ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

男はつらいよ お帰り寅さん

2019年12月31日 | 映画

 【Live Information】


「男はつらいよ」第1作が制作・上映されたのは1969年。
それから数えると、今年は「男はつらいよ」の50周年になります。
そして12月27日、「男はつらいよ」の第50作目、「お帰り寅さん」が封切られました。



左から、さくら、博、リリー、山田監督、泉の母、泉、満男。
 

 「寅さん」こと「車寅次郎」を演じた渥美清さんが亡くなったのは1996年でした。
 ぼくはその時まったく「寅さん」を見たことがなかったのですが、ワイドショーで柴又のご老人が「寅よ、なんで死んでしまったんだよ」と号泣する姿を見て、こんなに惜しまれている俳優の代表作なんだから一度くらいは見ておかねば、と思ったんです。
 生まれてはじめて「寅さん」を見るのだからどうせ見るならやはり第1作からだな、とビデオを借りて観終えたその瞬間から、ぼくは「寅さん」が大好きになっていました。
 以後今に至るまでの23年間、「男はつらいよ」シリーズを何度繰り返して観たことか。
 のべ500回か、、、いや1000回は観たかな。
 肝心のベースの練習もせずにw
 そんなわけで、「男はつらいよ」の第50作が公開されるとなると、おめおめ見逃せるはずがありません。



 
 
 劇中では、寅さんは「未だ旅の空の下」という設定になっているのでしょう。
 さくらさんが満男のかつての恋人・泉に泊まってもらおうとする時の「いつお兄ちゃんが帰ってきてもいいように、二階の部屋を空けてあるのよ」というセリフ、仏壇にはおいちゃん、おばちゃんの写真が置かれてあるけれど(これはこれで寂しくて胸がキュッとなります)寅さんの写真はないところ、でそれが察せられます。
 渥美さんが亡くなって20年以上になりますが、こういうところで、寅さんが山田組の皆さんの中で生き続けているのが分かります。
 そして50年・50作の重み。
 今でも大勢の人が寅さんに会いたがっているんですね。それだけこの映画は愛され続けているんですね。
 舞台あいさつの映像を観たんですが、「男はつらいよ」シリーズ初登場の池脇千鶴さんが思わず涙ぐんだのもわかるような気がします。



 
 
 何度も観ているせいでしょう、ぼくが登場人物に結構な思い入れがあるのをいまさらですがはっきり自覚しました。
 寅さん、満男、さくらさん、博さん、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長、源ちゃん、御前様、朱美ちゃん、三平ちゃん、歴代のマドンナたち、、、
 懐かしさ、過ぎた月日の長さ、もう亡くなっている出演者の方々への思い入れなどなど、つまりはノスタルジアなんでしょうけれど、いろんな場面で涙してしまいました。



 
 
 今作でもリリーさんは登場しています。
 なんとジャズ喫茶(!)のママになっています。
 寅さんへの想いを、満男と満男のかつての恋人・泉の前で吐露する場面があるのですが、リリーさんは歴代のマドンナの中で最も寅さんとお似合い、と言われているだけに、なんだか嬉しく、そして切なくもありました。
 その泉を演じた後藤久美子が、下世話な言い方ですが、とても「いい女」になっていました。
 「いい女」といっても華やかで見た目が美しい、という意味ではなく、主観ではありますが、地に足のついた存在感の大きな素敵な女性に、ってことです。



 
 
 満男と泉の、互いを今でも大切に思う気持ち、あるいはエンディング近くで歴代のマドンナが次々と現れるところなどは胸に迫るものがあります。なんだか「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出させるところがあり、ジーンとしました。


 シリーズ初登場の池脇千鶴さんと、満男の娘役の桜田ひよりさんの演技には好感が持てました。
 満男との関わりが大きい、重要な役どころですが、自然に作品になじんでいたように思いましたし、それぞれの存在感もちゃんと出ていたように思いました。





 寅さんは、しばしば回想シーンに出てきます。
 ただ登場シーンだけを観たのでは、寅さんの魅力は伝わりきらないのでは、とは思いました。
 使われたエピソードだけでも渥美清さんの演技、話術はわかりますが、そのシーンの前後のつながりがあるからこそおかしさがすべて引き出されるわけで、唯一そこだけが気になりました。
 
 
 もともと「男はつらいよ」は50作目で幕を下ろすことになっていたそうです。
 その50作目である今作で本当にシリーズは終わるのでしょうか。
 また寅さんに会いたいような、それでいてこれできちんと区切りをつけてほしいような、すこし寂しさもあるなんとも言えない気持ちです。






◆男はつらいよ お帰り寅さん
  ■公開
    2019年12月27日
  ■監督
    山田洋次
  ■脚本
    朝原雄三
  ■音楽
    山本直純、山本純ノ介
  ■配給
    松竹
  ■配役
    渥美清(車寅次郎)
    倍賞千恵子(諏訪さくら)
    吉岡秀隆(諏訪満男)
    後藤久美子(イズミ・ブルーナ=及川泉)
    前田吟(諏訪博)
    池脇千鶴(高野節子)
    夏木マリ(原礼子=泉の母)
    リリー(浅丘ルリ子)
    美保純(朱美)
    佐藤蛾次郎(源公)
    桜田ひより(諏訪ユリ)
    北山雅康(カフェくるまや店長・三平)
    カンニング竹山(編集長・飯田)
    濱田マリ(書店の客)
    出川哲朗(出版社社員・山中)
    松野太紀(ジャズ喫茶店長)
    林家たま平(ケアセンターの職員)
    立川志らく(噺家)
    小林稔侍(窪田=満男の義父)
    笹野高史(御前様)
    橋爪功(及川一男=泉の父)



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