【Live Information】
第二次世界大戦初期に敢行された「ダイナモ作戦」。
「史上最大の救出作戦」とも言われているこの作戦によって、ダンケルク海岸に追い詰められたイギリス軍は大規模な撤退を成功させました。一般に、「ダンケルク奇跡の撤退」として有名なできごとです。
この撤退劇を描いたのが「ダンケルク」です。
題材がドラマティックなうえに、映画自体の前評判も高く、テレビでバンバン流れるスポットにも刺激されて、公開間もない9月18日に観に行きました。
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【ダンケルク奇跡の撤退】
ダンケルクの戦いは、1940年5月10日に始まりました。イギリス、ベルギー、カナダ、フランスからなる連合軍は敗走し、ドイツ軍によってフランス北部のダンケルク海岸に追い詰められました。
包囲された40万人の将兵をイギリスに脱出させるために立案されたのが「ダイナモ作戦」です。
作戦は1940年5月26日から6月4日にかけて行われました。
艦船の不足は絶望的でしたが、輸送船や駆逐艦などの軍艦のほか、民間の漁船やヨットまで含む作戦従事可能なあらゆる船が動員されてダンケルク海岸へ救出に向かい、約36万人が撤退に成功しました。
これが「ダンケルク奇跡の撤退」です。
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説明的なセリフや字幕が全くと言っていいほどないのがこの作品の特徴のひとつです。
だから、「ダンケルク奇跡の撤退」の史実を知らない人にとっては、ストーリーがわかりにくいかもしれません。
さらに言うと、説明的どころか、登場人物のセリフ自体が少なく感じられるのですが、それが却ってダンケルクの緊迫感、つまり背後から迫りくるドイツ軍の脅威だとか、生きて故郷に帰れるかどうかの不安などを感じ取れる効果をあげていると思いました。
冒頭からドイツ軍の猛射によって逃げる英兵がバタバタ倒れるシーンがありますが、血が流れるところは見えませんでした。その場面を初めとして、全編にわたって生々しい血はあまり目につきません。今の撮影技術では、流血や負傷の様子を非常にリアルに見せることは容易なはずですが、この映画では(全くないわけではないけれど)流血の様子を見ることはあまりありませんでした。すこし不思議に思いましたが、これは映画を作るにあたっての、なんらかのポリシーの現れかもしれないと思っています。
浜辺で救出を待つトミー二等兵、自分の持つ小型船でダンケルクを目指すドーソン親子、友軍支援のため空でドイツ空軍と対峙するファリアとコリンズ。
映画は、「地上」「海上」「空」の三つの視点での出来事を描きながら、最後にはそれぞれの登場人物がダンケルクという一点で繋がり、それぞれの撤退劇を完了させます。ある者は無事帰国し、ある者は捕虜になり、ある者は救助され、ある者は救助する。
華々しいセリフ、教訓めいたセリフはありません。ただそれぞれの「いかに生き延びるか」という10日間を追っているだけです。逆にそれが作品をよりリアルなものに感じさせます。
派手な銃撃戦のシーンはありません。女性の登場人物も、英雄的な活躍をする兵士も出てこないし、勇ましいBGMもありません。
ただほの暗い色の場面が続きます。
それが、硬派なイメージを醸し出しているように思いました。
その対比として、晴天下の空中や海上のシーンがとてもまぶしく目に映ります。
戦争映画は当然ながら史実を元にしたものが多いのですが、この作品はその意味では少し毛色が違います。
ダンケルクの戦いから撤退までの流れ、または撤退の始まりから終わりまでを描いているわけではありません。この作戦が欧州戦線に及ぼした影響だとか、戦術的な意味などにもとくに触れられていません。
撤退作戦に係った人物、それも一兵士や民間人(映画の中の登場人物は架空のキャラクターだそうですが)の、「彼らのダンケルク」を追っているだけです。
それがどことなくひんやりとした雰囲気や、乾いたリアリズムなどを生み出しているように思います。
個人的には、自分の船でダンケルクに向かう、マーク・ライランス演じるミスター・ドーソンの勇敢さ、男気、渋さ、存在感の大きさに魅かれました。
ダンケルク(Dunkirk)
2017年イギリス、オランダ、フランス、アメリカ合作(配給:ワーナー・ブラザーズ映画)
◆監 督 クリストファー・ノーラン
◆音 楽 ハンス・ジマー
◆出 演
トミー[英国陸軍二等兵] (フィン・ホワイトヘッド)
ピーター[ミスター・ドーソンの息子] (トム・グリン=カーニー)
コリンズ[英国戦闘機のパイロット] (ジャック・ロウデン)
アレックス[英国陸軍「高地連隊」二等兵] (ハリー・スタイルズ)
ギブソン[トミーと行動を共にする無口な兵士] (アナイリン・バーナード)
ウィナント陸軍大佐[ボルトンと共に作戦を見守る陸軍将校] (ジェームズ・ダーシー)
ジョージ[ドーソン親子に同行する青年] (バリー・コーガン)
ボルトン海軍中佐[防波堤で撤退作戦の指揮を執る海軍将校] (ケネス・ブラナー)
謎の英国兵[ミスター・ドーソンに救出された英国兵] (キリアン・マーフィー)
ミスター・ドーソン[小型船の船長でピーターの父] (マーク・ライランス)
ファリア[英国戦闘機のパイロット] (トム・ハーディ)
隊長の声[英国戦闘機のパイロットでファリアとコリンズの隊の指揮官] (マイケル・ケイン=クレジットなし)
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第二次世界大戦初期に敢行された「ダイナモ作戦」。
「史上最大の救出作戦」とも言われているこの作戦によって、ダンケルク海岸に追い詰められたイギリス軍は大規模な撤退を成功させました。一般に、「ダンケルク奇跡の撤退」として有名なできごとです。
この撤退劇を描いたのが「ダンケルク」です。
題材がドラマティックなうえに、映画自体の前評判も高く、テレビでバンバン流れるスポットにも刺激されて、公開間もない9月18日に観に行きました。
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【ダンケルク奇跡の撤退】
ダンケルクの戦いは、1940年5月10日に始まりました。イギリス、ベルギー、カナダ、フランスからなる連合軍は敗走し、ドイツ軍によってフランス北部のダンケルク海岸に追い詰められました。
包囲された40万人の将兵をイギリスに脱出させるために立案されたのが「ダイナモ作戦」です。
作戦は1940年5月26日から6月4日にかけて行われました。
艦船の不足は絶望的でしたが、輸送船や駆逐艦などの軍艦のほか、民間の漁船やヨットまで含む作戦従事可能なあらゆる船が動員されてダンケルク海岸へ救出に向かい、約36万人が撤退に成功しました。
これが「ダンケルク奇跡の撤退」です。
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説明的なセリフや字幕が全くと言っていいほどないのがこの作品の特徴のひとつです。
だから、「ダンケルク奇跡の撤退」の史実を知らない人にとっては、ストーリーがわかりにくいかもしれません。
さらに言うと、説明的どころか、登場人物のセリフ自体が少なく感じられるのですが、それが却ってダンケルクの緊迫感、つまり背後から迫りくるドイツ軍の脅威だとか、生きて故郷に帰れるかどうかの不安などを感じ取れる効果をあげていると思いました。
冒頭からドイツ軍の猛射によって逃げる英兵がバタバタ倒れるシーンがありますが、血が流れるところは見えませんでした。その場面を初めとして、全編にわたって生々しい血はあまり目につきません。今の撮影技術では、流血や負傷の様子を非常にリアルに見せることは容易なはずですが、この映画では(全くないわけではないけれど)流血の様子を見ることはあまりありませんでした。すこし不思議に思いましたが、これは映画を作るにあたっての、なんらかのポリシーの現れかもしれないと思っています。
浜辺で救出を待つトミー二等兵、自分の持つ小型船でダンケルクを目指すドーソン親子、友軍支援のため空でドイツ空軍と対峙するファリアとコリンズ。
映画は、「地上」「海上」「空」の三つの視点での出来事を描きながら、最後にはそれぞれの登場人物がダンケルクという一点で繋がり、それぞれの撤退劇を完了させます。ある者は無事帰国し、ある者は捕虜になり、ある者は救助され、ある者は救助する。
華々しいセリフ、教訓めいたセリフはありません。ただそれぞれの「いかに生き延びるか」という10日間を追っているだけです。逆にそれが作品をよりリアルなものに感じさせます。
派手な銃撃戦のシーンはありません。女性の登場人物も、英雄的な活躍をする兵士も出てこないし、勇ましいBGMもありません。
ただほの暗い色の場面が続きます。
それが、硬派なイメージを醸し出しているように思いました。
その対比として、晴天下の空中や海上のシーンがとてもまぶしく目に映ります。
戦争映画は当然ながら史実を元にしたものが多いのですが、この作品はその意味では少し毛色が違います。
ダンケルクの戦いから撤退までの流れ、または撤退の始まりから終わりまでを描いているわけではありません。この作戦が欧州戦線に及ぼした影響だとか、戦術的な意味などにもとくに触れられていません。
撤退作戦に係った人物、それも一兵士や民間人(映画の中の登場人物は架空のキャラクターだそうですが)の、「彼らのダンケルク」を追っているだけです。
それがどことなくひんやりとした雰囲気や、乾いたリアリズムなどを生み出しているように思います。
個人的には、自分の船でダンケルクに向かう、マーク・ライランス演じるミスター・ドーソンの勇敢さ、男気、渋さ、存在感の大きさに魅かれました。
ダンケルク(Dunkirk)
2017年イギリス、オランダ、フランス、アメリカ合作(配給:ワーナー・ブラザーズ映画)
◆監 督 クリストファー・ノーラン
◆音 楽 ハンス・ジマー
◆出 演
トミー[英国陸軍二等兵] (フィン・ホワイトヘッド)
ピーター[ミスター・ドーソンの息子] (トム・グリン=カーニー)
コリンズ[英国戦闘機のパイロット] (ジャック・ロウデン)
アレックス[英国陸軍「高地連隊」二等兵] (ハリー・スタイルズ)
ギブソン[トミーと行動を共にする無口な兵士] (アナイリン・バーナード)
ウィナント陸軍大佐[ボルトンと共に作戦を見守る陸軍将校] (ジェームズ・ダーシー)
ジョージ[ドーソン親子に同行する青年] (バリー・コーガン)
ボルトン海軍中佐[防波堤で撤退作戦の指揮を執る海軍将校] (ケネス・ブラナー)
謎の英国兵[ミスター・ドーソンに救出された英国兵] (キリアン・マーフィー)
ミスター・ドーソン[小型船の船長でピーターの父] (マーク・ライランス)
ファリア[英国戦闘機のパイロット] (トム・ハーディ)
隊長の声[英国戦闘機のパイロットでファリアとコリンズの隊の指揮官] (マイケル・ケイン=クレジットなし)
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