ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ヒア・カムズ・ザ・サン

2019年07月03日 | 名曲

【Live Information】


 ぼくの家には八兵衛(通称ハチくん)という名の柴犬がおります。
 一緒に暮らし始めてから9年が経とうとしています。
 ハチくんと一緒に散歩するのが、まあ趣味とは言わないまでも、日々の楽しみのひとつなんですが、陽射しに柔らかみが感じられ、梅の木に蕾がつき、なんとなく春が近づいてくるのが実感できるようになる頃の晴れた日の散歩中に思わず口づさんでしまう曲が、「ヒア・カムズ・ザ・サン」です。


 「ヒア・カムズ・ザ・サン」は、ビートルズの傑作アルバム「アビイ・ロード」B面の1曲目を飾っています。
 この曲のひとつ前のトラック、つまりアナログでいうとA面の最後は、ジョンの作った「アイ・ウォント・ユー」です。ヨーコへの想いをストレートに吐露した、ブルージーでヘビーでダークな曲です。
 アナログ時代は「アイ・ウォント・ユー」を聴き終えてからレコードをB面にひっくり返すのですが、その1曲目のイントロにまさに光を感じるようなアコースティック・ギターが聴こえてきた瞬間、どこか重苦しかった気分が暗雲が遠のくように一変したものでした。
 このコントラストがまた見事なんですね。


 歌詞の内容は、「長かった冬がようやく終わり、太陽がやって来た」というものです。タイトル、歌詞、曲調、これらがなんとも密接に親和しあっていますね。
 「長かった冬」は愛する女性との冷えた関係、「春の到来」はその女性に笑顔が戻って来たことを表しているのかもしれません。
 この曲はジョージ・ハリスンのペンによるものですが、作った時期は、1969年のまさに冬の終わりというか、早春だったそうです。気分転換しようと親友のエリック・クラプトンの家に遊びに行ったジョージが、その年初めての春らしい陽射しを感じているうちに自然に歌詞とメロディが浮かんできたのだそうです。



ビートルズ 『アビイ・ロード』


 イントロからの、アコースティック・ギターのアルペジオ。
 ジョージの柔らかいボーカル。
 リンゴの生み出す、軽やかなグルーブ。
 間奏部分のハンド・クラッピングが醸し出す明るさ。
 すべてが、「春」です。
 すべてが「新しい季節」の訪れを表しています。
 この曲で全編に流れるモーグ・シンセサイザーはジョージが弾いているのですが、「無機質な電子音楽」の側面を持つシンセサイザーの音色さえも、ナチュラルな陽射しをイメージさせてくれます。





 ビートルズ時代のジョージは「クワイエット・ビートル(物静かなビートル)」と言われていました。ジョン・レノンとポール・マッカートニーの存在の大きさや、バンド内で一番年下ということなどで、バンド内では目立たない存在とされていました。
 しかしソング・ライティング面では徐々に頭角を現し、いわゆる「後期」(1967年~)になると「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」、「サムシング」、そして「ヒア・カムズ・ザ・サン」など数々の名曲を発表しています。
 「ヒア・カムズ・ザ・サン」は日本、ポルトガル、アンゴラでしかシングル・カット(しかもB面)されていませんが、「サムシング」はビルボードの週間チャートで見事1位を獲得しています。





 ジョージは2001年に58歳で亡くなりましたが、どこか素朴な味わいのする、ジョージならではの優しいメロディーはこれからも愛され続けるでしょう。



[歌 詞]

[大 意]
 陽が差し込んできた
 もう大丈夫だ

 可愛いひとよ
 長く、寒く、淋しい冬だった
 何年も太陽を忘れていたみたいだ
 陽が差し込んできた
 もう大丈夫だ

 可愛いひとよ
 みんなの顔に笑顔が戻ってきた
 何年も太陽を忘れていたような気がする
 陽が差し込んできた
 もう大丈夫だ

 太陽が、のぼってきた

 可愛いひとよ
 氷がゆっくり溶けているのを感じるよ
 何年も太陽を忘れていたような気がする
 もう大丈夫だ


◆ヒア・カムズ・ザ・サン/Here Comes The Sun
  ■歌・演奏
    ビートルズ/Beatles
  ■発表
    1969年
  ■作詞・作曲
    ジョージ・ハリスン/George Harrison
  ■プロデュース
    ジョージ・マーティン/George Martin
  ■収録アルバム
    アビイ・ロード/Abbey Road
  ■録音メンバー
    ジョージ・ハリスン/George Harrison (lead-vocal, backing-vocal, electric-acoustic-guitar, Harmonium, moog-synthesizer, handclap)
    ポール・マッカートニー/Paul McCartney (backing-vocal, bass, handclap)
    リンゴ・スター/Ringo Starr (drums, handclap) 



コメント
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