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記憶はあらゆる物事の宝であり、 守護者なり

2018-04-28 07:00:00 | 編集手帳

4月15日 編集手帳

 

 元は、
さる新聞人がつづった私的な雑録だった。
『熊本明治震災日記』。
筆者の名から水島日記とも呼ばれる。
地震の発生から一月の間、
明治期の熊本がどんな混乱に陥ったか、
被災者の目線で記してある。

後に本になり、
昨年、
現代語訳版が出た。
大きな余震に
<繁(しげ)みや竹やぶなどに莚(むしろ)を敷いて、
縞(しま)蚊に刺されるのも厭(いと)わず、
ひたすら身を伏せ神仏に祈っている>
<恐怖心を助長させたのは学士紳士たちが先立って避難したことだった>

生々しく詳密な記述が、
まさかへの備えや覚悟を促す。
水島日記に倣うには。
2年前、
震度7の揺れに見舞われた熊本県益城町の図書館では、
司書さんの頑張りが続く。

1年目、
避難所の貼り紙やら弁当の受取票やら、
記憶のかけらを1万点以上集め、
折に触れて展示した。
区画整理や県道の拡幅など復興事業が進む今は、
公式文書以外の書面、
資料まで全てを残す。
未来図を描く一助に閲覧する町の人は少なくない。

記憶はあらゆる物事の宝であり、
守護者なり――と、
古(いにしえ)の書物にある。
先の世のため宝をどう生かすのか。
そのすべを考え抜くことが現代人の務めなのだろう

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