【Live Information】
20世紀終盤のジャズ・シーンを席捲したジャズ・ピアニストのミシェル・ペトルチアーニ。
彼が彗星のように去ってしまったのは、1999年1月6日のことでした。わずか36歳でした。
早いもので、もう21年になります。
でも、ミシェル・ペトルチアーニの名が色褪せてきたかというと、そんな兆しは微塵もないと言っていいでしょう。
ぼくにとっては、変わらずジャズ界を照らし続けている「親愛なる巨星」、といったところです。
ミシェルは、ビル・エヴァンスから大きな影響を受けていると言われています。
リリカルな演奏、クリアーなタッチ。
それに加え、明快で、遊び心いっぱいのフレーズの数々。
ロマンティックながらどこか武骨なところもあり、そのくせ明るく、時にはやんちゃな音楽を作り出す。それがミシェルの真骨頂だと思います。
そして、演奏そのものはもちろんですが、彼の生み出す曲がこれまたぼくは好きなのです。
明るい。
情熱的。
そのうえどこかユーモラス。
そしてたくましささえ感じます。
その、ミシェルの作品の中で好きなもののひとつが、「ルッキング・アップ」です。
ミシェル・ペトルチアーニ
「Looking up」。見上げる。
青い、澄みきった空を見上げるとき。
大きく深呼吸しながら彼方を見上げるとき。
そんなときって、気持ちが切り換えられたり、エネルギーが満ちてきたり、希望を感じられたりすると思うのです。
「Looking Up」はそのほか、「良くなる」とか「元気を出す」という意味もあります。
はじめて聴いたこの曲は、ライヴ・アルバム「ドレフュス・ナイト」に収められたものでした。
柔らかな陽射しのような、優しくて明るいイントロを聴いた時は、まさに「澄み渡った青空を見上げる」、そんな印象を受けました。
フレンドリーなメロディがラテン調のリズムに乗って流れてきます。
やっぱり優しくて、すこしロマンティック。
「ドレフュス・ナイト」は、1994年にパリで催された、「ドレフュス・ジャズ・レーベル」のイベントです。
このライヴでのミシェルの共演者は、マーカス・ミラー(bass)、ケニー・ギャレット(sax)、レニー・ホワイト(drums)、ビレリ・ラグレーン(guitar)。
なんて贅沢な組み合わせ。。。これぞ「スーパー・セッション」ですね。
さすがは一騎当千の強者ばかり。
アドリブはケニー、ミシェル、ビレリ、マーカス、レニーの順で回ってゆくのですが、それぞれが自分のソロで自分の世界を創り出してゆくところ、またコーラスを重ねるごとにヒート・アップしてゆくところを聴くのがこれまた楽しいんです。
そして、リズム隊のマーカスとレニーのコンビネーションがいいんですね。
ビレリのソロが終わった9分50秒すぎからマーカスのソロが始まります。
マーカスのスラップの音色は、キレの良さがありながらも柔らかくて気持ち良いです。レニーのドラムはマーカスと一心同体というか、しっかりシンクロしていて、エキサイティング。お互いここぞ、というところではダイナミックに仕掛けていますしね。実はこのふたりは若かりし頃からの仲間なのですが、このコンビネーションの良さはそういったところも無関係ではないと思います。
マーカス・ミラー(左)、ケニー・ギャレット
ビレリ・ラグレーン(左)、レニー・ホワイト
よく目に、耳にする、「障害を乗り越えて」というフレーズ。
少なくともミシェルの素晴らしさは、「障害を抱えながら」ピアノを弾き続けたからではないと思うのです。(もちろんそこは否定されるべきところではなく、そんなミシェルから勇気を受け取った人もたくさんいるでしょう)
身体的ハンディがあろうとなかろうと、ミシェルの弾くピアノ、そして生み出す曲が素晴らしいことに変わりはないということを改めて思いました。
◆ルッキング・アップ/Looking Up
■収録アルバム
ドレフュス・ナイト/Dreyfus Night in Paris(2003年10月22日リリース)
■作曲
ミシェル・ペトルチアーニ/Michel Petrucciani
■録音
1994年7月7日 パレ・デ・スポール、パリ
■録音メンバー
ミシェル・ペトルチアーニ/Michel Petrucciani (piano)
マーカス・ミラー/Marcus Miller (bass)
ビレリ・ラグレーン/Biréli Lagrène (guitar)
レニー・ホワイト/Lenny White (drums)
ケニー・ギャレット/Kenny Garrett (sax)
■初出
Michel Petrucciani「Music」(1989年)
■その他の収録アルバム
Michel Petrucciani「Music」(1989年)
Michel Petrucciani「Solo Live」(1998年)
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