り込むのか。
ヘルナワン氏に問いただしたところ
自分は若者たちが理想を実現できるよう手助けしているだけでインドネシアの安定にもつながっている
と持論を展開した。
(ヘルナワン氏)
「中東で活動したいものがインドネシアの国内で銃をとれば治安は悪化する。
この国の治安を保つためにも彼らを中東に送り込んでいるのだ。
そういう意味では私はこの国に貢献しているわけだ。」
今も警察の監視下にあるヘルナワン氏。
しかしテロ行為に関与したなどとという明確な証拠がないため
警察はヘルナワン氏を摘発することができない。
10月19日 NHK海外ネットワーク
海外で医学を学ぶというとアメリカやドイツへの留学を思い浮かべるが
実は今注目を集めているのはハンガリー。
ハンガリーは外貨を獲得する狙いもあって1980年代から留学生を積極的に受け入れてきた。
アメリカなどに比べると入学の門戸が開かれているとして日本の学生の間で人気が高まっている。
ヨーロッパ中部ハンガリー。
4つの国立大学の医学部で約270人の日本人留学生が学んでいる。
首都ブダペストにある国立センメルワイス大学は400年近い伝統を誇る名門である。
大学では現在60以上の国や地域から留学生を受け入れている。
学生の3割を留学生が占めている。
(イタリアからの留学生)
「病院で実習をする機会が多くいい訓練になる。」
(ノルウェーからの留学生)
「教育のレベルが高いので国に戻ってからも医師になりやすい。」
この大学の医学部に4年前に入学した加藤佑介さん(24)。
国際的に活躍できる医師を目指している。
当初は日本の大学の医学部への進学を希望していたがあきらめた。
国公立大学の入試には不得意な科目があり
私立の大学は学費の負担が重すぎたからである。
(加藤佑介さん)
「頑張れば私立の医学部に行けるかもと思ったころ学費の高さを知った。」
親に話したら『この学費では行かせてあげられない』と言われて
どうしようと。」
加藤さんがハンガリーへの留学を決めた大きな理由は日本に比べて入学しやすいことだった。
入試では面接を重視しやる気を高く評価してくれた。
学費が日本の私立大学に比べて安いことも魅力だった。
日本の私立大学の医学部を卒業するには1年間の平均の学費は最低でも約350万円かかるが
ハンガリーではその半額程度の約180万円で抑えられる。
(加藤佑介さん)
「ここなら行けるかもしれないと思ってその日のうちに決めて親に相談した。
『頑張ってみれば』といってもらえてそれで決めた。」
さらにハンガリーでは授業が英語で行われることも留学生の人気を集める理由となっている。
将来アメリカなどで活躍する可能性につながるからである。
しかし日本の学生の中には英語で行われる専門性の高い授業についていけず退学する人も少なからずいる。
同じ時期に入学した59人の日本人学生のうち17人がすでに退学した。
加藤さんは順調にいけば2年後に卒業する。
日本とヨーロッパでそれぞれ医師免許を取得するための試験に挑戦するつもりである。
加藤さんを支えているのは日本から応援している友人たちの存在である。
「 色紙だと大事なテストに持っていくわけにいかない。
高校の同級生が『パンツならはいて行ける』とくれた。
医師国家試験にはいて行けたらいいと思っている。」
「医師になれたら最初は日本で働こうと思っている。
ヨーロッパの医師免許がとれるから
機会があれば日本の良い医学をヨーロッパに伝えて
ヨーロッパの医学を日本に持って帰ってこられたらいい。」
今年の日本の医師国家試験ではハンガリーの大学の卒業生4人が合格したということである。
9月28日 NHK海外ネットワーク
危険ドラッグはアメリカでは合成ドラッグと呼ばれ深刻な問題になっている。
日本よりは規制は進んでいるが根絶には程遠いのが現状である。
(危険ドラッグ関連のニュース)
警察のよりますと運転手から危険ドラッグとみられる成分が検出されました
アメリカでも危険ドラッグの交通事故は多発していてメディアで大きく取り上げられることがある。
アメリカでは一昨年
より迅速に危険ドラッグを規制できるよう法律を改正し相次いで大規模な取り締まりを行っている。
今年5月にもアメリカの麻薬取締局が警察などと主に全米一斉に摘発を行った。
この時は150人以上を逮捕し危険ドラッグやその原料となる化学薬品を大量に押収したが
売る側とのいたちごっこが続いている。
(麻薬取締局担当者)
「我々が違法薬物に指定するたびに連中は成分を変えてくるんだ。」
12歳以上の人口のうち“大麻を吸った経験がある”が40%余にのぼるアメリカ。
西海岸にある喫煙道具の販売店の棚にはさまざまな種類のパイプやたばこの葉をまく巻紙が並んでいる。
若者だけでなく親子とみられるふたりも訪れていた。
店では危険ドラッグも以前は売っていた。
規制強化を受けて今は販売していないが町の若者たちに話を聞くと
「法律がどうあれお金になるから売る側は何とかして売る。」
「その筋にあたれば何でも買えるよ。」
なぜ危険ドラッグはなくならないのか。
その理由のひとつが“他の薬物ほど健康に害さない”という誤解が根強いからである。
また“青りんご”や“風船ガム”などまるで駄菓子のような商品名が多いことも若者たちの抵抗感を弱めている。
しかし危険ドラッグは一度手を出すと深みにはまりやすいのが実情である。
ロサンゼルス近郊にある薬物中毒者のリハビリ施設。
19歳の女性は15歳から薬物を使用。
薬物とアルコール中毒のため去年入所しリハビリのプログラムを受けた。
危険ドラッグを吸引したら意識がもうろうとしたり強い不安感に襲われるといった症状が出たと言う。
(リハビリを受けた19歳の女性)
「マリファナを吸おうと考えたら危険ドラッグの方が友だちから簡単に手に入った。
でもマリファナより危険だった。」
リハビリの担当者は危険ドラッグは安全だと勘違いしている若者の多さに警鐘を鳴らしている。
(カウンセラー)
「若者は危険ドラッグを安全と思いがちだが
実は成分がわからない分むしろ危険。」
危険ドラッグは吸引した本人だけでなく家族をも苦しめる。
エカートさん夫妻は今年7月に当時19歳だった息子のコナーさんは
吸引ドラッグを吸引したところ二度と目を覚ますことなく亡くなった。
コナーさんの部屋は亡くなった時のままである。
写真では笑顔のまま。
(ベロニカ・エカートさん)
「彼は社交的でユーモアがあっていつもみんなを沸かせていた。」
“危険ドラッグで子を亡くすつらさを繰り返してはならない”
若者にその川差を伝えようと病院で意識不明の状態で横たわるコナーさんの姿をフェイスブックで公開した。
(フェイスブックで公開中の映像)
彼は私たちの息子です。
19歳。
かけがえのない息子です。
公開直後から大きな反響を呼び世界中から3,500件を超えるメッセージが寄せられた。
(ベロニカ・エカートさん)
「私たちのようなつらい思いをほかの人たちにしてほしくない。
若い人たちの将来が奪われるのも見たくない。」
規制を強化してもなお若者たちをむしばむ危険ドラッグ。
根絶へはまだ遠い道のりである。